当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2022年6月23日)現在において、当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染者数の動向や度重なる緊急事態宣言の発出と解除等により個人消費の持ち直しと落ち込みの動きが見られるなど、引き続き先行きが不透明な状況で推移いたしました。当社グループにおきましても、外出自粛やテレワーク浸透等の影響を受けつつも、消費回復の基調をとらえ、お客様の暮らしに密着した事業を通じて沿線地域での持続的な発展に貢献する企業集団として、お客様と従業員の新型コロナウイルス感染症対策を講じながら、各事業を推進いたしました。また、連結経常利益の確保や有利子負債の削減を当期の経営課題として掲げ、コストの徹底的な削減や生活ニーズの多様化に応える事業を推進することで経営体質の強化をはかってまいりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。前期比較は基準の異なる算定方法にもとづいた数値を用いております。
2021年度の連結業績は、以下のとおりであります。
収益認識に関する会計基準等の適用により、流通事業を中心に減収となったものの、前年の臨時休業や外出自粛等からの回復等により、運輸事業・レジャー事業を中心に増収となり、営業収益は506,023百万円(前期比2.0%増)となりました。
営業収益の増加のほか、事業構造改革による各種コストの削減等により、営業利益は24,732百万円(前期は13,577百万円の営業損失)となりました。
営業外収益については、雇用調整助成金等の助成金収入や、旅行業における受取補償金の計上等により、11,905百万円(前期比0.2%減)となりました。
営業外費用については、有利子負債の削減により支払利息は減少したものの、旅行業における支払補償費の計上等により9,231百万円(前期比12.0%増)となり、経常利益は27,406百万円(前期は9,892百万円の経常損失)となりました。
特別利益については、工事負担金等受入額が減少したものの、固定資産売却益の計上等により、3,017百万円(前期比39.8%減)となりました。
特別損失については、前連結会計年度に業績不振や不採算施設の撤退に伴う減損損失及び旅行業に係るのれん償却額を計上したものの、再開発計画による施設の閉鎖に伴う減損損失及び早期退職の募集に伴う退職特別加算金の計上等により6,523百万円(前期比62.5%減)となりました。
これらの結果、税金等調整前当期純利益は23,900百万円(前期は22,279百万円の税金等調整前当期純損失)を計上し、法人税等を控除した当期純利益は13,487百万円(前期は25,149百万円の当期純損失)となりました。また、ここから非支配株主に帰属する当期純利益を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は13,453百万円(前期は24,965百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
(参考)収益認識に関する会計基準等の影響額
セグメント情報の業績を示すと、次のとおりであります。
なお、各セグメントの営業利益をセグメント利益としております。また、各セグメントの営業成績のうち「調整額」は内部取引消去額を表しております。
(運輸事業)
鉄道業におきまして、当社では、安全・安心で暮らしやすく、そして選ばれる沿線を目指して、様々な取組みを進めております。
安全面では、竹ノ塚駅付近の上下緩行線高架橋と竹ノ塚駅新駅舎の使用を開始するとともに、2か所の踏切を廃止し、安全性向上をはかりました。また、清水公園~梅郷間、とうきょうスカイツリー駅付近及び春日部駅付近において高架化工事を推進いたしました。さらに、ホーム上の安全対策として、竹ノ塚駅、獨協大学前<草加松原>駅及び越谷駅2・3番ホームへのホームドア設置に向けた準備工事を推進いたしました。また、事故・災害等の異常時における対応の強化をはかるべく、消防と連携した異常時総合訓練及び警察と連携した駅・車内における不審者対応訓練を実施するとともに、車内のセキュリティ向上とテロ防止を目的として、車内防犯カメラの設置を推進いたしました。
