課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 以下に記載の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものです。

 

(1) 経営の基本方針

① 経営の基本方針

 当社は、取締役会で策定する経営の基本方針の中で下記のとおり定めております。

[経営目標]

野村グループは、社会からの信頼および株主・顧客をはじめとしたステークホルダーの満足度の向上を通じて企業価値を高めることを経営目標とする。

『グローバル金融サービス・グループ』として国内外の顧客に付加価値の高いソリューションを提供するとともに、当グループに課せられた社会的使命を踏まえて経済の成長や社会の発展に貢献していく。

企業価値の向上にあたっては、経営指標として自己資本利益率(ROE)を用い、ビジネスの持続的な変革を図るものとする。

 

[グループ経営の基本観]

⑴新たな事業領域におけるビジネスの拡大をいち早く実現することにより、自ら新しい成長モデルを構築する。また、的確なコスト・コントロールおよびリスク・マネジメントにより、市場環境に左右されにくい収益構造を実現する。

⑵顧客やマーケットの声に真摯に耳を傾け、ビジネスの可能性を広く捉えながら、金融・資本市場を通じた付加価値の高い問題解決策を顧客に提供し、あらゆる投資に関して最高のサービスを提供する会社を目指す。

⑶法令・諸規則の遵守と適正な企業行動を重視し、日々の業務執行においてコンプライアンスおよびコンダクト・リスク管理を実践する。野村グループ各社は、顧客の利益を尊重し、業務に関する諸規制を遵守する。

⑷経営に対する実効性の高い監督機能の確保および経営の透明性の向上に努める。

⑸事業活動を通じて証券市場の拡大に貢献するとともに、企業市民として、経済・証券に関する教育機会の提供を中心とした社会貢献活動に積極的に取り組む。

 

 

 当社は、この経営目標を基礎としつつ、下記の経営ビジョンを定めています。

 

② 経営ビジョン

 当社がグループとして取り組んでいる多様なビジネスは、お客様をはじめとしたすべてのステークホルダーの皆様からの信頼の上になりたっており、当社の企業価値の向上と社会全体の持続可能な成長は同じ道の上にあると考えております。このことから、当社は、「社会課題の解決を通じた持続的成長の実現」を経営ビジョンとしています。

 

(2) 経営環境

 当期の世界経済は、新型コロナウイルス感染再燃にともなう減速を繰り返しつつも、ワクチン接種において先行した米欧諸国を中心に経済活動の再開が進みました。経済の回復過程における繰越需要の拡大は、主に新興国・地域における感染の影響残存にともなう生産や物流の停滞と相まって供給制約を深刻化させ、物価上昇の加速を招きました。物価上昇加速が当初の想定に反し長期化するにつれ、主要先進国・地域中央銀行の金融引き締めの開始前倒しや政策金利の引き上げ幅拡大に対する思惑を強めることにつながり、市場金利の上昇懸念が高まりました。世界の株式市場は、上昇基調をたどる一方で、インフレ長期化や金利上昇に対する懸念の強まりを背景に、幾度となく調整を繰り返しました。中国では「共同富裕」政策のもとでの規制・統制強化や脱炭素化加速を念頭とした生産抑制策などを背景に、経済成長の減速が生じました。

 日本経済は、米欧に比べワクチン接種開始が遅れたことを一因とする感染拡大の再燃や、供給制約を背景とした輸出の落ち込みにより、停滞色の強い展開となりました。一方で、実体経済の停滞や世界的インフレ加速、原燃料市況高騰にともなう輸入原材料価格上昇などのコスト増加にもかかわらず、主要企業の業績は底堅い拡大を維持しました。株式市場は、グローバルな株価の上昇と国内企業業績の改善を背景に、2021年9月には日経平均株価がバブル崩壊後の高値を更新しましたが、その後は金利上昇懸念などを背景とした世界的な株価の調整にも押され軟調な推移となりました。

 

(3) 対処すべき課題

 野村グループを取り巻く経営環境は大きな変化の只中にあります。引き続き、適正な財務基盤の維持と、資本効率の改善等を通じた経営資源の有効活用を図りながら、機動的に対応してまいります。また、現状に満足せず、既存ビジネスの拡大とお客様へのさらなる付加価値の提供を目指し、常に新たな取組みも実践します。

