課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、「訪れる人々を楽しませ、テナントを成功に導く、先見的、独創的、かつホスピタリティあふれる商業空間の創造」を経営理念とする、ショッピングセンター事業『パルコ』を中核に、時代とマーケットの変化を的確に捉えフレキシブルに対応できる企業集団を構成し、専門店事業、総合空間事業などの事業を展開しております。各社はそれぞれの事業分野でマーケット情報を掌握し、緊密かつ複合的に関連しながら、総体として、企業価値の最大化を図ることを基本方針としております。

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループは、2019年2月期の主要目標としましては、営業利益を108億円(前期比92.2%)と設定しております。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

 2014年度に掲げた当社グループの長期ビジョン[都市マーケットで活躍する企業集団]『都市の24時間をデザインするパイオニア集団』『都市の成熟をクリエイトする刺激創造集団』の達成に向けて、3つの事業戦略「主要都市部の深耕」「コアターゲット拡大」「独自の先行的ICT活用」に基づく2017年度~2021年度にかけての中期経営計画を策定しました。

 

<中期経営計画骨子>

 都市生活を楽しみたい消費者、都市で活躍する事業主の多様化するニーズに対し、店舗事業を含めたグループ全事業を通じて、「心の豊かさ」「新しい刺激」「充足感」など当社独自の価値提供による『都市成熟への貢献』を行います。

 その実現に向け事業ブラッシュアップ・事業領域拡大により、当社グループの存在価値向上=事業ポートフォリオ変革を実現します。

 

<中期経営計画実現に向けた「3つの戦術」>

≪第1戦術≫ストアブランド進化

 都心型店舗の強化をテーマに新生渋谷パルコ創造の際に生まれるエッセンスを波及させていくことや独自のテナントサービスの拡充、消費者へのリアルな売場体験を提供していくことによって次世代型商業空間を実現させ収益の安定化を図り、パルコストアブランド進化を目指していきます。

 

≪第2戦術≫商業不動産プロデュース推進

 成長性のある都市部を中心とした未出店エリアでの拠点獲得を目指し、パルコ業態、ゼロゲート業態に加え、新たな業態創造による業態バラエティの拡大と開発スキームの多様化に取り組みます。

 また、グループ企業の総合空間事業やWebコンサルティング事業などの当社独自のソリューションを商業施設事業者と出店テナントへ提供してまいります。

 これらを実行する事により収益の積み増しを実現していきます。

 

≪第3戦術≫ソフトコンテンツ拡大

 当社独自のソフトコンテンツであるエンタテインメント事業では既存コンテンツの進化と新たなコンテンツの創造に取り組んでいきます。さらに、ライフスタイル事業ではグループ企業の専門店領域拡大を推進していきます。また、当社グループのインキュベーションとして新しいクリエイターや企業と協業することで新しい消費体験を提供し

ていきます。

 

<3つの戦術推進に向けた「4つの方向性」>

①パルコ固有のノウハウ・能力を活用した「商業不動産事業・ソフト型事業」へのドメイン拡大

イ.商業不動産プロデュース事業を推進

・開発案件の5年間の目標として、パルコ型業態4件、ゼロゲート型業態5件、新業態型3件の計12件を開発します。

・不動産開発の推進力と資産効率性向上に向け、循環型不動産投資モデルを検討していきます。

・グループ企業のパルコスペースシステムズは、施設空間ビジネスにおいて、マルチスキルスタッフによるクライアント視点に立ったイノベーション提案により受注と収益を拡大させます。

・グループ企業のパルコデジタルマーケティングは、ショッピングセンター向けWebコンサルティング事業に特化し、提供するサービスの充実とテクノロジーの進化に対応した新たな開発及び協業強化を行い新世代のショッピングセンターに対するサービスを提供し、業容を拡大していきます。

 

ロ.ライフスタイル事業の拡大

・グループ企業のヌーヴ・エイは、既存業態に加え新業態を創造し都市部への出店の拡大やEC(※)の本格稼働を図ります。また、外部企業との連携を検討し、事業領域拡大を目指します。

(※)ECとはElectronic Commerce(エレクトロニックコマース=電子商取引)の略です。

 

ハ.エンタテインメント事業の発展

・新生パルコ劇場の開業や新たなライブエンタテインメント拠点の獲得によりエンタテインメントの提供規模を拡大させ、パルコ店舗のプロモーション機能の深化とコンテンツ事業の開発強化・外部展開拡大を本格化させます。

 

ニ.海外事業の展開

・当社グループのコンテンツのアジア圏での展開、海外ショッピングセンター連携などによりインバウンド及びアウトバウンド対応を推進し、パルコブランドのアジアでのブランド認知度向上を図ります。

