業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営成績

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響が長期化するなか、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が本格的に進み、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催や10月1日の緊急事態宣言解除の効果もあり、経済活動の持ち直しの動きは見られたものの、新たな変異株の出現によるまん延防止等重点措置の実施等、断続的な人流抑制の影響を受け、依然として先行き不透明な厳しい状況で推移いたしました。

 このような経済環境のなか、当社グループにおいては、お客様や従業員の安全を最優先に考え、新型コロナウイルス感染症拡大防止に最大限留意しながら、将来のモビリティのサービス化(MaaS)やAIの活用、自動運転分野の更なる発展による事業構造の大きな変化の流れに対応して行くため、3ヶ年中期経営計画「中期経営計画2021」の第3期目を推進いたしました。

 当連結会計年度の連結業績は、主要事業である旅客自動車運送事業において、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う外出自粛やテレワークの浸透等で減少していた売上高は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置による人流抑制の影響を受け、不安定な状況が続いたため、大幅な回復にまでは至らず、売上高は15,271百万円(前期比32.4%増)、営業損失は1,234百万円(前期は営業損失3,544百万円)、経常損失は27百万円(前期は経常損失2,088百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,824百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失1,721百万円)と なりました。

 なお、雇用調整助成金1,179百万円を営業外収益に計上いたしました。また、東京都大田区昭和島土地売却等による固定資産売却益3,012百万円を特別利益に計上いたしました。

 

 セグメントの業績は、次のとおりであります。

 なお、当連結会計年度の期首より、報告セグメントの区分を変更しており、当連結会計年度の比較・分析についても、変更後の区分に基づいております。

① 旅客自動車運送事業部門

 タクシー部門では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から実施していた計画供給調整(稼動タクシー車両台数の減少)を10月中旬より解除した効果もあり、前期の実績からは回復基調で推移した結果、売上高は7,526百万円(前期比47.3%増)となりました。当グループの課題である乗務員不足解消の施策として、前年度に続き積極的な採用活動の展開と、採用者への接客やマナーの教育・訓練には注力しているものの、乗務員の増加にまでは至りませんでした。一方で、旅客自動車運送事業の働き方改革の実現に向けた政府行動計画に賛同し、働きやすい職場環境を整えた結果、申請した全ての事業所において運転者職場環境良好認証制度の認証を受けました。顧客サービスにおいては、事前確定運賃サービスや需要予測サービス等の配車アプリ「S.RIDE」の提供や、QRコードやSuica等の各種電子マネーによる決済サービスの充実、更には新型コロナウイルス感染症拡大に伴う外出自粛が要請されていた中、不特定多数の方との接触の機会を減らせるタクシー往復送迎付き宿泊プラン等のサービスに注力いたしました。加えて、2自治体と契約締結し新型コロナワクチン接種会場へのタクシー送迎サービスや、タクシーコール機器の病院への設置によるタクシー送迎サービスを実施しました。引き続き、モビリティのサービス化(MaaS)、自動運転分野の実証実験、需要予測サービスの実証検証に積極的に参画し、異業種や大学等の学術機関との連携を深めることで、新たな移動サービスの提供の実現に努めております。特に自動運転分野に関しては、株式会社日本総合研究所が高齢化社会に向け交通弱者でも地域内外の移動をスムーズにし、地域内外の商店・企業等と地域をつなげ、住民同士の関わり合いの機会を作ることを目指している「まちなか自動移動サービス事業構想コンソーシアム」に当社も参画し、各種サービスの開発に取り組んでおります。輸送の安全確保面では、新型コロナウイルス感染症予防とまん延防止の対策を最優先に取り組み、車内除菌や消毒、窓開放による換気、乗務員の体温チェックと手洗いうがいの徹底に加え、後部座席タブレットを用いたお客様におけるマスク着用依頼の画像配信や、感染防止L字ボードとオゾン発生装置の全車両設置を実施いたしました。

 

 ハイヤー部門では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響はあるものの、お客様における経済活動が緩やかに回復していることもあり、売上高は2,522百万円(前期比7.5%増)となりました。ハイヤー部門におきましても、車内除菌や消毒、窓開放による換気、乗務員の体温チェックと手洗いうがいの徹底に加え、ワンボックス車両への感染防止L字ボード設置と、オゾン発生装置の全車両設置を実施いたしました。経費面では、駐車場や事務所賃料の値下げ交渉、更には第1四半期中に自社ビルへの一部事務所移転させる等、経費支出の圧縮を実現し、利益率の改善・向上に努めてまいりました。営業面では、お客様の新型コロナウイルス感染症防止対策として通勤時のハイヤー利用を積極的にセールスした結果、新規顧客を獲得することができました。また、移動テレワーク室の実証実験を行う等、新規サービス開発にも取り組んでおります。福祉輸送部門においては、不特定多数の方との接触の機会を減らせる安全な移動手段として通学時の福祉車両利用を積極的にセールスいたしました。また、新人乗務員指導係を増員し、乗務員未経験者に対する教育体制も更に充実させました。加えてシルバー人材センターへの乗務員求人登録や運転者職場環境良好認証制度の認証を受けました。

