当連結会計年度におけるわが国の経済は、前半は、新型コロナウイルス感染症の拡大による緊急事態宣言等の度重なる発出等により、厳しい状況で推移しました。後半は、感染症による行動制限が緩和され、一時期持ち直しの動きが見られたものの、年度末にかけて、新たな変異株による感染症の再拡大やウクライナ情勢の悪化による原材料価格の高騰等により、依然として厳しい状況が続きました。
このような情勢のなか、当社グループでは、各事業において感染拡大防止策を徹底しながら、“修正” 第15次中期経営計画(2019年度~2022年度)の目標達成に向け、重点戦略に基づき構造改革を推進するとともに、成長戦略に基づく各施策に取り組みました。
構造改革の取り組みとして、ホテル事業や娯楽事業等において回復の見込みが立たない赤字事業からの撤退・縮小を進めるとともに、鉄道事業やバス事業において運賃施策やICカードポイント施策を見直すなど、従来の需要が戻らない前提での事業モデル変革を図りました。
一方、成長戦略に基づく取り組みとして、大型開発プロジェクトを着実に進め、「福ビル街区建替プロジェクト」では、2024年度内の開業に向けた新築工事に着手したほか、当社グループが参画する「旧大名小学校跡地活用事業」では、2022年度中の全体供用開始に向けた準備を進めました。「青果市場跡地活用事業」においては、2022年4月、九州初出店となる「三井ショッピングパークららぽーと福岡」が開業しました。
また、持続可能な交通ネットワークの実現のため、福岡空港において、他事業者と連携し大型自動運転バスの実証実験を実施したほか、AI活用型オンデマンドバス「のるーと」の地方自治体への導入支援、運営ノウハウの提供に向けた実証運行を実施するなど、公共交通の課題解決に取り組みました。
さらに、鉄道事業においてQRコードを用いた企画乗車券の発売を開始したほか、鉄道事業やストア事業において、スマートフォンアプリ「LINE」を活用した予約・購入サービスの提供を開始するなど、デジタル技術の活用による顧客体験の向上を図りました。
このほか、国が掲げる「2050年カーボンニュートラル」達成に向けた取り組みとして、中古バス車両を電動化した「レトロフィットバス」の実証運行に向けた準備を進めるなど、各事業における脱炭素社会の実現に向けた取り組みを推進しました。なお、2022年3月、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」による提言に賛同し、気候関連情報の開示を開始したほか、2022年4月には、再生可能エネルギーによる発電事業を通じ当社グループや地域の脱炭素化を推進するため、他社との共同出資により新会社を設立しました。
その結果、当連結会計年度の経営成績は以下のとおりとなりました。
なお、連結損益計算書の主要項目ごとの前連結会計年度との主な増減要因等は、次のとおりです。
① 営業収益及び営業利益
当連結会計年度の営業収益は、物流業における国際物流事業で輸出入取扱高が増加したことや、不動産業における住宅事業でマンション販売戸数が増加したことに加え、運輸業やレジャー・サービス業で新型コロナウイルス感染症の影響による外出自粛などで需要が低迷したものの、前期からは回復したことなどにより、前連結会計年度から810億3千8百万円増加し、4,271億5千9百万円(前期比 23.4%増)となりました。
営業利益は、前連結会計年度から199億5千3百万円増加し、104億5千1百万円(前期は営業損失95億1百万円)となりました。
なお、当連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を適用しています。このため、前期比較は基準の異なる算定方法に基づいた数値を用いています。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (会計方針の変更)」に記載のとおりです。
セグメントごとの営業収益及び営業利益又は営業損失(△)は、次のとおりです。
当連結会計年度に、吸収合併を伴う連結子会社の組織再編等を実施し、一部連結子会社の事業において、セグメントの区分を変更しています。
なお、前連結会計年度のセグメント情報については、当該変更後の区分に基づき作成したものを開示しています。
② 営業外損益及び経常利益
営業外収益は、前連結会計年度から3百万円減少し、62億2千4百万円となりました。
営業外費用は、持分法による投資損失の減少などにより、前連結会計年度から36億4千3百万円減少し、27億2千2百万円となりました。
この結果、経常利益は、前連結会計年度から235億9千3百万円増加し、139億5千3百万円(前期は経常損失96億3千9百万円)となりました。
③ 特別損益及び親会社株主に帰属する当期純利益
特別利益は、固定資産売却益の計上などもあり、前連結会計年度から21億2千3百万円増加し、53億7千8百万円となりました。
特別損失は、福ビル街区建替関連費用の減少などにより、前連結会計年度から30億8百万円減少し、31億9千3百万円となりました。
この結果、税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度から287億2千5百万円増加し、161億3千8百万円(前期は税金等調整前当期純損失125億8千6百万円)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度から219億4千7百万円増加し、98億7千3百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失120億7千4百万円)となりました。
