当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー ( 以下、「経営成績等」という。 ) の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、年度半ばにおいては新型コロナウイルスワクチン接種の進展、行動制限の緩和等もあり、個人消費・企業収益の持ち直しが期待されましたが、オミクロン変異株の出現により、2022年明け以降、個人消費は再び抑制され景気回復は緩やかなものとなりました。更にロシア・ウクライナ情勢の緊迫化による原油価格等の高騰を受けて、エネルギー価格や原材料コストの上昇が加速し、経済に対する先行き不透明感が急速に強まっております。
不動産賃貸業界におきましては、オフィスビルについては、リモートワーク等の普及を背景に、事業拠点の縮小・撤退やオフィスを郊外へ分散する動きが広がり、空室率は上昇、賃料水準は弱含みで推移しました。一方、データセンターの需要については、リモートワーク拡大によるクラウドサービスの進展等によって通信量が増加したことから、全般的に堅調に推移しました。
このような環境の中、当社においては営業活動に注力した結果、当期末時点での空室率は0.31%に留まり、極めて高い稼働率を維持しました。また、当期は中期経営計画「ここからの挑戦〜新たな成長のステージへ〜」に基づく投資として推進中であった、大阪市内のデータセンタービル「京阪神 OBPビル」が2021年4月に竣工し、当社の事業基盤の拡大に寄与しました。
当期の連結業績は、OBPビルの売上寄与を主因に、売上高は17,815百万円と前期比2,481百万円(16.2%)の増収となりましたが、売上原価においてOBPビルの不動産取得税等の初期費用の負担もあり、売上総利益は6,664百万円と前期比178百万円(2.6%)の減益となり、つれて営業利益は5,124百万円と前期比170百万円(3.2%)の減益となりました。
営業外損益では、前期の213百万円の費用(純額)から、当期は245百万円の費用(純額)となり、31百万円増加しました。その結果、経常利益は4,879百万円と前期比202百万円(4.0%)の減益となりました。
特別損益では、前期の6,824百万円の利益(純額)から、当期は投資有価証券の売却による特別利益が減少したこと等により2,547百万円の利益(純額)となり、4,276百万円減少しました。その結果、親会社株主に帰属する当期純利益は5,165百万円と前期比3,086百万円(37.4%)の減益となりました。
当社グループは、土地建物賃貸を主たる事業としている「土地建物賃貸事業」の単一セグメントであります。なお、当社グループが展開する事業部門別の状況は、以下のとおりであります。
①オフィスビル
当社グループは大阪、東京のビジネス地区を中心に計8棟のオフィスビルを所有・賃貸しております。最新機能を備えた安全で快適なオフィスビルを展開しております。築年数が経過したビルでも計画的な設備更新やメンテナンスにより新築ビルと遜色のない快適な事業空間の提供に努めており、更に最新のオフィスビルでは、データセンタービルの運営ノウハウを活かしてBCP対応へのニーズにも応えております。
新型コロナウイルス感染症の拡大を契機とした働き方改革の進展によりオフィス空室率の上昇傾向が続いておりますが、現状、当社グループのオフィスビル事業への影響は軽微であり、高い稼働率を維持しております。虎ノ門ビル竣工および既存ビルの稼働率向上による賃料収入が寄与したことにより、連結売上高は4,286百万円(売上高比率24.1%)となりました。
②データセンタービル
当社グループは大阪の都心部を中心にデータセンタービルを展開しており、昨年4月に竣工したOBPビルを含む、計8棟を所有・賃貸しております。当社グループの都心型データセンタービルは、免震構造等の採用による高い防災性能、大型非常用発電機による安定的な電力供給、先進のセキュリティシステム等の最新のスペックを誇ります。また、30年以上にわたる豊富なデータセンタービル賃貸実績に基づく、充実した保守管理サービスも高く評価されております。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を背景としたデータ通信量の増加によりデータセンタービルの需要は今後も堅調に推移するものと見込んでおります。OBPビル賃料収入の寄与のほか、既存ビルにおいても機器室の稼働が向上したため、連結売上高は9,073百万円(売上高比率50.9%)となりました。
③ウインズビル
ウインズビルは、日本中央競馬会(JRA)が主催するレースの投票券を競馬場外で発売する施設で、当社グループは京阪神の都心部に5棟のウインズビルを所有・賃貸しております。ウインズビル事業は創業時から続く、当社グループにとって安定的な収益を生み出す中核事業の一つとして、競馬ファンのみなさまに安全・便利・快適にご利用いただけるよう施設の美化や設備の改善に工夫を重ねております。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、インターネット投票の普及が進み、ウインズビルでの投票券の売上比率は低下傾向にありますが、固定賃料で賃貸しておりますので業績への影響は軽微であります。連結売上高は3,473百万円(売上高比率19.5%)となりました。
④商業施設・物流倉庫
当社グループは1970年代より、商業施設と物流倉庫の賃貸事業を展開しております。かつては全国でロードサイド型の商業施設を展開しておりましたが、ニーズの変化に合わせて順次売却し、現在は中期経営計画に基づき、より利便性の高い立地の物件取得を推進しております。関西圏、首都圏を中心に全国で5棟の商業施設・物流倉庫を所有・賃貸しております。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響については、商業施設においては、スーパーなどの生活必需品取扱店が入居しているため、軽微でありました。物流倉庫はECの普及・拡大等により、引き続き旺盛な需要が続くと予想されます。連結売上高は982百万円(売上高比率5.5%)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
