課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社は、公正な競争原理のもと、良質な人材、資金と組織をつくることで、「お客様第一主義」に基づいた事業活動によりお客様、株主様、お取引先様、従業員とともに成長し社会に貢献することを経営理念としております。

 スポーツ、ファッション商品を通して、お客様の求める最高の商品価値を創造、提供できる商品開発とショッピングそのものの楽しさやサービスを提供できる店舗づくりを継続的に実現し、「オンリーワン」企業になることを経営の基本方針として、日々努力を重ねて参ります。

 

(2) 経営戦略等

 当社グループは、中長期的に予測される経営環境と、日々変化する市場に対応しながら、お客様とのさまざまな接点を通じて「スポーツの新しい価値」を提案し、新しいスポーツビジネスの創造に取組んでいくことで、中長期的に企業価値を高めるとともに、社会貢献を果たしていくという企業理念を実現するために、以下の取組みを実施しております。

 グループ内での経営理念の共有と浸透を進め、グループ各社毎の企業カルチャーを尊重しつつ、それぞれが競争優位性を有する事業に特化することで、専門性の確保と相互補完、及び連携によるシナジーを創造するグループ運営を目指しております。また、コスト競争力を強化するためにグループ内での機能集約を進める一方で、成長領域への事業拡張に向けて、国内外の有力企業との協業や提携、相乗効果が期待できる事業や企業の買収などのM&A戦略に積極的に取組み、新たな人材やノウハウといったグループアセットの増強を努めております。

 中核事業であるスポーツ小売事業においては、市場環境と立地特性により「スーパースポーツ」、「スポーツエクスプレス」、「ヴィクトリア」、「ヴィクトリアゴルフ」、「エルブレス」、「ゴルフパートナー」、「ネクサス」、「タケダスポーツ」などのそれぞれの業態が持つ「強み」と「特色」を活かした新規出店や店舗の再配置、及びEC機能の併設を進めることにより、収益性と生産性を備えた店舗網の整備を進めて参ります。商品面では、お客様との接点である店頭での販売情報や社会情勢の変化、及びファッショントレンドをベースとして、店舗ごとの適正な商品構成の精度向上と、グループとしてのお取引先様との連携や取組みの拡大による商品での差別化を継続的に実施して参ります。また、小売事業の成長を促進するために物流と情報システム整備のための継続的な投資を行って参ります。

 なお、当社の経営戦略において、具体的な店舗業態や商品開発、M&Aや提携の内容などは、営業戦略上の機密情報に該当するため、開示事由に該当するものを除いて、記載は省略しております。

 

(3) 経営環境

 当社グループは、国内外におけるスポーツ、レジャー用品の小売、及び卸売を主たる事業としておりますが、連結売上高の9割以上が国内におけるスポーツ用品・用具の販売となっています。具体的な事業内容につきましては、商品部門別販売実績、及び地域別売上高に示しています。

① 市場環境

 国内のスポーツ、レジャー市場は、少子高齢化の進行による若年層の減少、シニアゴルファーの漸減、及び地球温暖化の影響による降雪の減少といった社会情勢の変化を受け、チームスポーツを中心とするアスレチックスポーツやゴルフ、ウィンター市場は、中長期的には規模の縮小に向かう傾向が続いていました。しかし、コロナ禍での外出制限や屋外レジャーが活況を呈した影響から、部活動やマラソン大会の中止に伴う一般競技スポーツやランニングシューズ市場が更に厳しくなる一方で、若年層のゴルフやウィンタースポーツへの参入による活況など、過去のトレンドへ逆行する動きが出ており、この2年間で市場環境に急激な変動が起きております。新型コロナウイルス感染症の影響がいつまで持続するかは不明瞭ながら、根底にある健康志向の高まりとファミリーレジャーの拡大の動きもあり、スポーツとレジャーは、その時々のトレンドに対応することによって、安定的な売上確保が可能な事業環境が整っています。