鉄道事業において、安全性および沿線の魅力向上の取り組みとして、福岡県および福岡市が行う雑餉隈~下大利駅間連続立体交差事業の高架切替および下大利駅の新駅舎開業に向けた工事を進めました。また、西鉄天神大牟田線において、自転車を折りたたまず車内に持ち込める「サイクルトレイン」を実施し、観光需要の獲得および沿線地域の活性化を図りました。
バス事業において、持続的な輸送サービスを提供するため、一般路線バスにおける「100円バス」の運賃値上げをはじめとした運賃施策の見直しを行いました。また、「福岡オープントップバス」で福岡空港内を走行する新たなツアーを提供するなど、福岡観光の新たな価値創造と賑わいの創出に努めました。
経営成績については、鉄道事業及びバス事業で、新型コロナウイルス感染症の影響による外出自粛やイベントの中止・縮小などにより旅客人員が低迷したものの、前期からは回復したことや、運賃施策・ICポイント施策の見直しを実施したことなどにより増収となりました。これらの結果、運輸業の営業収益は638億5千7百万円(前期比 6.8%増)、営業損失は46億9千9百万円(前期は営業損失118億3千8百万円)となりました。
※バス事業の内部取引を除くと9.7%の増となります。
賃貸事業において、現実空間とバーチャルを視覚的に重ね合わせるAR技術を用いたイベントの実施や、SNSのライブ配信を活用した顧客接点の拡大を図るなど、商業施設における販売促進に努めました。
住宅事業において、首都圏でのマンション開発および販売戸数の拡大に努めたほか、顧客の多様なニーズに対応した付加価値のある商品提供に努め、スマート機器や設備を導入したIoT住宅の販売を開始しました。また、インドネシアの現地デベロッパーに出資するなど、海外における不動産事業の拡大を図りました。
経営成績については、住宅事業で、「ガーデンクロス東京王子」などの分譲マンション販売戸数が増加し増収となりました。また、賃貸事業で、商業施設の賃貸収入が回復したことなどにより増収となりました。これらの結果、不動産業の営業収益は740億9千8百万円(前期比 14.1%増)、営業利益は81億5千8百万円(前期比 12.1%増)となりました。
イ 業種別営業成績
ロ 分譲販売区画数
ストア事業において、「三井ショッピングパーク ららぽーと福岡」内における新業態店舗の出店準備を進め、2022年4月に開業しました。また、「LINE」を活用した季節商品の予約注文を開始するなど、デジタル技術の活用による利便性の向上を図りました。
生活雑貨販売業において、「雑貨館インキューブ」を福岡県春日市に出店するなど、収益力の強化に努めました。
経営成績については、ストア事業で、収益認識会計基準等の適用に伴い代理人として関与した取引について営業収益を純額とした影響や、巣ごもり需要の反動減などにより減収となりました。これらの結果、流通業の営業収益は687億3千6百万円(前期比 9.7%減)、営業利益は6億2千9百万円(前期比 40.8%減)となりました。
業種別営業成績
④ 物流業
国際物流事業において、海外ネットワークの拡充を進め、インドネシア、アメリカ、バングラデシュおよびメキシコに営業拠点を新設しました。また、半導体、自動車部品、食品などの取扱重点品目の営業強化に努めました。
経営成績については、国際物流事業で、世界経済の改善などにより輸出入取扱高が増加し増収となりました。その結果、物流業の営業収益は1,861億6千8百万円(前期比 67.1%増)、営業利益は114億8千2百万円(前期比 200.6%増)となりました。
イ 業種別営業成績
ロ 国際貨物取扱高
※TEU:20フィートの海上輸送コンテナを1単位とした換算個数
ホテル事業において、自動チェックイン機の導入等による少人数オペレーションを推進するなど、収益力向上に向けた構造改革に取り組みました。また、ポストコロナの観光復活に向けた取り組みとして、長期宿泊者向け客室を備えた新仕様ホテルの開業準備を進めました。
経営成績については、ホテル事業で、新型コロナウイルス感染症の影響による海外からの移動の制限や国内での移動自粛などを受けて稼働が低迷したものの、前年からは回復し増収となりました。また、娯楽事業で、遊園地「かしいかえん シルバニアガーデン」の営業終了(2021年12月30日)に伴う特需などにより増収となりました。これらの結果、レジャー・サービス業の営業収益は212億3百万円(前期比 7.8%増)、営業損失は66億2千5百万円(前期は営業損失106億3千3百万円)となりました。
業種別営業成績
※ホテル事業の内部取引を除くと26.4%の増となります。
ICカード事業において、nimocaが北九州市交通局に採用されるなど、導入事業者の拡大に努めました。
経営成績については、収益認識会計基準等の適用に伴い代理人として関与した取引について営業収益を純額とした影響などにより、その他の営業収益は301億4千6百万円(前期比 17.3%減)となりました。営業利益は、金属リサイクル事業での鉄スクラップ相場等の上昇による粗利の増加などにより17億8百万円(前期比 54.9%増)となりました。
業種別営業成績
(2) 財政状態