営業面では、新しい生活様式や多様化する通勤スタイルを広くサポートするため、「TOBU POINT」に登録したPASMOで東武線に乗車すると「トブポマイル」がたまるサービスを開始いたしました。また、日光・鬼怒川エリアにおいて、マイカーによる来訪から鉄道への転換をさらに促進し、「環境にやさしい観光地」としての日光地域のブランド強化と周遊観光の振興による地域活性化等を目的に、国内初の環境配慮型・観光MaaS「NIKKO MaaS」のサービスを開始いたしました。今後も、2023年に特急スペーシアの新型車両を導入するなど、観光需要の喚起をはかる取組みを進めるとともに、環境負荷軽減にも取り組んでまいります。
一方、徹底した経費節減の取組みにより固定費の削減に努めたほか、ダイヤ改正では、お客様の行動変容や将来的な輸送需要を踏まえた輸送力・運行形態の見直しによる規模の適正化をはかるとともに、特急列車を除く南栗橋以北の日光線・鬼怒川線で全線にわたりワンマン運転を開始いたしました。厳しい事業環境下においても安定した利益を確保できる体制を構築すべく、当期に策定した事業構造改革の方向性のもと、今後も引き続き固定費の削減に取り組んでまいります。
バス・タクシー業におきまして、東武バスグループでは、事業区域が近隣に位置する東武バスセントラル㈱と東武バスイースト㈱を合併し、両社の経営資源とノウハウを集約して、多様化するお客様のニーズに迅速かつ柔軟に対応できる経営体制の強化をはかりました。
運輸事業全体としては、前期の落込みからの回復やダイヤ改正によるTJライナーの増発等により、営業収益は173,264百万円(前期比8.9%増)、営業利益は11,759百万円(前期は5,224百万円の営業損失)となりました。
(営業成績)
(参考)
(提出会社の鉄道業成績)
(注) 1 乗車効率の算出方法
乗車効率=延人キロ(駅間通過人員×駅間キロ程)÷(客車走行キロ×平均定員)×100
乗車効率とは、客車走行車両定員に対する旅客輸送量を見るためのものであります。
2 定期外旅客収入は、特急料金及び座席指定料金を含んでおります。
スカイツリー業におきまして、「東京スカイツリー®」では、4階展望台入口フロアのリニューアルを行い、従前の対面式に加え、非対面で展望台入場チケットを購入いただける券売機を新たに導入し、新型コロナウイルス感染症対策をはかりました。また、人気アニメとのコラボレーションイベントの開催や「初日の出特別営業」を2年ぶりに実施し、誘客に努めました。
ホテル業におきまして、当社及び㈱東武ホテルマネジメント等では、「東武鉄道運転シミュレータールーム」をはじめとした話題性のある商品企画による認知拡大及びホテルの新しい体験価値の創出や、巣ごもり需要等を捉えた商品の造成・販売を行うなど、増収に努めました。一方、外注業務の内製化や宴会・婚礼部門の見直し等、固定費の削減を行い、事業構造改革を推進いたしました。
旅行業におきまして、東武トップツアーズ㈱では、旅行需要が低迷する中、店舗網の再編等によりコスト抑制をはかるとともに、自治体等の各種感染防止対策事業や認証事業を受託するなど旅行販売以外の事業拡大により増収に努めました。
遊園地・観光業におきまして、「東武動物公園」では、人気アニメとのコラボレーション企画によるオリジナルグッズの販売等により増収に努めたほか、「東武ワールドスクウェア」では、園内展示物である「首里城」のライトアップを初披露した「ライトアップ&イルミネーション」を開催し、誘客に努めました。
レジャー事業全体としては、旅行業における新規業務の受託や収益認識に関する会計基準等の適用等により営業収益は108,311百万円(前期比177.3%増)となり、厳しい事業環境が続く中で各種コストの削減に努めたものの営業損失は1,182百万円(前期は18,484百万円の営業損失)となりました。
(営業成績)
(参考)
(不動産事業)
スカイツリータウン業におきまして、「東京ソラマチ®」では、「東京ミズマチ®」との回遊促進イベントを開催し、地域活性化と誘客に努めました。また、浅草と「東京スカイツリータウン®」をつなぐ北十間川周辺エリアでは、隅田公園等の公共空間で開催されるイベント等において積極的に連携し、エリアの賑わいを創出いたしました。
不動産賃貸業におきまして、当社では、東武動物公園駅西口において、地域の方々と来街者が交流する「お買い物とまちづくりの活動拠点」をコンセプトとした商業施設をオープンいたしました。本施設では、地域産品等の販売や交流の接点である芝生広場やシェアキッチンの設置等により、地域活性化につながるサービスを提供しております。また、サービス付き高齢者向け住宅及びクリニック等が一体となった複合賃貸マンション「ソライエアイル岩槻」を開設し、多世代が暮らしやすい街づくりを推進いたしました。さらに、職住近接を実現するために野村不動産㈱と共同で店舗型サテライトオフィスを開設したほか、駅ナカにはボックス型サテライトオフィス「EKI DESK(エキデスク)by H¹T (エイチワンティー) BOX」を北千住駅等12駅に設置し、お客様の利便性向上をはかりました。
