当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染拡大とそれに対応した緊急事態宣言等の長期化により個人消費の低迷が続きました。一方、サプライチェーンの混乱による部材不足や資源価格の高騰の影響はありましたが、海外における経済再開の動きや円安による輸出の好調で企業業績は回復に向かいました。
日経平均株価は、期前半は新型コロナウイルス感染者の抑制や国内政治変革への期待などもあり9月には30,795円と約31年ぶりの高値をつけました。しかしその後は、中国大手不動産業者の債務問題や米国のインフレ高進を背景とした金融引締め加速への警戒感から上値が重くなり、年明け以降はロシアのウクライナ侵攻により大きく下落する場面もありました。
このような環境の下、当社グループの業績は、投資信託の募集手数料、信託報酬とも増収となりましたが、株式委託手数料が減収となったため、連結経常利益は36億47百万円(前連結会計年度比10.7%の減益)となりました。
当連結会計年度の経営成績の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ②連結損益計算書及び連結包括利益計算書 連結損益計算書」に記載しております。
(株式部門)
当連結会計年度の株式市場におきましては、国内での緊急事態宣言の再発令や米国でのインフレ警戒感の広がりなどから8月まで調整局面が続きましたが、国内政治変革への期待から急反発し、日経平均株価は9月中旬に30,795円と約31年ぶりの高値をつけました。しかしその後は、中国の不動産大手のデフォルト懸念や米長期金利の上昇、新型コロナウイルスの新たな変異株の世界的な感染拡大などから下落基調が続き、年明け以降はウクライナ情勢の緊迫化を受けて一段安の展開となりました。日経平均株価は3月上旬に24,000円台へ下落した後、3月下旬にかけて急速に値を戻したものの、前連結会計年度末の水準には届かず、27,821円で期末を迎えました。
このような環境の下、当社の株式営業は、デジタル技術やデータ活用を通じた事業変革を支援するDX(Digital Transformation)関連銘柄を中核に、成長分野への重点投資や事業構造改革の推進により収益改善期待が高まっている素材関連銘柄、集積回路の微細化やデータセンター投資の拡大などを追い風とする半導体関連銘柄、脱炭素社会の実現に貢献するEV(Electric Vehicle)や再生可能エネルギー関連銘柄の選別及び情報提供に注力しました。
引受業務につきましては、新規上場準備中の企業を幅広くマーケティングし、情報提供に注力、さらに当社の独自性や強みを訴求することにより、新規上場企業18社、既上場企業3社の株式引受けを行いました。
しかし、不透明感の強い相場環境が続いたことなどから、株式受入手数料は63億92百万円(前連結会計年度比21.4%の減収)となりました。
株式受入手数料の詳細は、「第4 提出会社の状況 5 業務の状況 (1)受入手数料の内訳」に記載しております。
(債券部門)
当連結会計年度の債券市場におきましては、期初0.120%で始まった長期金利(新発10年物国債利回り)は、新型コロナウイルスの変異株の感染急拡大による景気停滞懸念などを受けて低下する場面もありましたが、商品価格の高騰などによりインフレへの警戒が世界的に強まり、米国等で金融政策が引き締め方向へ転じたことから、日本の債券市場においても金利は上昇し、当連結会計年度末は0.210%となりました。
このような状況の下、債券の募集・売出の取扱高は322億円(前連結会計年度比0.5%の増加)となりましたが、個人向け社債の発行抑制が続いた影響もあり債券受入手数料収入は91百万円(同4.7%の減収)となりました。また、評価損益の悪化などを受け、債券等トレーディング損益は13百万円(同28.4%の減益)となりました。
債券受入手数料及び債券等トレーディング損益の詳細は、「第4 提出会社の状況 5 業務の状況 (1)受入手数料の内訳、及び(2)トレーディング損益の内訳」に記載しております。
(投資信託部門)
投資信託部門は比較的高いインカムを獲得可能なバランス型ファンド、及びグローバル株式に投資するファンドを中心に販売し、残高の増加に努めました。
具体的には米ドル建ての多様な資産に分散投資するバランス型ファンド「NWQフレキシブル・インカムファンド」、宇宙関連ビジネスを行う企業に投資する「グローバル・スペース株式ファンド」、優れた技術・サービスにより、健康・医療を取り巻く社会問題の解決への貢献が期待される企業に投資する「グローバル・デジタルヘルスケア株式ファンド」などの販売に注力しました。
