(1)経営成績等の状況の概況
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりであります。
なお、当社グループは、第3四半期までは堅調に推移しましたが1月以降、ロシアによるウクライナ侵攻等を受け、投資マインドが低下したことにより外国証券や投資信託の収益が減少したため、前連結会計年度と比べ営業収益等は減少しました。将来において新型コロナウイルスの感染拡大は、経済活動の停滞、投資家マインドの後退による市場環境の悪化やお客さまへの訪問の制限等、業績に影響を与える可能性がありますが、当社グループは、感染症対策の充実やワクチンの開発等を通して、この影響は限定的であると考えております。ただし、固定資産の減損及び繰延税金資産の計上の前提となる将来収支計画の見積りに関しては、将来の不確実性等一定の影響を考慮して算定しております。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の当社グループの業績は、第3四半期までは堅調に推移しましたが1月以降、ロシアによるウクライナ侵攻等を受け、投資マインドが低下したことにより外国証券や投資信託の収益が減少したため営業収益は108億63百万円(前連結会計年度比9.2%減)、経常利益は5億79百万円(前連結会計年度比48.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は8億75百万円(前連結会計年度比6.6%減)になりました。
なお、主な内訳は以下のとおりであります。
イ 受入手数料
受入手数料の合計は86億9百万円(前連結会計年度比2.4%減)になりました。科目別の概況は以下のとおりであります。
(委託手数料)
当連結会計年度の東証一・二部の1日平均売買代金は3兆1,978億円(前連結会計年度比12.0%増)になりました。当社の国内株式委託売買代金は7,151億円(前連結会計年度比6.1%減)、外国株式委託売買代金は813億円(前連結会計年度比23.5%減)になりました。その結果、当社グループの委託手数料は31億40百万円(前連結会計年度比14.3%減)になりました。
(引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料)
引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料は株式の引受高の増加等により1億18百万円(前連結会計年度比523.3%増)になりました。
(募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料)
主に証券投資信託の販売手数料で構成される募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料は株式投資信託の募集金額が1,143億円(前連結会計年度比4.1%減)に減少したため31億93百万円(前連結会計年度比5.3%減)になりました。
(その他の受入手数料)
証券投資信託の代行手数料が中心のその他の受入手数料は株式投資信託の預り資産の平均残高が2,850億円(前連結会計年度比20.4%増)に増加したため、21億57百万円(前連結会計年度比22.3%増)になりました。
ロ トレーディング損益
トレーディング損益は米国株の店頭取引の売買代金が減少したため株券等が14億30百万円(前連結会計年度比16.2%減)、外国債券の販売額の減少等により債券等が12百万円(前連結会計年度比96.9%減)、中国株取引に係る為替手数料の減少等によりその他が5億94百万円(前連結会計年度比19.9%減)で合計20億36百万円(前連結会計年度比28.7%減)になりました。
ハ 金融収支
金融収益は受取利息の減少等により2億18百万円(前連結会計年度比23.8%減)になりました。また、金融費用は信用取引費用の減少等により87百万円(前連結会計年度比32.3%減)になりました。この結果、差引金融収支は1億30百万円(前連結会計年度比16.9%減)になりました。
ニ 販売費・一般管理費
販売費・一般管理費は、賞与引当金繰入の減少等により人件費が54億68百万円(前連結会計年度比2.0%減)、広告宣伝費用の減少等により取引関係費が12億29百万円(前連結会計年度比5.4%減)となったため、合計で109億56百万円(前連結会計年度比2.1%減)になりました。
ホ 営業外損益
営業外収益は数理計算上の差異償却、投資事業組合運用益の増加等により7億89百万円(前連結会計年度比50.5%増)、営業外費用は投資事業組合運用損の減少等により29百万円(前連結会計年度比20.5%減)で差引損益は7億59百万円(前連結会計年度比56.0%増)になりました。
ヘ 特別損益
特別利益は投資有価証券売却益等により5億38百万円(前連結会計年度比280.0%増)、特別損失は減損損失により44百万円(前連結会計年度比33.4%減)で差引損益は4億94百万円(前連結会計年度比555.0%増)になりました。
ト 資産の状況
