(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態の状況
前連結会計年度末と比較した当連結会計年度末の資産、負債及び純資産の状況は次のとおりです。
資産については、流動資産が、現金及び預金、商品などの増加により2,515百万円増加しました。固定資産は、主に有形固定資産の増加により4,806百万円増加しました。これにより資産合計は、前連結会計年度末比7,321百万円増の92,020百万円となりました。
負債については、流動負債が、リース債務、未払法人税等などの増加により859百万円増加しました。固定負債は、リース債務や退職給付に係る負債などが増加し1,977百万円増加しました。これにより負債合計は、前連結会計年度末比2,836百万円増の32,311百万円となりました。
純資産については、利益の確保による増加に対し、配当金支払などによる減少があり、前連結会計年度末比4,485百万円増の59,709百万円となりました。
自己資本比率は、前連結会計年度末比0.5ポイント下降し、57.7%となりました。
②経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、依然として新型コロナウイルスの影響を大きく受けながらも、各国ともに感染状況を睨みながらの経済活動となりました。米国においては個人消費や投資に支えられて堅調さを維持し、欧州では経済活動の制限が段階的に緩和され、景気は回復へと向かいました。アセアンでも感染拡大による工場の操業制限などが発生しましたが徐々に回復に向かいました。中国では堅調な個人消費によって景気は上向き傾向となりましたが、一部地域でのロックダウンや企業の操業停止などの懸念材料が出ております。日本国内においては、秋以降コロナウイルスの感染が一時的に縮小したもののその影響は依然継続しておりサービス業が停滞しましたが、製造業は輸出を中心に堅調に推移しました。
当社の主要顧客である電子部品、車載電装品業界におきましては、旺盛な需要がある一方、物流・サプライチェーンの混乱や半導体不足による生産調整を余儀なくされ、回復の制約要因となりました。当物流業界においては、コンテナ不足やスペース不足による海上・航空輸送の逼迫に伴い運賃高騰の状態が続きました。
このような事業環境下、当社はコロナウイルス感染再拡大防止のために十分な対策を講じ、世界各国において異なる規制に対応しながら、顧客のサプライチェーンの変化に対応すべく、サービスの向上に取り組みました。
3カ年の第4次中期経営計画最終年度の当期は、「成長軌道への回帰」を目標に、コロナウイルスの影響による遅れはありましたが、次の戦略・施策を着実に推進してきました。
①GTB(Get The Business / 市場と商品の拡大):HUB拠点の機能拡充とネットワークの強化。車載・産機市場向け事業の拡充。市場・地域に適合した商品力強化。
②GTP(Get The Profit / 間・直の生産性向上):IT・自働化・TIEの進化と導入拡大。資本効率重視の戦略投資。改善活動のレベルアップ。
③GTC(Get The Confidence / 選ばれる会社):従業員のスキルと満足度向上。QCマインドの向上と品質保証体制の定着。ESGの取り組み強化。
当連結会計年度のセグメントの概況は次のとおりです。
[電子部品物流事業]
当事業の主要顧客である電子部品業界においては、IoT、5G、DXといった潮流の中で、通信・情報機器向けの需要が増加しております。自動車関連でも電子化、EV化の流れの中で、電子部品の需要が増加しました。一方、足元の半導体不足などに伴うメーカーの生産調整もあり、十分な生産が困難な状況が断続的に発生しました。
当社では、前期に引き続き、地域(エリア)と市場・顧客の2つの軸で業容の拡大を図りました。エリア戦略としては日本や中国などの既存展開エリアにおける衛星拠点の整備、更にインド・東欧などの拠点・ネットワークの整備に取り組んでおります。市場・顧客戦略については主力の電子部品メーカーや商社などの顧客に加え、自動車・産業機器関連の顧客の拡大を目指しました。
当連結会計年度の業績は、国内、海外ともに保管、運送、輸出入の全事業において、売上高が増加しました。また、生産性向上の取り組みとしては、国内幹線便ネットワークの再編、保管事業におけるIT化の推進や入出庫業務の効率化などを図り、増収増益を確保することができました。
当セグメントの業績は、売上高64,090百万円(前期比 21.5%増)、営業利益4,030百万円(同 30.9%増)となりました。
[商品販売事業]
商品販売事業では、電子部品に関連する包装資材・成形材料・電子デバイスの販売を行っています。当社では、調達と物流を一元化した電子デバイスの調達代行の提案、物流改善を意識した包装資材の提案を特長としております。
当連結会計年度におきましては、秋以降半導体不足などにより車載関連の生産停滞の影響を受けましたが、前年同期に需要が落ち込んだ反動もあり、通信・情報機器向けで成形材料が中国を中心に増加しました。また、包装資材も営業力を強化し、外販向けを中心に拡販を行い、増収増益となりました。
当セグメントの業績は売上高22,489百万円(前期比 6.2%増)、営業利益743百万円(同 61.1%増)となりました。
[消費物流事業]
消費物流分野では、小売企業の宅配サービスや通販ビジネスの成長に伴って需要が拡大している一方、ドライバーを始めとする人材確保・育成が、業界全体の課題となっています。
このような事業環境下、当社グループで消費物流を担う㈱流通サービスは、消費物流の川上にあたる企業間物流の取り込み、メディカル・化粧品などの商品センター業務の拡大、生協宅配ビジネスの拡大に取り組んでおります。
当連結会計年度においては、新規に稼働を開始したメディカル関連が寄与、また、コロナウイルス長期化に伴う在宅生活様式の定着により通販・宅配需要は高水準の状態にあります。減価償却費や修繕費、燃料費などのコスト増加要因がありましたが、自働化による効率化や労務費の削減などにも取り組んだ結果、増収増益となりました。
