文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
京福グループでは、以下に掲げる「経営理念」および「経営姿勢」を基本方針に、京都地区では鉄軌道事業を、福井地区ではバス・タクシーを中心とした交通インフラをそれぞれ核に、地域と協働して沿線の魅力を高めることで企業価値の向上を図ってまいります。
<経営理念>
京福グループは、安全・安心をブランドの礎とし、人と社会に貢献します。
<経営姿勢>
・安全・安心・感動を基礎に、社会と一体となって歩みます。
・進取・挑戦の歩みを止めず、日々進化し続けます。
・人と自然を敬愛します。
(2) 中長期的な経営戦略
京福グループでは、持続的な成長を続けていくために、2016年度に経営ビジョン「沿線深耕~私たちのまちをさらに楽しくにぎやかに~」を策定し、ビジョン達成のための取組みを行っています。
2021年には「withコロナ、afterコロナ」という新たなライフスタイルに順応すべく、2023年度までの「京福グループの今後の事業の方向性について」を策定しました。
「京福グループにおける今後の事業の方向性について」の概略は、次のとおりです。
基本方針
今後の事業の方向性は、コンセプトを「adapt+rebuild(順応と再構築)」とし、これまでの中期経営計画は打ち切りますが、継続すべき施策は継続し、新たな経営環境に即して見直すべき施策は見直し、経営基盤の再構築のため、「安全・安心」「構造改革」「SDGs」を柱に持続可能な組織・事業体への変革を実現するための取り組みを行います。
<経営基盤の再構築>
これまでの中期経営計画において、主に期間後半での実現可能性を模索していた「大規模投資を前提とした成長戦略」については事業環境が整った時点で再検討することとし、まずは新型コロナウイルス感染拡大によって大きく変化した外部環境に適した組織や事業体への変革を志向した基盤の再整備を優先します。また、成長戦略として掲げた「沿線拡大」への着手についても一旦見合わせ、既存の事業エリアの充実である「沿線深耕」に注力します。一方で、基幹事業である交通事業での安全に対する投資と働き方改革等に対応した人材確保と人材活用は、これまでどおり最優先で進めます。
1.「安全・安心」の取組み:安定かつ継続したヒトとモノへの投資(これまで通り)
○設備更新
・「安全あんしん5ヶ年計画」に基づく老朽化設備の更新・バリアフリー化の継続実施
・車両やバス・ロケーションシステムの更新、福井交通事業での車載器のIC化による効率化の実施
・保有施設の災害等に備えた投資の継続実施
○人材活用
・雇用期間の延長に向けた健康管理(SAS検査、脳ドッグ等)の充実
・グループ全体としての有用な人材確保と人材活用への仕組みの充実
・安全教育(ヒューマンエラー防止、ドライブレコーダーを活用した事故分析)、接客教育の充実
○危機管理
・新型ウイルス、自然災害および情報管理に対する危機管理体制の充実
2.「構造改革」の取組み:withコロナ、afterコロナ下での安定収益の確保
「withコロナ、afterコロナ」の新たなライフスタイルに順応しつつ収益を確保していくため、働き方改革に沿った収益構造や組織見直しを図りガバナンス体制の向上も推進します。
○安定した収益構造への転換
・福井交通事業のシナジーを最大限に引き上げるための地域交通事業戦略の見直しと推進
・福井エリアの北陸新幹線開通に向けた着実な対応
・外部環境の変化に対応するための不動産事業利益の拡大ほかポートフォリオの再構築と投資配分の整備
3.「SDGs」の取組み:持続可能な社会および企業の実現
当社グループの経営理念・行動憲章と安全・安心や環境保護などの従来からの取組みの多くがSDGsの方向性ときわめて親和性が高く、当社グループが取り組むべきSDGsの重要課題を整理し、持続可能な社会への貢献を目指します。
○重要課題
・安全・安心でユニバーサルな事業の展開
・人と地球に優しいエコでクリーンな事業の推進
・笑顔のパートナーシップによる事業の創出
4.定量目標
2023年度収支および財務状況の2018年度並みまでの回復を目指します。
