課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

1.会社の経営の基本方針

当社グループでは、都市交通、不動産、エンタテインメント、情報・通信、旅行、国際輸送及びホテルの7つの事業を主要な事業領域と位置付け、グループ経営機能を担う当社(純粋持株会社)の下、阪急電鉄㈱、阪神電気鉄道㈱、阪急阪神不動産㈱、㈱阪急交通社、㈱阪急阪神エクスプレス及び㈱阪急阪神ホテルズの6社を中核会社として、グループ全体の有機的な成長を目指しています。

 

※なお、2022年度からコア事業体制を一部見直し、不動産事業にホテル事業を統合したうえで、ホテル事業を

不動産事業の一業態と位置付けることといたします。詳細については、「3.優先的に対処すべき事業上及

び財務上の課題」の「(3) コア事業体制の一部見直しについて」に記載のとおりです。

 

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当社グループは、鉄道事業をベースに住宅・商業施設等の開発から阪神タイガースや宝塚歌劇など魅力溢れるエンタテインメントの提供に至るまで、多岐にわたる分野において、それまでになかったサービスを次々と提供することにより、沿線をはじめ良質な「まちづくり」に貢献するとともに、社会に新風を吹き込み、100年以上の長い歴史の中で数々の足跡を残してきました。そして、これらの活動等を通じて、暮らしを支える「安心・快適」、暮らしを彩る「夢・感動」を絶えずお客様にお届けしてきました。今後も、グループの全役員・従業員が、お客様の日々の暮らしに関わるビジネスに携わることに強い使命感と誇りを持ち、そうした思いを共有し、一丸となって業務にあたっていく上での指針として、以下のとおり「阪急阪神ホールディングス グループ経営理念」を制定しています。

 

阪急阪神ホールディングス グループ経営理念

使命(私たちは何のために集い、何をめざすのか)

「安心・快適」、そして「夢・感動」をお届けすることで、お客様の喜びを実現し、社会に貢献します。

 

価値観(私たちは何を大切に考えるのか)

お客様原点

すべてはお客様のために。これが私たちの原点です。

誠実

誠実であり続けることから、私たちへの信頼が生まれます。

先見性・創造性

時代を先取りする精神と柔軟な発想が、新たな価値を創ります。

人の尊重

事業にたずさわる一人ひとりが、かけがえのない財産です。

 

行動規範(「価値観」を守り、「使命」を果たしていくために、私たちはどのように行動するのか)

1. 私たちは、出会いを大切にし、お客様の立場に立って最善を尽くします。

2. 私たちは、法令遵守はもとより、社会的責任を自覚して行動します。

3. 私たちは、仕事に責任と誇りを持ち、迅速にやり遂げます。

4. 私たちは、目先のことのみにとらわれず、中長期的な視点で考えます。

5. 私たちは、現状に満足することなく、時代の先を見据えて取り組みます。

6. 私たちは、思いやりの心を持ち、お互いを認め合います。

7. 私たちは、活発にコミュニケーションを行い、風通しのよい職場をつくります。

8. 私たちは、グループ全体の発展のために力を合わせます。

 

 

2.サステナビリティ宣言

当社グループでは、2020年5月に発表した「阪急阪神ホールディングスグループ サステナビリティ宣言」に基づき、ESG(環境・社会・企業統治)に関する取組を着実に推し進めております。

このサステナビリティ宣言では、当社グループがサステナブル経営を進める上での基本方針や6つの重要テーマ等を定めており、これをベースに、これからもお客様や地域社会等との信頼関係を構築しながら、持続的な成長を図り、ひいては持続可能な社会の実現につなげてまいります。

なお、サステナブル経営の推進にあたり、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」(※1)及び「国連グローバル・コンパクト」(※2)への対応として、2021年5月に賛同の意を表明しております。

※1 「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」…2015年に、G20の要請を受け、金融安定理事会の作業部会として設置されたものであり、投資家等の適切な投資判断に資するよう、企業等に対して、気候変動に伴うリスクと機会の特定、その財務的な影響の試算、気候変動に対応する事業戦略等を開示することを推奨しています。

※2 「国連グローバル・コンパクト」…1999年の世界経済フォーラムで提唱された企業の行動規範であり、企業等に対し、人権・労働・環境・腐敗防止の4分野において、10原則を遵守し実践するよう要請しています。

 

<サステナビリティ宣言の概要>

基本方針

~暮らしを支える「安心・快適」、暮らしを彩る「夢・感動」を、未来へ~

私たちは、100年以上積み重ねてきた「まちづくり」・「ひとづくり」を未来へつなぎ、

地球環境をはじめとする社会課題の解決に主体的に関わりながら、

すべての人々が豊かさと喜びを実感でき、

次世代が夢を持って成長できる社会の実現に貢献します。

 