① 喫緊の優先課題

 当社は、グローバルな金融サービス・グループとして、国内外の顧客に価値ある商品・サービスを提供することを目指しています。商品・サービスの多様化、多国間で複合的に展開される事業活動の範囲や広がりを考えると、リスク管理の高度化は当社自身にとって不可欠です。

 

 2021年に発生した米国における多額損失事案の発生直後から当社のリスク管理ならびに業務運営のプロセス、手順および組織体制について順次検証を実施しました。そして、当該検証を通じて、環境に即した業務運営のあり方、関連部門におけるコミュニケーションや部門間の相互連携、経営リソースの配分等について分析した上で関連部門における組織体制や陣容の刷新を含め、さらなるリスク管理の高度化に取り組んできました。

 

 リスク管理態勢の高度化推進は、今後中長期にわたる当社の最重要プロジェクトの1つであるとともに、喫緊の重要な経営課題であると認識しています。全役職員が適切にリスクと向き合えるカルチャーを醸成することを含め、グループの総力を挙げたリスク管理の高度化に取り組んで参ります。

 

② 環境変化を見据えた中長期の優先課題

ⅰ企業価値の持続的向上を目指す成長戦略

 「野村を今立っている場所とは違うところ、次のステージに進める」という考えのもと、その実現に向けた戦略の1つとして「パブリックに加え、プライベート領域への拡大・強化」を打ち出しました。「顧客基盤の拡大」「商品・サービスの拡充」および「デジタルを活用したデリバリー」、これら3つの軸に関連したさまざまな施策を通して、一人ひとりのお客様にカスタマイズされた「プライベート、あなただけのため」のサービス・ソリューションの提供を強化していきます。この戦略に基づき、たとえば、下記のような取組みで成果が見え始めています。なお、ビジネスの各部門の取組みについては、各部門の課題、取組みもご参照ください。

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・インベストメント・マネジメントの強化

 経営戦略として掲げている「パブリックに加えプライベート領域への拡大・強化」の一環として、多様化するお客様の運用ニーズに応えることを目的に、2021年4月インベストメント・マネジメント(IM)部門を新設しました。同部門では、伝統的な運用商品を強化・拡大すると同時に、オルタナティブ資産などプライベート領域への投資機会の提供を目指しています。

 また、IM部門新設までどの部門にも属していなかった航空機リースを手掛ける「野村バブコックアンドブラウン株式会社」も新部門の主要な1社となりました。1つの組織の中に多様な専門性を結集させ、付加価値のさらなる向上を図っていきます。

 

・資産コンサルティング業への転換

 国内の個人のお客様に対しては、資産コンサルティング業への転換を進めています。中長期的な観点でお客様にベストと思われる資産コンサルティングをご提供し、お客様が資産を増やすサポートをさせていただき、預り残高を増やすことで結果として私たちがいただくフィー収入を増やすことを目指しています。

 お預かりした資産に対し運用管理費用等の手数料を頂戴する投資信託などのストック資産に基づく収入が着実に拡大することで、収益構造の安定化に寄与しています。

 また、機関投資家向けに提供していた運用コンサルティングのノウハウを個人投資家向けサービスにも拡大するため、2020年7月に「CIO(チーフ・インベストメント・オフィス)グループ」を設置しました。2020年11月から投資一任サービスにCIOサービスを導入し、運用パフォーマンスの向上を図っています。またお客様のポートフォリオを管理しコンサルティングの高度化を支援するツール「Nomura Navigation」(ノムラ・ナビゲーション)の導入を進めています。

 加えて、売買の都度に支払いが発生する既存の手数料体系に加えて、お預かりした資産の残高に応じて手数料を頂く新たなフィー体系であるレベルフィーを選択できる手数料体系の導入を進めており、2022年4月に全店での取り扱いを開始しました。これにより、CIOサービスによる品質確保とあわせ、これまで以上にお客様と当社の利益の方向を一致させる形で アドバイスを提供する体制を構築していきます。

 

・ホールセールビジネスにおける収益の多様化

 ホールセールビジネスでは、コア・プロダクトでは高いマーケットシェアを維持しつつ、収益源の多様化を図っています。

 M&Aアドバイザリー等の資本負荷の低いオリジネーション・ビジネスについては、米州を起点にグローバルにビジネスを拡大しています。特に、米州では、サステナブル・テクノロジーとインフラ・ストラクチャーの分野において高いプレゼンスを持つ「グリーンテック・キャピタル」を買収し、2020年4月より「ノムラ・グリーンテック」として運営しています。野村が持つグローバルな顧客基盤に対してファイナンス等のソリューションをシームレスに提供していきます。

