課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、会社の経営の基本方針となるステートメント、ビジョン、ミッションのもと、企業としての成長と社会的な価値の創出に積極的に取り組んでおります。

 

GROUP STATEMENT

都市に豊かさと潤いを

GROUP VISION ~私たちはどうありたいか~

1.「&」マークの理念

私たちは、「&」マークに象徴される「共生・共存」「多様な価値観の連繋」「持続可能な社会の実現」の

理念のもと、社会・経済の発展と地球環境の保全に貢献します。

~「&EARTH」を掲げて、人と地球がともに豊かになる社会をめざします。

2.進化と価値創造

私たちは、不動産ビジネスを進化させることにより、人々に「新しい時代の夢と感動」をもたらします。

~多様な「知」をとりいれ融合させることにより、国内外で新たな価値を創造します。

~社会環境・市場構造などの変化と、そのグローバルな潮流を積極的にとらえます。

3.成長性と収益性に富んだ三井不動産グループ

私たちは、グループ総体の力を公正にいかんなく発揮することによって、「成長性と収益性に富んだ

三井不動産グループ」を実現します。

GROUP MISSION ~私たちに今求められていること~

1.ビジネスとくらしに関するソリューションとサービスの提供

豊かさと潤いをもたらし、安全・安心で魅力にあふれる空間とソフト、サービスを提供して、街の価値を

最大化する。

多彩で革新的なソリューションを提供して、不動産投資市場の成長に貢献する。

2.グローバルな視野で顧客のパートナーへ

顧客をビジネスの創造ならびに進化・発展の基盤と考える。

顧客が真に求めているものを多面的に把握し、グループの総力で提案・実現する。

顧客のパートナーとして、高い評価を獲得し続け、ブランド価値を高める。

3.企業価値の向上

持続的な利益成長を図るとともに、不断のイノベーションを行うことにより企業価値を向上させる。

経営資源の最適活用ならびに効率経営を追求する。

常にリスクに対して適正なマネジメントを行う。

4.個の力を高め結集してグループの力へ

多彩な人材、多様な価値観を融合し、パイオニア精神に満ちた独創性を育む。

個々人がプロフェッショナルな知識・能力を磨き、互いに共有して、付加価値創造力を高める。

企業倫理と規律、コンプライアンスについて、常に高い意識を持って行動する。

(注)1999年6月に制定し、2018年4月に改訂しております。

 

(2)経営環境、会社の長期経営方針及び対処すべき課題

 今後の社会経済環境の見通しにつきましては、ワクチン接種の促進、治療薬の実用化等により、社会経済活動の正常化が期待されるものの、新型コロナウイルス感染症による影響が当面の間、続くことが想定されます。さらに、新型コロナウイルス感染症からの回復による需要急増に加え、ロシアのウクライナ侵攻等に伴うエネルギー価格の高騰、食料不足、サプライチェーン・物流の混乱等、供給面の制約により世界各国でインフレが進行するなど、世界経済は不安定な状況が続くことが見込まれます。わが国においても、インフレや金利上昇等のリスクの顕在化に備える必要があると考えております。

 このような見通しのもと、引き続き、ウイルスの特性に応じた感染対策を各施設で徹底し、施設営業の正常化を図るとともに、ウィズコロナならではの需要の取り込みを継続して実施することで、収益の拡大を図ってまいります。あわせて、新型コロナウイルス感染症により暮らし方・働き方が変化するなか、不可逆的なものを的確に捉え、ビジネスモデル改革を一層推進してまいります。ポストコロナの街づくりにおいては、顧客ニーズにあわせてリアルとデジタルを最適に組み合わせる「リアルエステート・アズ・ア・サービス」の提供が重要であると考えております。リアル空間については、人と人がリアルに接触することによるイノベーション、雑談等の偶然性から生まれる新しい価値、五感で感動体験を得るスポーツ・エンターテインメントなど、デジタルでは代替できない価値が再認識されたと考えており、リアル空間の付加価値を最大限に高めてまいります。また、デジタルが適している部分については、デジタルトランスフォーメーションを加速させ、街に蓄積したデータとデジタル技術を活用して、暮らしやすい、便利で快適で、生産性の上がる街づくりを進めてまいります。

