文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、以下の経営理念を掲げ、経営の基本方針としております。
経営理念
未来への扉を。『家に価値タス』ことを通じて、地域とお客様に。
事業に取り組む基本姿勢及び事業を通じて実現したいこと
・私たちは、お客様の顕在ニーズと潜在ニーズを把握することに努め、リフォームの企画と仕上がりにこだわり続けることにより、持ち家を望むすべての人に、手の届く価格で、安心・清潔・実用的な住まいを提供する。
・私たちは、十分に活用されず地域に埋もれてしまっている家や、一般的な中古住宅市場では売りにくい家に対しても、潜在的な価値と需要を見出し、自ら買い取って付加価値を加えるリフォームを企画することで、中古住宅に新たな生命を吹き込む。
・私たちは『家に価値タス』活動を通じて、地域とそこに暮らす人々の生活に一つでも多くの『未来への扉』を提供し、新築中心の日本の住まい方から、家を再生して住みつなげるという新しい住まい方を提唱して、地域の活性化・発展を支援し続けていく。
(2) 経営戦略等
当社グループは、将来的には年間販売件数1万件超を目指し、その通過点として第3次中期経営計画(2022年度から2024年度)を2022年5月に発表いたしました。
当社グループを取り巻く環境は、仕入面・販売面共には大きなマーケットが存在すると判断しており、その様な外部環境の元で安定的に成長するためには、当社グループが良質なリフォーム済み中古住宅を供給する能力の拡充が重要な課題であると認識しております。一方、中古の戸建住宅は、雨漏り、白蟻、隣地との権利関係等の特有のビジネスリスクを有していることから、急速な成長を志向せず、提供する住まいの質と価値を維持・向上させながら成長することが重要であると判断しております。
上記より、第3次中期経営計画期間は、売上高及び営業利益の年平均成長率は10%とし、売上高1,340億円、営業利益175億円を目指してまいります。また、在庫回転率と営業利益率を高い水準で維持向上させるべく、資産効率性の指標であるROA(営業利益÷総資産の期首期末平均)を20%以上とすることを経営指標として定めております。さらに、資本効率性も高い水準を維持すべく、第3次中期経営計画期間の配当性向は40%以上と定めております。
第3次中期経営計画を達成するための成長戦略は以下の通りです。
① 新卒中心の採用・各種制度拡充を通じた従業員のリテンション強化・店長以上の人材の育成・輩出の継続
当社グループの事業成長には、営業員の増加と生産性(営業員一人当たりの売買件数)の向上が必要だと考えております。
営業員の増加については、採用・育成・リテンションが必要であり、採用については、これまでと同様に地元のために働き、貢献したいという新卒社員を中心に採用を継続してまいります。営業員の育成については、新卒社員の配属された店舗において店長が果たす役割が大きいため、各種研修を通じた店長級人材の育成に注力してまいります。リテンションについては、離職率の先行指標となるエンゲージメントサーベイの調査結果を活用しながら、各種人事制度の拡充を実施し離職率の低減に努めてまいります。
② BPRを通じた業務全体の最適化やシステム導入の検討による生産性の向上
上述の通り当社グループの事業拡大には生産性(営業員一人当たりの売買件数)の増加が必要だと考えております。当社グループでは現在に至るまで、継続的な業務改善を通じた生産性の改善に努めてまいりました。今後より一層の生産性の向上を図るためには業務フロー全体の最適化が必要であるとの考えのもと、第3次中期経営計画期間中はBPR(Business Process Reengineering:業務フローの抜本的な見直し)を推進してまいります。BPRの一環として、業務内容の見直しとスリム化された業務フローに基づいた各種システム導入を検討してまいります。
③ 住宅供給の重要なパートナーである工務店と大工の取り扱い能力の拡充
当社グループは、中古住宅のリフォームをリフォーム協力会社に外注して施工しております。そのため、当社グループの事業成長にあたってはリフォーム協力会社及び実際に工事を行う大工のリフォーム工事の施工能力を確保することが不可欠です。従来、リフォーム協力会社に対しては、年に1回の施工能力お余力及び後継者の有無等に関するアンケート調査を実施しており、当面の施工能力に問題がない旨を確認できております。しかしながら、長期の成長を実現するうえでは、大工の高齢化が施工能力の制約となる可能性があるため、成長の制約にならないように先んじて打ち手を講じることで当該課題に取り組んでまいります。
