事業等のリスク

2【事業等のリスク】

 

[リスク管理への基本方針]

当社グループは、システム障害リスク、清算参加者破綻時の補償等のリスク、事務過誤のリスクなど、事業上様々なリスクを抱えています。これらのリスクに対応するため、社外取締役を委員長とする「リスクポリシー委員会」及びCEOを委員長とする「リスク管理委員会」を設置し、JPXで定めた「リスク管理方針」に従って、未然防止の観点からリスクの認識と対応策の整備・運用を行うとともに、リスクが顕在化あるいはそのおそれが生じた場合には、早期に適正な対応をとる体制を整えています。(各委員会等の詳細については、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ④リスク管理体制の整備の状況」をご覧ください。)

また、事業年度ごとに当社グループが重点的に対応すべきリスクを「重要リスク」として特定するとともに、当社グループ各部室におけるリスク管理の実効性を高めるべく、重要リスクごとに「基本的な対応方針」を策定し、未然に「重要リスク」等への対応を行うことで、リスクの発現可能性を低減させるとともに、リスクが顕在化した際には機動的な対応を行います。また、重大事故発生時には、統括的な状況把握、早期解決に向けた指揮などが「リスク管理委員会」によって行われる体制となっており、経営陣へ必要な情報が漏れなく、迅速に入る体制が整備されています。

 

<当社グループにおけるリスク管理体制>

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<当社グループにおけるリスク管理プロセス>

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<重要リスクの特定フローイメージ>

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[個別のリスク]

以下、当社グループの事業その他に関し、リスク要因となる可能性があると考えられる事項を記載しておりますが、これらのリスクは必ずしもすべてのリスクを網羅したものではなく、提出日現在では想定していないリスクや重要性が低いと考えられるリスクも、今後、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、必ずしもリスク要因には該当しないと考えられる事項につきましても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。

なお、記載事項のうち将来に関する事項は、提出日現在において入手可能な情報等に基づいて判断したものであります。

 

 1.経営体制・事業戦略に関するリスク

(1)経営体制の特徴等について

① 持株会社であることについて

当社は持株会社であるため、収入は、経営管理料収入や子会社や関連会社からの配当金に大きく依存しますが、法律上又は事業上の制約により、当社への子会社や関連会社からの配当金の支払いは制限される可能性があります。

当社の子会社である日本取引所自主規制法人は、金融商品取引法において、営利の目的をもって業務を行ってはならない旨、規定されていることから配当を行うことができず、また、子会社である株式会社日本証券クリアリング機構は、清算機関としての企業の継続性及び決済履行保証スキーム(「7.決済履行確保の枠組みについて」参照)の機能確保の観点から、一定の剰余金を確保する必要があります。(「金融市場インフラのための原則」(2012年4月:国際決済銀行・支払決済システム委員会、証券監督者国際機構専門委員会の共同報告書)においても、「(より複雑なリスク特性を伴う清算業務に従事しているCCPは)極端であるが現実に起こり得る市場環境において最大の総信用エクスポージャーをもたらす可能性がある2先の参加者とその関係法人の破綻を含み、かつこれに限定されない広範な潜在的ストレスシナリオを十分にカバーするだけの追加的な財務資源を保持すべきである。」との原則が掲げられております。)

当社グループは、配当について「金融商品取引所グループとして、財務の健全性、清算機関としてのリスクへの備え、当社市場の競争力強化に向けた投資機会等を踏まえた内部留保の重要性に留意しつつ、業績に応じた配当を実施することを基本とし、具体的には、配当性向を60%程度とすること」を目標としておりますが、当社の子会社や関連会社が、当社に配当を行うだけの十分な収益やキャッシュ・フローを確保できなかった場合には、当社の株主に対する配当が困難もしくは不可能となる可能性があります。

 

② 自主規制機能について

投資家が市場に安心して参加するためには、市場が公正で信頼できるものである必要があり、市場の公正性・信頼性を確保するためには、自主規制機能が適切に発揮されることが不可欠です。

当社グループの企業体としての利害と市場の公正性との間の利益相反問題の回避に万全を期するとともに、その実効性を確保するため、金融商品市場については、持株会社の傘下に市場運営会社(株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所)と自主規制法人(日本取引所自主規制法人)を置いており、日本取引所自主規制法人は株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所からの委託を受けて自主規制業務を行っております。

この自主規制業務の委託料については、金融商品取引法において、自主規制法人が委託を受けた自主規制業務を行うために適正かつ明確な算出方法が委託契約に定められていることが求められていることから、長期かつ固定的な金額を基本としております。また、商品市場については、自主規制業務の独立性確保の観点から、株式会社東京商品取引所の取締役会の諮問機関として自主規制委員会を設置し、同委員会が自主規制業務に関する事項の審議を行うこととし、同委員会の職務を補助する自主規制を担当する部門を設置しています。

当社グループでは、自主規制機能は市場運営と密接不可分な市場開設者としての機能の根幹であり、市場についての一種の品質保証であるとともに、市場のブランドを維持向上させるものであると認識しており、中長期的に収益の獲得・向上に資するものであると考えておりますが、短期的には、自主規制機能の発揮が営利性の追求と相反する側面があるとともに、市場環境の悪化等により、当社グループの経営成績が順調に進展しない場合には、自主規制機能にかかる業務に必要な経営資源を投入した結果、当社グループの経営成績に影響を及ぼす業績が圧迫される可能性があります。加えて、自主規制機能が適切に発揮されない場合には、市場参加者や投資家等の信頼を著しく損ね、ひいては市場のブランド価値を毀損することにより、当社グループ全体の事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。

また、金融商品取引所との比較において自主規制業務に関する負担が著しく低い私設取引システム(いわゆるPTS。以下「PTS」といいます。)等との競争においては、コスト構造上、不利に働く可能性があります。

 

(2)事業戦略に関するリスク

① 事業戦略が失敗するリスク

当社グループは、2022年度から2024年度までの3年間を対象とする当社グループの中期経営計画を2022年3月に公表し、様々な施策を実行しております。

当社グループの遂行する市場の持続的な発展のための事業戦略は、投資家・利用者のニーズの変化やステークホルダーとの調整、本項に示した各種リスクの顕在化などによる事業環境の変化等により、当初予定していたとおりに遂行できない可能性があります。