当社グループの主な事業は、土地建物賃貸事業であり、①生産実績②受注実績の該当はありません。
③販売実績
主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
(2) 財政状態
当連結会計年度末における総資産は149,994百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,048百万円(2.6%)減少しました。OBPビルの竣工等により有形固定資産が8,393百万円、同ビル竣工に伴う多額の仮払消費税等の計上により未収消費税等が1,850百万円各々増加したものの、現金及び預金は同ビルの最終工事代金の支払い等により11,674百万円、投資有価証券は上場株式の売却等により2,134百万円各々減少したことが主な要因であります。
負債合計は79,484百万円となり、前連結会計年度末比4,019百万円(4.8%)減少しました。未払法人税等が2,529百万円、有利子負債が返済により1,785百万円各々減少したことが主な要因であります。
純資産合計は70,510百万円となり、前連結会計年度末比29百万円(0.0%)減少しました。利益剰余金は789百万円、自己株式は465百万円各々増加したものの、その他有価証券評価差額金が1,284百万円減少したことが要因であります。
①現金及び現金同等物
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は9,876百万円となり、前期末比11,674百万円減少しました。
②営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動により得られた資金は2,736百万円(前連結会計年度は7,693百万円の収入)となりました。税金等調整前当期純利益7,426百万円、減価償却費3,731百万円により主要な資金を得ましたが、法人税等の支払4,774百万円、また投資有価証券売却益2,164百万円等の特別利益の控除要因がありました。
③投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動により使用した資金は8,652百万円(前連結会計年度は5,566百万円の支出)となりました。収入の主な要因は投資有価証券の売却2,468百万円および有形固定資産の売却1,262百万円であり、支出の主な要因は有形固定資産の取得12,479百万円によるものであります。
④財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動により使用した資金は5,757百万円(前連結会計年度は6,219百万円の収入)となりました。自己株式の取得2,290百万円、長期借入金の返済1,785百万円、配当金の支払額1,681百万円を支出したことによるものであります。
⑤資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資金需要の主なものは、新たなビルの取得、開発及び所有ビルの改修工事等の設備投資に係る資金であります。その所要資金は自己資金、金融機関からの借り入れおよび社債の発行により調達しております。また、当社の事業は資金回収に長期間を要するため、返済・償還期限を長めに設定しております。当連結会計年度末の有利子負債の内訳については、連結附属明細表の「社債明細表」及び「借入金等明細表」に記載のとおりであります。
当社グループは、2019年10月策定の中期経営計画「ここからの挑戦~新たな成長のステージへ~」において、財務バランスの健全性を維持するため自己資本比率は30%以上、ネット有利子負債はEBITDA(償却前営業利益)の10倍以下堅持を掲げております。
2020年3月期を初年度とする中期経営計画で掲げる経営指標の推移は下表の通りであります。
(注)税引後償却前経常利益:経常利益×(1-法定実効税率)+減価償却費
ネット有利子負債/EBITDA倍率:ネット有利子負債/償却前営業利益
自己資本比率:自己資本/総資産
ROA(営業利益/総資産):営業利益/((前連結会計年度末総資産+当連結会計年度末総資産)/2)
(補足)
1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象として
おります。
3.ネット有利子負債は、有利子負債残高から現金及び預金残高を減算しております。
4.償却前営業利益は、営業利益に減価償却費を加算しております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
① 固定資産の減損
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 資産除去債務
当社グループは、一部の借地について、不動産賃貸借契約に基づく退去時の原状回復に係る債務等を有しておりますが、当該債務に関連する賃借資産の使用期間が明確でなく、また、現時点において将来退去する予定もないことから、資産除去債務を合理的に見積もることができません。そのため、当該債務に見合う資産除去債務を計上しておりません。
将来の退去時期が明らかになるなど、当該債務額を合理的に見積もることが可能になった場合には、その時点で当該債務に見合う資産除去債務を計上することになります。
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