 ESG・サステナビリティに関する取り組みとしては、特に気候変動に対する取り組みの重要性が高まっており、2050年度までにグループ全体の温室効果ガス排出量をネットゼロとする目標達成に向けて定めた「脱炭素社会実現に向けたグループ行動計画」に基づき、国内全ての新築物件におけるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)・ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)水準の環境性能実現、国内全施設における電力グリーン化等の再生可能エネルギーの積極活用、メガソーラー事業の拡大、サプライチェーン全体での脱炭素に向けたパートナーシップ強化等に取り組んでまいります。また、ダイバーシティ&インクルージョンの推進も、重要な競争戦略として考えており、「ダイバーシティ&インクルージョン推進宣言」とその取り組み方針に基づき、グループ各社における女性活躍推進に向けたロードマップ策定とその実行など、グループ全体での取り組みを進めてまいります。さらに、法令の遵守や労働に係る人権尊重等について定めた「サステナブル調達基準」の当社グループ内および取引先への再周知やサプライヤーへの人権デューデリジェンスの拡大による「ビジネスと人権」の取り組みを推進するなど、重要なESG課題についてもグループ全体で取り組んでまいります。

 当社グループは、グループ長期経営方針「VISION 2025」の達成に向け、「街づくりを通して、持続可能な社会の構築を実現」、「テクノロジーを活用し、不動産業そのものをイノベーション」、「グローバルカンパニーへの進化」をビジョンに掲げ、引き続き「顧客志向の経営」、「ビジネスイノベーション」、「グループ経営の進化」の3つの基本ストラテジーの実践による価値創造に取り組んでまいります。また、これらの取り組みを通じて、社会全体のESG課題の解決やSDGsの達成に貢献してまいります。さらに、内部管理態勢の強化など、引き続きコーポレートガバナンスを充実させ、企業価値の向上に一層努めてまいります。

 

①「VISION 2025」における3つのビジョン

 

a.街づくりを通して、持続可能な社会の構築を実現

 

当社グループは創立以来、私たちのDNAであるパイオニア精神を発揮し、各時代のパラダイム転換を捉えて新たな価値を創造しながら、街づくりを通した社会課題の解決に取り組んでまいりました。

例えば、「柏の葉スマートシティ」は、当社が2005年から千葉県柏市で開発している課題解決型の街づくり事業です。現在、公・民・学の連携のもと「環境共生」「健康長寿」「新産業創造」の実現を目指した取り組みを進めています。

また、「日本橋再生計画」においては、「残しながら、蘇らせながら、創っていく」をコンセプトに掲げて、地域社会や文化の活性化を図るとともに、地域全体の防災力強化に取り組むなど、当社グループの街づくりは持続可能な社会の構築の一翼を担っています。

アセットクラス毎の取り組みとしてオフィスビル事業においては、生産性向上や優秀な人材の獲得など、オフィステナントの経営課題の解決に資することを目的として、シェアオフィスサービス「ワークスタイリング」や健康経営支援サービス「&well」といった新規事業を展開し、オフィスビル事業の競争力を向上させてまいります。

住宅事業においては、元気な高齢者の方々に、より自分らしい豊かなくらしを実現していただくための新しいすまいのカタチである「シニアレジデンス事業」の推進、あるいは、環境負荷がより少ない木造大規模施設の受注拡大など、顧客ニーズの多様化や社会的要請に応じた新しい商品やサービスを展開しています。

こうした街づくりの一つ一つが、少子化・高齢化、環境問題、くらしの安全・安心、新産業創造など、社会が直面する幅広い課題の解決に寄与するものであり、「社会的な価値の創出」ひいては当社グループの「企業価値の向上」と繋がっていくものと考えております。

