当期におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化により、引続き厳しい状況で推移しました。緊急事態宣言の解除以降は、経済活動の段階的な正常化を背景に、景気は持ち直しの動きが見られるものの、感染再拡大等の影響により、先行きは不透明な状況にあります。
このような状況のもと、当社グループでは、安全を最優先にした事業運営の継続と収支改善等に努めました。その結果、新型コロナウイルス感染症の影響はあったものの、営業収益は、レジャー・サービス事業などでの増収により490,919百万円(前期比1.9%増)となりました。営業損益は、燃料費が増加したものの、前期と比べ19,287百万円収支改善し、2,932百万円の利益となりました。経常損益は、営業損益の改善に加え、営業外損益が改善し、前期に比べ21,281百万円収支改善し13,135百万円の利益となりました。親会社株主に帰属する当期純損益は、固定資産売却益の増加や減損損失の減少などにより前期に比べ38,140百万円収支改善し9,370百万円の利益となりました。
セグメント別の主な取組み及び経営成績は、次のとおりであります。
(交通事業)
〔主な取組み〕
鉄軌道事業では、当社は、都市計画事業の一環として、知立駅付近など5ヵ所で高架化工事を進め、布袋駅付近の工事が完了したほか、喜多山駅付近では、上り線の高架への切替えが完了しました。このほか、岡崎公園前駅や本笠寺駅等でバリアフリー化工事を実施するなど、引続き安全面の強化やお客さまサービスの向上に努めました。また、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、2回のダイヤ改正を行うなど、輸送力の適正化を図りました。営業施策面では、「名鉄グループ沿線観光活性化プロジェクト」を始動し、地域と一体となって、観光資源の発掘や誘客による沿線地域の活性化に努めました。このほか、目的地までの移動手段の検索や各種チケットの購入・決済機能等を備えた、エリア版MaaSアプリ「CentX(セントエックス)」のサービスを開始し、利便性の向上に努めました。
バス事業では、名鉄バス㈱は、新型コロナワクチンの大規模集団接種会場への輸送を受託するなど、需要に応じた契約輸送の強化を図ったほか、一部の高速バス路線において変動制運賃(ダイナミックプライシング)を導入し、収益力の向上や需要の適正化に努めました。また、名鉄観光バス㈱は、東京オリンピック・パラリンピック輸送など足元の需要を獲得しつつ、車両数の削減や要員の適正化等による、経営の効率化を図りました。
タクシー事業では、会社分割による当社タクシーグループの事業再編を行い、タクシー事業全体の経営の効率化と競争力の強化を図りました。
〔経営成績〕
交通事業の営業収益は、新型コロナウイルス感染症の影響が前期から縮小したことにより115,745百万円(前期比10.2%増)となり、営業損益は、増収に加え、人件費や修繕費の減少もあり、前期に比べ12,905百万円収支改善し4,960百万円の損失となりました。
(業種別営業成績表)
(提出会社の運輸営業成績表)
鉄軌道事業
2 鉄道と軌道との乗車人員は重複しておりません。
〔主な取組み〕
トラック事業では、当社は、機動的なグループ経営体制を構築し、収益力強化を図るため、名鉄運輸㈱に対し、株式公開買付け(TOB)を実施しました。
〔経営成績〕
運送事業の営業収益は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた前期から貨物取扱量が回復したことにより134,766百万円(前期比4.6%増)となり、営業利益は、燃料費の増加によりトラック事業は減益となったものの、海運事業の収支改善により3,086百万円(前期比31.3%増)となりました。
(業種別営業成績表)
〔主な取組み〕
不動産賃貸業では、当社は、駅商業施設「μPLAT(ミュープラット)」を神宮前駅に開業したほか、「meL iV(メリヴ)」ブランドの賃貸マンションを神宮前駅と刈谷駅に開業するなど、魅力ある沿線・地域づくりを推進しました。また、不動産分譲業では、名鉄不動産㈱(※)は、「エムズシティ鳴子プレディア」の販売を行うなど、沿線における分譲マンション開発に取組みました。
なお、当社は、不動産事業のさらなる強化を目的に、会社分割により、当社の不動産事業を名鉄不動産㈱(※)と統合するなどの不動産事業の再編の準備を進めました。
※名鉄不動産㈱は、2022年4月1日に当社の不動産事業の一部を会社分割により承継し、商号を名鉄都市開発㈱
に変更しております。
〔経営成績〕
