以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。
(経営環境)
当行を取り巻く経営環境は、幅広い分野においてこれまで以上に大きく、スピードを上げて変化しています。新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、産業構造・企業行動が変わり、社会・経済分野のデジタルシフトが加速するなど、経済活動においてパラダイムシフトが起きようとしています。また、ESG(環境・社会・ガバナンス)気運の高まりを受け社会貢献の重要性が再認識されてきたほか、個々人の価値観の多様化が進むなど、企業経営において注視すべき範囲は経済活動に留まらない領域まで拡大しています。
金融環境では、日本銀行のマイナス金利政策は出口が見通せず、海外金利の上昇など銀行経営においては厳しい状況が続いています。加えて、当行の主たる営業基盤である山陰においては、人口減少や高齢化といった構造的課題を抱えています。このような状況において、一昨年からのコロナ禍による経済活動の縮小に加え、足元ではロシアによるウクライナ侵攻に起因する一次産品価格の上昇により、幅広い産業で収益圧迫や個人消費マインドの一層の低下が懸念されます。
当行、地域にとって対処すべき課題が山積している状況にありますが、これらを解決することで当行、地域の成長に繋げることが出来る機会が多くあると捉えることもできます。そして、地域経済が大きな打撃を受け疲弊している今こそ存在感を発揮し、地域・お客様とともに未来に向けて歩みを進めることが地域のリーディングバンクとしての責務であると考えています。
(経営方針)
1 経営の基本方針
当行は、「地域の夢、お客様の夢をかなえる創造的なベストバンク」を経営理念とし、経営の健全性の確保を図りながら、地域のためにお役に立つことを基本方針としております。
新型コロナウイルス感染症の拡大による影響が広く実体経済へと波及し、今後の見通しは依然不透明なままです。このような危機的状況において、お客様・従業員等の安全確保と安定的な金融サービスの維持を最優先に位置付けたうえで、地域経済の悪化防止と早期回復に向け、金融サービスを通じてお客様や地域社会を支えることが当行の社会的使命であると認識しております。
当行の有する経営資源を最大限活用してお客様や地域の課題解決に取り組むことで、お客様や地域社会、株主の皆様、従業員など、全てのステークホルダーに価値を提供するとともに、持続可能な地域社会の実現を目指します。
2 中長期的な経営戦略
当行の経営環境は、厳しい環境が続くものと予想されますが、地域とともに持続的に成長できるよう、2021年度からスタートした中期経営計画においては『地域のリーディングバンクとして、地域の産業・事業を徹底的に支える』をスローガンに、「地域・お客様の課題解決への貢献」、「DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進」、「経営基盤の強化」の3つの重点施策を通じてビジネスモデルの変革に果敢に挑戦してまいります。
「地域・お客様の課題解決への貢献」では、当行グループ一体となって『課題解決力』を高め、個々の企業や一人ひとりのお客様の課題解決に多角的に取り組みます。企業の付加価値の向上や、個人の豊かな生活の形成への貢献を通じて、地域活性化・地方創生の実現を目指してまいります。
「DXの推進」では、アプリをはじめとした非対面チャネルの充実による『利便性』の向上や、徹底したBPRによる『生産性』の向上など、デジタル技術をてこに経営の全ての領域で構造改革を加速させ、ビジネスモデルの変革を図り、競争優位性を確立します。
「経営基盤の強化」では、『課題解決力』を発揮し、『利便性・生産性』を向上させるため、人事戦略を大きく見直し、人材育成を強化するとともに、個々人が能力を十分に発揮できる環境を整えるとともに、引き続き合理化・効率化を徹底的に追求し、捻出した経営資源を成長分野に積極的に投入します。
財務上の観点において、自己資本比率は引き続き高い水準を維持しておりますが、当行が戦略的に実施している貸出残高の増加等により、長期的には低下傾向にあります。当行では引き続き、予算策定時の目標設定、リスク・リターンを意識した取り組み、期中モニタリングのPDCAサイクルを回すことなどにより、自己資本比率を適正に維持するための取り組みを実践してまいります。
当行では、これらの取り組みをもとに、2023年度を最終年度とする中期経営計画の計数目標を以下のとおり定めております。
※(役務取引等利益+その他業務利益(債券関係損益を除く))/連結コア業務粗利益
3 サステナビリティへの取り組み
当行グループでは、経営理念「地域の夢、お客様の夢をかなえる創造的なベストバンク」に基づき、持続可能な地域社会の実現に向け、以前よりリレーションシップバンキング、地方創生、地域貢献活動などの活動を通じ、社会・環境課題の解決に資する取り組みを行っております。
この取り組みをさらに強化するため、2019年5月の「サステナビリティ宣言」表明以降、環境方針・人権方針といった各種方針の策定や行内体制を順次整備し、サステナビリティの実践とガバナンス強化、積極的な情報開示に取り組んでいます。
2021年4月には、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、気候変動への対応強化を図るとともにTCFD提言が推奨する情報開示の取り組みを進めています。また、2021年5月には、頭取を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、気候変動対応を含むサステナビリティに関連する事項について協議を行い、取締役会に報告・監督を受ける体制を構築しました。
[サステナビリティ推進体制]
2021年6月には、本業を通じた持続可能な地域社会・地域環境の実現のため、「サステナビリティ宣言を踏まえた投融資方針」の見直しを実施し、投融資において、地域の持続的発展に資する事業や生物多様性の保全・脱炭素社会の実現に寄与する事業等を積極的に取り組む分野、一方で環境・社会にネガティブな影響を与える可能性のある特定セクター等への投融資を取り組みを回避する分野とする方針に改定いたしました。
また、当行ではカーボンニュートラルの実現に向け、中期経営計画において2023年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で50%削減するという目標を掲げていますが、グループ全社でこの取り組みを一層強化するため、2021年12月にカーボンニュートラル実現に向けた新たな中長期目標を設定し、公表しています。当行は地域のリーディングバンクとして温室効果ガス排出削減に率先して取り組むとともに、お客様の環境対策のご支援を通じ、地域と一体となって脱炭素社会の実現を目指します。
[カーボンニュートラルの実現に向けた中長期目標]
[サステナビリティに関する主要な定量指標]
4 気候変動への取り組みとTCFD提言に基づく情報開示
近年、世界的に異常気象や大規模な自然災害による被害が甚大化する中、気候変動対応は世界共通の課題となっており、お客様や当行にとって事業環境や経営そのものに大きな影響を及ぼす要素になりつつあります。
こうした状況を踏まえ、当行では気候変動への対応を重要な経営課題の一つとして位置付け、ガバナンス体制を強化するとともに、気候変動の事業への影響分析や機会・リスクへの適切な対応への取り組みを進めています。
当行では、2021年4月にTCFD提言に賛同し、2021年7月発行の統合報告書及び2021年11月発行のサステナビリティレポートにて、TCFD提言を踏まえた情報を開示しています。
今後、シナリオ分析、移行リスクや物理的リスクにおける定量分析等を実施し、リスク管理及び情報開示の高度化に取り組んでまいります。
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