こうしたリスクに対処するため、当社グループでは、各種リスクの顕在化や経済環境・市場環境の変化等を注視するとともに、事業戦略の進捗状況や事業環境の変化等について定期的にモニタリングを行い、的確な財務運営や環境変化に応じた重点戦略の見直しなどを適時行うよう対策を行っています。

 

② システム投資について

近年のIT技術の発展により取引所もシステムの高度化が進んでおり、その安定性・処理性能等が市場間競争における優位性確保に大きな影響を及ぼす状況となっております。

当社グループでは、現物市場の売買システムとして、高速性・信頼性・拡張性を兼ね備えた「arrowhead」を、デリバティブ市場の取引システムとして、世界標準の取引機能と世界水準の注文処理性能を兼ね備えた「J-GATE」をそれぞれ稼働しております。

今後も、テクノロジーの発達に伴う投資手法の高度化・多様化等、刻々と変化を続ける利用者のニーズに適切に対応し、取引所としての競争力を維持していくためには、加速度的に進化する技術を最大限活用すべく、ITに関する設備投資を継続し、取引システム等の改良に努めていく必要があることから、「J-GATE」については、2021年9月にリプレースを実施しました。「arrowhead」については、2024年度後半に計画している更改に向けた開発に着手したところです。

しかしながら、これらの設備投資により、必ずしも直ちに収益が拡大するとは限らず、市況の悪化等により、コストに見合う収益を生み出すことができなかった場合には、当社グループの業績が圧迫されるとともに、その後における追加的な設備投資に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ サステナビリティ推進への対応について

中長期的な企業価値の向上には、社会・環境問題などサステナビリティを巡る課題への対応が重要であるとの意識が高まっており、投資家においても、投資判断にESG(環境、社会、ガバナンス)要素を考慮する動きが見られます。当社グループは、こうした事業環境の変化を踏まえて、一事業会社としての対応を進めるだけでなく、市場運営者に期待される取組みを継続的に発展させていくことが重要であると考え、当社グループCEOを本部長とするサステナビリティ推進本部のもと、各種方針や戦略を策定し、全社横断的に施策を実施しています。(長期ビジョン、中期経営計画については「(1)経営方針」および「(2)中期経営計画、経営環境及び対処すべき課題等」参照)

環境課題に対しては、日本におけるカーボン・ニュートラル実現に向けて、グリーン戦略を推進しています。市場運営者として、市場メカニズムを活用したサステナビリティの推進に取り組むと同時に、2030年に向けて、証券市場の運営に係るカーボン・ニュートラルの実現を目指しています。事業会社としては、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に沿って、気候変動に係るガバナンス、リスク管理体制を構築し、リスク及び機会の把握・分析に努めるとともに、2024年度に向けて、当社グループ自身のカーボン・ニュートラル実現を目指しています。

このように、サステナビリティ推進への取り組みを行っていますが、対応が充分でない場合には、当社グループが提供する取引所インフラに対する信認や支持が低下する可能性、収益機会の逸失または市場の魅力低下につながる可能性があります。

 

 

2.事業環境等に関するリスク

(1)法令等による規制等について

① 免許制の事業であることについて

当社グループは金融商品取引法、商品先物取引法及び関連する諸法令の規制の下、事業を行っております。

当社は、金融商品取引法が定める内閣総理大臣の認可(以下「取引所持株会社認可」といいます。)を受けた「金融商品取引所持株会社」であり、当社の子会社である株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所は、同法が定める内閣総理大臣の免許(以下「取引所業免許」といいます。)を受けて、取引所金融商品市場を開設・運営する「金融商品取引所」であります。なお、株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所は、同法が定める内閣総理大臣の認可(以下「自主規制業務の委託認可」といいます。)を受けて、自主規制業務を日本取引所自主規制法人に委託しており、日本取引所自主規制法人は同法が定める内閣総理大臣の認可(以下「自主規制業務認可」といいます。)を受けて、自主規制業務を行っております。加えて、当社は金融商品取引法が定める内閣総理大臣の認可(以下「商品取引所子会社化認可」という)を受けて、株式会社東京商品取引所を子会社としており、株式会社東京商品取引所は、商品先物取引法が定める主務大臣の許可(以下「株式会社商品取引所許可」といいます。)を受けて先物取引を行うために必要な市場を開設・運営する「株式会社商品取引所」であります。

また、株式会社日本証券クリアリング機構は、金融商品取引法が定める内閣総理大臣の免許及び商品先物取引法が定める主務大臣の承認を受けて、金融商品取引清算機関として金融商品債務引受業等を行っており、また、商品先物取引法が定める主務大臣の許可及び金融商品取引法が定める内閣総理大臣の承認を受けて、商品取引清算機関として商品取引債務引受業を行っております。

さらに、金融商品取引清算機関の総株主の議決権の100分の20(その財務及び営業の方針の決定に対して重要な影響を与えることが推測される事実として内閣府令で定める事実がある場合には、100分の15)以上の数の議決権を取得し、若しくは保有しようとする場合、あらかじめ、内閣総理大臣の認可を受けなければならないとされており、当社は当該認可を受けております。

現時点におきましては、上記免許等が取消しとなるような事由は発生しておりませんが、将来、何らかの理由により、取消事由等に該当し、免許等の取消処分を受けることとなった場合又は業務の全部若しくは一部の停止等の処分を受けることとなった場合等には、当社グループの事業運営及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