不動産事業の営業収益は、不動産賃貸業における駐車場利用の増加や賃貸物件の開発に加え、分譲土地販売の増加により89,416百万円(前期比4.7%増)となり、営業利益は、不動産賃貸業の増収により11,085百万円(前期比3.9%増)となりました。
(業種別営業成績表)
〔主な取組み〕
ホテル業では、㈱名鉄ホテルマネジメント犬山は、東海地区初進出のハイクラスホテル「ホテルインディゴ犬山有楽苑」を、㈱名鉄犬山ホテルは、地域体感型ホテル「ホテルミュースタイル 犬山エクスペリエンス」を、それぞれ犬山市に開業しました。これらのホテルの開業を契機に、犬山エリアが滞在型観光地となることを目指し、地域と共に観光活性化に取組んでまいります。このほか、当社ホテルグループ各社を傘下に持つ中間持株会社、㈱名鉄ホテルホールディングスを設立し、各社間の連携強化と、柔軟かつ迅速に事業環境の変化に対応するための体制を構築しました。
旅行業では、名鉄観光サービス㈱は、教育旅行など専門性の高い分野や自治体の新型コロナワクチン接種事業の受託等で収益の確保に努めつつ、支店やカウンターの統廃合や人員の適正化を進め、経営の効率化を図りました。
〔経営成績〕
レジャー・サービス事業の営業収益は、新型コロナウイルス感染症の影響が前期から縮小したことにより47,572百万円(前期比137.8%増)となり、営業損益は、新規開業に伴う費用の増加などによりホテル業は収支が悪化したものの、旅行業の収支改善により、前期と比べ4,623百万円収支改善し8,385百万円の損失となりました。
(業種別営業成績表)
〔主な取組み〕
㈱名鉄百貨店は、本店において、中部地区初出店の高級スーパーマーケット「紀ノ国屋」や、シェアラウンジを併設した生活提案型書店「TSUTAYA BOOKSTORE」を誘致するなど、売場のリニューアルを行い、集客力の向上に努めました。
〔経営成績〕
流通事業の営業収益は、原油価格の上昇による石油販売収入の増加があったものの、「収益認識に関する会計基準」等の適用や百貨店業で前期に子会社を譲渡した影響により64,652百万円(前期比41.9%減)となり、営業損益は、輸入車販売業の収支改善などにより、前期に比べ130百万円収支改善し2,054百万円の損失となりました。
(業種別営業成績表)
〔経営成績〕
航空関連サービス事業の営業収益は、航空整備事業の受注増加などにより23,364百万円(前期比1.7%増)となり、営業利益は、ヘリコプター事業での収支悪化により1,453百万円(前期比25.8%減)となりました。
(業種別営業成績表)
〔経営成績〕
その他の事業の営業収益は、システム関連の受注増加などにより46,560百万円(前期比1.5%増)となり、営業利益は、増収により1,971百万円(前期比12.5%増)となりました。
(業種別営業成績表)
<財政状態>
当期末における総資産は、分譲マンション建設等により分譲土地建物が増加した一方、減価償却費などにより有形固定資産が減少したことなどにより、前期末に比べ4,233百万円減少し1,186,897百万円となりました。
負債は、コマーシャル・ペーパーの発行などにより有利子負債が増加した一方で、鉄道高架化工事の完了等により前受金が、工事代金の支払等により支払手形及び買掛金がそれぞれ減少したことなどにより、前期末に比べ7,853百万円減少し775,765百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加などにより、前期末に比べ3,620百万円増加し411,132百万円となりました。
当期末における現金及び現金同等物の残高は、前期末に比べ3,028百万円減少し、50,430百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益を計上したことなどにより、前期に比べ19,634百万円増加し39,320百万円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の売却による収入の増加などにより、5,207百万円増加し△39,027百万円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行による収入の減少などにより、52,752百万円減少し△3,339百万円となりました。