 

b.テクノロジーを活用し、不動産業そのものをイノベーション

 

テクノロジーの進化によって様々な領域でイノベーションの創出やビジネスモデルの転換が進展するなか、デジタル技術の活用促進とリアルな空間の価値向上に同時に取り組んでまいります。既存の商品やサービスへのICTの活用、不動産とICTの融合による新たなビジネスの創出、リアルな空間でのデータの蓄積・活用など、リアルエステートテック活用によるビジネスモデルの革新を行うとともに、デジタル技術では生み出すことができない、人との出会い・ふれあいなどのリアルな空間の価値を高めることで、事業の競争力を一層高めてまいります。

例えば、商業施設事業では、リアル店舗における買い物とネットショッピングの双方の良さを同時に享受できる、リアル店舗共生型ECモール「&mall」の展開を通じて、リアル店舗とECモールが相乗効果で売上を拡大できるオムニチャネル・プラットフォームを構築しています。

また、ロジスティクス事業では、人手不足等が深刻な課題となっている物流業界において、フルオートメーション物流モデルを展示する物流ICT体験型ショールーム「MFLP ICT LABO」を活用し、倉庫内物流の自動化・省人化ソリューションを提供するとともに、入居企業の課題解決支援に取り組んでいます。

さらに、ベンチャー共創事業では、コーポレートベンチャーキャピタルファンドを設立し、ベンチャー企業の積極的なサポートと日本のベンチャーエコシステムの発展に寄与していくとともに、出資先のベンチャー企業から得られた最新の技術やサービスを、当社グループの本業強化や事業領域拡大につなげてまいります。

 

c.グローバルカンパニーへの進化

 

海外事業について、これまでの海外事業経験を通じて確認できた当社グループの強みと、海外パートナー企業の経験やノウハウを掛け合わせながら、海外事業の飛躍的な成長を実現してまいります。

例えば、幅広いアセットクラスを手掛け、投資・開発・運営・リーシング/販売まであらゆる機能を備えているという当社グループの総合力は、海外において希少であり、大きな強みとなります。また、近年、海外においても複合型開発のニーズが高まっており、当社が国内事業において長年にわたり培ってきた複合開発のノウハウは海外でも強みとなります。こうした強みを海外のパートナーや顧客にしっかりと訴求し、優良な事業機会の獲得に努めてまいります。

また、不動産業はドメスティックな性格が強い産業であるため、用地情報の収集から、許認可の折衝、販売戦略に至るまで、現地のコミュニティに参画していくことが重要となります。現地の優良なパートナー企業と連携して事業に取り組むとともに、事業のローカル化を推進することで、着実に事業を推進させてまいります。

 

②人材戦略、組織・制度・ガバナンス、アセット・財務戦略

 

長期経営方針「VISION 2025」において、当社グループが目指す3つのビジョンを着実に実行するためには、人材戦略、組織・制度・ガバナンス、アセット・財務戦略など、その取り組みを支えるインフラを強化していく必要があります。

人材戦略では、目まぐるしく変化する社会のニーズに対応し、新たな価値を創造していくために、女性の活躍推進やグローバル人材・IT人材の採用・育成など、ダイバーシティを一層推進するとともに、働き方改革にも継続的に取り組むことで、多様な人材が活躍できる社会の実現を目指してまいります。

組織・制度・ガバナンスでは、当社グループの各社が、個社の利益ではなく、グループの利益が最大化するような取り組みを行っていく必要があり、そのため、グループ社員の意識や制度のあり方を変えていきます。また、新しいイノベーションを生み出す文化の醸成や制度創設にも改めて取り組んでいきます。さらに、事業領域が国内、海外を問わず今後も拡大を続けるなかで、企業活動におけるリスクマネジメントは非常に重要な課題と認識しており、当社およびグループ会社における内部管理態勢の強化など、引き続きコーポレート・ガバナンスを充実させ、企業価値の向上に一層努めてまいります。