<主な許認可等の概要>

許認可等の名称

根拠条文

会社名

有効期限

免許又は認可の取消事由

取引所持株会社認可

金融商品取引法

第106条の10第1項

株式会社日本取引所グループ

なし

金融商品取引法 第106条の26、第106条の28第1項

取引所業免許

同法 第80条第1項

株式会社東京証券取引所

株式会社大阪取引所

なし

同法 第134条第1項、第148条、第152条第1項

自主規制業務の委託認可

同法 第85条第1項

株式会社東京証券取引所

株式会社大阪取引所

なし

同法 第153条の2

自主規制業務認可

同法 第102条の14

日本取引所自主規制法人

なし

同法 第153条の4

金融商品債務引受業免許

同法 第156条の2

株式会社日本証券クリアリング機構

なし

同法 第156条の17第1項、第2項

金融商品取引清算機関の主要株主認可

同法 第156条の5の5第1項

株式会社日本取引所グループ

なし

同法 第156条の5の9第1項

商品取引所子会社化認可

同法 第106条の24第1項

株式会社日本取引所グループ

なし

同法 第106条の26、第106条の28第1項

商品取引債務引受業兼業の承認

同法

第156条の6第2項

株式会社日本証券クリアリング機構

なし

同法 第156条の17第2項

株式会社商品取引所許可

商品先物取引法 第78条

株式会社東京商品取引所

なし

商品先物取引法 第94条第1項、第159条第1項、第2項

商品取引債務引受業許可

同法 第167条

株式会社日本証券クリアリング機構

なし

同法 第186条第1項、第2項

金融商品債務引受業等兼業の承認

同法

第170条第2項

株式会社日本証券クリアリング機構

なし

同法 第186条第1項、第2項

 

 

② 業務内容の制限等について

当社グループは、金融商品取引法及び商品先物取引法において、次のような業務内容の制限を受けております。金融商品取引所持株会社である当社は、子会社である株式会社金融商品取引所等の経営管理を行うこと及びこれに附帯する業務のほか、他の業務を行うことができないとされており、金融商品取引所である株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所は、取引所金融商品市場の開設及びこれに附帯する業務等以外の業務を行うこと、自主規制法人である日本取引所自主規制法人は、自主規制業務及びこれに附帯する業務以外の業務を行うこと、商品取引所である株式会社東京商品取引所は、商品市場の開設及び上場商品の品質の鑑定、刊行物の発行その他これに附帯する業務以外の業務を行うこと、金融商品取引清算機関及び商品取引清算機関である株式会社日本証券クリアリング機構は、金融商品債務引受業等及び商品取引債務引受業並びにこれらに附帯する業務以外の業務を行うことを原則として禁止されており、業務範囲が制限されております。

また、同様に、金融商品取引所持株会社、金融商品取引所及び商品取引所は、金融商品取引法及び商品先物取引法において、子会社の範囲についても制限を受けております。金融商品取引所持株会社の子会社である株式会社JPX総研は、取引所金融商品市場の開設に附帯する業務のほか、内閣総理大臣の認可を受けた場合には取引所金融商品市場の開設に関連する業務を行うことができます。

このほか、株式会社東京証券取引所、株式会社大阪取引所、日本取引所自主規制法人及び株式会社日本証券クリアリング機構は、定款、業務規程、受託契約準則、業務方法書を変更する場合には、内閣総理大臣の認可が必要である旨、定められており、同様に、株式会社東京商品取引所及び株式会社日本証券クリアリング機構は定款等を変更する場合には、主務大臣の認可が必要である旨、定められているなど、当社グループは法令による広範な規制の下、業務を行っております。

これらの規制は、必ずしも当社の株主を保護することを目的とはしていないため、将来、何らかの理由により、業務上必要な認可が得られないような場合には、当社グループが必要とする施策を実行できず、事業機会を逸失するなど、当社グループの事業運営及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 当社の発行済株式の取得及び所有に係る制限等について

金融商品取引法において、金融商品取引所持株会社である当社が発行する株式につきましては、認可金融商品取引業協会、金融商品取引所、金融商品取引所持株会社、商品取引所、商品取引所持株会社又は地方公共団体その他政令で定める者を除いて、何人も、総株主の議決権の100分の20(その財務及び営業の方針の決定に対して重要な影響を与えることが推測される事実として内閣府令で定める事実がある場合には、100分の15)以上の数の議決権(取得又は保有の態様その他の事情を勘案して内閣府令で定めるものを除きます。以下「対象議決権」といいます。)を取得し、又は保有してはならないとされております。

また、総株主の議決権の100分の5を超える対象議決権の保有者となった者は、内閣府令で定めるところにより、対象議決権保有割合、保有の目的その他内閣府令で定める事項を記載した対象議決権保有届出書を、遅滞なく、内閣総理大臣に提出しなければならないものとされております。

 

④ 法改正による影響等について

当社グループの事業に関連する法規制の導入・改正・撤廃や法規制の執行に関する方針の変更は、直接的に又はその結果生じる市場環境の変化を通じて、当社グループに悪影響を及ぼす可能性があります。

例えば、規制内容の変更に伴う競争環境の変化や税制の変更は、当社グループの市場シェアや取引量の減少に繋がる可能性があります。

将来における法規制の変更内容及びそれが当社グループの事業に与える影響を予測することは困難であり、当社グループがコントロールしうるものでもありませんが、新たな規制等が実施された場合には、当社グループの業務遂行や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)金融市場の動向による影響について

① 収益構造の特徴等について

当社グループの営業収益のうち、「取引関連収益」及び「清算関連収益」(それぞれ2022年3月期の連結営業収益に占める割合が39.3%、20.6%)は有価証券やデリバティブ商品の売買代金・取引高の水準に、「上場関連収益」(同11.6%)は上場する企業の時価総額や資金調達額、新規上場会社数の水準などにそれぞれ大きく依拠しております。

したがって、当社グループの収益は、有価証券やデリバティブ商品の流通市場並びに有価証券の発行市場の動向、ひいては世界的な金融市場の動向や国内外の経済情勢の影響を大きく受けることとなります。

特に、上場会社の大多数は日本企業であることから、日本経済の状況が当社グループの業績に及ぼす影響は大きく、景気の低迷等により、流通市場及び発行市場を取り巻く環境が悪化し、現物市場及びデリバティブ市場における取引量、上場会社の時価総額、資金調達額等が減少した場合には、当社グループの業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

また、流通市場や発行市場の動向は、経済環境その他様々な要因により大きく変動する場合があるため、その動向を精緻に予測することは非常に困難です。

こうしたリスクに対処するため、当社グループとしては、我が国金融・資本市場の中核インフラとして、上場から売買、清算・決済及びデータサービスに至るまで、市場運営の基本となる機能を一丸となって安定的に提供するとともに、新たなサービスを創出し収益の安定化を図り、強固な財務基盤を維持する中で、社会に対して提供する付加価値を高めてまいります。