当セグメントの業績は、売上高27,234百万円(前期比 2.2%増)、営業利益1,247百万円(同 5.3%増)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高113,814百万円(前期比 13.2%増)、営業利益6,021百万円(同 27.4%増)、経常利益6,166百万円(同 25.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益3,598百万円(同 24.1%増)となり、売上高、各段階利益いずれも過去最高を更新することができました。
③キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物の当連結会計年度末の残高は、前連結会計年度末と比べ2,523百万円増加の22,132百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、7,525百万円(前期比826百万円の収入増)の収入となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益の確保6,123百万円や減価償却費3,757百万円などによる資金増加の一方、棚卸資産の増加435百万円や法人税等の支払額1,693百万円などによる資金減少によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、3,100百万円(前期比594百万円の支出増)の支出となりました。主な要因は、新倉庫建設など有形固定資産の取得支出2,555百万円及びソフトウエアなど無形固定資産の取得支出830百万円などによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、3,042百万円(前期比1,208百万円の支出増)の支出となりました。主な要因は、当社の配当金支払990百万円、リース債務の支払1,540百万円などによるものです。
④生産、受注及び販売の実績
売上高実績
当連結会計年度における売上高実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|
売上高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
電子部品物流事業 |
64,090 |
21.5 |
商品販売事業 |
22,489 |
6.2 |
消費物流事業 |
27,234 |
2.2 |
セグメント間の内部売上高又は振替高 |
- |
- |
合計 |
113,814 |
13.2 |
(注) 最近2連結会計年度における主な相手先別の売上高実績及び当該売上高実績の総売上高実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先名 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
売上高(百万円) |
総売上高に対する割合(%) |
売上高(百万円) |
総売上高に対する割合(%) |
|
アルプスアルパイン株式会社 |
10,185 |
10.1 |
11,883 |
10.4 |
TDK株式会社 |
4,631 |
4.6 |
5,109 |
4.5 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。
この連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の数値及び報告期間における収益・費用の数値に影響を与える見積りを行わなければなりません。この見積りは過去の実績や状況に応じ合理的と考えられるさまざまな要因に基づき行っております。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社は、特に以下の重要な会計方針が当社グループの連結財務諸表の作成において使用される判断と見積りに影響を及ぼすものと考えております。
a. 繰延税金資産
繰延税金資産については、回収可能性があると判断できる金額のみ計上しています。繰延税金資産の回収可能性を判断するにあたり、将来の課税所得を見積もっています。将来の見積課税所得は、顧客からの受注見込みや過去の業績等に基づいて算定しています。
将来において顧客の需要減少や移転価格を含む税務関連の動向の変化により課税所得が予想を下回り、すでに計上されている繰延税金資産の全部又は一部を回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産を取崩し、税金費用が計上される可能性があります。
b. 退職給付に係る負債
退職給付費用及び退職給付に係る負債は、数理計算上の前提条件に基づいて算出されています。前提条件には、割引率、長期期待運用収益率、退職率、死亡率及び昇給率等の仮定が含まれています。このうち、退職給付費用および退職給付に係る負債の計算に影響を与える最も重要な仮定は、割引率及び年金資産に係る長期期待運用収益率です。
割引率は優良債券の利回りを参考に決定しており、連結会計年度末において割引率を再検討した結果、割引率の変動が退職給付債務に重要な影響を及ぼすと判断した場合にはこれを見直した上で、退職給付債務を算定しています。長期期待運用収益率は、保有している年金資産のポートフォリオに基づく一定期間における運用実績を基に、今後の運用方針及び市場動向を考慮して設定しています。
これらの仮定が実際の結果と異なる場合、又は仮定を変更した場合、将来期間における退職給付費用及び退職給付に係る負債に影響を及ぼします。
当連結会計年度の退職給付費用の計算に使用した割引率及び期待運用収益率については、「退職給付関係」に記載しております。
c. 固定資産の評価
当社グループは、近接した拠点間のビジネス上のつながりが強く、地域ごとの組織により管理会計上の業績管理をしているため、減損会計の適用にあたり、地域別のグルーピングを行っております。