② 顧客動向

 国内での各種競技スポーツのプロリーグ化による盛り上がりや、グローバルなスポーツ世界大会での競技種目の変更や追加、国内外での日本人プレーヤーの活躍などの要因により、競技種目ごとの販売状況が影響を受けます。最近では、スケートボードやサーフィンなどの種目が盛り上がりを見せています。また、デジタルでの商品情報のネット検索や、お買い得情報や利用者の評価コメントでの検証、更には商品開発における環境問題への配慮の有無など、購買行動と価値観の変化は、若年層のみならずすべての年代層に広がりつつあります。

 

③ 販売チャネル

 コロナ禍で加速したオンライン取引の拡大と、デジタル技術の進歩に伴う店舗のショールーミング化が急速に進行しており、その変化を受けて、店舗の役割と販売ネットワークの充実、それを支えるためのITやデジタル関連の投資の重要性が高まっています。また、コロナ禍は当社グループが事業展開する各国でも、大きな影響を受けており、ロックダウンや行動制限の発令や解除の方策が国ごとに違っていることなどから、適時的確な判断が求められています。

④ 競合環境

 多くの取扱商品が共通であること、同業他社における同質化や出店戦略の重複が進行していることに加えて、カジュアル衣料専門店やホームセンター、及び日用雑貨店などにおけるスポーツ衣料やレジャー関連商品の取扱拡大のような周辺領域からの進出が継続しています。また、メーカー各社が自社ECサイトでの直販を強化しているなかで、競合環境は日を追うごとに厳しくなっています。

⑤ 事業運営環境

 店舗で働く人材の確保や人材流動化の加速、及びスポーツ種目のトレンド変化に対応する専門人材の確保など、適時適切な人材管理に対する重要性が高まっています。また、EC売上増加を支える物流関連でのコストアップや、情報処理と発信におけるITやデジタルに関連する設備投資の拡大、及び人件費単価の上昇など、事業におけるコスト上昇圧力は増大しています。それに加えて、各種の営業施策を変化させるなかでのリスク管理の充実やガバナンス強化のための管理コストが上昇しています。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 新型コロナウイルス感染症拡大とともに急速に変化した新たな生活様式は、当社グループの主たる事業領域である国内外のスポーツ用品販売事業の経営環境に大きな変化をもたらし、一定の収束を実現してもその影響は持続することが予想されます。当社グループとしては、この急激な環境変化への対応と、従来から継続している中長期的な社会構造の変化に合わせた修正、及びグローバルな価値観の変貌やガバナンス強化に向けた新たな流れなどへの対応を同時に進めて行くことが必要となっています。

① 新たな生活様式と市場環境への対応

 コロナ禍における感染防止の3密回避に向けた行動変容に伴って急拡大したゴルフとキャンプ需要、安全性重視の観点で低調に推移した部活動需要、及び消失したインバウンド消費などの大きな変化に関しては、一定の影響を残しつつも段階的に復元、収束していくことが予想されます。コロナ禍で急速に市場拡大したゴルフ市場における若年層や女性プレーヤー、はじめてキャンプ用品を購入したエントリーユーザー向けに、ステップアップのためのフィッティングや講習会、練習設備の増強などを実施し、ライススタイルにスポーツを定着していただくための施策を強化して参ります。また、部活動の復活やマラソン大会などの再開などに関しては、単なる既存プレーヤーのリバウンド消費だけでなく新規参入者拡大の好機と捉えて、小学生向けの商品構成の拡充や新入部員向けの情報の受発信を強化して参ります。

 コロナ禍により、生活様式のデジタル化やITインフラ整備が急激に加速しましたが、今後もますます生活の中にデジタル化が定着して行くことが予測されます。当社グループでは、アクティブなスポーツ用品ユーザーや健康志向のお客様を当社の会員制度で囲い込み、ECへの誘導という形での連携を進めて参ります。