 

② 外国人投資家の動向による影響について

2021年1月~12月における外国人投資家の取引量は、株式の売買代金においては6割程度、デリバティブ取引の主力商品である日経平均株価先物やTOPIX先物の取引高においては7割程度を占めるなど、重要な割合を占めております。

したがって、日本経済、日本企業一般の株価パフォーマンス又は為替レートの状況や規制強化等により、外国人投資家にとっての日本市場への投資魅力が減退し、取引量が減少することとなった場合には、当社グループの事業運営、財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクに対処するために、当社グループでは、外国人投資家を含めた国内外の投資家への営業強化・関係強化を行うとともに、日本市場への投資・フロー獲得に向けた取組みを積極的に行っております。

 

(3)競合による影響について

① 現物市場に関する他の証券取引所、取引所外取引との競合について

現物取引等における競合は激しさを増してきており、市場の流動性、取引の執行にかかるスピード・コスト、取引システムの性能、取引参加者や上場会社に提供される商品やサービスの多様性、規制環境など、様々な分野において、今後も競合が激化していくものと認識しております。

現状、当社グループにおける株式売買代金は、2021年1~12月における国内上場株式の売買代金の84%程度を占めており、日本における取引所外取引(PTS及びOTC等)は16%程度となっておりますが、近年、取引所外取引における取引量は増加傾向にあり、将来的には当社グループのシェアを奪う脅威となる可能性があります。

当社グループがこうした競争環境に適切に対応できず、市場の流動性等が減少した場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

また、近年、取引所業界は世界的に激しい価格競争にも晒されております。競合他社が当社グループよりも低い手数料等でのサービスの提供を開始し、当社グループにおいても、取引や上場にかかる手数料の引下げ等を行う必要が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② シンガポール取引所の日経平均株価先物取引・オプション取引との競合について

大阪取引所市場における日経平均株価先物取引は主にシンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引と競合しております。シンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引は、大阪取引所市場における日経平均株価先物取引と同じく、我が国株式市場を代表する指数である日経平均株価を対象とした株価指数先物取引です。

 

過去3年間の大阪取引所市場及びシンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引の取引高は、次のとおりです。

年度

大阪取引所市場

シンガポール取引所市場

2019年度

56,109,751単位

13,060,783単位

2020年度

48,848,761単位

9,313,283単位

2021年度

42,683,737単位

7,190,255単位

(注1)大阪取引所市場及びシンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引の取引高には、ミニ取引(大阪取引所は日経225mini、シンガポール取引所はMini Nikkei 225 Index Futures)による取引を含みます。ただし、これらミニ取引は、取引金額換算では大阪取引所市場における日経平均株価先物取引の10分の1であるため、実際の取引高の10分の1としております。

(注2)シンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引のうち、Nikkei 225 Index Futures及びUSD Nikkei 225 Index Futuresは、取引金額換算では大阪取引所市場における日経平均株価先物取引の半分であるため、実際の取引高の半分を記載しております。

 

 

指数オプション取引に関しては、大阪取引所市場における日経平均株価オプション取引が主に競合している商品として、シンガポール取引所市場の日経平均株価オプション取引があります。

過去3年間の大阪取引所市場及びシンガポール取引所市場の日経平均株価オプション取引の取引高は、次のとおりです。

年度

大阪取引所市場

シンガポール取引所市場

2019年度

33,164,826単位

5,528,273単位

2020年度

26,004,282単位

3,460,446単位

2021年度

24,504,420単位

2,598,087単位

(注1)シンガポール取引所市場の日経平均株価オプション取引は、取引換算額では大阪取引所市場における日経平均株価オプション取引の半分であるため、実際の取引高の半分を記載しております。

(注2)大阪取引所市場の日経平均株価オプション取引は、通常限月取引及びWeeklyオプション取引を合算した取引高を記載しております。

 

2021年度の大阪取引所市場における日経平均先物取引及び日経平均株価オプション取引の取引高は、シンガポール取引所市場のそれを上回っておりますが、今後の市場参加者の動向によっては、大阪取引所市場の利用者がシンガポール取引所市場に移ることで大阪取引所市場における取引手数料収入が減少し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 取引所間の経営統合について

取引所業界においては、情報通信技術の発展に伴うクロスボーダー取引の拡大や市場間競争の激化、取引所の株式会社化・上場を背景とした規模拡大や経営効率向上の取組強化、国際的な規制の調和の進展などを背景に、主に欧米地域を中心に、特に2000年代後半以降、主要取引所間での合従連衡の動きが顕著となりました。足元では欧州において、ユーロネクストによるオスロ取引所、イタリア取引所の買収(2019年、2021年)やスイス取引所によるスペイン取引所の買収(2020年)、またアジア太平洋地域においても、シカゴ・オプション取引所等を運営するCboeグローバル・マーケッツが日本や豪州でPTSを運営するチャイエックス・アジア・パシフィック・ホールディングスを買収(2021年)するなど、取引所間統合の動きがありますが、一方で、経営統合を発表しながらも、規制当局による承認等が得られず、見送りとなった事例もこれまで少なからずあります。また昨今では、清算分野、IT関連や情報ビジネスなどビジネス領域の拡大を目的にした取引所による買収事例も増加しています。

他の取引所による経営統合・買収等が行われる場合の当社グループの事業への影響を予測することは困難ですが、他の取引所がそうした取組みを通じて、より優れたサービスの提供やコスト削減を実現する場合には、当社グループの競争優位性の相対的な低下や国際的なプレゼンスの低下に繋がる可能性があります。

こうしたリスクに対処するために、当社グループでは、市場環境の変化等を注視するとともに、市場関係者等との議論等を踏まえて市場制度の見直し等を行うことで、市場機能の強化を図り、公正かつ利便性の高い取引サービスを提供できるよう取り組んでおります。

 

