文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当グループが判断したものであります。
当グループは、「リアル店舗」「EC店舗」「サービスインフラ」が三位一体となり、家電機器・エンターテインメントを合わせた家電販売事業及びリフォーム・ホームメンテナンス事業を展開しております。「リアル店舗」「EC店舗」間での相互送客(リアル店舗→EC店舗:スマートショップコーナーの導入、EC店舗→リアル店舗:O2O施策)等により連携を深めつつ、「リアル・EC」の両店舗からの「配送、設置、工事」が伴う業務を、当社の連結子会社であるジョーシンサービス株式会社が対応しております。
「リアル店舗」は、東名阪・北信越地区を中心に当連結会計年度末現在、218店舗を展開しております。新規出店偏重による拡大路線を回避し、既存店舗のスクラップアンドビルドによる収益力の強化に取り組んでおります。「リアル店舗」にご来店いただいたお客さまに対し、「高い接客力・きめ細やかな対応力」を兼ね備えた販売員による商品提案により、お客さまから高い評価をいただいております。
「EC店舗」は、約59万の商品アイテム数を誇り、商品調達を担う商品部との連携を強化し、商品の見せ方等をこまめに変更するといったお客さまを飽きさせない作りこみを行いつつ、コールセンター等の強化による問い合わせ体制の拡充を図るといった丁寧な店舗作りに取り組んでまいりました。この丁寧な作りこみ・対応等が評価され、「楽天・ショップ・ザ・イヤー2021」において、前年度に続き2年連続で「総合グランプリ」を受賞する栄誉にあずかりました。
「サービスインフラ」は、洗濯機、冷蔵庫、エアコンといった「配送、設置、工事」が伴う業務を主としており、それらを含めた製品情報の蓄積は約233万件に上ります。また、業務を委託しております協力会社にも当グループのCSマインドを理解するための研修の実施等を通じ、業務品質を維持向上し、お客さまのご自宅内における作業の担い手として、高いCS評価をいただいております。
②経営方針、経営環境及び優先的に対処すべき課題等
現在、当家電販売業界を含む世間を取り巻く環境は大きく変化しつつあります。少子高齢化がもたらす人口・世帯数の減少や高齢単身世帯の増加といった人口動態の変化、ICTの高度化、性別・年齢・国籍などに囚われず、それぞれの「個」を尊重し、認め合うというダイバーシティ&インクルージョンの浸透、さらには気候変動など、人を取り巻く社会構造や環境、価値観が大きく変化する中で、人々の生活様式も大きく変わろうとしております。
当グループは、長期的な視点で未来を考え、社会のあるべき姿を思い描いて、経営理念を《人と社会の未来を笑顔でつなぐ》に改定いたしました。
社会変化の現状と課題を踏まえた上で、当グループの理念体系の根幹である社是「愛」(「常に相手の立場に立って考え行動する」の意)の基本精神に則り、「持続可能で誰ひとり取り残さない社会」を私たちの未来世代に引き継いでいきたいという思いを込めました。
そして、この新経営理念のもと、中長期的な視点からのバックキャストで、当グループが中長期的に創造する2つの社会価値や経営ビジョン、7つのマテリアリティ(重要課題)等を特定いたしました。
A.2つの社会価値
当グループは、新しい経営理念《人と社会の未来を笑顔でつなぐ》のもと、『高齢社会のレジリエンス強化支援』と『家庭のカーボンニュートラルの実現』という2つの社会価値の創造に取り組んでまいります。
家電販売を主とする小売業にとって、将来像に大きな影響を与えるものは、大きく2つあると考えております。1つ目は「少子高齢化」であります。「少子高齢化」による人口・世帯数の減少、高齢単身世帯の増加は、消費者の購買行動の変化と市場規模の縮小、労働人口の減少という課題を内包しております。当グループは、リスクとしてこの課題に対処しつつ、新たな事業機会として捉え、当グループが提供すべき社会の持続的な発展を支える価値のひとつを『高齢社会のレジリエンス強化支援』といたしました。
当グループは、「レジリエンス」を“元の状態への復元”に留まらず、“変化への適応”と考えております。超高齢社会に変化していくことを踏まえ、その変化の中でもチャンスを見いだし、保有する営業ノウハウを上手く掛け合わせ、新たな付加価値を生み出し、提供し続けることを目指しております。
2つ目は、「気候変動」です。当グループは、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言への賛同を2021年7月に表明いたしました。気候変動をはじめとする環境問題は、生物多様性を脅かすだけでなく、世界経済にきわめて大きな影響を与える重大なリスクだと言えます。その対策としてのカーボンニュートラルな社会の実現は、世界共通の目標であり、日本も2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを2020年10月に世界に公約しました。世界各地で頻発する大規模自然災害を目の当たりにして気候変動への対応が喫緊の課題であるとの認識は高まっております。企業にとって環境課題はリスクですが、人々の環境認識の高まりは、対処の仕方一つでチャンスに転化することもできます。当グループでは家電販売を通じて、創エネ・蓄エネ・省エネ性能の高い家電製品(太陽光発電・蓄電池・省エネ家電製品など)を普及させるとともに、3R(リデュース・リユース・リサイクル)を通じた循環型社会の構築にも積極的に取り組み、社会価値の向上に貢献してまいります。