 また、市場変動の影響を受けにくいソリューションビジネスについては、インフラ・ファイナンスやファンド向けファイナンス等のストラクチャード・ファイナンスで実績を積み上げています。

 

ⅱお客様に新たな付加価値や利便性を提供するためのデジタル化の推進

 デジタル化への取組みは、今後の金融機関の競争力に直結するものであり、お客様へ利便性の高いサービスを提供し、多様化するニーズにお応えするため、引き続きグループ戦略に基づき幅広い取組みを推進していきます。また、デジタル化が進展した世界においても、人材は野村グループの生み出す付加価値の源泉であると捉え、対面と非対面を駆使したコンサルティング能力など、これからの時代に求められる資質を備えた人材の育成を強化していきます。加えて、2022年4月には、海外を含む野村グループ内におけるデジタル分野の協業を一層強化するとともに、注力領域のさらなる取組み強化を企図し、「デジタル・カンパニー」を設立しました。デジタル化の推進における個別の取組み状況は下記のとおりです。

 

・業務の効率化・高度化

 デジタル化による社内業務の自動化・効率化により、より付加価値の高い分析・アドバイザリー業務に注力することができるよう取り組んでいます。また既存サービスを改善することにより、満足度の高いコミュニケーション手法を活用した、当社のサービスの提供を目指しています。

 たとえば、営業部門においては、独自の営業支援システム「リモート相談」を活用しています。また、当社では、「デジタルIQプログラム」という社員のデジタルに関する知識習得をサポートするオンラインプログラムを実施しており、グループ全体の基礎となるデジタル知識の向上を目指しています。

 

・新たな顧客層へのアプローチ

 デジタルを活用することによって、従来十分なアプローチができていなかった若年層や働く世代のお客様に野村のサービスをお届けするためのプラットフォームを構築していきます。LINEグループと共に設立したLINE証券や資産管理アプリ「OneStock」、投資情報アプリ「FiNTOS!」などの活用を拡充しています。

 

 

・デジタルアセット・ビジネスへの参画

 当社は、株式会社野村総合研究所と同社との共同出資会社である株式会社BOOSTRYと共に、日本で初となるデジタル債・デジタルアセット債の発行にかかる技術基盤の提供および引受け等を実施するなど、デジタルアセット・ビジネスへのアプローチを通じて、先進技術や野村グループのネットワークを活用し、従来の金融の枠にとどまることのない、新たな付加価値の提供を目指しています。今後もオリジネーションからカストディまで、デジタルアセットのバリューチェーン上のプロダクトやサービスを通じて、多様化するお客様のニーズに対応できる体制を整えていきます。また、このような取組みを組織的に加速させるため、2022年4月1日付で「デジタル戦略部」および「デジタル・アセット推進室」を新設しました。

 

 

 

ⅲサステナビリティへの取組み

 経営ビジョンである「社会課題の解決を通じた持続的成長の実現」のため、当社ではサステナビリティを経営戦略に組み込んだ運営を行っています。組織としても、経営会議メンバーからなる「サステナビリティ委員会」においてサステナビリティ分野の取組みを決定することにより、グループ全体の持続的な成長および社会課題の解決に向けて機動的に対応できる体制を整えています。

 当社のサステナビリティ推進には、お客様・ステークホルダーのサステナビリティへの取組みのサポートと当社自身の取組みという2つの軸があります。

 

・お客様・ステークホルダーのサステナビリティへの取組み

 金融サービスグループとして核となるのは、資金や資本の流れを通じたお客様のサポートです。事業会社や金融機関が発行するグリーンボンドやソーシャルボンドなどの引受けや、M&Aなどの戦略的アドバイザリーサービスの提供、投資対象としてのESG関連ファンドの開発や個人投資家への提供を通じたサステナブルな資金循環の促進といった機能を強化することは、お客様に選んでいただくために重要であると考えています。

 加えて、当社が長年培ってきた事業承継のサポート機能や、地方創生や農業・医療分野でのイノベーション推進機能、調査分析の分野における専門性や知見も活かしながら、社会課題解決のためのソリューション提供に、グループとしての総合力、強みを発揮してまいります。