(注)有利子負債は、借入金 + コマーシャル・ペーパー + 社債により算出しています。
資産は、現金及び預金の増加等により、前連結会計年度末に比べ266億9千6百万円増加し、7,345億円となりました。
負債は、長期借入金が減少した一方、社債や前受金の増加等により、前連結会計年度末に比べ175億5千8百万円増加し、5,554億1千6百万円となりました。
純資産は、その他有価証券評価差額金が減少した一方、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等による利益剰余金の増加や為替換算調整勘定の増加等により、前連結会計年度末に比べ91億3千8百万円増加し、1,790億8千4百万円となりました。
有利子負債は、社債の増加等により、前連結会計年度末に比べ23億4千7百万円増加し、3,477億9千3百万円となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ195億6千7百万円増加し、706億1千2百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益161億3千8百万円、減価償却費194億1千1百万円、売上債権の増加額(支出)107億6千5百万円等により305億9千1百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ405億3千万円の収入増となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出258億9千9百万円、工事負担金等受入による収入103億1千3百万円等により、103億4千4百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ189億1百万円の支出減となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行による収入300億円、借入金の純減による支出176億6千9百万円、コマーシャル・ペーパーの純減による支出100億円等により、16億7千6百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ584億2千7百万円の収入減となりました。
当社グループの資金調達については、鉄道事業における設備投資に対する㈱日本政策投資銀行からの借入金のほか、社債および民間金融機関からの借入金など、市場環境や金利動向等を総合的に勘案しながら行っています。
2021年度は6月に第1・2回利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債( 劣後特約付 )を発行( 発行額300億円 )しました。なお、当社グループでは資金効率向上のため、キャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入しています。
資金の流動性については、当社グループは、運輸業や流通業を中心に日々の収入金があることから、必要な流動性資金は十分に確保しており、これらの資金をCMSにより集中管理することでグループ内において有効に活用しています。
資金の配分方針については、手許現金及び現金同等物は、売上高の約1ヶ月分程度を安定的な経営のための適正な水準としています。
成長投資については、2021年度は「“修正”第15次中期経営計画(2019年度~2022年度)」に沿って、「福ビル街区建替プロジェクト」の大型開発やサンカルナ西新新築工事等を進めました。2022年度は「福ビル街区建替プロジェクト」の大型開発や西鉄ホテルクルーム博多祇園(仮称)新築工事などについて着実に進めてまいります。投資計画の詳細については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」をご参照ください。
株主還元については、経営における重要課題の一つと考えており、当社は、株主の皆様への安定した利益還元を重視し、適切な内部留保の確保による財務体質及び経営基盤の強化を図りながら、安定的・継続的な配当を実施することを利益配分についての方針としています。当社の配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご確認ください。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。
この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
また、財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 2財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
当社グループの各事業において提供するサービスや製品は多種多様であり、同じセグメント内のサービスや製品であっても、その内容、形式等は必ずしも一様ではないため、生産、受注及び販売の実績について、セグメントごとに生産規模あるいは数量で示すことはしていません。
そのため、生産、受注及び販売の状況については、「(1) 経営成績」における各セグメント業績に関連付けて示しています。
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