また、「投信NAVI(投信分析・販売支援ツール)」やタブレット端末、重要情報シートを積極的に活用し、お客様の保有ファンドのフォローやポートフォリオ分析などによるサービスの向上、分かり易い説明による販売促進に努めました。
その結果、株式投資信託※1の取扱高は1,865億円(前連結会計年度比8.7%の増加)となり、募集手数料は49億88百万円(同6.3%の増収)となりました。また、3月末の株式投資信託残高は8,679億円(前連結会計年度末比3.1%の減少)と減少した一方、株式投資信託の期中平均残高は8,999億円(前連結会計年度比13.4%の増加)と増加したことにより、信託報酬は64億83百万円(同16.2%の増収)となり過去最高を更新しました。
なお、2021年4月からスタートした「第四次株式投信純増3ヵ年計画」は12ヵ月が経過しましたが、純増額は402億円(達成率67.2%)となりました。
(オンライントレード部門)
当連結会計年度のオンライントレード部門は、インターネットを活用したセミナーの開催や、動画配信に加え、メールやTwitterによる情報配信に積極的に取り組みました。また、新規にお取引口座を開設されたお客様や一定の
条件を満たしたお客様へレポートを提供するなど、マルサントレードの利用促進を図りました。
お取引においては、信用取引残高に応じた信用取引手数料の優遇策のほか、新興市場の新規上場銘柄を対象にした信用取引や、初めて信用取引口座を開設されるお客様の信用取引手数料を優遇するなど、お客様の満足度向上に引き続き努めました。
しかしながら、個人投資家の売買代金の減少もあり、株式委託売買代金は9,092億円(前連結会計年度比6.0%の減少)となりました。
なお、2022年7月19日を効力発生日として、通信販売部に係る事業(マルサントレード及びコールセンターに係る事業を含む。)に関する権利義務を、会社分割の方法により、岡三証券株式会社に承継する予定としております。
(損益状況)
以上のような事業活動の結果、当連結会計年度の当社グループの連結業績は、営業収益が186億70百万円(前連結会計年度比2.7%の減収)、これから金融費用を差し引いた純営業収益では186億2百万円(同2.5%の減収)となりました。販売費・一般管理費は153億82百万円(同0.2%の減少)で、営業利益は32億19百万円(同12.1%の減益)、経常利益は36億47百万円(同10.7%の減益)となりました。また、投資有価証券売却益の減少などにより特別利益が減少したこともあり、親会社株主に帰属する当期純利益は28億27百万円(同32.0%の減益)となりました。
当社単体の業績は、営業収益が186億70百万円(前事業年度比2.7%の減収)、経常利益が36億30百万円(同10.8%の減益)、当期純利益が28億15百万円(同32.1%の減益)となりました。
連結業績の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ②連結損益計算書及び連結包括利益計算書 連結損益計算書」に記載しております。
(経営上の目標の達成状況)
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社は、「売買手数料依存の収益構造から脱し、残高連動報酬(信託報酬)をベースにした収益構造を確立すること」が必要であると考えてきました。
また、日本経済の成長力が低下した1990年代以降、お客様に「投資信託を通じてグローバルな資産運用をしていただくこと」が、当社の社会的使命であると考えてきました。
以上の考えから、投資信託によるグローバルな資産運用をお客様にご提案し、そのお預り資産を拡大することにより、信託報酬を収益の柱のひとつとして育ててまいりました。また、お客様の株式投資信託の平均保有期間※2の長期化は、資産運用のコストパフォーマンスの向上に寄与すると考えます。
即ち、当社は、ブローカービジネスから脱却し、投資信託を通じて「助言による投資顧問業」へとビジネスモデルの転換を目指しています。
また、お客様への質の高い情報提供等のサービスを持続的に提供することが、お客様の最善の利益の追求に資すると考えます。従って、ファイナンシャル・プランナー等の資格を取得することは有効な手段であると考え、当社従業員の資格取得を奨励・サポートしています。
当社の成果指標は以下の三点であります。
まず、2022年3月末のお客様の株式投資信託の平均保有期間は6.0年で、2021年3月末の5.4年から0.6年長期化しました。なお、2022年3月末の国内株式投資信託全体の平均保有期間は3.8年で、当社の平均保有期間6.0年は、継続して国内株式投資信託全体の平均保有期間を上回っております。
次に、信託報酬の販売費・一般管理費カバー率(対面営業部門)※3は、2022年3月期は44.4%と過去最高となりました。今後も更に引き上げを図り2年後の2024年3月期末には50%を目標としております。
