文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループは、創立以来、「信は萬事の基と為す」を経営の基本理念として、信頼を原点としたFace to Face(お客さまとの対面での直接対話型)のビジネスモデルと健全経営による安定的成長確保を経営の基本方針としております。この基本方針を堅持しながら、当社グループしか提供できない商品やサービスの独自性を追求してまいります。これらの事業活動を通じて、お客さまを含め国民全体の資産形成に資することで社会全体に付加価値をもたらし、ひいては、国民経済全体の発展に貢献することを念頭に置きながら、持続可能な事業を展開することに努めてまいります。
当社グループは、自らが採択した「お客さま本位の業務運営に関する方針」に基づき、お客さまの立場に立って、親切・丁寧な対応を心がけるとともに、お客さまの利益を最優先に考え、それぞれのニーズにあった商品やサービスを提供してまいります。
また、株主資本の効率的な運用という観点から、当社グループを取り巻く環境の変化を的確に捉えながら、適切なリスク管理の下、新しい収益分野や投資対象への取組みを推進し、収益力の向上と収益源の多様化を図ってまいります。
(2)中長期の基本戦略
① 基本的な考え方
当社グループは、経営の基本理念に則り、独自のビジネスモデルを堅持し持続的な成長を目指してまいります。そのため、当社グループは、以下に掲げるサステナビリティ基本方針に基づき、すべてのステークホルダーをこれまで以上に意識しつつ、当社グループの企業価値の向上及び金融・資本市場を通した持続可能性への貢献を行ってまいります。
さらに、東京証券取引所プライム市場上場企業として、より高い水準のコーポレート・ガバナンス体制を構築してまいります。
■サステナビリティ基本方針
極東証券株式会社は、企業理念に基づき、金融商品取引業者としての事業を通して、サステナビリティ(持続可能性)の向上に取り組んでまいります。
② Face to Faceのビジネスモデルを通した企業価値の向上
当社グループを取り巻く競争環境は更に厳しくなるという認識の下、オンライン証券会社や他の中堅証券会社との差別化を図るため、お客さまとの直接対話を行う対面による営業スタイルを堅持いたします。更には、その営業スタイルの質的な向上を図るとともに、他社では提供できない多様な商品を取りそろえ、マーケット変化を捉えた機動的な運用提案を行うことで、お客さまの満足度を高め、信頼を獲得してまいります。お客さまと当社との強固な信頼関係こそが、当社グループ独自の企業価値であります。こうした当社グループ独自のビジネスモデルを強化することで、厳しい競争環境下においても、当社グループの持続可能な事業展開が可能になると考えております。
③ 当社グループ独自の企業価値を生かした持続可能性への貢献
当社グループは、ESG要素を含む中長期的な社会全体の持続可能性の向上に貢献するため、金融・資本市場の一層の機能強化に資することや、事業以外の分野における社会貢献活動に積極的に参画してまいります。具体的には、当社グループ独自の商品やサービスの提供により、国民の資産形成を促進することで、社会全体に付加価値を生み出し、国民経済全体の発展に貢献してまいります。また、様々なステークホルダーに貢献するために、地球温暖化や気候変動等の環境問題、全ての役職員にとって働きやすい職場環境を確保する等の働き方改革、金融リテラシー向上に貢献するための金融教育及び地域社会の発展について積極的に取り組んでまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
① 顧客基盤・預り資産の拡大
当社グループは、国内外の証券市場で売買される金融商品の販売をその事業基盤としていることから、その顧客基盤や預り資産についても、市場環境によって大きく左右されると考えております。2022年3月期においては、米国株式市場停滞の影響を受け、顧客口座数、預り資産ともに減少いたしました。顧客基盤や預り資産について、単にその水準をもって経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標とすることは困難でありますが、それらを当社グループの収益基盤の大きな柱として認識しつつ、加えて、お客さまの属性や投資行動等を詳細に分析する仕組みを検討し、そこから得られる様々なデータを活用した客観的な指標の構築に向け、更に検討を続けてまいります。
② 顧客満足度の向上
当社グループの持続的な成長のためには、提供する商品やサービスに対するお客さまの評価や満足度の向上が不可欠であります。お客さまの満足度を測る指標は、お客さまの投資パフォーマンスの向上、提供されるコンサルティングサービスの評価など、様々であり、当社ではお客さまの満足度を評価する指標として、「既存のお客さまによる新規顧客のご紹介」に関するものをこれまでも採用してまいりました。
新規に口座開設をしていただいたお客さまのうち、口座開設の契機が既存のお客さまによるご紹介の比率は高水準(2022年3月期実績 49.7%)を保っております。また、当事業年度におきまして顧客ロイヤルティ調査を行いました。同調査において、当社は対面証券会社平均と比べてロイヤルティ指標が高いとの結果が出ており、これは当社のFace to Faceのビジネスモデルがお客さまから評価されているものと考えております。このトレンドを今後も維持できるように既存のお客さま評価や満足度を更に高めるとともに、当社グループ自身の認知度を向上させ、新規のお客さまの獲得に努めるとともに、お客さまの満足度の向上に努めてまいります。