アセット・財務戦略では、金融環境の変化に特に留意しながら、今後も厳選投資を継続してまいります。保有・開発・マネジメントのバランスの適切なコントロール、資産ポートフォリオの最適化に加えて、資産に応じた調達手法の最適化を図ることによって、財務の健全性を確保しながら持続的な利益成長を実現していきます。

 

③持続可能な社会の実現に向けて

 

当社グループは、「持続可能な社会」と「継続的な利益成長」を実現するため、E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)を重要な経営課題と位置づけ、グループ長期経営方針「VISION 2025」において、重点的に取り組むべき以下の6つの目標を掲げました。

・街づくりを通した超スマート社会の実現

・多様な人材が活躍できる社会の実現

・健やか・安全・安心なくらしの実現

・オープンイノベーションによる新産業の創造

・環境負荷の低減とエネルギーの創出

・コンプライアンス・ガバナンスの継続的な向上

かかる目標の達成に向け、例えば、「日本橋再生計画」においては、「日本橋室町三井タワー」内に、エネルギープラントを構築し、日本で初めて、既存ビルを含む周辺地域にも電気と熱を供給する「日本橋スマートエネルギープロジェクト」を開始し、災害に対して強靭で、環境性能の高いサステナブルな街づくりを推進しております。また、環境改善効果のある事業に充当する資金を調達するため、グリーンボンドの発行を行っております。

また、新型コロナウイルス感染症に対しては、感染拡大の防止を当社グループ最優先課題と認識し、国民の命と健康を守る取り組みに率先して協力することによって、企業の社会的責任を十分に果たし、持続可能な社会の実現を目指してまいります。中長期的な視野に立ち、様々なステークホルダーとの一層堅固で良好な関係の構築を目指すと共に、当社グループがこれまで以上に社会から必要とされる企業となれるよう努めてまいります。

今後も当社グループは、「&マーク」の理念のもと、ESG課題の解決に取り組むことで街づくりを一層進化させ、地域に根差したコミュニティの創出、良質なタウンマネジメントの推進を行うとともに、新技術を積極的に活用し、超スマート社会の「場」であるスマートシティを実現するよう努め、「持続可能な社会」と「継続的な利益成長」の実現を目指してまいります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、グループ長期経営方針「VISION 2025」において、2025年度前後に向けて、連結営業利益は 3,500億円程度、うち海外事業利益(※)は30%程度、ROAは5%程度となることを将来の見通しとしています。

 ※海外事業利益=海外営業利益+海外持分法換算営業利益(海外所在持分法適用会社について、各社の営業利益または営業利益相当額(当期純利益から税負担分を考慮して簡便的に算出した利益)に当社持分割合を乗じて算出した金額と海外所在持分法適用会社に係る関係会社株式売却益(不動産分譲を目的とした事業に係るものに限る)の合計額)

なお、グループ長期経営方針のもと、2022年3月期の通期業績予想は、売上高は2兆1,500億円、営業利益は 2,400億円、経常利益は2,150億円、親会社株主に帰属する当期純利益は1,750億円としておりました。セグメント別には、以下のとおりの業績見通しとしておりました。

 

 

2022年3月期通期業績予想

(2021.4.1~2022.3.31)

 

売上高

営業利益

賃貸

680,000

130,000

分譲

670,000

137,000

マネジメント

435,000

57,000

その他

365,000

△31,000

消去又は全社

△53,000

合計

2,150,000

240,000

(注)2022年2月4日公表時の通期業績予想となります。

 

また、当社グループの経営資源の配分・投入につきましては、有形・無形固定資産について、設備投資2,300億円、減価償却費1,100億円、販売用不動産について、新規投資6,000億円、原価回収4,900億円を見込んでいました。

 

これらの達成状況については、後記「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析/(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容/c.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」をご参照ください。

 

 

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