資産合計は803億74百万円と前連結会計年度末に比べ67億92百万円の減少になりました。主な要因は、現金・預金が51億16百万円、顧客分別金信託が25億83百万円減少したことによるものであります。
チ 負債の状況
負債合計は419億37百万円と前連結会計年度末に比べ66億40百万円の減少になりました。主な要因は、長期借入金が40億円増加したものの、短期借入金が40億円、顧客からの預り金が25億12百万円、信用取引借入金が16億92百万円、その他の預り金が15億48百万円減少したことによるものであります。
リ 純資産の状況
純資産合計は384億37百万円と前連結会計年度末に比べ1億52百万円の減少になりました。主な要因は、利益剰余金が3億75百万円増加したものの、その他有価証券評価差額金が6億69百万円減少したことによるものであります。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は282億86百万円と前連結会計年度に比べ36億46百万円の減少になりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、立替金及び預り金の増減額△44億5百万円(前連結会計年度比75億62百万円の減少)、信用取引負債の増減額△18億55百万円(前連結会計年度比29億1百万円の減少)、顧客分別金信託の増減額29億10百万円(前連結会計年度比45億61百万円の増加)等により△40億71百万円(前連結会計年度比61億37百万円の減少)になりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得による支出△26億63百万円(前連結会計年度比25億15百万円の減少)、定期預金の預入による支出がなくなったこと(前連結会計年度比13億69百万円の増加)等により70百万円(前連結会計年度比4億46百万円の減少)になりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増減額△40億円(前連結会計年度比118億円の減少)、長期借入れによる収入40億円(前連結会計年度の計上はありません)等により△4億95百万円(前連結会計年度比81億91百万円の減少)になりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループの主たる事業区分は、「投資・金融サービス業」という単一の事業セグメントに属しており、当該箇所において記載できる情報がないことから、当該業務の収益の実績等については、「①財政状態及び経営成績の状況」欄に含めて記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成しております。当社グループは、特に重要な判断と見積りを伴う以下の会計方針が、連結財務諸表の作成に影響を及ぼす可能性があります。
イ 貸倒引当金
当社グループは、顧客との取引により発生する債権等の回収不能見込額について、貸倒引当金を計上しております。債務者の財政状態が悪化し、その支払能力が低下した場合は、追加引当が必要となる可能性があります。
なお、当連結会計年度末現在、貸倒引当金を1億34百万円計上しております。
ロ 有価証券の減損
当社グループは、持続的な成長及び企業価値向上の観点から、取引先との中長期的・安定的な取引関係の構築・維持もしくは強化または事業の円滑な推進に資する場合に、他社が発行する株式を政策保有株式として保有しております。政策保有株式については時価の下落が一時的でないと判断した場合、有価証券評価損を計上しております。市場価格のない株式等については、発行会社の財政状態や将来性等、当社所定のルールに従い算定した額を時価とみなし、判定をしております。
なお、当連結会計年度の減損はありません。
ハ 固定資産の減損
当社グループのグルーピングは、当社においては管理会計上で区分した部及び支店並びに賃貸用不動産をキャッシュ・フローを生み出す最小単位として捉え、その単位を基礎にグルーピングを行い、連結子会社においては原則として各社を一つの単位としてグルーピングを行っております。また、本店、厚生施設等については独立したキャッシュ・フローを生み出さないことから共用資産としてグルーピングを行っております。
当社グループは、固定資産の収益性が低下し、その固定資産に対して投資した金額が回収できないと認識した場合に、所定のルールに従い、回収可能な金額まで固定資産の帳簿価額を減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。固定資産の減損損失の認識に際して用いた割引前将来キャッシュ・フローや、測定に際して用いた回収可能価額は第六次中期経営計画を基礎とした将来収支計画の見積りに基づいており、将来収支計画の見積りは新型コロナウイルス感染拡大やウクライナ情勢を巡る米国・欧州とロシアの対立の一定の影響を考慮して算定しております。
なお、2022年3月末の減損対象資産は当社グループは47億99百万円(当社の共用資産は14億81百万円)であります。当連結会計年度については前連結会計年度が営業黒字であり、主要な資産の著しい価値の下落や用途変更等がないことからグループ全体での減損の兆候には該当しません。また、部支店においては営業損益が2期連続マイナスや土地の市場価格が50%以上下落したため、減損の兆候に該当する部支店があり、回収可能額まで帳簿価額を切り下げ、減損損失44百万円を計上しました。