 

②経営資源の選択と集中による事業効率向上~コンパクトで収益性の高い企業集団

イ.店舗事業の安定基盤の強固化を推進

・経営資源をより収益性・成長性の高い都心型店舗にシフトし、出店者、消費者から支持される店舗としてモノを売ることを主とする商業施設から、コト・情報を発信し体験する次世代型商業空間へ発展させていきます。

・店舗事業の優位性・競合差別性を高めるため、ライフスタイルの多様化に対応した商品事業、飲食事業、クラウドファンディング事業との相互を連携させ、各事業の成長も促進します。

 

ロ.店舗のスクラップ&ビルドの推進

・店舗閉鎖については店舗の商業環境の変化、投下資本に対する将来リターン、物件の契約期間を総合的に勘案し、判断します。

 

ハ.国際会計基準(IFRS)適用

・国際会計基準(IFRS)適用を契機として、従来よりもキャッシュ・フローとバランスシート視点を強化するなど、マネジメント改革の推進により経営効率を高めていきます。

・グループ企業においても収益性を高める運営を目指していきます。

 

③都市生活者/事業主の多様化するニーズを捉えた「独自の提供価値」の拡大

・当社グループの原点である渋谷パルコの建て替え計画を推進し、新生渋谷パルコ(2019年秋開業予定)創造のエッセンスをグループ事業へ波及させ次世代型商業空間を提供します。

・ⅠCTを活用した当社独自視点によるCRM戦略によって消費者とテナントへのサービスメニューを拡大します。

・新たな才能を発掘し、新しいクリエイターやこれまで取引が無いような外部企業との連携によって新たな消費体験を創造します。

 

④社会的存在意義拡大に向けた企業風土の発展

・当社グループは「インキュベーション」「街づくり」「情報発信」を社会的役割と認識し、当社グループ社員の発想と外部の能力が連携、協業し、マーケットの期待を超える価値提供を創造する企業風土づくりを目指します。

・そのために組織変革と人事政策改革を実行し、ダイバーシティ&インクルージョン経営を進めるとともに、「存在意義」「社会的責任」「事業効率性」「ガバナンス」を重視したサスティナブル経営を推進していきます。

 

(4)対処すべき課題

 当社グループを取り巻く環境変化に伴う課題については、アパレル企業のEC加速によるリアル店舗の役割の変化、コト消費・シェアリングエコノミーなど消費志向の変化、様々な分野におけるテクノロジーの急速な進化、都市部を中心とした商業施設競合の激化などがあげられます。また、2019年度は消費税の増税が予定されており、消費マインドをさらに下押しすることが予想されるほか、キャッシュレス決済が急速に拡大することが予想されます。

 

 このような当社グループの中期経営計画(2017年度~2021年度)策定時の予測を上回って変化する外部環境に対応すべく、2019年度は当社グループの事業ポートフォリオ変革をスピードをもって推進いたします。

 具体的には、2019年3月の錦糸町パルコに始まり、サンエー浦添西海岸 PARCO CITY、新生渋谷パルコ、川崎ゼロゲート(仮称)と、業態が異なる4つの物件を新たに開業する一方、2019年5月に宇都宮パルコを、2020年2月に熊本パルコを営業終了することを決定いたしました。また、既存パルコ店舗においては、池袋パルコ誕生以来50周年の節目を迎え、新生渋谷パルコの建て替えを契機とした次世代商業施設を提案するとともに、CRM(※1)戦略を強化し顧客起点のビジネスモデルへの変革に向け、進化するデジタル環境への対応も含めた店舗事業の改革に取り組んでまいります。

 

(※1) CRMとはCustomer Relationship Managementの略であり、顧客情報を管理することで顧客満足度を向上させるマネジメント手法であります。

 

<ショッピングセンター事業>

 ショッピングセンター事業につきましては、開業50周年の節目の2019年に渋谷パルコ建て替えを完了させ、営業を再開いたします。この新生渋谷パルコをコアとして当社グループの持つコンテンツを連携し、リアルとデジタルが融合した次世代型商業施設を表現するとともに、新しいパルコストアブランドの魅力を提案してまいります。また、進化するデジタル環境の変化に対応し、顧客にとっての買い物の楽しさや利便性などを捉えなおし、新たな消費テーマの開発とテナント導入を目指し、顧客起点でのビジネスモデル変革を進めます。

 

 2019年度はこの変革をスピードをもって進めるため、顧客視点での消費変化に対応するテナント開発や新業態開発のスピードアップを図るべく、パルコ店舗事業とデベロッパー事業のノウハウを本部に集約し協業する組織体制に変更いたしました。パルコ各店については、顧客・マーケット視点で捉えなおし、都市型店舗(※2)とコミュニティ型店舗(※3)に再編いたします。