② 中長期的な環境変化への対応

 少子高齢化の進行に伴う消費市場としての年代別の人口構成比の変化に加えて、東京2020オリンピック・パラリンピックの競技種目の変更に見られるグローバルなスポーツ競技におけるトレンド変化、更には各種競技のプロスポーツ化の進行では、従来以上に地域特性が発揮される傾向になるなど、市場全体は安定成長するなかでも、求められる商品とサービスの多様化、及びエリア特性への対応が、非常に大きなウエイトを占めて参ります。それらの多様化するお客様のニーズに対応するため、当社グループでは、商品管理の細分化とコントロールの強化、及び各店舗での地域特性への対応力を強化するための店舗ロケーションと市場環境に応じたグループ内の業態のブラッシュアップと既存店舗のリニューアルや業態転換を通じて、変化の激しい環境対応を実現して参ります。来店いただくお客様に向けての販売だけでなく、EC販売での店頭受取りや使用価値提供サービスの場としての情報発信内容を充実させることで、来店動機の創出に努めて参ります。当社グループでは、オンライン販売構成比率の上昇に備えて、店舗にEC運営機能を併設する形での販売キャパシティの拡大と店舗網の整備と再構築を行って参ります。

 

 競合環境の激化に対しては、当社グループ各社間での連携によるシナジー効果の発揮と、商品開発と人材開発への取組み強化が差別化の鍵になり、その重要性が高まると考えております。小売事業では周辺領域の商品を取扱う企業をM&Aなどでグループ化しながら商品調達ルートや人材を確保し、グループとしての運営ノウハウを拡充して参ります。その他のグループ機能会社においては、専門性の追求と新たな事業へのチャレンジを通じた業務知識の拡充を図り、グループとしての競合との差別化を推進して参ります。商品面ではお取引先様との限定企画や素材メーカー様との共同開発によるオリジナル商品の提供、当社が指定する仕様での独占販売商品の拡大を進めるとともに、人材面では各種の用品用具に関する専門知識や販売スキルを備えた外部人材の確保と、経験やノウハウの伝承による人材開発に向けた取組みを強化することで、専門店ならではの情報とサービスの提供を追求して参ります。

 海外事業では、日本国内と同様にスポーツやレジャーに関するコロナ禍の影響を受けており、国別の程度の差はあるものの、ゴルフ事業に関しては比較的堅調な推移が予想されています。しかしながら、新型コロナウイルスに関する今後の収束見通しは予断を許さない状況であるため、従業員とお客様の安心と安全の確保と業績の管理に関しては、これまで以上に適時適切な判断が求められる状況であり、経営基盤の確立とガバナンスの強化に注力して参ります。

 コスト上昇圧力と人材に関連する課題に対する対応としては、既存事業における標準化により、コロナ前より少ない従業員数での店舗運営を目指し、生産性と販売効率を回復させて参ります。物流に関しては、店舗間の商品移動に関わる時間と経費を低減させることで、お客様への満足度向上と経費率の引き下げを目指して参ります。また、当社グループの事業における店舗は地域の重要なインフラであると認識しておりますが、コロナ禍を経た新たな事業環境において低効率が改善できないと判断された店舗に関しては、積極的にスクラップ&ビルドを進めて参ります。更に、グループ全体の運営方法の統一推進とシステム化の拡大により、中期的なコスト上昇対策と生産性向上を進めるとともに、グループの事業ポートフォリオ自体の見直しを定期的に実施することで、企業価値の創造に努めて参ります。

③ 社会における価値観の変貌

 脱炭素社会の実現に向けた政府方針の発出など、ESGに対する社会全体の意識が高揚しています。当社グループでは、ゴルフクラブなどのスポーツ、レジャー用品をリユースする仕組みを展開し、店舗起点でEC配送を行うことによる排気ガス低減、地域活性化のためのスポーツイベントへの取組みなどを行っています。なお、自社開発商品における持続可能なサプライチェーン方針(※)の徹底など、生産性向上と持続可能な社会への貢献を両立させながら、取り組んで参ります。また、ビジネスパートナーであるサプライヤーにもゼビオグループの経営理念を理解して頂き、調達活動を支援いただくことが、経営理念の実現のために不可欠と考えます。そのため、サプライヤーに対しても適切な取組みを要請していきます。具体的には、ゼビオグループは、中国やベトナム等の東南アジアを中心に自社開発商品の生産を行っております。従いまして、サプライチェーンにおける法令遵守、人権・労働、安全衛生、環境、倫理の実態把握に努め、侵害リスク対策が重要と考えており、第2次サプライヤー以降も含めたサプライヤー全体における定期調査を行い、各サプライヤーの工場管理、品質管理、人権侵害リスクを含む労務管理の調査の中で、問題がある場合は改善を求め、改善が見られない場合は、取引停止を行うこととしています。

