文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
私たちは、日々をいかに生き、どのように社会参加するべきか、そして、社会貢献を通じて、どのような果実を社会にもたらし、その結果としていかにして私たち一人一人が望む幸福を実現することができるのか。この命題に対する回答を得るために、社員相互が助け励まし合い、それぞれが目指す個性的な「自己実現」への階段を大真面目に上って行けるフィールドを提供し続けることこそが、日本エスコングループが考える経営理念であります。この経営理念の実現のため、以下の経営方針を掲げ、その具現化に向け邁進しております。
①情報力、企画力、商品開発力により、不動産が持つ無限の可能性を引出し顧客に心から満足いただける新たな価値を創造する。
②ROA及びキャッシュ・フローとリスクの徹底管理を主軸とした守りに強い業務管理を行うことにより、常に先手を取った攻めのできる経営を目指す。
③急速に変化する社会において迅速な対応力と機動力を維持するため、少数精鋭のプロ集団を目指す。
④社内社外を問わず常に同僚(他社)を敬い、感謝し、優良な協力関係を維持、構築する。
⑤コンプライアンス及びガバナンスを意識して内部監査制度を充実させるとともに、ボトムアップの風通しの良い組織形成を行う。
(企業ブランディングコンセプト)
IDEAL to REAL ~理想を具現化し、新しい未来を創造する~
ハードの開発だけではなく、そこで暮らす人たちの幸せを思い描き、暮らしそのものを開発すること、それこそが、私たちが目指すべき「ライフ・デベロッパー」であります。これまでの前例や既成概念にとらわれることなく新しい姿勢で、「新しい豊かさ」を創造し、人と人、地方と未来をつないでいくことを目指しております。不動産の持つ無限の可能性を探り、理想を具現化してまいります。
(2)中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標
2021年2月に第4次中期経営計画「IDEAL to REAL 2023」を策定し、「想定外の経済環境の変化に耐えうる事業基盤の確立」と「収益構造の変換と事業領域の拡大を同時実現」を経営戦略とし、計画達成に向け事業を推進しております。
また、2021年10月に優良な賃貸収益不動産を多数保有する株式会社ピカソ及び同社グループ会社7社の子会社化により、当初の計画を上回るペースで投資計画が進捗するとともに、安定した賃貸収入確保による「収益構造の転換」を一気に実現しております。
これに伴い、2022年3月25日開催の取締役会において、中期経営計画の最終年度である2023年12月期の賃貸利益割合等の経営目標の一部を修正することを決議しております。
修正した第4次中期経営計画の「IDEAL to REAL 2023」の詳細は下記のとおりとなります。
1.経営戦略基本方針
①想定外の経済環境の変化に耐えうる事業基盤を確立する。
いかなる経済環境下においても資金調達力を維持することができる、堅固な事業及び財務基盤を確立させること。
②収益構造の変換と事業領域の拡大を同時に実現する。
不動産賃貸事業の拡大により、フロー収益重視からストック収益重視への収益構造の転換を図ると同時に、事業の多様化及び事業展開地域の拡大を実現させること。
2.基本方針 「転換&飛躍」
「転換」
・長期収益不動産への積極投資、BS構造の改善
・フロー重視の経営からストック重視の経営へと転換
「飛躍」
・中部電力グループシナジーの発展
・売上高1,100億円、営業利益160億円の達成(中期経営計画最終年度)
3.経営戦略
①持続的かつ安定収益構造への転換
②事業の多様化、エリア戦略による既存コア事業の安定成長
③事業の多様化、エリア戦略による新規事業のコア化
④新領域の挑戦
⑤日本エスコングループシナジー強化
⑥5大都市を中心とした拠点拡大
⑦中部電力グループシナジー強化
⑧ESGの推進
4.業績計画
(単位:百万円)
|
2020年 12月期 |
2021年12月期 |
2022年12月期 |
2023年12月期 |
||||||
|
実績 |
実績 |
計画 |
計画比 差異 |
増減率 |
計画 |
当初計画 |
当初計画比差異 |
増減率 |
計画 |
売 上 高 |
77,308 |
79,017 |
80,000 |
△982 |
△1.2% |
100,000 |
98,000 |
2,000 |
2.0% |
110,000 |
営 業 利 益 |
12,202 |
10,381 |
10,800 |
△418 |
△3.9% |
14,000 |
14,000 |
- |
- |
16,000 |
5.経営目標
|
2020年 12月期 |
2021年12月期 |
2022年12月期 |
2023年12月期 |
|||
実績 |
実績 |
計画 |
修正計画 |
当初計画 |
修正計画 |
当初計画 |
|
賃貸利益割合 (注)1 |
14.2% |
21.2% |
23.0% |
26.0% |
24.0% |
30.0% |
26.0% |
ROE (自己資本利益率) |
21.2% |
11.8% |
12.0% |
13.0% |
13.0% |
13.0% |
13.0% |
