当期における我が国経済は、企業収益に持ち直しの動きが見られたものの、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化により、厳しい事業環境が続きました。国内におけるワクチン接種が進み、感染拡大防止と経済活動の両立が模索されていますが、未だ先行き不透明な状況が続いております。
当社グループにおいては、各事業で利用者は回復したものの、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発出による外出自粛等により、依然として交通事業およびホテル・リゾート事業を中心に大きく影響を受けております。
このような状況のなか、今後もコロナ禍以前の状況には戻らないという環境認識のもと、『変革』 を基本方針とする中期3か年経営計画を昨年策定いたしました。本計画に基づき、足元の事業環境変化への対応と構造改革の推進による収益の復元に取り組んでまいりました。
当連結会計年度の営業収益は、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等の適用の影響により、8,791億1千2百万円(前年同期比6.1%減)、営業利益は、交通事業やホテル・リゾート事業を中心とした、2020年4月に発出された緊急事態宣言に伴う外出自粛、店舗休業影響からの利用者数回復に加え、不動産事業における大規模物件の販売もあり、315億4千4百万円(前年同期は316億5千8百万円の営業損失)、経常利益は349億9千8百万円(前年同期は268億2千4百万円の経常損失)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、連結子会社の伊豆急行㈱における減損損失182億8千4百万円を含む特別損失314億5千5百万円を計上したものの、固定資産売却益の計上があったことにより、87億8千2百万円(前年同期は562億2千9百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
セグメントの業績は以下のとおりであり、各セグメントの営業収益は、セグメント間の内部営業収益又は振替高を含んで記載しております。なお、各セグメントの営業利益をセグメント利益としております。なお、「収益認識会計基準」等を当連結会計年度の期首より適用しております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。
(交通事業)
東急電鉄㈱においては、2021年5月公表の中期事業戦略「3つの変革、4つの価値」に基づき、固定費削減や生産性向上を目的とした事業構造変革の推進、安全・安心の追求、環境配慮への取り組み、都市交通における快適性の向上等、時代に即した社会価値を持続的に提供してまいります。引き続き高水準な鉄道インフラを適切に維持・更新するため経営努力を徹底するとともに、お客さまへの負担を極力抑えながら鉄道事業の健全経営を継続するべく、2022年1月、国土交通大臣に運賃の変更認可申請を行い、2022年4月に認可されました。
東急電鉄㈱の鉄軌道業における輸送人員は、定期・定期外ともに前年の緊急事態宣言等による落ち込みから回復し、定期で6.1%増加、定期外で19.0%増加し、全体では11.3%の増加となりました。
連結子会社の輸送人員は、伊豆急行㈱で5.3%増加いたしました。
バス業では、東急バス㈱の輸送人員が10.5%増加いたしました。
この結果、交通事業全体の営業収益は1,665億5千7百万円(同9.6%増)、営業損失は39億3千7百万円(前年同期は260億1千4百万円の営業損失)となりました。
(東急電鉄㈱の鉄軌道業の営業成績)
(不動産事業)
当社は渋谷駅周辺・広域渋谷圏のエリアにおいて、消費や移動などの行動様式の変化や環境問題への関心の高まりを受け、2021年7月、渋谷まちづくり戦略“Greater SHIBUYA 2.0” を策定いたしました。渋谷で時間を過ごす人達がより自分らしく、楽しく快適に過ごせる「働く」「遊ぶ」「暮らす」が融合した「渋谷型都市ライフ」の実現により、より一層エリアの魅力を高めるまちづくりを進めてまいります。
2021年7月、「渋谷ヒカリエ ヒカリエデッキ」がオープンいたしました。本デッキは、渋谷駅東西をつなぐ約800mの歩行者動線の一部として先行してオープンしたもので、将来的には宮益坂上から道玄坂上間のさらなる回遊性向上が図られます。2021年12月には、渋谷駅東口エリアで計画する「渋谷二丁目17地区市街地再開発事業」の新築工事に着工いたしました。本事業は同年8月、先進的な建築設計によるエネルギー負荷を抑制した建築物に与えられる「ZEB Oriented」認証を都内の超高層複合用途ビルでは第一号案件として取得いたしました。