 また、野村グループでは、日本の小・中学生から大人まで、幅広い世代を対象とした金融経済教育に1990年代から取り組んでいます。2022年4月より、新しい指導要領に基づき、日本の高校において金融教育の授業が開始されたことを受けて、新たに「金融経済教育担当」を設け、これまで以上に、社会全体の金融リテラシーの向上に貢献していきます。

 

・当社自身の取組

 当社は、2030年までに当社の拠点で排出する温室効果ガス排出量を実質ゼロとする「ネットゼロ」を達成すること、および2050年までに投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量のネットゼロを達成することを目指すことを表明しています。その取組みを具体化するため、2021年にNZBA(ネット・ゼロ・バンキング・アライアンス)に加盟しました。野村グループでは、NZBA以外にも多くのイニシアティブに参画しており、今後も引き続き持続可能な環境・社会の実現のための取組みを一層推進してまいります。

 各部門の課題、取組みは以下のとおりです。

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[営業部門]

 営業部門においては、「お客様の資産の悩みに応えて、お客様を豊かにする」という基本観のもと、多くの人々に必要とされる金融機関を目指しております。今後は、資産承継や老後資金の不足に対する不安など、多様化する資産の悩みに的確に応えるため、パートナーのスキルアップを継続して図るとともに、幅広い商品・サービスの充実に努めます。また多くのお客様にご利用いただけるオンラインサービスの拡充と、コンタクトセンター等を通じたリモートコンサルティング体制の強化を進めてまいります。

 

[インベストメント・マネジメント部門]

 インベストメント・マネジメント部門は、広義のアセット・マネジメント・ビジネスにおいて、多様化するお客様の運用ニーズに応えられるよう、商品ラインナップの拡充やサービスの向上を担っています。株式・債券などの伝統的資産からプライベート・エクイティなどのオルタナティブ資産まで、グループ内の専門性を融合し付加価値を向上させることで、お客様の多様なニーズに対する高度なサービスとソリューションを提供します。パブリック市場ビジネスにおいては既存ビジネスの強化とデジタル化を通じた変革を目指します。プライベート市場ビジネスでは、投資家のオルタナティブ投資へのニーズが高まる中、提供するプロダクトの拡充に努めます。また、インオーガニック戦略(他社との提携や他社への出資など)によるプロダクトや顧客基盤の拡大も模索します。

 

[ホールセール部門]

 ホールセール部門においては、お客様のニーズのさらなる高度化やテクノロジーの発展によるマーケットの変化に加えて、不透明なマーケット環境や景気の低迷などが我々のビジネスに影響を及ぼす可能性があります。引き続きお客様へ高度なサービスと付加価値を提供し続けるために、国内外および他部門との連携を強化し、しっかりとリスクコントロールを行ってまいります。プライべート・マーケットなどビジネスの領域を広げるとともに成長の見込まれる分野に効率的に財務リソースを活用していきます。

 

 グローバル・マーケッツでは、リスク管理の強化を図りながらお客様に流動性の提供を継続してまいります。また、ビジネス・ポートフォリオの多角化、グローバル連携の強化、ストラクチャード・ファイナンスやソリューションビジネス、およびウェルスマネジメントビジネスなどの成長分野における収益機会の追求、そしてフロービジネスの強化をさらに推し進めてまいります。

 

 一方、インベストメント・バンキングでは、事業環境の変化にともないお客様のビジネス活動やニーズが変化する中、国内外で業界再編・事業再編に関するアドバイザリーや資金調達、またそれらの取引に付随する金利・為替ビジネスなどのソリューションビジネスの提供に努めてまいります。グローバルにアドバイザリー・ビジネスの拡大に注力するとともに、ノムラ・グリーンテックの知見のさらなる活用、サステナブル・ファイナンスの体制拡充などにより、ESG関連ビジネスへの取組みを強化していきます。活用、サステナブル・ファイナンスの体制拡充などにより、ESG関連ビジネスへの取組みを強化していきます。

 

[リスク・マネジメント、コンプライアンスなど]

 野村グループでは、経営戦略の目的と事業計画を達成するために許容するリスクの種類と水準をリスク・アペタイトとして定めております。その上で、事業戦略に合致し、適切な経営判断に資するリスク管理体制を継続的に拡充していくことにより、財務の健全性確保および企業価値の向上に努めてまいります。

 2021年3月期決算および2022年3月期決算において、米国プライム・ブローカレッジ取引の顧客の債務不履行に起因する多額の損失を計上いたしました。野村グループでは、本件の課題に対処するべく、リスク管理高度化推進プログラムを開始し、リスク管理の強化を進めております。