3.事故・災害等に関するリスク

当社グループでは、市場開設者及び清算機関という社会インフラとしての責務を果たすべく、様々なリスクが発現した場合においても、事業を可能な限り継続し、止むを得ず中断する場合においても可能な限り早期に再開できるよう、BCP(緊急時事業継続計画)を策定しており、堅実かつ安定的な事業継続体制の整備に努めております。

しかしながら、地震・風水害・火災等の自然災害、電力・通信等の社会インフラの停止、物理的破壊行為・サイバーテロ等のテロ行為又は新型インフルエンザを始めとする疫病の蔓延等により、想定を上回る被害を受け、事業を長期的に中断せざるをえないこととなった場合には、甚大な経済的損失を被るとともに、社会的信用の低下等、深刻な事態をもたらす可能性があります。

また、事業の中断に至らなかった場合においても、被害の状況によっては、多額の回復費用が必要となり、当社グループの財政状態及び、経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクに対処するため、当社グループでは、事故・災害等が発生した場合においても、株券や資金の決済インフラを提供する株式会社証券保管振替機構や日本銀行などの各種関係機関と協業したうえで、取引参加者、上場会社、投資家等のステークホルダーへの影響を最小化することを目的に、BCP(緊急時事業継続計画)に定めた所要の対応を迅速かつ的確に行うための訓練を定期的に実施しているとともに、首都直下地震などの広域災害時においても市場機能を維持すべく関西データセンターの構築(2021年度から2024年度後半にかけて各システムのバックアップシステムを順次構築)をはじめ、業務・システム両面での東西相互バックアップ態勢の強化などに取り組んでおります。

なお、新型コロナウイルス感染症への対応について、当社グループとしては、安定的な市場運営に影響が生じないよう、政府が示す「新型コロナウイルス感染症に向けた対処方針」等に基づく感染症拡大予防のための各種対応に加え、業務継続の確保に向けた以下の取組みを行っております。

 

・当社グループにおけるBCP(緊急時事業継続計画)に基づき、CEOを総括本部長とするBCP対策本部を設置

・部室別に業務特性の精査等を行い、出勤を必要としない業務については在宅勤務を実施・励行

・業務特性上、出勤を伴う社員については、フレックスタイム制度の活用によるオフピーク出勤を実施

・出勤が必要な社員については、複数のチームに分け、交代での在宅勤務を基本としたうえで、近隣バックアップオフィス等を活用し、チームごとに異なる拠点で業務を行う「業務遂行体制の複数チャネル化」を構築・推進  等

 

当社グループとしては、「情報漏えい等に関するリスク」及び「事務リスク」などの他のリスクが顕在化しないよう、e-ラーニングによる社員教育の実施や業務運営における社員間の十分なコミュニケーション機会の確保等、適切に対処したうえで、上記の取組みを含めた新型コロナウイルス感染症の拡大予防策を引き続き実施するとともに、今後の感染症拡大の状況等に応じて、業務継続確保に向けた必要な取組みを柔軟に行うことで、安定的な市場運営の実現を目指してまいります。

 

4.システム面に関するリスク

現物及びデリバティブの売買・清算並びにこれらに関連する業務は、システムを通じて処理されていることから、市場の安定性・信頼性を維持するためには、取引システムの安定稼働が必須の要件となっております。

また、近年、テクノロジーの発展に伴い、取引システムは高度化してきており、取引システムの性能が、取引所ビジネスにおける競争力の源泉となっております。

そのため、システム障害等の発生により、市場の信頼性が毀損した場合、または利用者の要望に適切に対応することができず、取引システムの性能が他の取引所等の提供するシステムに劣後することとなった場合には、取引量が減少し、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクに対処するため、当社グループでは、過去にシステム障害やキャパシティの不足により売買停止に至った反省の下、開発手法の標準化や十分な稼働確認テストの実施、詳細な運用マニュアルの整備とその遵守、開発及び運用業務に係る品質管理の徹底などのリスク管理体制の構築等の取組みを行ってまいりましたが、2020年10月1日に「arrowhead」において発生した障害を踏まえ、更なるシステムの安定性・信頼性の向上に努めるのみならず、万が一のシステム障害等発生時における迅速かつ適切な回復策を拡充すべく取り組んでおります。

 

5.情報漏えい等に関するリスク

当社グループでは、取引参加者、上場会社等の企業情報や個人情報を保有しているほか、様々な経営情報等の内部情報を保有しております。当社グループの多くの役職員は、金融商品取引法及び商品先物取引法においても秘密保持義務が課せられておりますが、役職員の故意又は過失による情報漏えいの発生を完全に否定することはできません。

さらに、外部からの不正なアクセスの防止に関しても、個人情報保護法及び金融分野における個人情報保護に関するガイドライン等の各ガイドラインの下で、厳格な管理が要求されておりますが、万が一重要な情報が外部に漏洩した場合には、市場利用者等からの損害賠償、監督官庁からの処分、レピュテーションの毀損等により、当社グループの業務運営や、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクに対処するため、当社グループでは、情報管理に関するポリシーや事務手続等を策定しており、役職員に対する教育・研修等により情報管理の重要性の周知徹底、システム上のセキュリティ対策等を行うとともに、情報セキュリティマネジメントシステム(Information Security Management System:ISMS)の国際標準規格「ISO/IEC27001 / JIS Q 27001」の認証を取得し、現在もその認証を継続して付与されております。

 

6.事務リスクについて

当社グループは、市場開設者及び清算機関としての重要な業務に関して、役職員の故意又は過失により重大な事務過誤が発生した場合には、損失の発生、監督官庁の処分、レピュテーションの毀損等により、当社グループの業務運営や、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクに対処するため、当社グループでは、事務過誤の発生を未然に防止するため、業務プロセスの見直しを継続的に行っております。また、業務プロセスの見直しの際には、業務の自動化・効率化等の観点を踏まえ、RPA(Robotic Process Automation)の積極的な活用に取り組んでおります。