このほか、2021年11月、2023年3月開業予定の「東急新横浜線・新綱島駅」直結の分譲マンション「ドレッセタワー新綱島」に着工、販売を開始いたしました。
また、2021年11月、㈱東急レクリエーションとともに推進している歌舞伎町一丁目地区開発計画の施設名称が、「東急歌舞伎町タワー」に決定いたしました。映画館・劇場・ライブホールなどのエンターテインメント施設、ホテルからなる高さ約225mの超高層複合施設で、「“好きを極める場” の創出」をコンセプトに2023年4月に開業いたします。
海外においては、ベトナム・ビンズン新都市で分譲マンション「SORA gardensⅡ」(557戸)が2021年5月に竣工いたしました。さらに、新都市初の大型商業施設「SORA gardens SC(第1期)」が2022年3月に着工する等、更なる街の価値向上に取り組んでおります。また、タイ・シラチャ郡における日本人家族向け賃貸住宅事業「ハーモニックレジデンスシラチャ」では、既存の180戸に加え、32戸が新たに開業いたしました。
不動産事業では、当社の不動産販売業における、大規模物件の販売に加え、当社の不動産賃貸業において、2020年4月に発出された緊急事態宣言に伴う一部施設休業影響の反動があったこと等により、営業収益は2,232億6千3百万円(同13.0%増)、営業利益は452億3千万円(同56.1%増)となりました。
(生活サービス事業)
当社は、生活サービス事業を街の生活基盤として沿線価値の向上に寄与するものと位置づけるとともに、収益力の向上に取り組んでまいりました。同事業は、魅力ある施設づくりに加えて、お客さまの期待を上回る商品やサービスの提供に努めるとともに、交通事業、不動産事業をはじめとする各事業との相乗効果を発揮するため、グループ間連携をさらに促進しております。
リテール事業においては、マーケットの変化に対応するため構造改革を推進するとともに、お客さまのニーズの多様化などに対応した新業態開発を進めております。
百貨店業の㈱東急百貨店において、2021年7月に「渋谷 東急フードショー」がグランドオープンし、渋谷駅の東西にわたり3つの大型食品売場(東急フードショーエッジ、東横のれん街、渋谷 東急フードショー計240店)がそろう「食の一大マーケット」が完成いたしました。
ICT・メディア事業においては、警備業の東急セキュリティ㈱において子供の登下校情報を保護者にメールでお知らせするサービス「キッズセキュリティ・ミマモルメ」を川崎市立学校約150校に導入するなど、地域の安全安心に向けた取り組みを進めました。また、シニア住宅事業の東急ウェルネス㈱では、東急線沿線エリアの高齢化に伴うお客さまのニーズを捉え、2021年10月1日より「有料老人ホーム紹介サービス-住まいる-」を新たに開始いたしました。
生活サービス事業では、前年度の緊急事態宣言等による影響からの反動により、前年同期と比べ利用者数は回復しましたが、「収益認識会計基準」等の適用の影響により、営業収益は5,027億4千7百万円(同16.7%減)、営業利益は66億円(前年同期は38億6千7百万円の営業損失)となりました。
(ホテル・リゾート事業)
ホテル・リゾート事業では、ホテル業の㈱東急ホテルズにおいて、2020年4月に発出された緊急事態宣言に伴う店舗休業影響の反動がありましたが、引き続き新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けたこと等により、稼働率は44.1%(前年同期比+13.1ポイント)となりました。この結果、 営業収益は435億2千3百万円 ( 同14.9%増 )、 営業損失は167億3千6百万円 ( 前年同期は312億2千4百万円の営業損失 )となりました。
㈱東急ホテルズでは、不採算店舗の撤退、賃料の減額交渉を行うとともに、店舗運営における少人数オペレーション化を進めるなど、人件費の圧縮に努めました。また、一人の従業員が複数の業務を遂行するマルチタスク化により客室・館内清掃業務を内製化するなど、費用削減を徹底いたしました。