③ 収益性
当社グループの収益性を評価する指標として考えられるものは、以下のとおりであります。
イ.資本コストと資本利益率
当事業年度(2022年3月期)における当社グループの資本コストは、株主資本コストが3.3%及び加重平均資本コストが2.7%であります。当社グループとして、当事業年度の当社の自己資本利益率(ROE)や投下資本利益率(ROIC)が資本コストを上回ることを目標といたします。当事業年度の各指標の実績につきましては、自己資本利益率は4.6%、投下資本利益率は1.6%となり、投下資本利益率においては目標を下回りました。
ロ.各収益源の利益への貢献度合(安定性)
当社グループは、市場環境に大きく影響を受けない安定した収益構造を確保するために、収益構造の多様化を図ってまいります。その成果を判断する指標としては、手数料収入、トレーディング収益、金融収支等の安定的なキャッシュ・フローがバランスよく貢献していることを検証することとしております。なお、2022年3月期においては、投資信託の販売が順調であった一方で、お客さま向け外国債券販売が伸び悩んだことから、受入手数料(前期比2億19百万円増加(12.3%増加))は増加し、トレーディング損益(前期比29億97百万円減少(49.7%減少))が減少しております。
(4)経営環境
当社の経営者は、当社の経営の基本方針に則った中長期の経営戦略を実行するうえで、以下に掲げる環境事象が当社経営に影響を及ぼすと考えております。
国内外の経済情勢は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に端を発する供給制約と、その後の需要回復、労働市場のひっ迫などにより、インフレが世界中で加速しました。先進国では金融政策正常化に向けた動きが本格化し、米国では連邦準備制度理事会(FRB)による資産買入れの縮小に続き、利上げが開始されました。新興国では先進国に先駆けて政策金利の引き上げが相次ぎました。また、ロシアがウクライナに侵攻し、資源や穀物など一段の物価上昇をもたらしました。
今後については、国際通貨基金(IMF)が2022年4月に公表した世界経済見通しによると、「「戦争が経済回復を抑制する」とし、戦争がもたらす経済損失は、2022年に世界の経済成長が大幅に減速する一因となるほか、物価上昇が加速する」とあります。この影響により、世界経済の成長率予測は2022年が3.6%、2023年が3.6%、日本については2022年が2.4%、2023年は2.3%とされております。
また、2022年4月に開催された日本銀行の政策委員会・金融政策決定会合における基本的見解は、「日本経済の先行きを展望すると、ウクライナ情勢等を受けた資源価格上昇による下押し圧力を受けるものの、新型コロナウイルス感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる」とありますが、一方で、「リスク要因としては、引き続き変異株を含む感染症の動向や、それが内外経済に与える影響に注意が必要である。また、今後のウクライナ情勢の展開や、そのもとでの資源価格や国際金融資本市場、海外経済の動向についても不確実性はきわめて高い」としていることから、当面はその動向を注視していく必要があります。
そのような中で、オンライン取引業者による手数料の無料化の動き、大手業者による預り資産の拡大戦略、顧客層の高齢化、更には新型コロナウイルス感染症の収束後の投資行動の変容の可能性など、当社の持続的発展の脅威となる要因は多数あり、当社グループを取り巻く競争環境は更に厳しくなると考えられます。
わが国では、国民の安定的な資産形成を実現する資金の流れへの転換を図る、いわゆる「貯蓄から資産形成」の方針が打ち出されております。更には、わが国では少子高齢化の流れが急速に早まっていることを背景に、若年層の資産形成を促進するための方策として、NISA制度やつみたてNISAの導入等が実施されるとともに、資産形成の重要性や投資の意義などを理解するための金融リテラシーの向上に向けた諸施策が採用されております。一方、国民の高齢化は着実に進行しており、それに合わせて、高齢者の資産運用のためのフィナンシャル・ジェロントロジー(金融老年学)という研究も広がりを見せつつあります。すなわち、健康寿命の延びに合わせ、資産寿命の延伸を目指そうとする動きが高まりつつあります。したがって、高年齢層の金融リテラシーの向上のための施策、資産を保全するための運用に関する適切なアドバイス、これらの世代に適合した商品の提供といった新しいニーズが生まれつつあります。また、当社の顧客層を形成する富裕層の世帯数及び保有する金融資産額が継続して増加しているという調査結果もあります。
このような環境において、一定程度の資産規模を保持しているものの、人生100年時代を見据えた老後資金の確保のためにそれら資産の運用ニーズが生じている中高年齢層向けの商品やサービスを充実させることによって新たな顧客層の取り込みを行うという視点でのビジネスの拡大の可能性は一層拡大すると考えております。また、高年齢層に対しては、資産寿命を延伸させるための安定的な資産運用や資産相続アドバイスなど、総合的なコンサルティングサービスに対するニーズが高まっていると考えております。このような状況を踏まえますと、富裕層向けの金融サービスをその事業の柱としてきた当社グループとして、その独自性を更に追求することで、その存在意義が高まり、厳しい競争環境下においても、持続可能な事業展開やビジネス拡大の可能性があると考えております。