7.決済履行確保の枠組みについて

日本には株式会社東京証券取引所をはじめ、有価証券の売買を行うための金融商品取引所1が4つありますが、これらの取引所における有価証券の売買については、すべて株式会社日本証券クリアリング機構が清算業務を行っております。同社は、PTS2における有価証券の売買についても、清算業務の対象としております。また、株式会社大阪取引所、株式会社東京商品取引所及び株式会社堂島取引所における先物・オプション取引についても、同社が清算を行っており、さらには、店頭市場におけるクレジットデフォルトスワップ取引及び金利スワップ取引(以下「店頭デリバティブ取引」といいます。)並びに国債店頭取引も清算業務の対象としております。

株式会社日本証券クリアリング機構は、清算機関として市場参加者が行った取引の債務を負担し、債権・債務の当事者となって、決済の履行を保証しております。これにより、市場参加者は取引相手方の信用リスクを意識せずに取引を行うことが可能となりますが、一方で、清算参加者が決済不履行を起こした場合でも、株式会社日本証券クリアリング機構には他の清算参加者との決済を履行する義務があります。このため、清算参加者の決済不履行に伴い損失が生じた場合には、決済不履行を発生させた清算参加者の担保等によりその損失を補填する自己責任原則を基本としつつ、万が一不足が生じる場合には、株式会社日本証券クリアリング機構の自己資金を充てるほか、他の清算参加者にも負担を求める損失補償制度を設けております。

同社における決済履行確保のための取組み及び損失補償制度の概要は以下のとおりです。

 

(決済履行確保のための取組み)

① 清算参加者制度及びモニタリング

清算参加者の信用リスクの低減を図るため、清算資格の種類ごとに資格要件を定めるとともに、資格要件にはそれぞれ取得基準と維持基準を設けており、一定の財務基盤、経営体制及び業務執行体制を有する者を清算参加者とすることとしています。それらの状況については定期的にモニタリングを行い、問題があると認められた場合は、当該清算参加者の債務について引受けを停止することができるほか、清算資格の取消しを行うことが可能となっております。

また、清算参加者のポジションの状況も定期的にモニタリングしており、一部の清算参加者に対する過度な信用リスクの集中がないかを管理し、ポジションが過大である場合には、必要に応じて措置を検討しております。

 

② 担保制度

清算参加者の決済不履行による損失に備えるため、清算参加者に担保の預託を求めております。担保には、清算基金3等の清算預託金、取引証拠金4、当初証拠金5及び変動証拠金6があり、定期的に十分性を確認するとともに、適宜、担保所要額の算出モデルの検証及び見直しを行っております。

また、担保として預託を受ける金銭又は代用有価証券に対して一定の適格要件を設定するとともに、日々担保価値の評価を行っております。

 

③ DVP(Delivery Versus Payment)決済

株式会社日本証券クリアリング機構と清算参加者との有価証券の決済は、仮に決済不履行が生じても「取りはぐれ」が生じることのないよう、証券と資金の授受をリンクさせ、代金の支払いが行われることを条件に証券の引渡しを行う(証券の引渡しが行われることを条件に代金の支払いを行う)DVP決済で行われております。

 

④ 流動性の確保

清算参加者の決済不履行時に必要となる流動性を確保するため、資金決済銀行等との間で流動性供給に関する契約を締結しております。

また、資金の流動性供給枠の十分性については、定期的に確認を行っております。

 

(損失補償制度の概要)

清算参加者が決済不履行を起こした場合、株式会社日本証券クリアリング機構は、当該清算参加者を当事者とする債務の引受け又は負担の停止並びに株式会社日本証券クリアリング機構が当該清算参加者に引き渡すべき有価証券及び金銭の引渡しを停止するとともに、引渡しを停止した有価証券及び金銭を、当該清算参加者の決済不履行の弁済に充当します。

 

以上の処理後においても、株式会社日本証券クリアリング機構の損失が解消されない場合には、以下に記載する方法により、損失の補填を行います。なお、この補填は、株式会社日本証券クリアリング機構においては、原則として、有価証券の売買、先物・オプション取引、店頭デリバティブ取引及び国債店頭取引のそれぞれの清算に係る損失7について、不履行清算参加者の清算資格に応じて、個別に行います。(以下に記載されている金額は、2022年3月末時点において確定している金額となります。)

 

決済不履行発生時の有価証券の売買の清算に係る損失については、次に掲げる順序により、補填を行います。

① 不履行清算参加者が預託している担保(当初証拠金及び清算基金等)による補填

② 金融商品取引所等の損失補償による補填8

③ 株式会社日本証券クリアリング機構による補填

④ 不履行清算参加者以外の清算参加者の清算基金による補填

⑤ 不履行清算参加者以外の清算参加者による相互保証

 

したがって、清算参加者の有価証券の売買に係る決済不履行により、株式会社日本証券クリアリング機構に損失が生じた場合で、上記①の対応によっても、同社の損失を補填しえない場合には、②については、損失補償契約に定められた金額を上限として、株式会社東京証券取引所又は株式会社大阪取引所が補填を行うことにより、また、③については、株式会社日本証券クリアリング機構が証券取引等決済保証準備金9として積み立てた金額(200億円)を上限として補填を行うことにより、当社グループに損失が生じる可能性があります。

 

決済不履行発生時の先物・オプション取引の清算に係る損失については、次に掲げる順序により、補填を行います。

① 不履行清算参加者が預託している担保(取引証拠金及び清算基金等)による補填

② 金融商品取引所又は商品取引所の損失補償による補填10

③ 株式会社日本証券クリアリング機構による補填

④ 不履行清算参加者以外の清算参加者の清算基金による補填10

⑤ 不履行清算参加者以外の清算参加者の特別清算料による補填

⑥ 破綻後における差金代金相当額の累計が勝ち方の不履行清算参加者以外の清算参加者による補填

 

したがって、清算参加者の先物・オプション取引に係る決済不履行により、株式会社日本証券クリアリング機構に損失が生じた場合で、上記①の対応によっても、同社の損失を補填しえない場合には、②については、損失補償契約に定められた金額(金融デリバティブ取引:174億円、コモディティ・デリバティブ取引:21億円)を上限として、株式会社東京証券取引所、株式会社大阪取引所又は株式会社東京商品取引所が補填を行うことにより、また、③については、金融デリバティブ取引に関しては日本証券クリアリング機構が証券取引等決済保証準備金として積み立てた金額(200億円)及びコモディティ・デリバティブ取引に関しては同社が商品先物等決済保証準備金として積み立てた金額(23.7億円)を上限として補填を行うことにより、当社グループに損失が生じる可能性があります。