客室のシェアオフィス利用や定額制回遊型住み替えサービス「Tsugi Tsugi」への参画、全直営店舗へのスマホによるwebチェックインサービスの導入など、新たな収益機会の創出や、生活様式の変容に合わせた取り組みに努めました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は516億3千5百万円となり、前連結会計年度に比べて63億3千8百万円増加いたしました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益270億3千2百万円に減価償却費841億9千1百万円、減損損失251億2千9百万円等を調整し、855億7千7百万円の収入となりました。前連結会計年度に比べ、税金等調整前当期純利益を計上したものの、売上債権の増減額が減少したこと等により、3億1千2百万円の収入減となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出1,103億9千7百万円等があり、788億1千万円の支出となりました。前連結会計年度に比べ、固定資産の売却による収入が増加したこと等により、363億8千4百万円の支出減となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債(※)が増加したものの、配当金の支払いや自己株式の取得等により、13億7千4百万円の支出となりました。
※ 有利子負債:借入金、社債、コマーシャル・ペーパーの合計
当連結会計年度末の総資産は、受取手形及び売掛金の増加等により、2兆4,791億8千2百万円(前期末比31億2千1百万円増)となりました。
負債は、社債の増加等により、1兆7,262億4千万円(同27億1千8百万円増)となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により、7,529億4千2百万円(同4億3百万円増)となりました。
当社グループの各事業は、受注生産形態をとらない事業が多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産、受注及び販売の状況については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (業績等の概要) (1)業績」における各セグメント業績に関連付けて示しております。
2021年度は、事業環境変化への対応と構造改革の推進による収益の復元を掲げた、中期3か年経営計画の初年度でした。
この1年を振り返ると、新型コロナウイルス感染症の影響が長引き、当社グループの事業に大きな影響を与える人流が減少するなど想定以上に厳しい事業環境となりました。
このような中、好調な市況を活かした不動産販売の実施や、不動産賃貸での安定的な利益貢献など、不動産事業が堅調に推移した結果、期首に掲げた利益目標を達成することができました。長期安定的な経営を志向する上場会社である以上、赤字決算の継続は何としても回避するという強い意志を持って経営に取り組んだ結果、収益復元にむけた第一歩を踏み出すことができたと捉えております。
一方、当社グループ全体に目を向けると、交通、生活サービス、ホテル・リゾート事業については、期首に掲げた目標利益が未達になるなど、厳しい結果となりました。特にホテル事業は2020年度に引き続き大きな損失を計上する結果となり、抜本的対策が急務と認識しております。
施策面では、各事業で掲げた重点戦略が確実に進捗しております。交通事業では、東急電鉄㈱において、運賃改定の取り組みが一服したほか、オペレーションの変革等、事業構造の強靭化の道筋が立ちつつあります。まちづくりについても、個性ある魅力的な街を連ねてエリア価値を最大化するというコンセプトのもと、自律分散型都市構造に基づく街づくりを進めており、多摩田園都市においてはnexus構想など新たな種が育ってきております。
2021年度の業績は、営業収益は、新型コロナウイルス感染症による、緊急事態宣言等の行動制限の影響を受け、交通、生活サービス、ホテル・リゾート事業で期首に掲げた目標から減収となり、連結全体で190億円減収の8,791億円となりました。営業利益は、当社不動産販売業での大型物件販売が想定を上回ったことに加え、各事業における費用の削減が寄与し、期首に掲げた目標値である200億円から115億円増益の、315億円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、固定資産売却益が増加したものの、減損損失等特別損失の計上により、期首に掲げた目標値から12億円減益の87億円となりました。
2022年度は、創立100周年を迎える記念すべき1年であり、歌舞伎町一丁目地区開発計画(東急歌舞伎町タワー)の竣工や、東急新横浜線の運転開始など大型案件が控えております。一方、新型コロナウイルス感染症の影響は一定の収束を見込んでおりますが、依然として油断できる状況ではなく、今年度も不透明な事業環境が続くと考えております。