 上記のプログラムの一環として、野村グループでは、リスク・アペタイトにおいて、三つの防衛線による管理体制の下、すべての役職員が自らの役割を認識し、能動的にリスク管理に取り組むことについて、より詳細に明記したうえで、グループ会社を含む役職員に対して研修を実施しました。

 

 コンプライアンスの観点からは、野村グループがビジネスを展開している各国の法令諸規則を遵守するための管理体制の整備に引き続き取り組むとともに、すべての役職員がより高い倫理観を持って自律的に業務に取り組めるよう社内の制度やルールの見直しを継続的に実施しております。

 また野村グループでは、法令諸規則の遵守にとどまらず、すべての役職員が社会規範に沿った行動ができるよう、野村グループの一員として取るべき行動の指針として「野村グループ行動規範」を策定し、研修その他の施策を通して、行動規範に基づく適正な行為(以下「コンダクト」)を推進する取組みを日々進めております。毎年8月の「野村『創業理念と企業倫理』の日」では、すべての役職員が過去の不祥事からの教訓を再認識し、再発防止と社会およびお客様からの信頼の維持・獲得に向けて決意を新たにする取組みとして、過去の不祥事を振り返ったうえでの適正なコンダクトの在り方に関するディスカッション、行動規範を遵守することへの宣誓を行っております。行動規範は、刻々と変化する社会の要請に継続して応えていくため、私たちの考え方が社会の常識からずれていないか常に見つめ直し、定期的に見直すこととしています。2022年3月の見直しでは、リスク・カルチャーの浸透を目的に、新たに「リスクと正しく向き合う」という項目を追加し、役職員一人ひとりがリスクに関する知識を深め、正しく認識・評価し、能動的に管理しつつ、将来の不測の事態に備えることを明記しました。

 以上の課題に対処し、解決することを通じて、金融・資本市場の安定とさらなる発展とともに、野村グループの持続的な成長に尽力してまいります。

 

(4) 人的資本に関する取組

①野村の人材に関する考え方

・「人材こそが最大の財産」という理念

 野村では、人材こそが野村グループの最大の財産であるとの理念のもと、社員が長期的なキャリアを築き、長く生き生きと活躍していける職場を目指し、そのために欠かせない心身の充実のためのさまざまな施策を行っています。

・企業理念に基づくタレントマネジメント

野村グループは企業理念において「金融資本市場を通じて、真に豊かな社会の創造に貢献する」ことを社会的使命と考え、その実現のために常に持ち続けなくてはならない価値観として「挑戦」「協働」「誠実」を掲げ、企業理念とこれらの価値観を繋ぐための具体的な指針として行動規範を定めています。それらを体現していくべきタレントマネジメントとして「多様な人材の確保」「成長機会の提供・支援/プロフェッショナル人材の育成」「人材抜擢・登用」「適正な評価・処遇」「自律的なキャリア形成の支援」「従業員エンゲージメント」「リスク・カルチャーの醸成」「DE&I、健康経営、平等な機会の提供・差別の禁止」を重視した施策に取り組んでおります。

 

②タレントマネジメントに関する取り組み

野村グループとして常に持ち続けなくてはならない価値観(「挑戦」「協働」「誠実」)を醸成するため以下の取り組みを行っています。

主な目的

取り組み例

多様な人材の確保

インターンシップ・野村パスポート

野村證券では多様なコースのインターンシップを揃え、金融ビジネスを広く深く学ぶ機会を提供しています。金融知識のみならず、証券業務の意義や役割についても知っていただくことで、学生の成長や職業観の形成に貢献しています。

また、野村パスポートという、理工系の博士課程に在籍する学生を対象とした採用プログラムを導入しており、AI開発、データサイエンス、デジタライゼーション等の分野で高い専門性を有する人材の確保に努めています。

成長機会の提供・支援/プロフェッショナル人材の育成

 

研修

国内の研修プログラムは、新入社員の導入研修の他にも年次、職位または役職別等の集合研修と、OJTによる人材開発をコアとしています。加えて、パフォーマンスとポテンシャルをもとに選抜された社員を対象とした選抜型の研修として、次世代リーダーの育成を目的としたリーダーシッププログラムや女性幹部の育成を支援するプログラム、海外拠点の管理職を対象として年に一度東京本社開催するグローバル・プログラムも提供しています。また、多数の外部研修・通信教育ならびに当社研修施設での週末の自発的な集合研修等で構成される自己研鑽支援制度を設け、社員の自発的な能力開発をサポートしています。