 

決済不履行発生時の店頭デリバティブ取引の清算に係る損失については、次に掲げる順序により、補填を行います。

① 不履行清算参加者が預託している担保(当初証拠金及び清算基金)による補填

② 株式会社日本証券クリアリング機構による補填(第一階層決済保証準備金)

③ 不履行清算参加者以外の清算参加者の清算基金及び株式会社日本証券クリアリング機構による補填(第二階層決済保証準備金)

④ 不履行清算参加者以外の清算参加者の特別清算料による補填

⑤ 破綻後における変動証拠金等の累計が勝ち方の不履行清算参加者以外の清算参加者による補填

 

したがって、清算参加者の店頭デリバティブ取引に係る決済不履行により、株式会社日本証券クリアリング機構に損失が生じた場合で、上記①までの対応によっても、同社の損失を補填しえないときには、それぞれの清算業務について②については、株式会社日本証券クリアリング機構が第一階層決済保証準備金として積み立てている金額(クレジットデフォルトスワップ取引:15億円、金利スワップ取引:20億円)を上限として補填することにより、③については、株式会社日本証券クリアリング機構が第二階層決済保証準備金として積み立てている金額(クレジットデフォルトスワップ取引:15億円、金利スワップ取引:20億円)を上限として補填することにより、当社グループに損失が生じる可能性があります。

 

決済不履行発生時の国債店頭取引の清算に係る損失については、次に掲げる順序により、補填を行います。

① 不履行清算参加者が預託している担保(当初証拠金及び清算基金)による補填

② 株式会社日本証券クリアリング機構による補填(第一階層決済保証準備金)

③ 不履行清算参加者以外の清算参加者の清算基金及び株式会社日本証券クリアリング機構による補填(第二階層決済保証準備金)

④ 不履行清算参加者以外の清算参加者の特別清算料による補填

⑤ 原取引按分清算参加者11の清算基金及び株式会社日本証券クリアリング機構による補填(第二階層決済保証準備金のうち③での未負担額)

⑥ 原取引按分清算参加者の特別清算料による補填

⑦ 破綻後における変動証拠金等の累計が勝ち方の不履行清算参加者以外の清算参加者による補填

 

したがって、清算参加者の国債店頭取引に係る決済不履行により、株式会社日本証券クリアリング機構に損失が生じた場合で、上記①までの対応によっても、同社の損失を補填しえないときには、②については、株式会社日本証券クリアリング機構が第一階層決済保証準備金として積み立てている17.5億円を上限として補填することにより、③及び⑤については、株式会社日本証券クリアリング機構が第二階層決済保証準備金として積み立てている17.5億円を上限として補填することにより、当社グループに損失が生じる可能性があります。

 

1  有価証券の売買を行うための金融商品取引所:東京証券取引所、名古屋証券取引所、札幌証券取引所及び福岡証券取引所

2  PTS:ジャパンネクスト証券株式会社及びCboeジャパン株式会社が運営するPTS

3  清算基金:清算参加者の株式会社日本証券クリアリング機構に対する債務の履行を確保するため、清算参加者に預託を義務付けているものです。その所要額は、極端ではあるが現実に起こりうる市場環境下において複数の清算参加者が決済不履行を起こした場合等に、当該不履行清算参加者が預託する証拠金等が不足することで発生する損失をカバーするよう計算されます。

4  取引証拠金:清算参加者の株式会社日本証券クリアリング機構に対する先物・オプション取引に係る債務の履行を確保するため、清算参加者に預託を義務付けているもので、その所要額は、先物・オプション取引の建玉について、SPAN®※で計算した額から、ネット・オプション価値の総額を差し引いて得た額以上となります。

※ SPAN® :CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)が開発した証拠金計算方法で、The Standard Portfolio Analysis of Riskの略。先物・オプション取引全体の建玉から生じるリスクに応じて証拠金額が計算されます。

5  当初証拠金:各清算参加者の株式会社日本証券クリアリング機構に対する債務の履行を確保するため、清算参加者に預託を義務付けているもので、その所要額は、それぞれの取引について清算参加者が破綻した場合に、そのポジション処理が完了するまでの間に価格(金利スワップ取引についてはイールド・カーブ)が変動することにより想定される損失額に、一定のリスクをカバーする額を加算して計算されます。

6 変動証拠金:各清算参加者のポジションについて、日々の価格変動をカバーするために、前日からのポジションの価値の変動分を、変動証拠金として現金により授受します。変動分が負となる清算参加者は株式会社日本証券クリアリング機構に支払い、正となる清算参加者は株式会社日本証券クリアリング機構から受け取ります。

7  株式会社日本証券クリアリング機構では、クロスマージン制度を導入しており、当該制度の対象とされた国債証券先物取引に係る損益については、店頭デリバティブ取引(金利スワップ取引)の清算に係る損益として取り扱われます。

8  金融商品取引所等の損失補償による補填:株式会社日本証券クリアリング機構が金融商品取引所等との間で締結している損失補償契約に基づき、当該契約に定める金額を上限に損失を補填します。現物取引に係る契約は株式会社日本証券クリアリング機構と5つの金融商品取引所との契約に加え、株式会社日本証券クリアリング機構と各PTSとの契約があり、補償限度額は合計で113億円(うち当社グループである株式会社東京証券取引所と株式会社大阪取引所の補償限度額の合計は104億円。)となっております。

9  証券取引等決済保証準備金は、有価証券の売買の清算に係る損失の補填だけでなく、金融デリバティブ取引の清算に係る損失の補填においても使用します。

10  金融商品取引所又は商品取引所の損失補償による補償:株式会社日本証券クリアリング機構が金融商品取引所及び商品取引所との間で締結している損失補償契約に基づき、当該契約に定める金額を上限に損失を補填します。金融デリバティブ取引に係る契約は株式会社日本証券クリアリング機構と株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所との契約があり、補償限度額は合計で174億円となっております。また、コモディティ・デリバティブ取引に係る契約は株式会社日本証券クリアリング機構と株式会社東京商品取引所及び堂島取引所との契約があり、当社グループである株式会社東京商品取引所の補償限度額は21億円となっております。

