当連結会計年度における世界経済は、総じてワクチン接種等による新型コロナウイルス感染症との共生が進む中で回復基調が続きました。米国では、長期化する供給制約や物価上昇が景気の下押し圧力となるも、雇用・所得環境の改善により総じて回復基調を維持しています。新興国でも、経済活動の段階的な再開により成長の勢いを強めました。一方、中国では、不動産投資の冷え込み、ゼロコロナ政策下の経済活動の抑制から成長率の減速が継続しています。国内経済においても回復傾向にありますが、2022年に入ってからのオミクロン株の流行により成長が鈍化しました。更に、足元ではウクライナ情勢の影響による資源価格の高騰等、世界的に不透明感が増しております。
このような経済情勢の下、当連結会計年度における売上高は5,538億31百万円と前連結会計年度に比べ3.7%の増収、利益面においては、営業利益が344億65百万円と1.6%の増益、経常利益は354億32百万円と1.2%の増益、親会社株主に帰属する当期純利益は226億36百万円と3.8%の減益となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等の適用により、売上高および売上原価は96億47百万円減少しております。
セグメントごとの業績は次のとおりであります。
①物流事業
港湾事業では、収益認識会計基準等の適用による売上高減少はあったものの、国内の海上コンテナ取扱い増やこれに伴うヤード内作業・保管作業の増に加え、沿岸荷役作業の増加等により増益となりました。国際物流では、東南アジアで前期に計上された大型プラント輸送の剥落はあるものの、国内外での海上・航空貨物の輸出入取扱い増や運賃高騰に加え、中東での化成品輸送、米国での自動車部品輸送が好調に推移しました。一般輸送・3PL事業では、燃料高騰や前期実施された中国での減免措置の剥落等による影響が見られたものの、国内の化成品・製品輸送の増加や中国・東南アジアでの自動車部品・消費財等の輸送・保管作業等は堅調に推移しました。構内作業では、国内・中東でのお客様の生産・操業度が総じて回復傾向にあり堅調に推移しました。
なお、受注した作業において過請求をしていたことが判明し、お客さまに対する過年度分を含む補償を計上しております。
以上の結果、物流事業全体の 売上高は2,869億45百万円 と 前期比6.6%の増収 、 セグメント利益(営業利益)は109億96百万円 と 前期比14.9%の増益 となりました。
なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高および売上原価は96億47百万円減少しております。
また、当連結会計年度の売上高に占める割合は51.8%であります。
②機工事業
保全作業では、東南アジアでのSDM(大型定期修理工事)や鉄鋼関連の工事量増はあるものの、国内の前期SDMメジャー年の工事量に累計では及ばず減収、設備工事では、国内の大型化学プラント関連工事の進捗や東南アジアでの設備据付・配管工事、中国・米国でのプロジェクト工事等による工事量増で増収でしたが、前期完工した国内の収益性の高い大型建設工事や環境関連工事等の剥落により減益となりました。
以上の結果、売上高は2,428億51百万円と前期比1.4%の増収、セグメント利益(営業利益)は221億63百万円と前期比2.4%の減益となりました。
なお、当連結会計年度の売上高に占める割合は43.9%であります。
③その他
道路・付帯設備の補修工事における延期・客先予算の削減や物流システム開発案件の減少等により、減収減益となりました。
売上高は240億34百万円と前期比4.5%の減収、セグメント利益(営業利益)は9億61百万円と前期比39.3%の減益となりました。
なお、当連結会計年度の売上高に占める割合は4.3%であります。
(2) 財政状態の状況
①資産
当連結会計年度末における総資産は4,624億67百万円であり、前連結会計年度末に比べ56億37百万円増加しました。この増加の主な要因は、売掛債権の回収が進んだことに伴い「現金及び預金」が増加したことによるものです。
②負債
当連結会計年度末における負債の部は2,137億42百万円であり、前連結会計年度末に比べ60億52百万円減少しました。この減少の主な要因は、増加した「現金及び預金」を元手に有利子負債の返済を進めたことによるものです。
③純資産
当連結会計年度末における純資産の部は、2,487億25百万円であり、前連結会計年度末に比べ116億89百万円増加しました。この増加の主な要因は、利益の計上による「利益剰余金」に加え、円安の進行に伴い 「為替換算調整勘定」が増加したことによるものです。
その結果、当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末を1.8ポイント上回る53.2%、D/Eレシオについては前連結会計年度末より0.01ポイント減少し、0.19倍となっております。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ62億29百万円増加し、当連結会計年度末残高は424億79百万円となりました。
①営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における営業活動による資金の増加額は、436億92百万円となりました。