6つの重要テーマ

取組方針

① 安全・安心の追求

鉄道をはじめ、安全で災害に強いインフラの構築を目指すとともに、誰もが安心して利用できる施設・サービスを日々追求していきます。

② 豊かなまちづくり

自然や文化と共に、人々がいきいきと集い・働き・住み続けたくなるまちづくりを進めます。

③ 未来へつながる暮らしの提案

未来志向のライフスタイルを提案し、日々の暮らしに快適さと感動を創出します。

④ 一人ひとりの活躍

多様な個性や能力を最大限に発揮できる企業風土を醸成するとともに、広く社会の次世代の育成にも取り組みます。

⑤ 環境保全の推進

脱炭素社会や循環型社会に資する環境保全活動を推進します。

⑥ ガバナンスの充実

すべてのステークホルダーの期待に応え、誠実で公正なガバナンスを徹底します。

 

 

3.優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

(1) 長期ビジョンのアップデートについて

当社グループでは、「阪急阪神ホールディングスグループ 長期ビジョン2025」の策定以降、同ビジョンに掲げる戦略に則った施策を推進するとともに、2021年度を中間目標年度とする中期経営計画を策定・実行するなど、グループを挙げてその実現に向けた取組を進めてまいりました。その結果、新型コロナウイルスの発生前までは、こうした取組は概ね想定どおりに進捗しておりましたが、感染拡大後は、多くの事業でその影響を大きく受けることとなり、上記の計画は未達となりました。また、足元では、コロナ禍をきっかけとした急速な社会変化が生じているほか、SDGs(持続可能な開発目標)・2050年カーボンニュートラル(脱炭素社会)への意識が高まるなど、社会経済環境や事業環境は急速に変化しております。そこで、これらの変化に対応し、持続的な企業価値の向上を実現していくために、今般、長期ビジョンのアップデートを実施しました。

新しい「長期ビジョン-2040年に向けて-」では、今後推進していく「芝田1丁目計画」(※1)や「なにわ筋連絡線・新大阪連絡線計画」等の大規模プロジェクトの利益貢献が期待できる2035~2040年頃を見据えながら、長期的に当社グループが目指す姿をはじめ、その実現に向けた戦略や財務方針等を定めております。

具体的には、スローガンとしては引き続き「深める沿線 拡げるフィールド」を掲げ、それを実現するために、現状の当社グループの事業ポートフォリオを踏まえ、「提供するサービス(価値)」と「事業エリア」をもとに、下記の4つの戦略を謳っております。

 

4つの戦略

戦略① 関西で圧倒的No.1の沿線の実現

戦略② コンテンツの魅力の最大化

戦略③ 沿線事業モデルの展開エリアの拡大

戦略④ 高付加価値サービスの提供による事業シェアの拡大

 

戦略①(都市交通事業や不動産事業等)では、少子高齢化が進む中でも、沿線各所でのまちづくりやデジタル技術・最新技術の積極的な活用等を通じて、沿線の魅力を飛躍的に高めていきます。また、「なにわ筋連絡線・新大阪連絡線計画」の推進により国土軸(東京-名古屋-大阪)・海外と沿線との結びつきを深めるほか、「梅田ビジョン」(※2)に基づき、大阪・梅田がグローバルな都市間競争に勝ち抜ける都市になれるよう、関西で圧倒的No.1の沿線の実現を目指してまいります。

戦略②(エンタテインメント事業や旅行事業)では、顧客層の拡大を図りながら、またデジタル技術の積極的な活用等を通じて、コンテンツの魅力の最大化に努めてまいります。

戦略③では、戦略①と戦略②で培ったノウハウや実績等を活かして、豊かなまちづくりをはじめ、沿線で展開してきた事業モデルを沿線外の各所に拡げてまいります。

戦略④(情報サービス事業や国際輸送事業)では、保有する技術やノウハウを活用して事業の価値提供領域を拡大するとともに、高品質で競争力のあるサービスの提供に努めることにより、事業の規模とシェアの拡大を図ってまいります。

また、この4つの戦略に加えて、「阪急阪神DXプロジェクト」(※3)やSDGs・2050年カーボンニュートラルに向けた取組を強力に推進するほか、この新しい長期ビジョンを実現するために、グループが一体となって変革を進めてまいります。

一方、財務方針については、財務健全性の維持を図りながら、ベースとなる利益を安定的に計上するとともに、これまで以上に資本効率の維持・向上を目指す取組を推し進めることにより、資本コストを意識した経営の定着を図ってまいります。