海外留学制度

野村證券では、過去60年以上にわたり延べ600名以上の社員が英米を中心とした20を超える国や地域のビジネススクールやロースクールなどで学び、現在も多くの人材が世界各地で活躍しています。

グローバル・モビリティ(国際間異動)

日本から海外への異動はもちろん、海外の現地法人の社員が日本に異動する機会も積極的に設けることで、異なる国での勤務経験を持つグローバル人材の育成を行っています。

デジタル IQプログラム

デジタル関連のナレッジがグローバルな金融機関の競争力を左右する時代になる中、IT関連部署に留まらずグループの全社員がその知識レベルやスキルを向上させるため、グローバル・グループ全社員を対象としたオンラインプログラムである「デジタルIQプログラム」を導入しています。

適正な評価・処遇

Pay For Performanceに基づく報酬制度

Pay For Performanceの原則に基づき、健全かつ市場競争力のある報酬慣行を確保しつつ、野村グループのビジネス戦略および長期的な利益の実現を支援し、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指します。

360度評価

対象として選出される管理職に対して直属の上司以外の同僚、部下等によって評価を行う「360度評価」を実施し、管理職の更なる能力開発や行動変革につなげています。

ERCC課題

社員一人ひとりの行動規範(コード・オブ・コンダクト)の意識を向上させるとともに、組織全体に行動規範の考え方を浸透させ、「声を上げられる」環境の構築を目的として、倫理観(Ethics)、リスク管理(Risk Management)、コンプライアンス(Compliance)、コンダクト(Conduct)といった観点で課題設定を行う「ERCC課題」をグローバルに導入しています。

従業員エンゲージメント

従業員エンゲージメントサーベイ

組織内のコミュニケーションや社員の満足度をモニタリングし、その維持・向上を目指してグローバルに「野村グループ従業員サーベイ」を実施しています。2021年度のサーベイでは「私は、当社で働くことを誇りに思う」という設問に多くの社員が肯定的な回答をしました。

リスク・カルチャーの醸成

リスク・カルチャーの醸成

野村グループでは、尊重しあえる関係(Respect)、エスカレーション(Escalation)、建設的な牽制(Challenge)を奨励して、組織においてリスク・カルチャーを醸成することを、グローバルの全社員の課題に定めています。

DE&I、健康経営、平等な機会の提供・差別の禁止

DE&I

野村グループでは、約90の国籍の社員が働いており、多様性を尊重した人材の育成は最重要課題の1つです。これらの多様な人材は野村グループにとって最大の「財産」で、さまざまなバックグラウンドや価値観をお互いに認め合い、協働することで、お客様の多様なニーズに応え、より付加価値の高いサービスを提供できると考えています。

このような考え方のもと、野村グループではグループCEOを委員長とするサステナビリティ委員会において、野村グループのDE&Iに関する具体的な推進策の審議・推進しています。加えて、グローバルの各拠点において社員が自主的にネットワークを構築し多様性についての啓発活動を実施しており、トップダウン、ボトムアップの両面からDE&Iに関する取り組みを進めています。また、女性活躍推進法施行にともない、野村グループ各社では女性の活躍推進にかかる行動計画を策定し、取り組みを進めています。

健康経営

野村グループでは、2016年7月に「NOMURA健康経営宣言」を採択し、健康経営推進最高責任者(Chief Health Officer)のもと、健康保持・増進に向けた取組を推進しています。

2021年度からは経営ビジョンである「社会課題の解決を通じた持続的成長の実現」を目指すため、グループ全体のゴールとして「野村で働くすべての人が、単に健康になるのではなく、肉体的にも、精神的にも、社会的にも満たされた状態(Well-being)になること」を社員全員と共有しています。

平等な機会の提供・差別の禁止

社員一人ひとりが自らのもつ能力や個性を十分に発揮し、活躍できるよう、採用・育成・評価・登用および配置において平等な機会を提供するとともに、「野村グループ行動規範」の「多様性と人権の尊重」という項目に、「私たちは、国籍・人種・性別・性自認・性指向・信条・社会的身分・障がいの有無等を理由とする、一切の差別を行わず、均等に機会を提供します。」と定めています。

 

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