B.経営ビジョン
当グループは新経営理念のもと、2つの社会価値の創造を実現するために、『家電とICTの力で生活インフラのHubになる』を経営ビジョンと定めました。2つの社会価値を創造していくためには、人の生活基盤である家庭内インフラの維持・充実が必要不可欠であると考えております。当グループは、これまで家電販売を通じて、さまざまな家電製品を日本国内に広く普及させてまいりました。今後は、ICTの高度化・技術革新が、家電をIoT家電に進化させ、ICTが社会インフラの高度化ツールとして、少子高齢化への対応、産業・雇用創出、安全・安心な街づくり、社会インフラの老朽化への対処といったさまざまな場面で活用されていくと考えております。当グループは、「家電製品を普及・浸透させる力」「ICTの高度化・技術革新の力」で、お客さまの生活インフラのHub(活動の中心地・拠点)になることを目指してまいります。
C.7つのマテリアリティ(重要課題)
当グループはさらに、新経営理念、経営ビジョンの実現に向け、当グループの企業価値創造に対する影響度が高く、優先的に取り組むべき7つのマテリアリティ(重要課題)と14の取り組み課題を特定いたしました。
なお、特定にあたっては、投資家とマルチステークホルダーの両視点を踏まえ、当グループにとってのリスクと機会を分析の上整理を行い、各取り組み課題毎に長期目標、KPIとその達成のためのアクションプランを策定しました。
マテリアリティの内容は、多様化する超高齢社会を支える商品・サービスの提供と家庭内カーボンニュートラルの実現を取り組み課題とする『1.生活スタイルの変化を先取りした豊かな暮らしの提案』、データセキュリティの強化と製品品質・製品の安全性確保を取り組み課題とする『2.安全安心な製品・サービスの提供』、資源循環社会の構築と気候変動問題への取り組みを取り組み課題とする『3.地球環境と調和した豊かな社会への貢献』、環境の変化に応じた人財の確保・育成とダイバーシティ&インクルージョンとワークライフバランスに主眼を置いた安心・安全な職場環境の構築を取り組み課題とする『4.多様な人財が活躍できる働きがいのある労働環境の実現』、人権尊重と地域に密着したビジネスの深耕を取り組み課題とする『5.地域社会との共生の推進』、CSR調達基準/倫理基準に基づいた調達、サービス提供の実施を取り組み課題とする『6.責任ある調達及びマーケティング』、コンプライアンスの徹底/リスクマネジメント/企業モラルの維持とコーポレートガバナンス/グループガバナンスを取り組み課題とする『7.企業統治の強化』であります。
当グループの強みは「人財」にあると考えており、7つのマテリアリティの中でも特に重要視しております。労働集約型産業である小売業において「従業員第一」の考えが欠落することは、当グループの事業の根底を揺るがしかねないと考えております。当グループが企業として成長を遂げながら存続し続けていけることを前提に経営していかなければならないと常々考えており、企業の存続が雇用の維持につながり、働く者の生計・生活を支えます。これらが当グループの社是「愛」、新経営理念《人と社会の未来を笑顔でつなぐ》の実現につながると考えております。
当グループの平均勤続年数は当家電販売業界でも長く、これが高い接客レベルの維持につながり、お客さまのリピート率向上に寄与しております。また、上新電機社員持株会は大株主の状況において上位に位置し、経営への参画意欲の高さも高いプロ意識を醸成し、当グループの強みにつながっていると考えております。
家電製品の販売におきましては、商品の選択や配送、設置、工事、リサイクルにあたって適切なアドバイスが必要となりますので、お客さまとの接点を担う従業員の存在、さらには従業員が魅力的であることが、お客さまに当グループを選んでいただくためにとても重要な要素であり、従業員が長くキャリア形成を目指せる労働環境の整備は、経営の必須項目であります。
当グループは、多様な従業員が働きがいを感じながら意欲的に事業に参画し、当グループの成長のエンジンとなる、そのような会社を創っていきたいと考えております。そのため、2021年に人財の育成を含めたサステナビリティ推進に精通した女性社外取締役を登用いたしました。「環境の変化に応じた人財の確保」、「ダイバーシティ&インクルージョン」、「人権尊重」、「ワークライフバランス」の4つのキーワードを柱に、従業員エンゲージメントをさらに充実することで、企業価値の向上に結びつけていきたいと考えております。