不動産分譲業におきまして、沿線価値向上と沿線定住人口増加を目的として、分譲マンション「ソライエグラン流山おおたかの森」(流山市)を販売したほか、南栗橋駅前エリア(久喜市)において産官学連携による次世代の街づくりを推進するプロジェクトを発表し、事業に着手しました。
不動産事業全体としては、不動産分譲業において大規模マンションの販売が好調に推移したこと等により、営業収益は62,203百万円(前期比14.7%増)、営業利益は15,559百万円(前期比13.6%増)となりました。
(営業成績)
(参考)
(流通事業)
百貨店業におきまして、㈱東武百貨店では、池袋店において、お客様の在宅時間充実に向けた需要の高まりをとらえ家具インテリア店「匠大塚」とデジタル家電専門店「ノジマ」を誘致し、テナント化を進めることで安定収益の確保に努めました。船橋店においては、生鮮・グロサリー売場を全面改装し、地域密着型の「FUNABASHI いちばんち市場」をオープンしました。
ストア業におきまして、㈱東武ストアでは、本蓮沼駅前店及び東武動物公園駅前店をオープンし、エリア特性に合わせた店舗出店を推進するとともに、高齢化が進む地域への移動スーパー「とくし丸」の運行により、地域に根ざしたサービスの向上と増収に努めました。
そのほか、東武商事㈱では、店舗運営コストやオペレーション負荷の低減及び非対面決済の推進をはかるため、無人決済システムを導入した「ファミリーマート岩槻駅店」をリニューアルオープンしました。
流通事業全体としては、収益認識に関する会計基準等の適用やストア業における内食需要の減退等により、営業収益は136,640百万円(前期比36.8%減)、営業損失は3,976百万円(前期は5,384百万円の営業損失)となりました。
(営業成績)
(参考)
(その他事業)
建設業におきまして、東武谷内田建設㈱では、墨田区において複合施設の外壁改修工事を、東武建設㈱では、壬生町において庁舎の建設工事を、東武緑地㈱では、船橋市において物流施設の植栽工事をそれぞれ完了させました。
そのほか、東武ビルマネジメント㈱では、中央区においてホテルの清掃業務を受注するなど増収に努めました。
その他事業全体としては、営業収益は89,497百万円(前期比0.7%増)、営業利益は3,526百万円(前期比22.6%増)となりました。
(営業成績)
(参考)
なお、当社グループのサービス、生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種のサービス、製品であっても、その内容、形式等は必ずしも一様ではなく、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
当連結会計年度末の総資産は、受取手形及び売掛金や契約資産の増加等により1,689,855百万円となり、前連結会計年度末と比べ7,358百万円(前期比0.4%増)の増加となりました。
負債は、有利子負債は減少したものの支払手形及び買掛金や税金の未払い額の増加等により1,230,636百万円となり、前連結会計年度末と比べ1,243百万円(前期比0.1%増)の増加となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により459,219百万円となり、前連結会計年度末と比べ6,115百万円(前期比1.3%増)の増加となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、45,885百万円となり、前連結会計年度末に比べて938百万円増加しました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益23,900百万円に、減価償却費55,570百万円等を加減算した結果、66,851百万円の資金収入となりました。前連結会計年度末に比べて税金等調整前当期純利益が増加したこと等により27,347百万円の資金収入の増加となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、30,964百万円の資金支出となりました。前連結会計年度末に比べて固定資産の取得による支出が減少したこと等により35,318百万円の資金支出の減少となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、35,005百万円の資金支出となりました。前連結会計年度末に比べて短期借入金及び長期借入金が減少したこと等により75,367百万円の資金収入の減少となりました。