なお、新型コロナウイルスの影響は、2024年3月(2023年度)までは継続し、インバウンド需要は十分回復しないと見込んでいます。一方で、国内需要については新たな生活様式による消費動向の変化に対応し、2024年3月(2023年度)までに新型コロナウイルス流行前の水準に回復することを見込んでいます。
(3) 経営環境
新型コロナウイルスの変異株の種類の増加による感染再拡大が懸念されるなど、先行きの見通しが難しい状況ではありますが、新型コロナウイルス感染症により大きな影響を受けていた鉄軌道事業や貸切バス事業などの運輸業や、ホテル事業などのレジャー・サービス業における国内需要は緩やかながら回復傾向にあり、インバウンド需要についても今後緩やかに回復していくものと想定しています。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
新型コロナウイルス感染症の拡大という未曽有の危機に当たり、公共交通を基幹事業とする当社グループの社会的責任は大きく、事業継続計画(BCP)に基づき、事業を遂行していくことを責務と認識しています。関係官庁や関係先との緊密な連携のもと、行政が主導する感染拡大防止の各施策への協力、役職員の感染防止と事業継続に、グループ一体で全力を傾注していく方針です。加えて、事態収束後の速やかな業績改善に向けての体制作りを進めます。
「今後の事業の方向性」は、「安全・安心」「構造改革」「SDGs」を3本柱に、経営基盤の再構築により、悪化した経営状況をコロナ以前の水準にまで回復させ、持続可能な組織・事業体への変革を実現するための集中した取り組みを行います。
「安全・安心」につきましては、嵐山線では、「安全あんしん5ヶ年計画」を継続し、全駅完了した北野線に続く嵐山本線各駅でのバリアフリー化工事など、安全性と利便性向上の投資を計画的に実施、管理・監督職以上の全員が取得したサービス介助士資格の運転士・駅務員等への取得拡大を進め、さらに安心してご利用いただける事業を目指します。バス・タクシー事業では、京都地区でバス・ロケーションシステム、福井地区で乗合バス運賃のタッチ決済システム、タクシーの予約アプリなどの導入を検討・実施し、安全・安心に根差したサービスの拡充を図ります。また、災害等非常時に備えた対応訓練、グループ全社合同での安否確認訓練などを、運輸安全マネジメントシステムや危機管理規程に基づき計画的に実施、レジリエントな事業を目指します。
「構造改革」につきましては、京福バス㈱では2020年の福井地区バス事業の拠点統合に続き、コロナ禍で収支が悪化していた飲食事業を2022年3月までに終了、4月1日には京福リムジンバス㈱を吸収合併し、収益構造や組織の強化を図りました。当社グループの強みが発揮でき、「afterコロナ」や働き方改革など新たな経営環境に順応した強固な事業体を実現するため、「構造改革」をさらにスピードアップして推進します。
「SDGs」につきましては、2021年9月に当社の公式ウェブサイトに「サステナビリティへの取組み」ページを新設、当社グループのSDGs達成に向けた取り組みの社外広報を開始しました。2021年9月に京都バス㈱が燃費低減対策やハイブリッド車両導入の実績で、近畿運輸局長から「交通関係環境保全優良事業者等表彰」を受け、京福バス㈱、㈱京福コミュニティサービスは福井地区一体でSDGsを推進するためのプラットフォーム「ふくいSDGsパートナー」に加盟しました。事業活動を通じ、沿線地域と連携しながらSDGs達成に貢献します。
2022年4月4日の東京証券取引所市場区分変更に伴い、当社はスタンダード市場に移行しました。上場企業に求められる持続的な成長および中長期的な企業価値の向上に努めるとともに、地域におけるなくてはならない交通インフラとして社会的役割を果たし、持続可能な 組織・事業体への変革を実現するため、「adapt+rebuild(順応と再構築)」を推進し、業績回復に努めます。
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