④ 既存事業の成長加速に向けたM&Aの検討強化
当社グループは、中古住宅再生事業でNo.1にポジショニングしており、当社グループのビジネスモデルの強み及び蓄積したノウハウを基に、既存事業である中古住宅再生事業の成長を加速させるためM&A等の検討も強化してまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
売上高、営業利益、ROA及び配当性向を経営目標の達成状況を判断するための客観的な指標等とし、これらの向上を図ってまいります。達成状況につきましては、月次の取締役会及び経営会議、週次での商況モニタリング会議等で定期的にモニタリングを行ってまいります。
(4) 経営環境
新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、ワクチン接種の普及と感染対策が進み、経済活動に回復の兆しが見られるものの、景気の先行きは依然として不透明な状況が続いております。
当社グループが属する中古住宅再生事業におきましては、中長期的な視点では政府による中古住宅取得支援策の一層の充実等により伸長していくと見通しておりますが、国内経済や雇用・所得環境の不安から短期的には住宅購入意欲の減退も懸念されております。
一方、当社グループの仕入物件の対象となる空き家におきましては、1978年には空き家数は268万戸、空き家率は7.6%であったものの、2018年には空き家数は849万戸、空き家率は13.6%となり、空き家数及び空き家率共に年々増加しており、今後も増加されるものと見込まれることから、(出典:総務省資料「平成30年住宅・土地統計調査 確報集計」)当社グループの仕入対象物件は増加すると見通しております。
また、2021年3月19日に国土交通省が発表した「住生活基本計画(全国計画)」において既存住宅流通及びリフォームの市場規模を2018年時点の12兆円から2030年までに14兆円市場に、長期的目標として20兆円市場とすることを国家戦略として掲げていることからも、今後の成長産業として期待されております。実際に、日本における既存住宅の流通シェアは約14.5%(2018年)と、米国の81.0%、英国(イングランドのみ)85.9%、仏国69.8%と欧米諸国と比べて小さい状況であり、市場規模の拡大余地は十分にある市場となっております(出典:国土交通省「既存住宅市場の活性化について」(2020年5月7日))。並びに、首都圏のマンションのみの販売戸数は、新築マンションは45.8%、中古マンションは54.2%であり、中古マンションが新築マンションを上回っております(出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2021年)」(2022年1月21日))。これは、住宅購入者は新築か中古という基準で住宅を購入するのではなく、安心、清潔、実用的な住宅を供給することが出来れば中古住宅の流通比率は向上できる余地があるという先行指標であると判断しております。
一方、三大都市圏への人口の集中と地方都市の高齢化が懸念されておりますが、中古再生事業を行う競合他社や新築分譲会社、ホームビルダーが三大都市圏に集中する中で、当社グループは全国に事業展開を行い各地方都市で継続的に販売を行い成長しております。これは、上記の様に三大都市圏に不動産会社が集中した結果、地方都市での住宅購入の需要に対して供給が不足するという状況が生じていることが背景にあり、今後も地方都市における中古再生住宅のニーズは拡大すると見立てております。新卒採用を中心に、優秀な人材の採用と育成により生産性を高めつつ、店舗あたり人員を増やすことでエリア展開のメッシュを細かくし、未開拓エリアへの進出を継続的に実行することで、今後も三大都市圏に依存せず、地方都市を中心とした事業展開によって一層の事業拡大を図ってまいります。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① サステナビリティ経営