 以上の結果、タクシー部門及びハイヤー部門並びに関連するその他の収益を加えた旅客自動車運送事業の売上高は10,049百万円(前期比34.7%増)、営業損失は619百万円(前期は営業損失3,061百万円)となりました。旅客自動車運送事業の最重要課題である乗務員確保、高齢化社会の到来に伴い多様化する生活サポート・福祉関連ニーズの高まりに応えるため、大和グループの総力を挙げ、「安心・安全、おもてなし」の更なる向上に努めてまいります。

 

② 不動産事業部門

 不動産事業では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響はあったものの、引き続きテナントの要望に沿った施設の改善、オフィスビルや賃貸マンションのリノベーションを実施するとともに、大手仲介不動産会社や各物件所在の地元不動産会社と継続して積極的な情報交換を行う等、事業収益の増強に取り組んだ結果、オフィスビルや賃貸マンションの稼働率が改善し、賃貸収入売上が前期に比して増額で推移いたしました。しかし、リノベーションへの積極的取組により、利益が減少いたしました。

 以上の結果、不動産事業の売上高は897百万円(前期比2.0%増)、営業利益は215百万円 (前期比28.2%減)となりました。

 

③ 販売事業部門

 自動車燃料販売部門では、新規得意先開拓等の顧客営業を強化、仕入コストの見直しや新型コロナウイルス感染症対策用品(非接触型体温測定器、除菌スプレー器、抗原検査キット、タクシー車両用オゾン発生器等)の販売を行うことで営業利益の確保に努めてまいりました。しかしながら、2021年の秋から続く原油価格の更なる上昇や、新たな変異株への置き換わり等による感染拡大に伴う緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響もあり、自動車燃料の需要が減少する等、厳しい状況が続きました。

 金属製品製造販売部門では、安定的な収益基盤を確立するため、高利益率の見込める特注階段等の受注生産を積極的に展開しております。主力商品である集合住宅用標準外階段の生産高は堅調に推移いたしましたが、共同出資企業のベトナム工場がコロナ禍によりロックダウンしたことを受け、一時的に国内生産を増強し生産量の減少を最小限に止めると同時に価格交渉を行うことで、営業利益の確保に努めてまいりました。

 以上の結果、販売事業の売上高は2,151百万円(前期比18.6%減)、営業利益は68百万円(前期は営業損失62百万円)となりました。なお、当連結会計年度の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)を適用し、販売事業の一部取引において純額で収益を認識する方法へ変更したため、販売事業売上高の前期比に差異が生じております。

 

④ サービス・メンテナンス事業部門

 サービス・メンテナンス事業部門では、ゴルフ場クラブハウスの清掃・設備管理をメインとした総合管理業務及び商業施設並びにホテル等のアメニティ管理を含む清掃業務を主要事業としており、顧客との安定的な契約に基づき、ゲストの皆様にご満足いただけるための安全で清潔な最適環境作りを提供しております。メイン事業の顧客であるゴルフ場の利用動向につきましては、コンペ等の団体利用及びレストラン営業は減少しているものの、個人利用客は大きな影響を受けておらず、むしろ来場者数は増加しております。また新規のゴルフ場との契約も受注し、安定的な収益を確保いたしました。一方、今期はゴルフ場の来場者の増加により、営業時間の短縮が発生した前期に比べフィールドスタッフの労務費が増加したため、利益が減少いたしました。

 以上の結果、サービス・メンテナンス事業の売上高は2,173百万円(前期比293.1%増)、 営業損失は1百万円(前期は営業損失3百万円)となりました。なお、サービス・メンテナンス事業部門は、前期において株式会社トータルメンテナンスジャパンを子会社化(みなし取得日は、2020年12月末)したことに伴う新セグメントであり、同社の業績は2021年1月以降の実績に反映されるため、売上高の前期比に差異が生じております。

 

 

(2)財政状態

① 資産

 当連結会計年度末の総資産は30,159百万円となり、前連結会計年度末に比べ709百万円の増加となりました。これは東京都大田区昭和島土地売却等に伴い土地が899百万円減少したこと等により有形固定資産が1,074百万円減少した一方で、売却代金の入金等により現金及び預金が2,124百万円増加する等、流動資産が2,101百万円増加したこと等によるものであります。