ROIC (投下資本利益率) (注)2 |
6.6% |
3.2% |
4.0% |
4.0% |
4.0% |
4.0% |
4.0% |
自己資本比率 |
25.8% |
24.8% |
29.0% |
23.0% |
26.0% |
21.0% |
23.0% |
長期収益 不動産割合 (注)3 |
9.5% |
20.6% |
12.0% |
21.0% |
14.0% |
23.0% |
18.0% |
純資産額 |
386億円 |
626億円 |
610億円 |
673億円 |
660億円 |
720億円 |
720億円 |
(注)1 賃貸利益割合:賃貸セグメント利益/セグメント利益合計(調整額除く)
2 ROIC(投下資本利益率):税引後営業利益/(株主資本+有利子負債)
3 長期収益不動産割合:固定資産計上の賃貸収益不動産/総資産
6.投資計画
(単位:百万円)
|
2021年 12月期 |
2022年 12月期 |
2023年 12月期 |
3ヶ年累計 |
|||
|
実績 |
計画 |
計画比差異 |
増減率 |
計画 |
計画 |
計画 |
収益不動産 への投資額 |
76,799 |
30,000 |
46,799 |
156.0% |
40,000 |
60,000 |
130,000 |
その他開発 への投資額 |
19,191 |
25,000 |
△5,809 |
△23.2% |
30,000 |
35,000 |
90,000 |
グロス投資額 |
95,990 |
55,000 |
40,990 |
74.5% |
70,000 |
95,000 |
220,000 |
7.配当政策
当社は株主の皆様に対する利益還元を経営の重要課題の一つと考え、業績の状況、内部留保の充実並びに配当性向等を総合的に勘案・決定し、継続的かつ企業の成長力に応じた安定的な利益還元に努めることを基本方針としております。
第2次中期経営計画より、1株当たり配当額(DPS)を前年度の1株当たり配当額(DPS)を下限として、原則として「減配なし、配当維持もしくは増配のみ」とする累進的配当政策を導入しており、第4次中期経営計画においても累進的配当政策を継続しております。
本中期経営計画期間中、1株当たり配当額は38円以上を維持いたします。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
企業を取り巻く経営環境は、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の急速な拡大により国内外を問わず深刻な影響を被っております。ワクチンの普及や各国による対策等により、2021年10月以降落ち着きが見られたものの、変異株の出現等新型コロナウイルス感染症再拡大の懸念もあり、今後も予測が困難な状況にあり、新型コロナウイルス感染症防止策、有効な薬剤の開発と普及によるアフターコロナ・ウィズコロナを見据えた対応策が喫緊の課題となっています。また、地球温暖化、少子高齢化、人口の減少、ジェンダー問題、格差問題、地政学的リスク等様々な社会課題に加え、IoTやAI等のデジタルテクノロジーが進展しあらゆる分野でのDXが求められ、産業の境界を超えた競争、顧客消費行動、価値観の変化等、競争は益々激化するとともに企業の持続的成長が常に問われる事業環境にあります。
当社グループが、このように急激に多様化、変革している環境下において、持続的に企業価値の向上を図り、社会貢献していくためには、これまでの前例や既成概念にとらわれることのない柔軟な新しい発想で、優良な商品の安定供給、強固な財務基盤、安定した経営、お客様の満足を糧に確実に成長していくことを方針とし、なによりもそこに暮らす人たちの幸せを思い描き、理想を具現化し未来を創造する、暮らしそのものを開発する「ライフ・デベロッパー」を目指す必要があります。
住宅開発、商業開発、物流開発、賃貸事業、オフィス開発、ホテル開発、海外事業、企画コンサルティング、施設運営管理、資産運用、納骨堂事業、不動産クラウドファンディング事業といった不動産ビジネスの多面的な展開により、常に事業の最適バランスを見据えた事業運営を図り、いかなる経済環境にも耐えうる強固な経営基盤を確立するとともに、企業価値の最大化、株主様へのさらなる還元を行うことにより、他にはないオンリーワンの企業を目指してまいります。
具体的な課題としては次のとおりであります。
①経営管理体制
一定の利益を確保できる土地の価格には当然上限があり、適正な価格での仕入れがもっとも重要な課題の一つであります。良質な用地の仕入れを行うためには、優秀な人材の確保と人材育成、情報ルートの常なる拡大、他社とのアライアンスの模索、迅速な判断、慎重かつ大胆な決断が必要となります。
業種特性として、借入残高が大きくなる傾向にあることから、金利上昇環境においては予定した利益計画に差異が出ることも予想され、調達コストの低減、調達方法の多様化、キャッシュ・フローの改善等を強化しつつ、さらなる強固な財務基盤の構築継続が必要となります。いかなる経済環境においても安定した経営を可能とする財務体質の強化に引き続き注力してまいります。
②自社独自体制の強化