※ ゼビオグループは、以下の方針に従い、持続可能なサプライチェーンの構築を目指します。

1.法令遵守

国内外の法令を遵守し、社会規範を尊重します。

2.オープン・公正な取引

公正で自由な企業間競争の下、すべてのお取引先様と適正な取引を行います。

3.健全な取引関係の構築

お取引先様との相互理解と信頼関係を大切にし、健全な取引関係の構築を目指します。

4.適正な価格・品質と安定的な購買

購買品に対する知識を高め、市場調査を怠ることなく、優れた物品並びにサプライヤーの開拓に努めます。

5.CSR(企業の社会的責任)調達の推進

環境や人権など社会面に配慮した責任ある調達活動を行います。

 

 労働市場の動態変化も、今後の当社の安定的な事業運営に大きな影響を及ぼすことになります。グループ横断での研修制度やグループ内外への出向制度の拡充や、将来のライフプランに資する独立開業制度など、多様化する働き方に対応した制度の拡充を進めて参ります。

 これらの短期、中期的な課題を認識しながら、グループシナジーの創出とガバナンス強化による企業価値向上のために、以下の経営指標に注目しながら、当社グループステートメントである「こころを動かすスポーツ」「スポーツの国を作ろう」「スポーツで叶える」の実現を目指して参ります。なお、EBITDA、平均運転資本及び坪当たり売上高は中核事業の収益性と生産性の観点、ROEは資本コストとの対比で注目しております。

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

EBITDA(百万円)

9,383

6,862

8,915

平均運転資本(百万円)

52,001

49,204

45,280

坪当たり売上高(千円/坪)

1,147

1,023

1,118

ROE(%)

0.3

0.4

3.3

各指標の計算方式は、連結貸借対照表と連結損益計算書における以下の数値で算出しています。

・EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却費

・平均運転資本=売上債権+商品-仕入債務の前期末と当期末の残高の平均

・坪当たり売上高=売上高÷売り場面積の期首時点と期末時点の平均坪数

・ROE=親会社株主に帰属する当期純利益÷自己資本の前期末と当期末の残高の平均

 

(5) 今後の見通し

 今後の当社を取巻く環境につきましては、新型コロナウイルス感染症やサプライチェーンの混乱の影響が徐々に和らぐこと、部活動やスポーツイベントの再開による一般競技スポーツ需要が回復すること、及びEC市場の拡大が持続することなどから、新たな生活様式に対応した売上拡大の環境が整うことを予想しております。一方で、物価上昇が与える個人消費への影響やエネルギー問題に起因する物流費や電気料金などのコストアップ要因もあり、収益面では厳しい環境が想定されます。

 かかる状況下、当社グループは、激変する市場環境に向けて、改めてキャッシュ・フロー経営に基づく企業価値創造とグループ各社の競争優位性を高めることに注力します。

 次期において、重点を置いて対応する内容は以下のとおりです。

 ①新たな生活様式に対応したマーケティングとマーチャンダイジング

 ②店舗のスクラップ&ビルドと新たな業態フォーマットの開発

 ③人材開発と業務標準化の推進

 以上に基づき、2023年3月期の通期連結業績は、売上高2,415億16百万円(前年同期比8.2%増)、営業利益70億31百万円(前年同期比40.6%増)、経常利益76億85百万円(前年同期比2.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益41億15百万円(前年同期比7.3%増)を見込みます。

 

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