このような中、引き続き中期3か年経営計画で掲げた各種施策を推進し、更なる収益の復元を目指すとともに、新たな成長への転換を果たすべく取り組んでまいります。数値目標としては、営業収益は前年度から全事業で増収となる9,370億円、営業利益は前年度から84億円増益の400億円を見込みます。なお、前年度は当社不動産販売業で多額の利益計上があったため、不動産販売業以外での営業利益で比較すると、前期の約120億円から約315億円まで、大きく復元が進む計画となります。営業利益の増益に伴い、親会社株主に帰属する当期純利益については132億円増益の220億円となり、東急EBITDA、有利子負債/東急EBITDA倍率についても、回復を見込んでおります。
中期3か年経営計画のスローガンである『変革』には、変化への対応に留まらず、自ら新しい市場の創造をするという思いを込めております。当社の事業領域は広範囲に及びますが、ベースとなる交通事業・不動産事業が安定し、その基礎の元、生活サービス事業、ホテル・リゾート事業が自立したうえで、事業間のシナジーを生み出すことが、競争力の源泉と捉えております。そして、各事業の魅力を結び付け、個性ある魅力的なまちづくりを行うことで、沿線を中心としたエリア価値を最大化することが、企業価値向上につながっていきます。
社会変容に晒されているこの瞬間をピンチではなく、新たな成長のチャンスと捉え、社会課題の解決を通じた『美しい生活環境の創造』に引き続き取り組んでまいります。
(2)資本の財源及び資金の流動性
2021年度を始期とする中期3か経営計画では、最終年度である2023年度末時点での有利子負債/東急EBITDA倍率7倍台への回復を財務健全性の目標として掲げております。
長期視点での財務戦略においては、健全性の確保を重視しております。当社の事業は、長期間にわたるプロジェクトを推進することに加え、大規模な施設を保有・運営・管理することに依拠するため、有利子負債の適切な管理が重要となります。中期3か年経営計画における有利子負債の金額は1兆2,000億円程度を目線とし、設備投資などの投資計画は、業績の動向に応じて一定の選別を行うものの、安全・維持更新投資、進行中の大規模プロジェクトや各事業の構造改革に関連する投資は着実に実施することとしております。
この計画に基づき2021年度は1,174億円の投資を実施しました。この結果、2021年度末の有利子負債は1兆1,957億円となり、前年度末からは135億円の増加となったものの、目標数値との比較では設備投資(目標数値は1,277億円)の全社的削減や不動産販売業や固定資産売却における販売価格の上振れ等により、260億円改善をしております。これに加え、東急EBITDAについても営業利益が想定を上回るなど、目標数値を超えて復元が進んだ結果、有利子負債/東急EBITDA倍率についても、当初計画の10.3倍から9.3倍に改善しております。
2022年度は歌舞伎町一丁目地区開発計画(東急歌舞伎町タワー)の竣工を予定しており、これにより前年度から増加し1,588億円の設備投資を予定しております。加えて、不動産販売業での安定的な利益創出に向け、不動産市況を見極めながら継続的に良好な物件の仕入れに取り組んでまいります。この結果、2022年度末時点の有利子負債水準は一時的に増加し、1兆2,750億円を見込みますが、2023年度にかけては収益性の回復等により、有利子負債/東急EBITDA倍率については目標の7倍台を確保していく方針です。
資金調達については、日本国内においては引き続き量的緩和、低金利政策が継続しているものの、米国をはじめとする諸外国の量的緩和の縮小、金利上昇など、今後の動向に留意が必要な局面にあると認識しております。このような環境の中、当社においても中長期的な安定調達手段の確保とともに、固定比率上昇と調達年限長期化の推進による調達金利の上昇抑制、市場性調達の活用による調達コストの極小化に引き続き努めてまいります。
また、運転資金の調達については、短期社債(コマーシャル・ペーパー)及びキャッシュマネジメントシステムでの調達枠を設定しており、積極的に活用することで調達コストの削減を図るとともに、危機対応型のコミットメントラインを設定し、不測の事態へも対応可能な状況にあります。
また、当社はグループスローガン「美しい時代へ」のもと「未来に向けた美しい生活環境の創造」および「事業を通じた継続的な社会課題の解決」を進めており、資金調達においても「サステナブル経営」に紐づいた調達を行っております。
2021年12月には、環境問題・社会課題双方の解決に貢献する事業の資金調達手段として、前年度に引き続き「サステナビリティボンド」を発行いたしました。当社グループのサステナブル経営を象徴する社会課題、環境問題双方への取り組みの認知を高め、さらなる推進につなげることに加え、本年は東急線沿線のお客さまを含めた個人投資家の方々へ当社のサステナブル経営を訴求していくことを目的に「個人向けサステナビリティボンド」も併せて発行しております。調達した資金はクリーンな輸送(新型車両2020系、6020系、3020系の導入など)、安全・安心のための鉄道関連インフラ(ホームドアの整備など)、グリーンビルディング(南町田グランベリーパークなど)、気候変動対応(雨水調整池など)、サテライトシェアオフィス(NewWorkなど)に要した支出のリファイナンスに充当しております。