さらに重要視しておりますのが、気候変動など、人を取り巻く社会構造や環境、価値観が大きく変化する中で、人々の生活様式も大きく変わろうとしていることです。当グループの環境に対する取り組みの歴史は長く、1998年に、社是「愛」の精神のもと地球環境の保護が人間をはじめ地球に共存するあらゆるものにとって最も大切であることを認識し、地域社会の人々が安心かつ快適で健康に暮らせる環境の維持と創造を社会的使命とする、責任ある企業活動を目指す、『上新電機株式会社 環境理念』を制定、本社ビルを対象に、環境マネジメントシステム(ISO14001)を導入し、当初の本社ビル事務活動における取り組みから、現在は本社機能として営業に係る環境負荷軽減の推進へと、取り組み範囲を拡大しております。
また、2012年の全量買取制度のスタートと同時に太陽光発電システムによる業界初の売電事業を開始、店舗への電気自動車充電システム設置や電子プライス(電子棚札)の導入も業界初であり、常に業界のトップランナーとして取り組んでまいりました。
現在、パリ協定を機に、世界は「低炭素」から「脱炭素」へと転換しています。2050年のカーボンニュートラル実現、SDGsやESGによる企業経営の新たな潮流を受け、中長期の温室効果ガスの削減目標を掲げる企業が増えています。もはやESGを経営の中核に据えたサステナビリティ経営を推進していく上で、環境、とりわけ気候変動問題への取り組みは企業として避けては通れない重要課題であると考えております。
当グループは2021年7月16日、金融安定理事会(FSB)により設置された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同いたしました。当グループは、「資源循環社会の構築」及び「気候変動問題への取り組み」をマテリアリティの取り組み課題と位置づけており、サステナビリティ経営の実践にあたり、TCFD提言への賛同等を通して脱炭素社会構築に貢献することが喫緊の課題であると考えております。加えてこれらの課題解決のために、TCFD提言において求められている気候変動におけるシナリオ分析についても、策定及び開示を予定しております。今後もTCFD提言に沿って、気候変動が当グループの事業活動に与えるリスクや機会を的確にとらえ、それらを中長期的な視点で経営戦略に反映させるとともに、適切な情報の開示に努めてまいります。
当グループの温室効果ガス削減の取り組みといたしましては、中長期における目標としてグループ全事業所のカーボンニュートラルの実現を目指して取り組んでおります。LED店舗照明や空調の制御を行うことによる事業所内排出量削減に向けた取り組みが奏功しており、2040年の当グループのカーボンニュートラル実現に向け、中間目標として2023年までに、当グループが直接受電契約を締結しております全事業所を100%再生可能エネルギーにすることで、CO2排出量の実質ゼロを目指してまいります。
企業の気候変動対策に関する情報開示及び評価に対して、TCFDをはじめとする国際的なイニシアティブの影響力が高まっており、当グループにおいてもこのような動きに対応することが望ましいと考えております。特に使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指すRE100や、気候変動による平均気温上昇を科学的根拠に基づいて分析し目標を設定、これを審査及び開示を目的としているSBTi(Science Based Targets initiative)に対応、さらに質問書への回答を通じてESG評価機関に求められる情報を開示し、さらなる投資を促す効果が期待できるCDP気候変動プログラム等の国際イニシアティブ加盟については、環境イノベーションの促進や機関投資家からの信頼及び向上につながるものとして当グループにおいても積極的に参画を検討しています。
当グループが推進する全事業所への再生可能エネルギーの導入、加えて太陽光発電+蓄電池による自家発電、自家消費への転換を継続して実施すること、そしてこれらを適宜開示するなど透明性を高めるとともに、これからもCO2排出量削減を含む、気候変動に関する課題に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
この先中長期的な視点で、当グループは業界内において環境課題に対して最も積極的に取り組む企業であり続けると同時に、環境配慮型商品のさらなる拡販、家庭内カーボンニュートラル実現への提案等を通じて多くのお客さまのご支持を得ながら業績向上と企業価値の向上につなげていきたいと考えております。
今後のわが国経済の見通しにつきましては、新型コロナウイルス感染症の新たな変異株の拡大、サプライチェーン混乱の長期化、インフレ率の上昇等、景気の先行きについては依然として極めて不透明な状態が続くものと思われます。
当家電販売業界におきましても、新型コロナウイルス感染症の収束が見通せないことに加え、地域紛争激化等による地政学的リスクの拡大、原材料高騰等に起因する各種経済指標の悪化、消費マインドや可処分所得の低下による需要の低迷等により、同業者間の競争はますます激しくなることが予想されます。