前連結会計年度との比較では、売上債権が減少したこと等により、資金の収入は186億48百万円増加しました。
②投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における投資活動による資金の減少額は、149億38百万円となりました。
前連結会計年度との比較では、固定資産の取得による支出が減少したこと等により、資金の支出は3億58百万円減少しました。
③財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における財務活動による資金の減少額は、244億91百万円となりました。
前連結会計年度との比較では、自己株式の取得による支出が増加したこと等により、資金の支出は173億77百万円増加しました。
当社連結グループが営んでおります事業では生産実績を定義することは困難であるため、「生産の状況」は記載しておりません。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(2) 売上実績
当連結会計年度における売上実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1. 当社連結グループの事業では、「販売実績」という定義は実態にそぐわないため、各事業の売上実績を記載しております。
2. 主な相手先別の売上実績および当該売上実績の総売上実績に対する割合
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
①事業拡大
物流事業においては、国内外における物流診断や企画・提案営業により、新規お客様の獲得や既存事業領域の深耕拡大を図るとともに、国内外のお客様のサプライ・チェーンと消費財物流に資する3PLを中心とした物流領域の拡大に取り組み、その成果は着実に出ているものと考えております。次期中期ではこれまでの取り組みに加え、医療・医薬品や危険物といった専門的知識が必要な付加価値の高い物流サービスへの基盤強化を図って参ります。
機工事業においては、当社のビジネスモデルを武器にお客様のアウトソーシングニーズを着実に取り込み、ここ数年は国内外において、特にメンテナンス事業が大きく伸長いたしました。これはお客様を取り巻く社会的責任を含めた経営環境が大きく変化する中で、生産の効率化や基盤強化の旺盛なニーズに対して、当社の強みである動員力と現場力が選ばれてきた結果だと考えております。今後は、鉄鋼・化学に次ぐ第三の柱として注力している電力・エネルギーや環境設備への更なる進出を進め、着実な事業拡大を図って参ります。
②収益力
中期経営計画では「筋肉質な収益体制の構築」を経営戦略に掲げ、取り組んで参りました。
物流事業においては、コスト構造の見直しや適正単価収受の交渉を進め、採算性の低い拠点の集約や作業撤退等を実行することで事業体質を改善させ、営業利益率は向上いたしました。
機工事業においては、グローバルに事業を展開する中で事業本部が主導し、大型プロジェクトの木目細かなコストとリスクの管理を図り、事業全体の収益性が向上いたしました。工事工程の見直しや新技術の応用による省力化を進めるとともに、協力会社も含めた要員・機材をグループ全体で管理し、その効率的な配置にも継続的に取り組んでおります。
これらの取組結果として、中期経営計画で収益力の財務指標として掲げた「安定的に営業利益率5%以上を維持する」という目標は、コロナ禍による世界経済低迷の影響を受けた中でも上回ることができ、「筋肉質な収益体制の構築」に向け、着実な成果を上げていると考えております。
(2) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社連結グループの主な資金需要は、事業運営に必要な労務費、外注費、材料費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用、さらには当社連結グループの設備新設、改修等に係る投資であります。
上記以外にも、当社連結グループの企業価値向上の観点において、効果的なM&Aや、AI・IoT等の最新技術を用いた作業の効率化、新しいビジネスモデルの構築のための成長投資の検討も行っております。
また、自己株式の取得については、株価水準や市場環境等を勘案し適宜実施すること、自己株式の保有については、発行済株式総数の5%程度を目安とし、それを超える株式は原則として消却することを基本方針としております。
これらの必要資金は、まずは営業活動によるキャッシュ・フローと自己資金にて賄い、必要に応じて、適正な範囲内での金融機関からの借入および社債発行等による資金調達で対応することとしております。
現金及び現金同等物を含む手許の資金流動性につきましては、可能な限り圧縮し資金効率の向上に努めております。一方、急激な金融環境の変化や突発的な資金需要への備えとして、迅速かつ機動的に資金調達ができるコミットメントライン契約を金融機関と締結しております。