② 負債

 負債は20,964百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,159百万円の減少となりました。これは短期借入金が1,561百万円増加したことから、流動負債が1,965百万円増加したものの、長期借入金が3,158百万円減少した結果、固定負債が3,125百万円減少したことによるものであります。

③ 純資産

 純資産は9,195百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,869百万円増加となりました。これは親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により利益剰余金が1,789百万円増加したこと等によるものであります。

 以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の24.7%から30.3%に増加しております。

 

(3)キャッシュ・フロー

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度に比べ1,657百万円増加し、8,056百万円となりました。

 各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りであります。

① 営業活動によるキャッシュ・フロー

 当連結会計年度における営業活動による資金の収入は1,197百万円(前連結会計年度は1,029百万円の支出)となりました。これは主に、減価償却費933百万円及び減損損失213百万円を計上した一方で、売上債権が211百万円増加したこと等によるものであります。

② 投資活動によるキャッシュ・フロー

 当連結会計年度における投資活動による資金の収入は2,672百万円(前連結会計年度は546百万円の支出)となりました。これは主に、固定資産の売却による収入3,639百万円があった一方で、固定資産の取得による支出568百万円及び定期預金の預入による支出535百万円があったこと等によるものであります。

③ 財務活動によるキャッシュ・フロー

 当連結会計年度における財務活動による資金の支出は2,211百万円(前連結会計年度は6,488百万円の収入)となりました。これは主に、短期借入金の純増1,750百万円があった一方で、長期借入金の返済による支出4,027百万円があったこと等によるものであります。

 

 重要な資本的支出の予定につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」をご参照ください。

 

(5)経営者の問題認識と今後の方針

 当社グループを取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響が長期化するなか、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が本格的に進み、2021年10月1日の緊急事態宣言解除の効果もあり、経済活動の持ち直しの動きは見られたものの、新たな変異株の出現によるまん延防止等重点措置の実施等、断続的な人流抑制の影響を受け、依然として先行き不透明な厳しい状況に置かれております。2021年度の当社グループの業績は2020年度に比べ回復いたしましたが、新型コロナウイルス感染症が拡大する以前の業績までには至っておりません。このような先行き不透明な状況のもと、中長期的にはインバウンド需要の回復などのプラス要素も見込まれるものの、テレワークの浸透、飲食に対する考え方の変化等、お客様の新たな生活様式が定着しつつあることから、コロナ禍以前の移動サービスの利用状況には戻らないことを前提に、新たな三か年の中期経営計画「中期経営計画2024」を策定いたしました。策定にあたり、With/Afterコロナの生活様式を含めた将来の社会/産業の変化が当社グループにどのような影響を与え、当社グループはどうあるべきかを明確にすべきという観点から、長期ビジョンを設定した上で、三か年の基本方針と取り組み内容を検討いたしました。

 長期ビジョンは「ビジョン2030」として、「人・地域社会・モビリティの『新しい調和』をつくる先進企業グループへ」をスローガンに、下記の3つを当社グループの目指す姿としております。

 ○ デジタルを活用した移動関連サービスの提供と周辺事業への展開等による事業領域の拡張

 ○ 利用シーンの変化に合った新サービスの導入や多様な収益モデルに対応したビジネスモデルの多様化

 ○ 組織・人材の活性化、多様な人材が活躍できる環境整備、新しいことに挑戦する風土の醸成

 2022年度からの三か年の基本方針は「中期経営計画2024」として、「再成長に向けた基盤づくり」をスローガンに、下記テーマに取り組んでまいります。

 ○ 安心・安全・おもてなしの更なる向上

 ○ With/Afterコロナにおいても利益を出せる体質づくり

 ○ 新規ニーズの獲得と周辺事業の強化

 ○ 経営基盤の強化とサステナブルな社会・交通インフラづくりへの貢献

 同時に「財務健全性の回復」をテーマに、2024年度時点を目安にした数値目標を設定しております。

 ○ 連結売上高190億円

 ○ 連結経常利益7億円以上

 ○ 自己資本比率37%以上

 ○ ROE5%程度

 2024年度における目標達成へ向け、当社グループ一丸となって邁進してまいります。

 

(6)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。

 この連結財務諸表の作成にあたり、資産・負債及び収益・費用の報告数値及び開示に影響を与える見積りや判断を行う必要がございます。これらの見積り及び判断を過去の実績や状況に応じ合理的に行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(7)生産、受注及び販売の状況

 当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、また受注生産形態をとらない事業も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

 このため生産、受注及び販売の状況については、「(1)経営成績」におけるセグメントの業績に関連付けて示しております。

 

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