近年、サステナビリティ経営が企業の社会的責任として求められ、SDGsに代表される社会課題解決の取り組みにおいて企業が果たす役割がますます重要となっております。当社グループの中古住宅再生事業は、新築住宅建築と比較してCO₂排出量や木材使用量を大幅に抑えていることから環境保護に寄与し、循環型経済の一翼を担う事業と認識しております。また今後、低コストで実現可能な住宅の省エネ性能向上のためのリフォーム工法を検討し、CO₂排出量の削減に一層努めてまいります。
空き家を再生して流通させることで、社会課題である全国の空き家問題の解決を図りながら、地域の活性化にも貢献できるものと考えております。また、当社の販売する住宅の平均販売価格は同エリアの新築の半額程度であり、従来持ち家に手が届かなかったお客様にも清潔・安心な住宅を提供しております。
ガバナンス面に関しましては、少数株主利益の保護を意識し、お客様視点・経済合理性の観点からの経営判断に努めております。なお、2022年3月期のニトリとの取引金額は45百万円で、うち販促活用で利用するニトリ商品券が44百万円を占めております。
2022年4月にはサステナビリティ委員会を設置しており、同委員会を中心に今後も社会課題の解決を図りつつ、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な成長を目指してまいります。
② 人材の確保と育成の強化
当社グループでは、仕入物件の選定・調査・仕入、リフォームの企画、販売活動といった一連の工程を従業員が一気通貫で行う独自の体制を取っており、優秀な人材を確保・育成していくことが経営課題解決のための重要な柱であると認識しております。また、全国各地の販売網に人材を供給するため、優秀な人材を全国的に採用する必要があり、継続して新卒の定期採用活動を行っており、2022年3月31日時点で在籍する新卒入社の従業員数は434名とグループ全体のうち約半数が新卒定期採用により入社した社員となっております。今後も安定した新卒採用を中心とし、並行して即戦力となる中途採用を行うことで、事業規模に必要な人員拡大を図ってまいります。また、社内教育・研修制度及び業績評価に連動した報酬制度並びにリフレッシュ休暇制度の充実・構築を図り、個々人の能力向上を促し、従業員一人一人の長所を活かし、モチベーションを高めながら成長をサポートできる仕組みを強化してまいります。
③ 生産性の向上
・エリアマーケティングの強化
既存住宅流通市場に占めるシェアにエリア間でバラつきが見られることから、営業組織体制を更に細分化し、エリア特性に合わせた成長戦略を立案し実行できるようにすることで成長ポテンシャルの高いエリアの開拓を進め、持続的な成長を図ってまいります。
・商品力の向上・管理の徹底
当社は、仕入前に当社独自のチェックリストに基づいて営業担当者がリフォーム協力会社及び白蟻調査会社も交えた三者立会いによる入念な調査を可能な限り実施して品質の良いリフォーム済み中古住宅の販売を行っております。また、当社グループは、既存住宅流通を活性化させるという社会的責任を担っているとの自負の下、旧耐震物件の新耐震適合化を推進し、中古住宅も安心だという社会的認知度・お客様満足度を高めることに努めてまいります。商品力を更に高めるためには、リフォーム工事の担い手であるリフォーム協力会社とのネットワークの維持・拡充が重要であるとの認識から、定期的な事例研究の場を設け、品質の高いリフォーム済み住宅の安定的な提供に注力してまいります。
・在庫回転率の向上
当社グループは仕入後にリフォーム工事を行い、販売を行うことから、販売用不動産の仕入計上から売上計上までに一定の期間を要しております。物件取得からお客様への引渡しまでの期間が長期化することは財務体質の脆弱化を招くと共に営業現場の効率を低下させる可能性があります。そこで、買取決済後に速やかにリフォーム工事に着手できるようリフォーム協力会社と連携して商品化までの期間を短縮しております。またWEB上でリフォーム期間中の完成過程を積極的に公開し過去の営業活動時に取得した潜在的顧客の情報に基づき、近隣の住宅を仕入れた際には当該顧客に個別にご案内を行っております。これらの取り組みにより、リフォーム完了前の成約率を向上させ、在庫回転率の向上、財務体質の強化を引き続き図ってまいります。
・当社グループの認知度の向上