さらに、金融サービス業にとって、人材開発投資は重要課題であることから、2020年6月22日開催の取締役会において、資格保有者数を成果指標に加えました。ファイナンシャル・プランナー(AFP・CFP®)、テクニカルアナリスト、証券アナリストなどの資格を活かしたより高度なコンサルティングを通じて、良質なサービスをご提供できるように取組んでまいります。
(※1) 投資信託約款上、株式の組入れが可能な投資信託を言います。
(※2) 平均保有期間は、平均残高(基準月の月末残高と1年前の月末残高の平均)を解約・償還額の年度合計で除して算出しています。
(※3) 信託報酬の販売費・一般管理費カバー率(対面営業部門)は、対面営業部門の信託報酬の年度合計額を対面営業部門の販売費・一般管理費の年度合計額で除して算出しています。
(2) 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ84億99百万円減少し908億85百万円となりました。主な要因は、顧客分別金信託が45億99百万円、現金・預金が28億19百万円、信用取引資産が13億75百万円減少したことなどによるものです。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ92億32百万円減少し437億51百万円となりました。主な要因は、預り金が59億3百万円、未払法人税等が17億2百万円、受入保証金が13億31百万円減少したことなどによるものです。
純資産合計は、前連結会計年度末に比べ7億32百万円増加し471億33百万円となりました。主な要因は、配当金20億61百万円の支払いにより減少した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益28億27百万円を計上したことなどによるものです。
連結財政状態の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ①連結貸借対照表」に記載しております。
(3) キャッシュ・フローの状況
(キャッシュ・フローの分析)
営業活動によるキャッシュ・フローは、顧客分別金信託の減少により資金が増加した一方、主に顧客の納税預り金であるその他の預り金の減少で資金が減少したことなどにより、3億71百万円の資金の減少(前連結会計年度は27億38百万円の資金の減少)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得による支出により、9億11百万円の資金の減少(同15億66百万円の資金の増加)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いなどにより、20億50百万円の資金の減少(同14億27百万円の資金の減少)となりました。
その結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比28億19百万円減少し、258億73百万円となりました。
連結キャッシュ・フローの詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ④連結キャッシュ・フロー計算書」に記載しております。
(資本の財源及び資金の流動性)
① 資本政策の基本方針
信用取引貸付金や募集等払込金等の増減に対応した経常的な調達について、現在内部留保を中心に対応しております。また、手許資金の大半を、日本銀行や大手銀行等信用力の高い金融機関を中心に預け入れることとし、それ以外の場合は全額預金保護の対象となる決済性預金に預け入れることを基本的な方針としております。
② 株主還元
当社は普通配当につきまして、内部留保を充実させることにより企業体質の強化を図りつつ、安定的な利益還元を行うことを基本方針としております。また、好況期には安定的なものを意識しつつも、毎期の業績変化をより反映したものとする所存であります。配当性向につきましては、連結当期純利益(親会社株主に帰属する当期純利益)を基準に、連結配当性向50%以上の配当を行う方針です。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するに当たって、当連結会計年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
当連結会計年度末の繰延税金資産の回収可能性及び固定資産の減損に関する会計上の見積りに用いた仮定は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
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