当社グループの事業は、交通事業のほか運送事業、不動産事業、流通事業等の広範囲かつ多種多様なサービス業が主体であり、また受注生産形態をとらない事業がほとんどでありますので、セグメントごとに網羅的に生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産、受注及び販売の状況については、「①財政状態及び経営成績の状況」におけるセグメントの業績に関連付けて記載しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、当社経営陣は、決算日における資産・負債及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを行わなければなりません。これらのうち主なものは以下のとおりでありますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、新型コロナウイルス感染症の影響に関する仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(固定資産の減損)
当社グループは、事業の特性上、多額の固定資産を保有しており、固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しております。従って、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施する可能性があります。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を判断するに際して将来の課税所得や税務計画を合理的に見積っております。従って、将来の課税所得の見積額や税務計画が変更された場合には、繰延税金資産が増額又は減額される可能性があります。
(退職給付債務及び費用の計算)
当社グループは、従業員退職給付債務及び費用の計算について、割引率や年金資産の期待運用収益率等の前提条件に基づき行っております。従って、前提条件または制度に変化や変更が生じた場合には、退職給付債務及び退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。
(資本の財源及び資金の流動性)
当社グループは、運転資金及び設備投資資金につきましては、自己資金または借入により資金調達することとしております。このうち、借入による資金調達に関しましては、運転資金については短期借入金で、設備投資などの長期資金については、社債及び長期借入金での調達を基本としております。また、当社グループにおいて、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入することにより、各社における余剰資金を集中し、一元管理を行うことで、資金効率の向上を図っております。
また、長期化する新型コロナウイルス感染症によるグループ資金繰りへの影響を考慮するとともに、資金調達基盤の安定化を図りつつ、安全やコンプライアンスに関する投資については優先的に実施をし、また中長期的な収益確保のための戦略投資に関しても財務バランスを勘案しながら積極的に実施してまいります。
(経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
当社グループは、当連結会計年度を初年度とする3ヵ年計画、グループ中期経営計画「Turn-Over2023 ~反転攻勢に向けて~」の中で、最終年度である2023年度の連結経営数値目標として、「営業利益350億円」を設定し、取組んでおります。また、参考指標として、「ROE(純利益/自己資本)」、「ROA(営業利益/総資産)」、「純有利子負債/EBITDA倍率」及び「株主資本比率」も設定しております。当連結会計年度における各指標は、以下のとおりであります。
(注)※EBITDA:営業利益+減価償却費
純有利子負債:有利子負債-現預金・短期有価証券
同計画の初年度である当連結会計年度は、鉄軌道事業の構造改革やグループ主要事業の再編をはじめとする「事業構造改革」を中心に取組みを進めました。
前連結会計年度よりも新型コロナウイルス感染症の影響が縮小したことにより、交通事業やレジャー・サービス事業の収支が大幅に改善したため、2期ぶりの営業黒字となりましたが、利益水準はコロナ前と比較し低い水準に留まりました。
今後は、沿線・地域の活性化や、不動産事業や運送事業をはじめとした成長が見込まれる分野の収益力強化など「成長基盤構築」のための取組みにも注力し、次の成長に繋がる基盤を構築してまいります。また、将来にわたり安定的に事業を継続するため、引続き鉄軌道事業の構造改革に取組み、需要に応じたコストの適正化・省力化と収益力の向上を図ってまいります。
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