ニ 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の課税所得及び実現性の高い税務計画を検討し、回収可能性が高いと認められる金額について計上しております。ただし、回収可能性の判断に変更が生じた場合には、計上した繰延税金資産の全部または一部について取崩しを行い法人税等調整額を計上することとなります。繰延税金資産の算定に際して用いた将来の課税所得の算定の基礎となる収支計画の見積りにおいては、新型コロナウイルス感染拡大やアウクライナ情勢を巡る米国・欧州とロシアの対立の一定の影響を考慮して算定しております。
なお、当連結会計年度末現在、繰延税金資産を38百万円計上しております。
ホ 年金給付費用
当社は、確定給付企業年金制度及び確定拠出年金制度を設けております。
確定給付企業年金制度における従業員退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、予想昇給率、退職率、直近の統計数値に基づいて算出する死亡率及び年金資産の長期期待運用収益率等が含まれます。割引率は、退職給付の支払見込期間及び支払見込期間ごとの金額を反映した単一の加重平均割引率により算出しており、長期期待運用収益率は、年金資産が投資されている資産の長期期待運用収益率に基づいて計算しております。実際の結果が前提条件と異なる場合、その影響は退職給付に係る調整累計額として純資産を加減算することとなります。
当連結会計年度は数理計算上の差異償却を1億26百万円計上し、当連結会計年度末現在の年金運用資産の額が退職給付債務額を上回っているため、その差額を退職給付に係る資産として、28億39百万円計上しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
イ 当連結会計年度の経営成績の分析
当社グループは、お客さま本位の業務運営を追求し、お客さま満足度の向上により顧客基盤を拡充することで、企業価値向上を図るビジネスモデルの確立を目指しております。このビジネスモデルの確立に向けて、当社グループは、国内株式や投資信託に加えて、中国株・米国株等の外国株をお客さまの中長期的な資産形成の選択肢の一つとしてポートフォリオへ組み入れることを提案しております。
当連結会計年度の当社グループの国内株、中国株の取引高は減少し、当社グループの委託手数料は31億40百万円と前連結会計年度に比べ5億25百万円減少し、米国株の店頭取引売買代金の減少等によりトレーディング損益は20億36百万円と前連結会計年度に比べ8億21百万円減少しました。
また、当社グループは、預り資産の残高拡大を中心に、顧客基盤の拡充を通して得られる安定的な収益の確保を目指しております。当該方針のもと、当連結会計年度は投信販売に注力しましたが、1月以降、ロシアによるウクライナ侵攻等を受け、投資マインドが低下したことにより販売が伸び悩み、投資信託の販売手数料は31億92百万円と前連結会計年度に比べ1億79百万円減少、信託報酬(代行手数料)は20億9百万円と前連結会計年度に比べ3億88百万円増加しました。
販売費・一般管理費は賞与引当金繰入の減少により人件費が減少したため、合計で109億56百万円となり、前連結会計年度に比べ2億36百万円減少しました。
この結果、当社グループの営業損失は1億80百万円(前連結会計年度の営業利益は6億43百万円)となりました。
ロ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの中核事業が金融商品取引業であることから、営業収益は国内外の金融商品取引市場の変動に大きく影響を受けるため、当社グループの経営成績は金融商品取引市場の環境により大きく変動する可能性があります。このため、当社グループは上記のとおり、預り資産の残高拡大を中心に、顧客基盤の拡充を通して得られる安定的な収益の確保を目指しております。
ハ 資金の財源及び流動性についての分析
当社グループの資金状況は、営業活動によるキャッシュ・フローが、立替金及び預り金の減少等により40億71百万円の支出、投資活動によるキャッシュ・フローが、投資有価証券の売却による収入等により70百万円の収入、財務活動によるキャッシュ・フローが、配当金の支払等により4億95百万円の支出となりました。
この結果、当社グループの現金及び現金同等物の期末残高は前連結会計年度末に比べ36億46百万円減少し282億86百万円となりましたが、十分に資金の財源及び流動性が確保されております。
また、不測の事態に備えるため、当社は取引銀行10行それぞれと当座貸越契約を締結しており、連結子会社は取引銀行1行と当座貸越契約を締結しております。このほか、緊急時対応についてもコンティンジェンシープランを策定し、全社的な緊急時対応体制を構築しております。
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