 

(※2) 都市型店舗は、札幌パルコ、仙台パルコ、浦和パルコ、池袋パルコ、パルコヤ上野、錦糸町パルコ(2019年3月16日開業)、渋谷パルコ(2016年8月8日よりPART1・PART3は一時休業)、吉祥寺パルコ、調布パルコ、静岡パルコ、名古屋パルコ、広島パルコ、福岡パルコとなります。

(※3) コミュニティ型店舗は、宇都宮パルコ、新所沢パルコ、津田沼パルコ、ひばりが丘パルコ、松本パルコ、熊本パルコとなります。

 

 顧客政策につきましては、CRM戦略の推進による顧客満足の最大化を図るため、データ獲得に向けたデジタルツールの活用と、独自のデジタルチャネルとコンテンツの強化を進めます。具体的には、パルコ公式スマートフォンアプリ『POCKET PARCO』を起点に、パルコ店舗やオンライン上の『PARCO ONLINE STORE』へのアクセスを促進すべく、「個客」との最適なコミュニケーション施策を実施するほか、2019年度は顧客視点に沿った優待制度としてポイントサービスの導入及びそれに伴うパルコカードサービスの一部変更を予定しております。訪日外国人の対応につきましても、引き続き決済手段の多様化に向けて環境整備を強化してまいります。

 

 国内開発につきましては、都市部での事業拡大に向け、2019年度は業態の異なる4つの物件の確実な開業を推進いたします。2019年3月に開業した錦糸町パルコに続き、サンエー浦添西海岸 PARCO CITY、新生渋谷パルコ、川崎ゼロゲート(仮称)を着実に開業いたします。また、株式会社大丸松坂屋百貨店との協業案件2件目となる大丸心斎橋店北館への出店につきましても準備を進めてまいります。

 

 新規事業につきましては、新たに『コラボレーションビジネス企画室』として組織化し、『ミツカルストア』を運営する自主商品事業、『BOOSTER』を運営するクラウドファンディング事業などを含め、M&Aや社内外とのアライアンスやコラボレーションを通じた新規ビジネスを創造し、当社グループのビジネスモデル変革を担うイノベーションの活性化を促進してまいります。

 

 海外事業につきましては、新生渋谷パルコを起点として、当社グループの持つ様々なコンテンツを海外に向けて発信するエージェント機能を強化し、国内外でのパルコの認知度を高めます。また、アジア圏の商業施設プロデュースの取り組みを推進してまいります。

 

<専門店事業>

 株式会社ヌーヴ・エイにつきましては、既存事業の再強化に向けスクラップ&ビルドを推進するほか、ショッピングセンター事業との協業による新業態開発など独自性の創出に貢献いたします。また、引き続きデジタル戦略のもとCRM強化を推進してまいります。

 

<総合空間事業>

 株式会社パルコスペースシステムズにつきましては、パルコや外部の受託案件で培ったノウハウ・技術を強みとし、施設運営部門と空間創造部門を両軸とした機能の集約を図り、外部商業施設におけるビル管理業務の複合受注体制を強化いたします。また、2018年度に引き続き J. フロント リテイリンググループでの連携を含めて業容拡大を推進してまいります。

 

<その他の事業>

 株式会社パルコのエンタテインメント事業につきましては、新生渋谷パルコの営業再開とともに、劇場ほか複数の情報発信拠点開発を計画しております。このほか、2018年度に開館した『シネクイント』や『アップリンク吉祥寺パルコ』など当社の独自性あるコンテンツ開発・情報発信拠点の強化により、パルコ店舗事業との相乗効果波及にむけて取り組んでまいります。

 株式会社パルコデジタルマーケティングにつきましては、中核事業である商業施設と専門店向けの複合的なデジタルサービスを強化し、外部クライアントの開発強化と事業の拡大を推進してまいります。

 

 当社グループの2019年度業績見通しにつきましては、営業収益1,162億円(前期比129.2%)(※4)、営業利益127億円(前期比234.1%)、親会社の所有者に帰属する当期利益71億円(前期比210.7%)を見込んでおります。

 

(※4) 営業収益は渋谷再開発事業における保留床売却による一時的な増加を含み、同額を営業原価として見込んでおります。

 

(5)会社の支配に関する基本方針

会社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針

[基本方針の内容の概要]

当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、当社の企業価値の源泉を理解し、当社が企業価値・株主共同の利益を継続的かつ持続的に確保、向上していくことを可能とする者であることが必要であると考えております。