11 原取引按分清算参加者:信託口を有する清算参加者をいいます。

 

 

 

 

8.契約等に関するリスク

① シカゴ・マーカンタイル取引所とのSPAN利用に関するライセンス契約について

株式会社日本証券クリアリング機構は、先物・オプション取引の証拠金を受け入れておりますが、証拠金計算方式として、シカゴ・マーカンタイル取引所が開発したSPAN方式を採用しております。

同方式を採用するに際し、シカゴ・マーカンタイル取引所との間でSPANの利用に関するライセンス契約を締結しておりますが、不測の事態により当該契約が解消された場合には、SPAN方式に代わる証拠金計算方式の採用に伴うシステム改造負担等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 株式会社日本経済新聞社との日経平均株価利用許諾契約について

当社グループのデリバティブ市場の主力商品である日経平均株価先物、日経225mini及び日経平均株価オプションに関しては、原資産である日経平均株価の利用許諾について株式会社日本経済新聞社との間で利用許諾契約を締結しております。

株式会社大阪取引所は株式会社日本経済新聞社に対し、日経平均株価先物取引、日経225mini及び日経平均株価オプション取引に関する利用許諾契約に基づき、契約基本料の他、取引高に応じて月額対価を支払っております。当該契約は、一方の当事者による契約義務不履行の場合や、議決権の過半数の株式譲渡又は取得、合併といった事由による当該契約関連事業の支配権に重大な変動が生じた場合等には、他方の当事者が通知を行うことにより当該契約を解約することができる内容となっておりますが、一方の当事者が契約を終了させる通知を行わない場合は、5年間ずつ自動更新されることとなっております。また、株式会社日本経済新聞社はやむを得ない事由が生じたときは、株式会社大阪取引所の了承を条件に日経平均株価の編集及び公表を廃止することができます。仮に上記の事由により、当該契約が終了した場合、株式会社大阪取引所は日経平均株価先物取引、日経225mini及び日経平均株価オプション取引の中断、あるいは中止を余儀なくされ、この場合、当社グループの経営成績が大きな影響を受ける可能性があります。

その他、当該契約に関して、当社グループの経営成績が大きな影響を受ける可能性がある事態が生じる場合としては、以下のようなものが考えられます。

・ 利用許諾料については当該契約の他に別途締結している覚書により、契約基本料の他、1先物取引及び1オプション取引当たり一定額を月額対価として株式会社大阪取引所が株式会社日本経済新聞社へ支払うこととなっておりますが、当該覚書の内容については、株式会社大阪取引所と株式会社日本経済新聞社が協議のうえ、変更される可能性があります。当該利用許諾料が大幅に変更された場合には、当社グループの経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

・ 当該契約は独占契約ではないため、今後、国内外において株式会社大阪取引所以外の者が株式会社日本経済新聞社との間で日経平均株価利用許諾契約を締結し、利用権を取得する可能性があります。株式会社大阪取引所以外の者が日経平均株価の利用権を取得し国内外において日経平均株価先物・オプション取引を行い、その利便性が高い等の事情により大阪取引所市場の取引高が減少した場合、当社グループの経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

9.訴訟等に関するリスク

① 法令遵守に関するリスク

当社グループでは、情報漏えいをはじめ、役職員の故意又は過失による法令違反行為を防止するため、企業としての行動の基本方針をまとめた企業行動憲章の制定や内部通報制度であるコンプライアンス・ホットラインの設置、継続的な社内研修の実施など、法令遵守への取組みに注力しておりますが、これらの取組みがすべての法令違反行為の発見・防止に対して有効であるとは限らず、役職員による法令違反行為を常に排除できるとは限りません。

役職員による法令違反行為が現実のものとなった場合には、監督官庁からの行政処分や市場利用者等からの損害賠償請求等、行政上又は司法上の制裁が科される可能性があるとともに、社会的信用の低下等により、当社グループの事業運営に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 訴訟に関するリスクについて

当社グループの事業は様々な法的責任に晒されており、これらには、役職員等又はコンピュータ・システムによる業務運営の中で、過誤が発生するリスク(いわゆるオペレーショナル・リスク)の顕在化による法的責任も含まれます。

オペレーショナル・リスクには、例えば次のようなものが考えられます。

・ 役職員が法令や当社グループの定款、業務規程その他の諸規則等に定められた適正な業務遂行(必要な市場規制措置等)を過誤等により怠る又は誤った措置を行うリスク

・ 障害や大規模災害によるシステム停止又はシステムに誤作動が発生するリスク

・ 役職員又はシステム運用業務委託先の過誤等により取引が中断されるリスク

・ 当社グループが算出を行っているTOPIX等の株価指数や統計情報等、配信を行う各種情報に誤謬が生じるリスク

 

上記のリスクが顕在化した場合には、監督官庁から処分等を科される可能性があるとともに、損害を被った市場利用者から損害賠償等を求められる可能性もあります。

当社グループでは、規則や契約等において、利用者が損害を受けた場合であっても、当社グループに故意又は重過失がある場合を除き、損害賠償の責を負わない旨を定めておりますが、オペレーショナル・リスクの顕在化を含むなんらかの要因により訴訟が提起された場合には、訴訟費用が多額にのぼる可能性があるとともに、訴訟において当社グループに不利な判決等がなされた場合には、訴訟に伴う損害賠償のみならず、社会的な信用の低下等を通じて、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

10.レピュテーショナル・リスク

当社グループでは、社会的な信用力やブランド力を、競争力の源泉の一つとして認識しております。

当社グループの社会的な信用は、システム及び自主規制業務等における過誤等、当社グループに起因する様々な要因のみならず、取引参加者や上場会社等の市場参加者又はその他の第三者による不法行為等によっても毀損される可能性があります。

当社グループの社会的な信用の毀損は、取引高の減少や発行会社の当社グループが開設する市場への上場を妨げる要因となる可能性があり、ひいては、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

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