当社グループは暮らしをデベロップする「ライフ・デベロッパー」の具現化に取組んでおります。分譲マンションについては、ファミリーを中心とした実需で購入いただくお客様目線で、将来に渡る住み心地を追求し、それぞれのプロジェクトの立地や周辺環境等により企画デザイン間取り等を考慮し、お客様のニーズを創造するものづくりを特徴としております。
商業開発については、地域コミュニティに根差した「暮らし密着型」の商業施設を中心に開発を行っております。
また、直近においては分譲マンションの企画、開発で培った企画力、ノウハウを活かし、賃貸マンションの開発やリゾート地におけるラグジュアリーマンションの企画、開発等にも注力しております。
不動産はひとつとして同じ形状、立地のものはございません。その形状、立地はもとより、その地域、エリアに住む方々や当社が開発する住宅等に住まわれる方々、施設等を利用する方々にとって、理想の住宅、理想のまち、理想の生活環境を提案、提供していくことが当社のミッションであると考え、単なる住宅や施設という空間を創るだけではなく、より豊かな暮らしを提案する「ライフ・デベロッパー」であることを当社グループは目指しております。
当社の開発コンセプトは比較的容易に特徴を出すことができる仕様やデザインだけではなく、土地取得段階やさらに基本設計(企画)の段階でプロジェクトの規模や供給戸数を追求するのではなく、常に最適な企画は何なのかを追求いたします。
このため、マンション開発プロジェクト推進に当たっては、仕入、企画、販売の担当それぞれが一連のプロジェクトとして最初から最後まで関わり三位一体で完結させる事業体制をとっており、当社の強みであるこの体制を常に維持し、強化することによりいかなる事業環境においても優位性を保つことができるよう、常に危機意識を持ち事業を推進してまいります。
③新たな取組み
経済環境のいかなる変化によっても、自己保有が可能なNOI基準を設定・遵守し、案件の取得開発を実行しております。
不動産開発事業については、分譲事業、商業開発事業だけにとどまらず近年においてはeコマース市場の拡大を捉えた物流開発事業、オフィス開発、街を再生させる土地区画整理事業の他、コロナ禍においても底堅く堅調な賃貸マンション事業、海外投資事業、納骨堂事業、不動産クラウドファンディング事業にも取組んでおり、次代を見据えた事業領域の拡大を推進してまいります。
不動産流動化事業については、連結子会社である株式会社エスコンアセットマネジメントにおいて底地・暮らし密着型商業施設を主な資産とする公募REIT(エスコンジャパンリート投資法人)の運用を行っております。直近においては、賃貸マンションを主な資産とする私募ファンドを複数組成し、私募REITの組成を企図した取組みも行っております。
不動産賃貸事業については、第4次中期経営計画における経営戦略基本方針である「フロー収益重視からストック収益重視への転換」として賃貸事業を重点的に推進するために、賃貸事業を主な事業とする企業のM&Aを実施する等、収益構造の安定化に引き続き注力してまいります。
さらに、2021年4月に中部電力株式会社(以下「中部電力」といいます。)の連結子会社となったことにより、当社の信用力が向上し、資金調達方法の多様化や資金調達コストの低減が可能となり、さらなる中部圏での事業拡大、同社グループとの複数の共同事業着手等、着実にシナジー効果を発揮しております。当社のまちづくりのノウハウと中部電力グループが持つエネルギーマネジメントの知見を掛け合わせ、「新しいコミュニティの形」の実現を目指し、都心・駅前の大型再開発、大型まちづくりにも取組んでまいります。
また、不動産を開発するだけでなく、連結子会社である株式会社エスコンプロパティにおいて、不動産の付加価値を一層高めていく、プロパティマネジメント事業にも注力するとともに、不動産の利用形態に適合するオペレーション機能を有する唯一無二の総合デベロッパーとしての地位を確立するため、連結子会社である株式会社エスコンリビングサービスにおいて、不動産オペレート事業の充実による不動産開発力の幅と奥行きの拡大を図ってまいります。
次代を見据えた取組みとしては、海外投資事業や都市型の納骨堂の永代使用権の販売事業を推進するとともに、直近においては不動産クラウドファンディング事業を手掛ける企業のM&Aを実行いたしました。
④中長期的な取組み
現在推進する第4次中期経営計画「IDEAL to REAL 2023」において経営戦略の一つに掲げている「ESGの推
進」を強化してまいります。2030年の新たな温室効果ガス排出量削減や2050年のカーボンニュートラル等国全体での気候変動に対する取組みは当社グループにとっても経営上の重要な課題と捉えております。また、経営の透明性、公正性を高め信頼されるガバナンスの効いた企業を目指すとともに、地域活性化等社会にも貢献してまいります。
持続可能な開発目標であるSDGsについても強い意志を持ち取組んでまいります。
人々が暮らす街、住まい、空間を提供する当社グループは、多様な人々が様々なライフスタイル、働き方、住まい方を選択でき、安全に安心して、生き生きと生活できる活力ある環境、環境性能の高いサステナブルな街づくりを推進してまいります。また、人権を尊重し、多様な人材が活躍できる職場環境を創造していくとともに健康経営についても強化し、企業の社会的責任を果たし、持続可能な社会の実現を目指してまいります。
お知らせ