資産又は資産グループに減損が生じている可能性を示す事象があり、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額がこれらの帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。減損損失の測定にあたって見積もられる回収可能価額は、資産又は資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額を使用しています。
減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定において見積もられる将来キャッシュ・フローは、中期経営計画や外部環境に照らして算定した受注予測等に基づき算定しています。また、使用価値の算定に使用する割引率は、要求される加重平均資本コストを採用しています。将来、事業環境の変化等により固定資産の収益性が低下した場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の当社グループにおける連結業績は、売上高113,814百万円(前期比 13.2%増)、営業利益6,021百万円(同 27.4%増)、経常利益6,166百万円(同 25.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,598百万円(同 24.1%増)となりました。
当連結会計年度の連結業績は、電子部品関連の各事業で取り扱い貨物が増加し売上高が増加しました。また、生産性向上への取り組み、効率化などを図り増益を確保することができました。消費物流分野ではメディカル・化粧品などの商品センター業務の拡大などにより増収増益を確保しました。
電子部品関連の物流と商品販売を主体とする当社及び国内外の子会社24社、そして消費物流を主体とする国内子会社の㈱流通サービスは、2019年度よりスタートした3カ年の第4次中期経営計画最終年度の当期は、「成長軌道への回帰」を目標にそれぞれの専門分野における戦略・重点施策を着実に実行し、更なるグローバル成長を図っております。
なお、各セグメントの状況は、以下のとおりです。
[電子部品物流事業・商品販売事業]
当連結会計年度は、電子部品物流事業と商品販売事業を合わせた電子部品関連の事業で期初に売上高78,000百万円、営業利益3,780百万円の計画を設定しました。実績は上記に記載の要因によって、売上高が計画比11.0%増の86,579百万円、営業利益は計画比26.3%増の4,773百万円となりました。また、グローバル成長の度合いを測る指標として「外販比率(親会社であるアルプスアルパイングループ以外の売上構成比率)」、「海外売上比率」の向上に取り組んでおります。当連結会計年度においては、外販比率が前期比2.1ポイント増の59.7%に、海外売上比率については、電子部品物流において国際輸送貨物の取り扱い増加、国際運賃の高止まりによる売上高の増加などにより前期比5.6ポイント増の45.6%となりました。
今後については、主要顧客が属する電子部品産業は、通信の5G関連機器の普及や自動車の電子化の進行、AI、IoT、DXの実用化の進展などによりエレクトロニクス製品の需要拡大によって、今後も成長が予想されております。一方で、商品やマーケットの変化に対応した生産地変更やサプライチェーンの強靭化・効率化が進んでおり、顧客の物流改革ニーズは高度化かつ多様化しております。このような事業環境において、電子部品関連の事業をドメインとする当社及び国内外の子会社では、2022年度より3カ年の第5次中期経営計画をスタートしました。中期基本方針を「地球と社会にやさしく・最適物流の追求と進化」と定め、各種戦略・施策を推進し、グローバルにビジネスの拡大を図っていきます。
[消費物流事業]
消費物流分野では、小売企業の宅配サービスや通販ビジネスの成長に伴って需要が拡大している一方、ドライバ
ーを始めとする人材確保・育成が、業界全体の課題となっています。期初に売上高27,200百万円、営業利益1,020百万円の計画を設定しました。消費物流の川上にあたる企業間物流の取り込み、メディカル・化粧品などの商品センター業務の拡大、生協宅配ビジネスの拡大に取り組んだ結果、増収増益を確保することができ、売上高は計画比0.1%増の27,234百万円、営業利益が22.3%増の1,247百万円となりました。
㈱流通サービスにおきましても、2022年度より3カ年の中期経営計画をスタートしています。事業の運営体制や営業体制の強化を図り、主要顧客である生協向けビジネスの更なる拡大、シェアアップを図るとともに、「EC通販物流」の拡販・強化を進めていきます。さらに、医薬品輸配送などの新たな領域の市場開拓も進めていきます。また、業界課題である人手不足に対処すべく自働化の推進、働き方改革の推進などによって定着率の向上を図り、人材の確保・育成につなげてまいります。
③資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループでは、当連結会計年度におきまして、事業規模の拡大、顧客サービスの向上などを目的とした物流インフラ強化のための設備投資として、新倉庫建設を目的とした土地の取得、建設中の建物、情報システム構築など、総額6,730百万円の投資を行いました。
当社グループにおける運転資金及び設備投資資金については、営業キャッシュ・フローの確保による自己資金と、金融機関からの借入によって調達を行っています。当連結会計年度末における借入金の残高は3,045百万円(前期末比126百万円減)、現金及び現金同等物の残高は22,132百万円(前期末比2,523百万円増)となりました。
今後の重要な設備投資としては、引き続き国内外における倉庫建設を中心とした拠点・ネットワーク投資、生産性向上のための投資を行う計画です。なお、これらの設備投資資金については、現金及び現金同等物と、営業キャッシュ・フロー、借入金から充当する計画です。また、新型コロナウイルスの感染拡大リスクに備えたバックアップとして金融機関からのコミットメントラインを2020年に設定しました。
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