そして、今後の経営目標については、上記の大規模プロジェクトの竣工・開業等により相応な利益伸長が期待される2035~2040年頃の成長イメージに加え、その通過点として2030年度の経営目標(財務指標・非財務指標)を下記のとおり掲げることとしました。

 

2030年度における経営目標(財務指標・非財務指標)

<財務指標>

収益性

営業利益

1,300億円+α (※4)

財務健全性

 

有利子負債/EBITDA倍率

※EBITDA…営業利益+減価償却費+のれん償却額

5倍台

 

資本効率

 

ROE

※ROE…親会社株主に帰属する当期純利益÷自己資本

中長期的に7%水準

 

 

<非財務指標>

・ CO2排出量の削減率(※5)

(2013年度比)△46%

・ 鉄道事業における有責事故ゼロ

・ 従業員満足度の継続的向上

・ 女性管理職比率    10%程度

・ 女性新規採用者比率 30%以上を継続

2035~2040年頃の成長イメージ

大規模プロジェクトの竣工・開業による利益貢献に加え、阪急阪神DXプロジェクトの一層の

推進等により、2030年度の営業利益(1,300億円+α)からさらなる利益伸長を目指す

 

当社グループでは、この新しい長期ビジョンの戦略に則った施策等を推し進めることにより、持続的な企業価値の向上を図るとともに、お客様や地域社会をはじめとするステークホルダーの期待に応え、持続可能な社会の実現に貢献することで、地域(関西)とともに成長する企業グループを目指してまいります。

 

※1 大阪新阪急ホテル・阪急ターミナルビルの建替、阪急三番街の全面改修等

※2 大阪・梅田が「国際交流拠点(世界の人々が働きたい街、訪れたい街)」となることを目指している中

で、それを実現するために、当社グループの取組の方向性をとりまとめたもの

※3 当社グループがDX(デジタル・トランスフォーメーション)に関して新たに取り組む施策(デジタル領

域での新サービスの提供やグループ共通IDの導入など)の総称

※4 既存事業を中心に利益伸長を実現し、営業利益1,300億円を目指すとともに、阪急阪神DXプロジェクト

等での上積み(+α)に挑戦します。

※5 2050年カーボンニュートラルに向けて、政府の温室効果ガスの削減目標が引き上げられたことから、当

社グループのCO2排出量の削減目標についても政府目標と整合した目標値に見直しました。

       2030年度:    △26%   → △46%

       2050年度: (目標設定せず)→ 実質ゼロ

 

(2) 中期経営計画の策定について

当社グループでは、アップデートした長期ビジョンの実現に向け、中期的な取組を反映した具体的な実行計画として、2022年度から2025年度までの4か年を「コロナ前の成長軌道に回帰する期間」及び「長期ビジョンの実現に向けて足固めをする期間」と位置付ける中期経営計画を策定しました。

本計画では、2022年度については、2021年度に続いて既存事業の回復に全力を尽くすための「緊急回復期間」として、収益力の回復や固定費の削減・変動費化、また財務体質の良化等に向けた取組に注力しながら、利益水準をコロナ前の3分の2程度へと回復させてまいります。さらに、長期ビジョンの実現に向けた最初のマイルストーンとなる2025年度については、長期ビジョンの方向性に則った施策を着実に推し進めていくことにより、2030年度の目標が射程圏に入る営業利益の水準を目指してまいります。

以上の方針のもと、2022年度は、多くの事業で利益の回復を見込み、営業利益は630億円、親会社株主に帰属する当期純利益は350億円と予想しております。そして、2025年度については、営業利益は1,150億円、親会社株主に帰属する当期純利益は750億円、「有利子負債/EBITDA倍率」は6.2倍、ROEは7%水準となる見通しです。また、2022年度の株主還元につきましては、安定的な配当を維持することとし、年間配当金は2021年度と同水準の1株当たり50円(中間配当金25円、期末配当金25円)を予定しております。

 

(3) コア事業体制の一部見直しについて

ホテル事業では、現在、不採算ホテルからの撤退や固定費の削減など構造改革を推し進めております。また、施設の老朽化が著しい大阪新阪急ホテルは2024年度末頃、千里阪急ホテルも2025年度末頃の営業終了を予定しており、両ホテルの跡地は一層の高度利用を行うことで、より良いまちづくりにつながるよう検討を進めております。

このような状況の中で、2022年度から不動産事業にホテル事業を統合することとし、上記2ホテルの跡地をはじめ、まちづくりや複合開発等において、不動産事業とホテル事業が一体となって強力に推進できる体制を整えることにしました。今後は、この新しい体制のもと、ホテル事業はまちづくりの中で都市の魅力や機能をより高める役割を担ってまいります。

 

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