文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、「お客さま第一」を基本理念として、『イオンモールは、地域とともに「暮らしの未来」をつくるLife Design Developer(注)です。』を経営理念としています。この経営理念の下、持続可能な社会の実現に向けて、企業市民として地域・社会の発展と活性化に貢献する当社の企業活動を「ハートフル・サステナブル」と定め、様々な取り組みを推し進めています。
ローカライゼーションの視点に基づいたエリアごとに個性あるモールづくりを国内外で推し進めることにより、人々のライフスタイルの向上と地域社会の発展に貢献していきます。そして、お客さま、地域社会、パートナー企業さま、株主・投資家さま等のステークホルダーとの共創による取り組みを通じ、地域・社会の課題に対してソリューションを提供し続けることで、地域コミュニティにおける中核施設としての社会インフラ機能のポジションを確立していきます。
(注)Life Designとは、商業施設の枠組みを越えて、一人ひとりのライフステージを見据えたさまざまな機能拡充を行い、ショッピングだけでなく、人との出逢いや文化育成なども含めた「暮らしの未来」をデザインすることと定義しています。
(2)中期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題
当社は、経営理念の実現とさらなる事業成長を遂げるため、長期ビジョンとして2026年2月期(2025年度)にめざす姿を定めています。
2025年にめざす姿 |
①国内モール単一の利益創出でなく、複数の事業からなるポートフォリオの構築をめざす。 |
②連結営業利益900億円超、グローバル商業ディベロッパートップクラスの水準をめざす。 |
③国内モールは増床・リニューアルを積極的に行い、各エリアで圧倒的な地域№1モールへの進化を図る。 |
④海外の成長マーケットを獲得し、海外事業は50モール体制、営業利益270億円(利益率25%)をめざす。 |
当長期ビジョンの下、2021年2月期(2020年度)を初年度とする中期経営計画(2020~2022年度)において、「海外における高い利益成長の実現」「国内における安定的成長の実現」「成長を支えるファイナンスミックスとガバナンス体制強化」「ESG経営の推進」を成長施策として掲げています。成長施策の推進においては以下の経営課題およびめざす姿を定め、ESG視点に基づく経営を通じて、社会的価値と経済的価値の創出を通して、地域社会とともに持続的な成長をめざしていきます。
経営課題およびめざす姿 |
①海外事業の利益成長の実現と新規出店の加速 海外事業における高い利益成長の実現をめざし、中国およびアセアンの成長マーケットへの新規出店の加速および既存モールの増床活性化を推進する。 |
②CX(カスタマー・エクスペリエンス)の創造によるリアルモールの魅力の最大化 国内事業における地域へのソリューション提供、テナント企業との協業による新しい取り組み、重点課題の空床対策等を早期に推進・解決し、CXを創造することでリアルモールの魅力の最大化を実現する。 |
③次世代モールの構築と都市型SC事業の推進 ニューノーマル時代に対応した施設環境づくり、次世代モールの構築、およびオフィスを始めとする複合型やOPA事業の再生も含めた都市型SC事業(街づくり開発)を推進する。 |
④DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進 デジタル技術やデータを活用し、新たなビジネスモデルの創出、お客さまの新たな「暮らし」を創造する事業の開拓、および新時代に対応するオペレーションシステムの確立やES向上を含めたDXを推進する。 |
⑤中期戦略の推進とESG視点に基づく改革の加速 成果指標を明確にしたマテリアリティ(重要課題)への取り組みを中心に、ESG視点に基づく改革を加速し、ステークホルダーに対して経済価値、社会価値、環境価値を創出する。 |
当社は、SDGsと日本および海外における社会課題を考慮したマテリアリティ分析を実施、ステークホルダーおよび自社にとっての重要度を評価し、ESG視点での重要課題として「地域・社会インフラ開発」「地域とのつながり」「環境」「ダイバーシティ・働き方改革」「責任あるビジネスの推進」の5分野10項目からなるマテリアリティを定めています。当社の全社員が個人目標の中にマテリアリティに関する項目を組み込む等、社内における意識向上を図りながら、ESG経営実現に向けた施策を推進しています。