当社は、当社の支配権の移転を伴う当社株式の買付提案がなされた場合、その諾否の判断は最終的には株主全体の意思に基づき行われるべきものと考えております。すなわち、当社株式について大規模買付行為がなされた場合、これが当社の企業価値・株主共同の利益の確保・向上に資するものであれば、これを否定するものではありません。しかしながら、株式の大規模買付行為の中には、その目的、態様等から見て企業価値・株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすもの、株主の皆様に株式の売却を事実上強要するおそれのあるもの、大規模買付者の提示する当社株式の取得対価が妥当かどうかなど大規模買付者による大規模買付行為の是非を株主の皆様が適切に判断するための適切かつ十分な情報提供がなされないものなど、企業価値・株主共同の利益に資さないものも少なくありません。

当社の企業価値の主な源泉は、ショッピングセンター「PARCO」の運営によって培った商業施設のトータルプロデュース力であると考えます。そして、それを支えるのは、これまでの商業施設の開発・保有・運営や個性ある様々な専門店やサービスの展開によって蓄積されたノウハウとそれを活かす人材、コーポレートブランドやストアブランド、及び多数のテナント・取引先・出店先の地域コミュニティなどとの緊密なリレーションであると考えます。

したがって、当社の経営において、ショッピングセンターの開発・保有・運営という事業の実態、顧客・取引先・従業員等のステークホルダーとの間に築かれた関係等への理解が不可欠であり、これらに関する十分な理解なくしては、株主の皆様が将来享受しうる企業価値・株主共同の利益を適切に実現することはできないものと考えております。

当社は、このような当社の企業価値・株主共同の利益に資さない大規模買付行為や買付提案がなされる場合には、当社の企業価値・株主共同の利益を守る必要があると考えております。

 

[基本方針実現のための取り組み]

2014年度に掲げた当社グループの長期ビジョン[都市マーケットで活躍する企業集団]『都市の24時間をデザインするパイオニア集団』『都市の成熟をクリエイトする刺激創造集団』の達成に向けて、3つの事業戦略「主要都市部の深耕」「コアターゲット拡大」「独自の先行的ICT活用」に基づく2017年度~2021年度にかけての中期経営計画を策定しました。

 

<中期経営計画骨子>

都市生活を楽しみたい消費者、都市で活躍する事業主の多様化するニーズに対し、店舗事業を含めたグループ全事業を通じて、「心の豊かさ」「新しい刺激」「充足感」など当社独自の価値提供による『都市成熟への貢献』を行います。

その実現に向け、事業ブラッシュアップ・事業領域拡大により、当社グループの存在価値向上=事業ポートフォリオ変革を実現します。

 

中期経営計画実現に向けた「3つの戦術」

≪第1戦術≫ストアブランド進化

≪第2戦術≫商業不動産プロデュース推進

≪第3戦術≫ソフトコンテンツ拡大

 

<3つの戦術推進に向けた「4つの方向性」>

(ⅰ)パルコ固有のノウハウ・能力を活用した「商業不動産事業・ソフト型事業」へのドメイン拡大

(ⅱ)経営資源の選択と集中による事業効率向上~コンパクトで収益性の高い企業集団

(ⅲ)都市生活者/事業主の多様化するニーズを捉えた「独自の提供価値」の拡大

(ⅳ) 社会的存在意義拡大に向けた企業風土の発展

 

当社としては、このような企業価値向上に向けた取り組みが株主の皆様をはじめとするあらゆるステークホルダーの利益につながると確信しております。

また、指名委員会等設置会社としての適切なコーポレート・ガバナンス体制のもと、業務執行の迅速化と経営の透明性の一層の向上に取り組んできたほか、業務執行上の法令遵守、効率性等を担保するため、グループ監査室を設置するなど内部監査機能の充実にも努めております。

 

〔基本方針に照らして不適切な者が支配を獲得することを防止するための取り組み〕

当社は、大規模買付者による大規模買付行為の是非を株主の皆様が適切に判断するための適切かつ十分な情報提供がなされ、あわせて当社取締役会の意見等の情報が開示されて、検討のための時間が確保されるよう努める等、金融商品取引法、会社法その他関係法令の許容する範囲内において、適切な措置を講じてまいります。

 

[具体的取り組みに対する当社取締役会の判断及びその理由]

当社の取り組みは、当社の企業価値・株主共同の利益を継続的かつ持続的に向上させるための具体的な中長期的経営戦略に基づいて策定されたものであり、また、基本方針に照らして不適切な者が支配を獲得することを防止するための取り組みも、当社の取締役等の地位の維持を目的としたものではなく、かつ、企業価値・株主共同の利益を確保することを目的とするものであり、いずれも当社の基本方針に沿うものです。

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