当社グループの資金需要は、営業取引に係る運転資金、設備投資等に係る資金、有利子負債の返済並びに配当等の資金を主としております。
設備投資につきましては、「第3 設備の状況」に記載のとおりであります。
短期的な運転資金は、各事業が生み出す営業キャッシュ・フローに加え、取引銀行との総額150,000百万円の貸出コミットメント契約やコマーシャル・ペーパーの発行並びに、キャッシュ・マネジメント・システム(CMS)によりグループ内の余剰資金を有効に活用しております。
また、運輸事業や流通事業を中心に日々の収入金があり、必要な流動性は確保しているとともに、十分な水準の現金及び現金同等物を保有しております。
設備投資等の長期的な必要資金については、営業活動で得た資金に加え、主力事業である鉄道事業の特性を鑑み、長期安定的な資金調達を行うために、借入金のほか、社債の発行及びシンジケート・ローンの組成、リース等の多様な選択肢の中から最適な調達方法を採用しております。
同時に、年度別償還額の集中を避けることで、将来の借り換えリスクの低減に努めているとともに、金利上昇リスクに備え、固定金利と変動金利のそれぞれの負債残高のバランスを考慮しております。
また、2022年6月には、環境課題解決に資する事業の資金調達手段として、当社初となる「グリーンボンド」を発行いたしました。当社グループにおけるサステナビリティ経営の推進及び沿線地域社会の持続的発展を実現していくことを目的に、調達した資金は、新型の鉄道車両及び太陽光発電システムに係る設備投資資金並びにリファイナンスに充当予定です。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準にもとづき作成されております。その作成にあたり経営者は、資産・負債及び報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りを行わねばなりません。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。
① 株式等の投資
当社グループが保有する株式等の有価証券及びのれんについては、将来の株式市況の悪化または投資対象会社の業績不振等により時価の著しい下落が生じた際には、損失の計上が必要となる場合があります。
② 販売用不動産の評価
当社グループが保有する販売用不動産については、地価の下落や市況悪化等により時価の下落が生じた場合には、損失の計上が必要となる場合があります。
当社グループが保有する固定資産のうち、減損の兆候がある資産または資産グループについて、当該資産または資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。
減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては、経営環境に変化が生じ当初想定した収益が見込めないなど、将来キャッシュ・フローの見積りに用いた仮定に変更があった場合には、減損損失の計上が必要となる場合があります。
④ 退職給付費用及び債務
当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率にもとづいて算出されております。したがって、前提条件または制度に変化や変更が生じた場合には、退職給付費用及び退職給付債務に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 繰延税金資産
当社グループは、将来の課税所得の計画にもとづき慎重にかつ実現(回収)可能な範囲において繰延税金資産を計上しておりますが、将来において既に計上している繰延税金資産の全部または一部を実現(回収)できないと判断した場合には、当該判断を行った連結会計年度において、実現(回収)できないと判断した繰延税金資産を取崩すとともに、同額を法人税等調整額として法人税、住民税及び事業税の金額に加算し、当期純利益を減少させる場合があります。同様に、現時点で評価性引当額として繰延税金資産を計上していない項目について、将来においてその全部または一部を実現(回収)できると判断した場合には、当該判断を行った連結会計年度において、実現(回収)できると判断した金額を繰延税金資産として計上するとともに、同額を法人税等調整額として法人税、住民税及び事業税の金額から控除し、当期純利益を増加させる場合があります。
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