マテリアリティ |
施策 |
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地域・社会インフラ開発 ・持続可能かつレジリエントな インフラ開発 ・生産消費形態 |
・安全・安心・快適な施設の開発 ・地域の魅力を発掘するモールの開発 ・防災まちづくりとしての取り組み |
・公共的機能の拡充 ・EV(電気自動車)の普及・利用を促進 ・公共交通利用促進 |
地域とのつながり ・文化の保存・継承 ・少子化・高齢化社会 |
・ハピネスモールの取り組み ・地域の魅力を磨く究極のローカライズ |
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環境 ・気候変動・地球温暖化 ・生物多様性・資源の保護 |
・気候変動・地球温暖化への対応 ・イオン ふるさとの森づくり(生物多様性) |
・廃棄物リサイクル |
ダイバーシティ・働き方改革 ・健康と福祉 ・多様性・働き方 |
・イオンゆめみらい保育園 ・人材のグローバル化 |
・なでしこ銘柄 ・専門店従業員も含めたES(従業員満足度) 向上 |
責任あるビジネスの推進 ・人権 ・贈収賄 |
・人権方針・人権体制・人権研修 ・腐敗防止への取り組み |
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①地域・社会インフラ開発
(安全・安心・快適なモール運営体制)
お客さまおよび従業員の健康と生活を守り、お客さまとともに地域社会の安全・安心な生活を守ることを目的とし制定したイオンの防疫対策等の基準「イオン新型コロナウイルス防疫プロトコル」に基づき、感染防止対策を徹底したモール館内の環境改善やモールオペレーション体制による管理・運営を行っています。
(防災協定の締結)
当社は、安全・安心なまちづくりをめざし、行政や民間企業等の外部パートナーとの連携を強化しています。国内では、大部分のモールで地方行政と防災活動への協力等に関する協定を締結しています。また、イオンでは陸上自衛隊や日本航空株式会社、全国の電力会社とも協定を締結しており、有事の際は協力してインフラ整備や物資提供等の支援を行い、復興拠点としての役割を果たしています。
②地域とのつながり
(ローカライズの推進)
当社はCX(カスタマー・エクスペリエンス)の創造によるリアルモールの魅力の最大化をめざし、国内でローカライズの取り組みを深化させています。国内では、経営ビジョンの一つである「私たちは、パートナーとともに、地域の魅力を磨き続ける究極のローカライズに挑戦します。」の実現に向けて、全国のモールで「産」(企業)、「学」(教育機関)、「官」(行政)、「民」(団体)、「文」(文化・歴史)、「品」(産品)の6分野におけるコラボレーションにより、地域の魅力を磨き続ける「究極のローカライズ」企画を2015年より推進しています。同様の取り組みを、2021年より中国で実施しており、海外においても地域の魅力を発信する取り組みを推進することで、地域におけるイオンモールの存在価値を向上させていきます。
(イオンモールウォーキング)
お客さまの健康的なライフスタイルをサポートするため館内にウォーキングコースを設置し、季節や天候、時間に左右されず、ショッピングをしながら気軽に運動できるイオンモールウォーキングを国内の大部分のモールで実施しています。
国立大学法人千葉大学と当社は、「イオンモールウォーキングと健康」を題材に共同研究を実施しており、地域のお客さまの健康的なライフスタイル実現へのサポートを目的に、館内へのウォーキングコースの設置やウォーキングイベントの実施、イオンモールアプリへのウォーキング機能の搭載等の取り組みを実施してきました。本研究は、OPERA採択事業として産学が連携することにより、イオンモールウォーキングの取り組みが、地域住民の健康やコミュニティに及ぼす影響を明らかにすることを目的としています。
③環境
(イオンモール脱炭素ビジョン)
当社は「イオン脱炭素ビジョン2050」に基づく脱炭素への取り組みとして、2040年までに国内で排出するCO2等を総量でゼロにすることをめざします。
