文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2022年6月23日)現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営理念、経営方針
当社グループでは以下のとおり、「東武グループ経営理念」、「東武グループ経営方針」を定めております。
東武グループでは、「奉仕」「進取」「和親」を経営の拠り所としています。
「奉仕」:東武グループは、東武グループの全ての事業が社会に支えられていることを深く自覚し、豊かな社会の実現に貢献します。
「進取」:東武グループは、現状に甘んじることなく、常に研鑚に励み、時代を切り開く開拓者精神をもって新たな挑戦を続けます。
「和親」:東武グループは、人の和や環境との調和をもとに事業の発展と従業員の幸福を図り、社会の進展に寄与します。
お客様の暮らしに密着した事業を通じて沿線地域の発展に貢献する企業グループとして、安全・安心を根幹に「運輸」「レジャー」「不動産」「流通」等の事業を多角的、複合的に展開します。
お客様の視点に立ち、質の高い先進性や独創性あふれるサービスを提供し、活力に富んだ暮らしやすく訪れたい東武沿線の実現を目指します。
事業を通じて安定的に利益を創出しながら、環境にも配慮した経営を進め、お客様の生活を担う企業グループとして地域社会とともに持続的に発展することにより、企業の社会的責任を果たします。
2021年度の経済情勢は、新型コロナウイルス感染者数の動向や度重なる緊急事態宣言の発出と解除等により個人消費の持ち直しと落ち込みの動きが見られるなど、引き続き先行きが不透明な状況で推移いたしました。
2022年度におきましても引き続き先行き不透明な事業環境が見込まれますが、社会インフラの1つである鉄道事業を中心にお客様の生活を支え、社会のさらなる発展に全力を尽くしてまいります。
当社グループを取り巻く事業環境は大きく変容しており、感染症の影響やデジタル技術の進展により行動様式が変化していることに加え、環境問題に関する社会的気運の高まりなど、企業に求められるサービスや取組みについても日々変化しています。
新型コロナウイルス感染症の影響により今後も出控えやインバウンドの回復動向等引き続き先行きが不透明である一方、事業環境の変化に対応しながら着実に利益を計上できる強靭な経営体質の構築を目指すべく、当社グループでは2022年度から2024年度までを対象に、コストコントロールを中心とした中期的な事業計画を策定しました。この事業計画においては、「事業構造改革と事業推進体制の再編」に加え、「新たなビジネスモデルによる収益力の拡大」「社会課題をニーズと捉えた事業推進による収益拡大」の3つを重点戦略として事業を推進してまいります。
「事業構造改革と事業推進体制の再編」については、事業環境の変化に伴う業務内容の抜本的な見直しとデジタル技術の活用等による固定費の削減と省人化等に取り組み、経営体質の強化と生産性の向上を実現してまいります。
特に運輸事業における鉄道業については、通勤需要の減少と中長期的な沿線人口減少が見込まれる中、ワンマン運転区間の拡大や駅業務の見直し、需要に合わせた輸送力の適正化等により固定費の削減をはかり、2019年度収益に対する固定費を概ね7割まで引き下げます。あわせて、業務の見直しやデジタル技術の活用により生産性を向上することで本社人員の3割削減を目指し、適正な利益の確保に努めてまいります。
また、鉄道業以外の事業においてもコスト削減を進め、ホテル事業においては損益分岐点売上高を感染症拡大前の計画比で概ね15%引き下げます。そのほか、グループ会社の統合による機能強化と効率化を進めてまいります。
「新たなビジネスモデルによる収益力の拡大」については、グループのポイントサービス「TOBU POINT」「トブポマイル」を利用されるお客様の情報を分析し、お客様それぞれに合わせたサービス提案を行うなど、データを活用したデジタルマーケティングにより収益拡大をはかってまいります。
また、沿線定住者の増加や関係・交流人口の創出に向けて、沿線拠点エリアである浅草~東京スカイツリータウンエリアや池袋エリアにおける大規模開発を進めてまいります。そのほかのエリアにおいても、マーケットニーズを的確に捉えた開発計画を策定・推進するとともに、コンセプトのあるまちづくりにより特色と魅力ある沿線開発を推進してまいります。
さらに、当社グループでこれまで培ってきたノウハウやデジタル技術を活用し、ECモールの導入やエリア特性に応じたMaaSの多極的な展開等、新たな収益事業の育成・強化をはかってまいります。
「社会課題をニーズと捉えた事業推進による収益拡大」については、当社グループが創業以来実現してきた社会課題の解決と事業の発展の両立を今後も継続し、地域とともに持続的な成長を目指してまいります。具体的には、当社グループがグループ事業と地域社会や家族を「つなぐ」役割を果たしながら、家族や地域社会の人々がお互いに助け合う「共助」により暮らしやすい仕組みづくりを進めるとともに、「TOBU POINT」を活用して多様化する生活スタイルに合わせたサービスを提供してまいります。
また、昨今の環境に関する意識の高まりを好機と捉え、環境保護ニーズを捉えた新たなビジネスの創造や自社アセットの脱炭素の推進により新たな収益機会を獲得するとともに、省エネ化による費用の抑制と金利調達コストの低減をはかってまいります。特に、日光エリアにおいては環境配慮型・観光MaaSである「NIKKO MaaS」を基盤としつつ、地域とも連携しながら脱炭素の取組みを加速化し、「エコリゾート日光」としてのブランド強化をはかることで環境意識の高い観光客を取り込むなど、地域の持続的な発展とグループ事業の継続的な収益獲得を両立してまいります。合わせて、気候変動に対しては温室効果ガスの排出削減への取組みが重要と認識し、推進しております。2022年4月からは日光・鬼怒川エリアで実質再生可能エネルギー100%の電車運行を開始したほか、高効率車両への置き換えや設備更新等により省エネ化を進め、2030年度には鉄道事業においてCO2排出量を2013年度比で約50%削減することを目指しております。これらの取組みについて適切な開示に努めるなど、地球温暖化防止のための各種対策を継続してまいります。
さらに、少子高齢化や人口減少による労働力不足の深刻化も見据え、生涯現役につなげる「健康経営」の強化を土台としつつ、ライフスタイルや事業環境の変化に対応できる多様な知識や価値観を持つ人材を登用・育成し、ダイバーシティ経営を推進してまいります。
当社グループは、1897年の設立以来、社会とともに持続的な発展を遂げてまいりました。1969年には当社社是として「奉仕」「進取」「和親」を制定、現在はこれを「東武グループ経営理念」として掲げ、安全・安心を根幹に、活力に富んだ暮らしやすく訪れたい東武沿線の実現を目指す「東武グループ経営方針」のもと、事業を通じて社会課題の解決に取り組むことで、社会の持続的な発展の一端を担いつつ、当社グループも発展してまいりました。
これからも、沿線の特長や経営資源を活かしながら、社会課題の解決を通じて、将来にわたって新たな価値を創造し、家族や地域社会の人々がお互いに助け合う「共助」を基盤とした「人にやさしく 人と地域が共に輝きつづける社会」を実現することで、社会に不可欠な企業集団となることを目指してまいります。
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