また、2022年3月には日本政策投資銀行(DBJ)との間で、DBJ-対話型サステナビリティ・リンク・ローンによる金銭消費貸借契約を締結し、資金調達を行うことを決定しております。2022年3月公表の「環境ビジョン2030」で掲げた、2050年CO2排出量実質ゼロに向けたCO2排出量削減目標をKPI(キー・パフォーマンス・インディケーター)及びSPI(サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット)として設定しており、調達した資金は鉄道事業の設備投資資金に充当し、環境負荷の低い設備機器や新型車両の導入、気候変動適応に向けた対策などを通じて、当社のサステナブル経営を推進していきます。
株主還元については、安定配当を継続するとともに、中長期的には配当性向30%以上を目安とし、総還元性向も意識して取り組んでまいります。2022年度については、この考え方に基づき年間15円の配当を予定しております。なお、総還元性向を意識した自己株式取得等については、今後の資金動向や利益水準の推移を考慮し機動的に検討してまいります。
※1 有利子負債:借入金、社債、コマーシャル・ペーパーの合計
※2 設備投資・投融資の金額については、投資計画の進捗説明を主眼とし一部組替を行っており、「キャッシュ・フロー計算書」とは数値が異なります。
(3)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者は、決算日における資産・負債及び報告期間における収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを行わなければなりません。これらの見積りについては、過去の実績、現在の状況に応じ合理的に判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社は、創業以来、事業を通じて社会課題の解決に取り組み、時代の変化に適合しながら、国や都市・地域の発展とともに着実に成長してまいりました。今後も、社会環境の変化に対応しながらサステナブル経営を行うべく、2021年度を始期とする中期3か年経営計画を推進しております。
当社および連結子会社では、交通、不動産、生活サービス、ホテル・リゾートの各セグメントにおいて多様な事業展開を行っており、多額の固定資産を保有するとともに、設備投資・投融資等、継続的な投資を実施しております。したがって、当社および連結子会社においては、固定資産を中心とした資産ポートフォリオの管理、とりわけ減損損失の判定や、大規模開発等と関連する費用の見積りが、重要な会計上の見積りに該当いたします。
減損損失の判定にあたっては、事業や物件ごとに資産のグルーピングを行い、収益性や市場性、用途変更や除売却等の意思決定の有無等により兆候判定を行っております。また減損損失の認識・測定においては、将来キャッシュ・フローを直近の実績や事業計画等の意思決定に基づいて合理的に見積りを行うほか、不動産等の時価のある資産については必要に応じ鑑定等の外部評価に基づく適正な価額を用い、投資額や帳簿価額の回収可否について判定を行っております。
また、大規模開発等と関連する費用の見積りに関しては、工事業者から受領した見積り、当社および連結子会社における過去の実績等に市場環境を加味するなどし、見積りの蓋然性・信頼性を社内で十分に検討したうえで適切に行っております。
加えて、当社グループでは、当社および交通セグメントに属する連結子会社において、多額の繰延税金資産が計上されております。
繰延税金資産の回収可能性の判断については、緊急事態宣言の発令などを受けた外出自粛の影響やテレワークを始めとした働き方の変化による鉄道輸送人員の大幅な減少等に伴い、主として交通事業における繰延税金資産の回収可能性の判断に係る重要性が高まったことから、重要な会計上の見積りに該当いたします。
繰延税金資産の回収可能性は、将来の収益力に基づく課税所得及びタックス・プランニングに基づき判断をしております。課税所得の見積りは翌連結会計年度の予算および中期経営計画を基礎としております。
なお、新型コロナウイルス感染症が会計上の見積りに与える影響に関しては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り) 」に記載をしております。
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