これまでの取り組みとして、2010年度対比で2020年度エネルギー使用量50%削減を目標に、空調運転の合理化、高効率および省エネ機器の導入、店舗屋上などの太陽光システム設置、LED照明の導入等を進め、2020年実績で2010年度対比エネルギー使用量55.1%削減(床面積原単位)を達成しました。引き続きこれらの削減策に加え、新たにオフサイトでの再エネ発電からの調達、各地域での再エネ直接契約の推進等により、新たな目標として2025年度に大型商業施設である国内全てのイオンモールを実質CO2フリー電力で運営します。CO2発生源の大部分が電気使用であることから、国内のCO2総排出量は2013年対比で2025年80%の削減となります。また、今後は脱炭素社会の実現に向けて、海外を含め取り組みを推進し、全ての事業活動で排出するCO2等を総量でゼロにすることをめざし、取り組みを加速いたします。
(TCFDに基づく情報開示の拡充)
2020年6月に、当社は気候関連課題が各企業にもたらすリスクや機会に関する情報開示タスクフォースである「TCFD」の提言に賛同することを表明しました。
国連IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書における気候変動シナリオを参照し、当社では2℃シナリオと4℃シナリオを選択しました。分析の時間軸としては、2050年における気候変動の影響を対象としており、これらの前提でシナリオ分析を実施し、気候変動によるインパクトの試算を進めています。
リスクと機会の特定に当たっては、当社がモール事業を展開している日本、中国、アセアンの一部地域における主な気候変動リスク・機会を外部情報に基づいて整理し、それぞれのリスク・機会に関する将来予測データを収集しました。これに基づいて、脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会と気候変動に起因する物理リスク・機会について検討し、当社の事業に2050年までに影響を与えうる重要なリスクと機会を特定しています。
今後さらにシナリオ分析を進めることで、定性的な評価のみならず、気候変動により財務的にどの程度の影響があるかを把握するため、定量的なインパクト評価を行い、適切な開示に努めています。
(SBTの設定を表明)
当社は、パリ協定が定める目標に科学的に整合する温室効果ガスの排出削減目標「Science Based Targets(以下、SBT)」を認定する機関「SBTイニシアチブ(以下SBTi)」に対し、コミットメントレターを提出しました。
SBTiは、パリ協定が求める水準と整合する科学的根拠に基づいた目標設定を企業に働きかける国際的な共同団体です。企業が掲げる温室効果ガスの長期的な削減目標が、パリ協定の「地球の気温上昇を産業革命前と比べて2℃未満に抑える」という目標の達成に必要な水準を満たす場合に「科学的に整合している目標(SBT)」であると認定します。
当社では、Scope1・Scope2は「1.5℃水準」、Scope3は「2℃を十分に下回る水準」に目標レベルを設定し、SBTの認定取得をめざします。
Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
(サーキュラーモールの実現)
廃棄物や資源の問題に対しては、サーキュラーエコノミーの考え方をモールの運営に取り入れ、資源循環を行える仕組みを構築することで、廃棄物を「削減する」という考えから「ゼロにする」という前提で、地域の循環型経済圏の構築に取り組んでいきます。循環型社会の実現に向けては、お客さま、同友店さま、地域社会等のステークホルダーとともに、脱プラスチック、食品リサイクル、衣料品回収等の取り組みを通じて、「サーキュラーモール」の実現をめざしています。
(生物多様性保護への対応)
当社は、気候変動など地球規模の環境問題の解決だけでなく、地域に根ざし、自然と調和した街づくりを推進しています。事業活動における生態系への影響を把握し、お客さまや行政、NGO等のステークホルダーと連携しながら、その影響の低減と保全活動を積極的に進めてまいります。
生物多様性保護への対応の定量目標として、いきもの共生事業所®認証を、2050年度までに当社が管理・運営する直営モール全店で取得することを目標としており、2022年4月末時点においては15施設で同認証を取得しています。
④ダイバーシティ・働き方改革
(ダイバーシティ経営の推進)
当社は、人材こそが持続的に成長していくための最大の経営資源であるという考え方のもと、全ての従業員が健康で自分が持ち合わせる能力の100%を発揮し成長し続ける、多様性を強みとする組織をめざしています。特に、社会の変化や従業員のニーズの変化に対応し、異なる視点からの意見を積極的に交わすことで創造的なビジネスモデルが生まれると確信し、多様な人材が活躍できるダイバーシティ経営を推進しています。そのために人材成長を支える様々な人材育成・教育プログラムを整備しています。