(5)対処すべき課題
① 独自のビジネスモデルの追求
当社グループの直接対話型のビジネスモデルを堅持し、事業を持続的に発展させるためには、お客さま満足度の向上を目指す必要があると考えております。そのため、お客さまへの分かり易く、親切、丁寧な対応に努め、特色ある旬の商品を引き続き提供してまいります。また、営業活動をサポートするツールの導入や満足度調査を積極的に行ってまいります。
当社グループの収益の中心は、上記の直接対話型のビジネスから得られる手数料収入等でありますが、これらは市場環境の変化の影響を大きく受けやすいものとなっております。当社グループは、株主資本の効率的・積極的運用により、手数料収入以外の収益源を確保し、当社グループの収益力を強化するために、有望な商品や投資分野の開拓に努めてまいります。
② コンプライアンス及びリスク管理体制の強化
当社グループは「お客さま本位の業務運営に関する方針」を徹底し、役職員全員がより高い倫理観に基づいて業務を遂行してまいります。
また、管理すべきリスクが多様化する現状に鑑み、新たに認識されたリスクや今後発生すると予想されるリスクを的確に把握し、それに対する対応策などを早期に策定するために、2022年4月1日にリスク管理委員会を設置いたしました。同委員会を通じリスク管理の更なる強化を図ってまいります。
③ 人材の多様性及び人的資本への投資
当社グループは、今後の環境変化に柔軟に対応し、持続的な成長を図るためには、中核人材の登用等において、様々な経験・技能・属性を有する人材を確保することが重要と考えております。中長期的な企業価値の向上に向けた人材戦略の重要性に鑑み、多様性の確保に向けた人材育成と社内環境整備を行ってまいります。
また、当社の企業価値を他社と差別化している知的財産は、「お客さまからの信頼」というブランドと「特色ある旬の商品の提供」というノウハウであり、その基盤は営業部門や事務部門の専門人材であると考えております。そのため、当社においては人的資本への投資を積極的に行ってまいります。この人的資本への投資が、最終的にはお客さまの利益最大化につながると考えております。
<中核人材の多様性確保の状況(2022年3月末)>
女性管理職比率 17.7%(2021年9月末比率 17.6%)
外国人管理職比率 0.0%( 同 0.0%)
中途採用者管理職比率 50.4%( 同 48.6%)
<人的資本投資の状況(2021年度実績)>
総額 約1,040万円(2020年度比 約20%増加)
(内訳)
AFP養成講座 約 90万円
マネジメント・営業スキル研修 約150万円
その他研修費用 約800万円
④ 社会への貢献
当社グループは、本来の事業以外の分野においても、社会に貢献することが、当社の企業価値向上にもつながるものと考えております。そのため、国民全体の金融リテラシー向上のみならず、質の高い教育や研究を発展させる目的で、学術活動や教育分野への支援を積極的に行ってまいります。また多様な価値観のもと豊かな社会を築いていくために、メセナ活動の一環として文化、芸術活動への協賛を行ってまいります。
⑤ 持続可能な地球環境への対応
気候変動対策や脱炭素化に向けた世界的な動きに対応するため、中長期的観点から、お客さまのESG投資に係るニーズを的確に把握し、それらのニーズに適った金融商品の提供を検討してまいります。併せて、脱炭素社会に向けて推進される代替エネルギーの開発など有望分野への自己資金による投資について積極的に取り組んでまいります。
また、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のフレームワークを用いて、気候変動が当社グループの事業活動に与えるリスク及び機会を充分に分析し、そのうえで気候変動に係るビジネス戦略を策定し、当社グループ及び社会の持続的な発展につなげてまいります。
<TCFDへの対応>
イ.ガバナンス
当社は、経営の基本理念に則り、当社独自のビジネスモデルを通して持続的な成長を目指してまいります。
そうした中、当社にとって重要と考えられるサステナビリティ課題について、取締役会等で継続的に議論を行い、そのうえで基本方針や推進体制等を整備するなど、ガバナンス体制の構築を行っており、サステナビリティ課題(TCFDへの対応を含む)への取組みの進捗状況を取締役会に定期的に報告することとなっております。
ロ.戦略
当社は、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照のうえ、2℃シナリオ及び4℃シナリオが実現した場合の2つの社会を想定いたしました。
2℃シナリオ |
新たな政策・制度を導入し、2100年時の気温上昇が産業革命前に比べて2℃未満に抑制されるシナリオ |
4℃シナリオ |
新たな政策・制度が導入されず、2100年時の気温上昇が産業革命前に比べて4℃以上となるシナリオ |
その想定のもと、気候変動が当社グループの事業活動に与えるリスク及び機会を以下のとおり抽出し、対応を開始しております。
<リスク>
<機会>
<対応>
ハ.リスク管理
全社的な事業リスクを分析・評価し的確なリスク管理を行うため、リスク管理委員会を設置しております。同委員会において、全社的な事業リスク管理の一つとして気候関連リスクの管理を行い、必要に応じて取締役会等に報告を行います。
ニ.指標・目標
2021年度の温室効果ガス排出量実績と2030年度削減目標
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