課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営の基本方針

当社グループは、グループの使命・存在意義である経営理念として「安心と信頼を基礎に、世界をつなぐ心の翼で夢にあふれる未来に貢献します」を掲げています。経営の基盤である安全を堅持しつつ、数あるエアライングループのなかで、お客様に選ばれ、世界の航空業界をリードする確固たる地位を築くことを目指し、グループ経営ビジョンとして「ANAグループは、お客様満足と価値創造で世界のリーディングエアライングループを目指します」と定めています。

 

(2) 経営環境

航空業界は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、旅客需要が大幅に減少し、甚大な影響を受けていましたが、前期に比べ、回復基調にあります。一方で国際貨物需要が堅調に推移し、貨物収入は2期連続で過去最高となりました。

資金面については、6月に民間金融機関の協調融資により1,000億円の短期借入を実施しました。また同じく6月に200億円の無担保普通社債(サステナビリティ・リンク・ボンド)、及び12月に1,500億円のユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行による資金調達を実施したことから、当連結会計年度末現在においては、十分な手元流動性を確保しています。

 

(3) 対処すべき課題

当社グループは、2020年10月27日に公表した「ANAグループの新しいビジネス・モデルへの変革」に基づき、コロナがもたらす人々の行動変容に対応し、感染症の再来にも耐え得る強靭な企業グループに生まれ変わるための事業構造改革プランを着実に遂行してきました。

 

① 需要に合わせた航空事業の一時的な縮小

需要動向に応じた運航規模の抑制による運航関連費用の削減に加え、固定費の大幅な削減を進めました。具体的には大型機を中心とした航空機の早期退役を実施した他、グループ役職員の報酬・賃金・一時金の削減や、休業・休職制度の拡充、外部企業への出向等の人件費抑制策を実施したことにより、変動費・固定費合計で約6,000億円(対2019年度)の費用削減を行いました。自助努力で削減した約3,250億円(雇用調整助成金の受給額を含む)のうち、固定費の約1,300億円については、コスト削減効果が恒久的に持続する見込みです。

 

② 最適な航空事業ポートフォリオの追求

ANA、Peachに加え、第3ブランドであるAirJapan(2023年度下期就航予定)の活用により、お客様の価格・サービスにおける幅広いニーズに対応できるエアライングループとして持続的な成長を目指します。各エアラインはコロナ後の新常態に適合した新しいサービス・モデルを展開するとともに、マーケティングにおいて連携を図り、顧客回遊を促進することにより、お客様のライフタイム・バリューを最大化します。

 

③ 顧客データを活用したプラットフォーム事業の確立

航空事業、旅行事業、日常的な購買を中核に、当社グループが蓄積してきた顧客データとANAアプリやホームページ等のデジタルタッチポイントを活用したプラットフォーム・ビジネスを具現化し、グループにおける非航空収益を拡大します。

 

(4) 今後の見通し等

今後の経済見通しにつきましては、経済社会活動が正常化に向かう中で、各種政策の効果や海外経済の改善もあり、持ち直していくことが期待されますが、ウクライナ侵攻等に伴う原油高、円安、物価上昇等の影響が懸念されます。新型コロナウイルス感染症が当社に与える影響は依然大きく、前期に引き続き業績への影響は避けられないと考えていますが、本年3月以降、まん延防止等重点措置の解除や各国の入国制限緩和に向けた動きもあり、航空需要の更なる回復の兆しがみられます。

このような状況下で当社グループでは、事業構造改革プランを引き続き着実に推進していきます。航空事業においては、機動的な運航規模の調整により回復する旅客需要を確実に取り込む他、需要が堅調な貨物事業のマーケティングを更に強化し、収入最大化に取り組んでいきます。費用面では、前期に実施した固定費の削減効果を持続させることでコスト構造の改善を進めます。また、燃料価格の高騰や物価上昇等により増加するコストについては、コスト構造と収益モデルを見直すことで抑制し、黒字化を目指します。

 

(5) 社会的価値と経済的価値の同時創造

地球環境や社会が抱える課題への対応が企業の長期的な成長に大きな影響を及ぼすなか、経営理念である「安心」と「信頼」を基礎としながら、「社会的価値」と「経済的価値」を同時に創出していくことを目指しています。

ANAグループでは、その具体的な取り組みとして、事業戦略や社会動向を踏まえ、社内外のステークホルダーへ配慮しつつ、「環境」「人権」「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」「地域創生」を経営における重要課題(マテリアリティ)として特定しました。グローバルレベルの観点から国際基準に基づき、持続可能な開発目標(SDGs)をはじめとする国際的な目標も意識しながら活動を推進していきます。

「環境」についてはCO2排出量の削減のため、低燃費航空機の導入、並びに持続可能なジェット燃料導入の取り組み等を行っています。「人権」「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」では、「ビジネスと人権に関する国連指導原則」への対応や、お客様のダイバーシティに着目したサービスの開発・導入を推進しています。また「地域創生」については、ANAグループ内リソースを戦略的に活用し、国内では、訪日需要の取り込みや地域産品の宣伝・販売をはじめとした地域活性化支援事業等を行っており、海外就航地域では、当該地域の社会課題解決に向け、次世代教育や観光資源の保全等の社会貢献活動を積極的に行っています。

 

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