本項において、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
(1)経営環境
日本経済は、新型コロナウイルス感染症の影響等により不透明感が残るものの、感染抑制と経済活動の両立に向けた基盤の整備や繰越需要の顕在化等により、その影響は徐々に和らぎ、回復の動きを続けていくと見込まれます。
生命保険業界におきましても、新型コロナウイルス感染症への対応を迅速かつ着実に継続していく必要があります。加えて、少子高齢化の進展、お客さまニーズの多様化、低金利環境の長期にわたる継続等により経営環境が変化しており、社会的課題(SDGs:持続可能な開発目標)を踏まえた企業経営、お客さま本位の商品・サービスの提供、資本効率の向上や資産運用の高度化等、業務運営の更なる質の向上に取り組んでいく必要があります。
(注)SDGs(Sustainable Development Goals):2015年国連サミットで採択された持続可能な世界を目指して
取組む17の目標。
(2)経営方針
当社グループは、「Try & Discover(挑戦と発見)による価値の創造を通じて、人と社会に貢献する」ことを経営理念として事業運営を行っております。2021年4月には、不確実性の高い現代において、コロナ禍をはじめとするあらゆる環境変化に左右されない企業として、中長期的にグループが目指す姿をあらためて明確にする必要があると考え、5年間の新たな経営方針『グループ長期ビジョン「Try & Discover 2025」~すべてのステークホルダーのしあわせのために~』を策定いたしました。
このグループ長期ビジョンでは、グループKPIとグループ成長戦略を新たに設定することにより、資本効率の向上を伴った成長ストーリーを推進していくことを全体方針として掲げております。また、グループ経営の道しるべを社内外に明示すべく、グループ経営ビジョンを以下のとおり一新いたしました。
この経営ビジョンには、これまで以上に1人・1社のステークホルダーのみなさまと丁寧に向き合うことで様々な変化を感じとり、従来の枠組みにとらわれない大胆な挑戦につなげていく、という想いを込めております。お客さまや金融市場から選ばれ続けるために、これまで以上に経済的価値と社会的価値の双方を追求する「共有価値の創造」を実践してまいります。
(3)グループKPI
グループ長期ビジョンの策定にあわせて、定量的な目標指標であるグループKPI(Key Performance Indicator)を以下のとおり設定しております。
(グループ長期ビジョン「Try & Discover 2025」におけるグループKPI)
(注)1 グループ修正利益=当期純利益±資産・負債の会計処理のアンマッチ等による評価性損益
+負債性内部留保の超過繰入額
2 修正ROE=修正利益/((前年度末純資産+当年度末純資産)/2)
3 ROEV=EV増減額/((前年度末EV+当年度末EV)/2)
4 「EV」、「新契約価値」については、「第2 事業の状況-3 経営者による財政状態、
経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析-(5)その他重要事項-(参考3) 市場整合的
エンベディッド・バリュー(MCEV)」をご参照ください。
(4)経営戦略(グループ成長戦略)
具体的な経営戦略として、強固な経営基盤と競争優位性を確保するための5つの重点テーマと11の戦略方針を設定し、「資本効率の向上によるグループ収益の拡大」と「事業を通じた社会課題の解決」を目指してまいります。
①コアビジネスの強化
当社グループは、“複数の独自性ある生命保険会社がそれぞれ特化戦略を追求”していることが強み・特徴と考えております。生命保険会社3社は、各社の特化戦略追求を通じた事業の領域拡大・強化により、保険収益力を強化し、グループ収益基盤の強靭化を図ってまいります。
また、コロナ禍における新しい生活様式や変化するお客さまニーズに対応するため、今後もリアルとデジタルのそれぞれの良さを融合した営業活動の変革とお客さまニーズを捉えた最適な商品・サービスの提供を通じて、それぞれの特化市場で、引き続きトップブランドの構築を目指してまいります。
<各社の具体的な取組方針>
(注)DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、進展するデジタル技術とビッグデータ・AIを
活用してお客さま・社会のニーズを理解し、新たな価値の創出に向けてビジネスモデルや組織、業
務、企業文化・風土を変革することを指します。
②事業ポートフォリオの多様化・最適化
生命保険会社3社がフォーカスするシニアマーケットは、今後も拡大が見込まれる一方で、超長期では国内市場は縮小の可能性があることや、今後デジタル技術が加速度的に進化するとの認識から、事業ポートフォリオの領域拡大を経営戦略の一つとしています。国内の生命保険事業を基盤としつつ、生命保険事業と親和性の高い領域でグループの強みを発揮するべく、クローズドブック事業における事業展開を拡大・発展させるとともに、新規事業の創出にも取り組んでまいります。また、資本を有効活用することで、グループ全体の資本効率を向上させるべく、グループ既存事業の最適化を含め、グループの事業ポートフォリオマネジメントを行ってまいります。
③ERMの高度化(資本マネジメントの進化)
資本マネジメントにおきましては、資本十分性を確保しつつ、ERM(注)の一層の活用を通じて、収益性の向上に取り組むことで、資本の効率性を高めていくことを基本としております。新型コロナウイルス感染症の影響による金融市場の変動等にも的確に対応しながら、グループ経営資源の最適化や成長投資と株主還元のバランスを図り、資本効率の向上に努めてまいります。
また、リスクマネジメントにおきましては、経済価値ベースの資本規制の導入を見据え、不確実性が高く、リスク対比リターンが低い、金利リスクの削減や政策保有株式の縮減を図ってまいります。これにより、資産運用リスクをコントロールする一方で、事業投資によるリスク量の拡大を進め、保険引受リスクとの最適なバランスを図っていく方針です。
(注)ERMとは、エンタープライズ・リスク・マネジメントの略で、資本・収益・リスクを一体的に管理するこ
とにより、企業価値の増大や収益の最大化といった経営目標を達成することを目的とした戦略的な経営管理
手法のことを言います。リスクを回避すべきものととらえる受動的なリスク管理と異なり、ERMでは、リ
スクは排除・削減するだけのものではなく、資本の一定範囲内に抑えて健全性を確保したうえで、収益追求
のために取るべきリスクを能動的に選択するものととらえます。
④グループ一体経営の推進
不確実性の高い経営環境に対応していくため、グループ内の経営資源を最大限に有効活用する必要があるとの認識のもと、保険商品の相互販売や資産運用の高度化等の分野において、グループ各社間の事業シナジー、コストシナジーをより一層追求してまいります。また、そのためのグループガバナンスの強化に向けて、新たなグループ文化の醸成やコミュニケーションの活性化を図り、人的資本の充実に取り組んでまいります。
⑤SDGs経営と価値創造
グループの事業を通じて、すべての人の健康で豊かな暮らしの実現、すべての人が活躍できる働く場づくり、気候変動の緩和と適応への貢献、投資を通じた持続可能な社会への貢献といったサステナビリティ重点テーマ(4つのマテリアリティ)の解決に取り組むことで共有価値を創造し、SDGs達成への貢献を推進してまいります。
(注)当社グループにおけるCO2排出量の削減目標
以上、2022年度は、グループ長期ビジョンの実現に向けた取組みを継続し、保険を通じて世の中のしあわせをつくってまいります。
経営環境や人々の価値観が大きく変化し、不確実性が高まっている現在においても、当社グループは役職員とその家族の健康と安全・安心を守りつつ、円滑かつ安定的な業務運営に取り組んでまいります。生命保険事業は、国民生活の安定・向上、経済発展や社会インフラの基盤として、持続可能な社会の実現に関わりを持つ、社会的使命を有する事業です。その社会的使命を果たすべく、グループ一丸となって取り組んでまいります。
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