このような厳しい状況下、当グループは、中期経営計画『JT-2023 経営計画』の最終年度にあたり、「各種販売チャネルを融合する」、「人財ポテンシャルを引き出し、最大活用する」を同中期経営計画の基本方針とし、将来の持続的成長を支える事業基盤を再構築しCS(顧客満足)の一層の向上を目指します。
「リアル店舗」や「EC店舗」、物流等の「サービスインフラ」への投資や、「人財」への投資等、成長への投資は今後も増加傾向にあると思われます。バリューチェーンの再構築や、事業継続性と運用効率の両立の実現を目指す新物流センターの本格稼働、利益拡大及び経費削減を目指す更なる販売促進方法のデジタル化の構築等により、いかに安定的に新しいキャッシュを創出し、さらなる成長への投資や株主様への還元、財務体質の強化に配分していくことができるかが今後の対処すべき課題となります。
当家電販売業界におきましては、マーケットの伸び悩みや、消費動向の不透明感、同業他社との競争の激化、インターネット販売の拡大基調等ますます激しさを増しており、昨今一層顕著になってきております。また、新型コロナウイルス感染症拡大による経済活動の著しい停滞により、景気の先行きは極めて不透明な状態が続いております。
そのような厳しい環境下、前中期経営計画『JT-2020 経営計画』では目標数値に対して利益項目については未達となりましたが、その一方で、有利子負債の圧縮による自己資本比率の大幅な改善、安定した営業キャッシュ・フロー創出力の確立、店舗戦略に基づいた着実なスクラップアンドビルドの実現、生産性向上に向けた設備投資の実行等、具体的な成果を上げることができました。
今後は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、「3密」を避けるため、都心のターミナル型店舗から「安心」「安全」で手軽にアクセスできる郊外型店舗へ一定程度回帰することが予想され、同時に、「非接触」のショッピングスタイルとして、インターネット販売の売上拡大も見込まれます。
人財活用に向けた投資強化と営業キャッシュ・フローのバランスの維持「財務・人財戦略」、消費者嗜好の多様化に向けた販売チャネルの更なる進化「バリューチェーンの強化・再構築」、環境共生型・環境配慮型経営の更なる進化「SDGs目標達成に向けたサスティナブル経営」等を課題として、中期経営計画『JT-2023 経営計画』を新たに策定いたしました。
なお、直近の業績及び現状の消費動向等を踏まえ、本中期経営計画の最終年度である2023年3月期の計画値の再度見直しを行っております。
見直しの理由としましては、コロナ禍における特需の反動や、緊急事態宣言にともなう休業や時短営業、夏場の天候不順等の影響から、2022年3月期における実績が、売上高や利益面において過去最高を記録した2021年3月期との比較において減収減益を余儀なくされたこと、また、今後の商環境におきましても、新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない上に、地域紛争激化等によるサプライチェーンの寸断、原材料価格高騰等に起因する各種経済指標の悪化、消費マインドや可処分所得の低下による需要の低迷等により、今後の業績が依然として不透明な状況が続くことが想定されることによるものです。
なお、本計画における基本方針等のその他の戦略については変更ありません。
A.各種販売チャネルを融合する
「オーバーストア」と言われる家電販売業界の中で、新規出店偏重の拡大路線を避け、創業以来積み上げてきた経営資源及び販売形態を有機的に統合・再編して、本業に一層磨きをかける。
B.人財ポテンシャルを引き出し、最大活用する
「働き方(働きがい)改革」による職場環境の改善を通じて、ES(従業員満足)の一層の向上を図り、意欲の高い従業員の前進的なアイディア等を引き出し最大限に活用することによって、時代のニーズに即応する。
③ JT-2023 経営計画 2023年3月期の計画値の算定にあたっての基本的な考え方
A.収益計画
成長投資により更なる発展に向けた強固な事業基盤を構築するとともに、高シェアの地域・事業ドメインに資源を集中し、販売力・収益力を強化する。
B.資本計画
財務の健全性を確保しながら資本コストを上回るROEを創出し、株主価値の向上を目指す。
C.財務戦略
中期的に必要な投資資金は事業からのキャッシュ・フローより支出し、創出キャッシュは成長への投資に優先配分する。
④ JT-2023 経営計画 2023年3月期当初計画値に対する2021年3月期実績、2022年3月期実績及び見直し後の2023年3月期計画値
(単位:百万円)
※ROIC(投下資本利益率)=営業利益×0.65(税率を0.35とした場合)/(純資産+有利子負債)
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