当連結会計年度につきましては、前期末積み上がった債権の回収が順調に進んだことを主要因とした営業収入の増加に加え、前連結会計年度と比較して投資キャッシュ・フローによる資金の支出が減少したこと等により、当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは、287億53百万円と、前連結会計年度から190億7百万円増加しました。このフリーキャッシュ・フローを財源として、自己株式の取得や長期借入金の返済等の財務支出を賄った結果、当連結会計年度末における有利子負債残高(リース債務除く)は456億86百万円と、前連結会計年度末から13億82百万円減少、D/Eレシオは0.19倍と、前連結会計年度末から0.01改善しております。
なお、キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の概況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)キャッシュ・フローの状況」の項目をご参照ください。
(3) 財政状態
当社連結グループは、中長期的な重要経営戦略の1つとして「収益力向上」を掲げており、その一環として「資産の圧縮と効率化」に取り組んでおります。事業の選択と集中を実施し、フリーキャッシュフローの有効活用を進める過程で、不稼動・低稼働資産の集約・売却等による資産圧縮を行い、3PLや3PM(一括メンテナンス)の高度化、新興国関連注力事業への投資の集中を図っております。
また、資金調達に関しては、営業キャッシュ・フロー、設備投資の支出の状況、現預金残高の水準等を総合的に勘案し、適正な範囲内で効率的かつ機動的に実施することを基本方針としており、その方針のもと、資金調達手段の多様化やグループ内余剰資金の有効活用等の各種施策を継続的に推進しております。
①流動資産
当連結会計年度末における流動資産は2,385億42百万円であり、前連結会計年度末に比べ21億39百万円、0.9%増加しました。主な要因は、売掛金の回収による現金及び預金の増加等によるものです。
②固定資産
当連結会計年度末における固定資産は2,239億24百万円であり、前連結会計年度末に比べ34億97百万円、1.6%増加しました。主な要因は、有形固定資産の増加と、年金資産増加による退職給付に係る資産の増加等によるものです。
③流動負債
当連結会計年度末における流動負債は1,407億97百万円であり、前連結会計年度末に比べ68億10百万円、5.1%増加しました。主な要因は、1年内に償還期日が到来する社債の増加と、未払法人税等の減少との差等によるものです。
④固定負債
当連結会計年度末における固定負債は729億45百万円であり、前連結会計年度末に比べ128億63百万円、15.0%減少しました。主な要因は、1年内に償還期日が到来する社債の流動負債への振替と、長期借入金の減少等によるものです。
⑤純資産
当連結会計年度末における純資産は2,487億25百万円であり、前連結会計年度末に比べ116億89百万円、4.9%増加しました。主な要因は、利益剰余金、および為替換算調整勘定の増加等によるものです。
当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末を1.8ポイント上回る53.2%となっております。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社連結グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす見積りおよび仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりです。
①繰延税金資産
当社連結グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。
②退職給付債務および退職給付費用
退職給付債務および退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等に基づいて計算しております。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い長期債利回りを参考に決定し、また、年金資産の長期期待運用収益率は、過去の運用実績および将来の経済・市場環境の見通し等を基礎として設定しております。割引率および長期期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。
③工事損失引当金
受注工事の将来の損失に備えるため、未成工事のうち損失の発生が見込まれ、かつ、その金額を合理的に見積ることができる工事について、工事損失引当金を計上することとしております。
技術的難易度の高い長期請負工事や海外でのカントリー・リスク等のある工事等において、工事の進行に伴い見積りを超えた原価が発生する場合は、当社連結グループの業績を悪化させる可能性があります。
④完成工事高および完成工事原価の計上
成果の確実性が認められる工事契約については、履行義務の充足に係る進捗度(工事の進捗度の見積りはインプット法)に基づき完成工事高を計上しております。想定していなかった原価の発生等により工事進捗度が変動した場合は、完成工事高および完成工事原価が影響を受け、当社連結グループの業績を変動させる可能性があります。
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