当社は「買取りのカチタス」としてブランディング戦略を立て、2013年7月より地方部を中心にテレビCMやラジオCMを行っており、2013年10月以降、3ヶ月に一度継続的に社名認知度調査(毎回、テレビCM実施エリアを中心とした10道県をローテーションして1,100件に対しWEBアンケートにて実施)を実施しております。
2022年5月調査では、テレビCM実施エリアに限れば46.9%の社名認知を獲得するに至りました。さらに「『家を売る先の会社』と言われてどこが思い浮かびますか?」との設問(選択肢を提示しない純粋想起による回答)に対しては、大手不動産会社を抑えて当社が11.9%と1位の想起を得ております。引き続き認知度向上のため地方エリアにおけるCMを始めとするプロモーションを継続的に強化してまいります。
④ 金融機関との安定した取引
当社グループは、外部金融機関からの調達に過度に依存しない財務体質にすべく在庫回転率の向上を図っているものの、不動産仕入等に要する運転資金が大きいため金融機関からの融資を必要としております。また、現状、当社グループの借入は主にシンジケートローンによる借入であることから、シンジケートを構成する金融機関との良好な関係維持が重要であります。そのため、健全な財務状況の確保と迅速かつ正確な適時開示を行うことで金融機関との強固かつ良好なパートナーシップを築き、安定的かつ継続的な融資取引を図ってまいります。
なお、従来のシンジケートローン契約では在庫不動産に対して担保設定がされていたものの、2022年3月25日付「シンジケートローン契約の締結及び営業外費用の計上に関するお知らせ」の通り、リファイナンスの結果、無担保化されていることからも金融機関との間では良好な関係を構築できていると判断しております。
⑤ 内部管理体制とコンプライアンスの強化
当社グループは、取締役会による内部統制の構築及び監査役による業務監査を行うことで、常に法令等を遵守すると共に適切な経営が行われる管理体制を構築しております。しかし、多様化・複雑化する法令・制度及び社内規定等に抵触するケースが生じる可能性は否定できません。これらの違反等に対応するために、代表取締役社長、営業本部長、管理本部長、常勤監査役、社外監査役、内部監査室室長、管理部長等が出席し、原則として毎月1回コンプライアンス委員会を開催しております。また管理担当役員をコンプライアンス担当役員に任命し、コンプライアンス担当役員、監査役を中心に法令等の遵守状況を定期的に確認するためのセミナーや業界団体の勉強会に参加してまいります。また、社内に向けても定期的にコンプライアンス事例の共有等を図りながら注意喚起を行うことで、企業全体としてコンプライアンス意識を醸成し、倫理観の高い組織風土を継続的に構築してまいります。
⑥ ニトリとの業務提携
当社は、2017年4月に、ニトリとの間で、それぞれが有する技術、ノウハウ、商流・物流ネットワークその他経営資源を相互に利用し、両社の事業価値の最大化を図ることを目的に業務提携契約を締結しております。これまでの取り組みとしてニトリ製の家具を設置した住宅の販売や販売活動でのニトリ商品券の活用等を行ってまいりました。また、当社グループの販売用不動産に付加価値を付けると共に、お客様が購入後の生活空間をイメージし易くすることを目的として、ヴァーチャルでニトリの家具を設置し、その様子をWEB上でお客様が確認できるヴァーチャルホームステージングを実施しており、実際にお客様からのお問い合わせの増加並びに成約率向上等の効果が得られています。今後も、ニトリとの業務提携を通じたシナジー効果を発揮すべく、お客様の利便性向上及び両社のコストダウンに資する施策の具体化を進めてまいります。
⑦ 新型コロナウイルス感染症の影響への対応
新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、ワクチン接種の普及と感染対策が進み、経済活動に回復の兆しが見られるものの、景気の先行きは依然として不透明な状況が続いております。その中で、販売面では「低価格で高品質の住宅に住みたい」というニーズは底堅い一方、仕入面では対面機会の減少等が仕入れの減少につながるおそれがあります。当社グループとしましては、引き続き仕入を拡大するためのプロモーションを継続・拡大し、非対面の査定も可能である旨を訴求することで仕入れの拡大と安定的な成長に努めてまいります。
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