女性活躍を支援する仕組みづくりとして、具体的には女性従業員の産休から復職までの社内外の制度の周知、事業所内保育園「イオンゆめみらい保育園」の整備、女性の上位職へのチャレンジ意欲を醸成する研修等の教育機会を増やしています。また、女性だけでなく男性の育休取得促進にも力を入れており、男女の固定的な役割意識をなくし、女性の幹部社員登用に対する上司や職場の理解につなげています。こうした取り組みは、仕事と子育ての両立支援に積極的に取り組む企業として「くるみん」認定を受けています。
海外での人材登用については、当社の理念を深く理解するローカルスタッフによってそれぞれの地域に根ざした運営を行うことを基本方針としています。海外事業の将来を担う人材を育成するための国内と海外間における人材交流の活発化、国籍に関係なく成果を上げた人材の積極的な管理職への登用等を推進しています。
<女性活躍推進におけるKPI>
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目標 |
実績 |
女性の管理職比率 |
30%(2025年度末) |
19.4%(2021年度末時点) |
女性の役員比率 |
30%(2023年度末) |
35.3%(2021年度末時点) |
男性の育児休職取得率 |
100%(2024年度末) |
100.0%(2021年度末時点) |
(健康経営の推進)
当社では、従業員の健康づくりが企業活動のベースであり、従業員が健康であることにより、地域のお客さまに健康と心の豊かさをもたらすサービスを提供できるとの考えのもと、健康経営を推し進めています。
なお当社は、経済産業省と日本健康会議の主催で特に優良な健康経営を実践している法人を顕彰する制度である健康経営優良法人制度において、2022年3月に「健康経営優良法人2022(大規模法人部門)」に認定されました。
⑤責任あるビジネスの推進
(イオンモールの人権方針)
当社はイオンの人権基本方針に基づき、人権を尊重し、性別や国籍等に関わりなく企業の発展に参画できる組織、またすべての従業員の能力が最大限に発揮できる職場の実現をめざしています。全従業員が年1回人権研修を受講しており、さらに、社内外の相談窓口を記載した小冊子を全従業員に配布するとともに、就業規則に人権尊重、差別禁止等の事項を明記しています。
(持続可能な取引のためのガイドラインの策定)
人権侵害となるような事案発生を未然に防ぎ、持続可能なバリューチェーンを構築するため、イオンの人権基本方針およびイオンサプライヤー取引行動規範に基づき、当社独自に「持続可能な取引のためのガイドライン」を新たに策定しました。
12月には、建設関係のお取引先さまを対象に同ガイドラインの理解促進および普及を目的とした説明会を実施しました。当社のお取引先さまと価値観を共有し、社会的責任を果たすための手引きとして遵守するとともに、実施状況の把握に努めながらサプライチェーン上の人権リスクの管理と低減をめざしています。
(人権デュー・ディリジェンスの実施)
イオンの人権基本方針では人権デュー・ディリジェンスの実施を明記しており、当社では2020年より取り組みを開始しております。人権保障の担い手としての役割を担うべく、当社でも持続可能なバリューチェーンを構築するための取り組みを継続していきます。
(腐敗行為防止のための体制)
当社は、贈賄行為を未然に防止すべく「贈賄防止基本規則」を順守し行動の規範としており、いかなる場合でも賄賂などの不正な手段によって利益を求めることはないことをすべての従業員が認識しています。さらに、企業倫理の浸透・定着を目的に、取締役および従業員の階層別に研修を実施するとともに、目標管理制度の行動評価にも企業倫理を取り入れています。
腐敗行為防止に向けた監督体制として、管理本部長を委員長とする「コンプライアンス委員会」を設け、法令、定款および社内規程の遵守状況等の確認と問題点の指摘及び改善策の審議を行い、コンプライアンス委員会の議事については経営会議に報告しています。また、重要案件については取締役会に報告するとともに、年間報告を行っています。また、全従業員を対象とした機密性および匿名性を担保した内部通報窓口として、ヘルプライン「イオンモールホットライン」を設置(当社労働組合においても「組合110番」を設置)し、子会社には、当社の仕組みに準じたヘルプラインを設置しています。運用にあたっては、ヘルプライン利用者のプライバシーの保護および不利益な扱いを受けることのないよう周知徹底しています。
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