課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

※2021年1月1日より、ITソリューション事業をデジタルマーケティング事業へと改称しております。

 

(1)経営方針

当社グループは「ウェルビーイングのスタンダードを創る」というビジョンを掲げております。

当社グループが定義している「ウェルビーイング」とは、以下のとおりです。

「毎日、楽しくて仕方がない」という気持ちで目が覚める。

信頼できる職場で一日を過ごし、満ち足りた気持ちで家に帰る。

やる気に満ち溢れ、自らだけではなくチームを奮い立たせ、そして、信じるビジョンを達成する。

 

多くの労働者は、限界まで働き、心や身体の健康を失って、初めて、「その重要性に気付く」ということが少なくないのではないかと考えます。

当社グループはメンタルヘルスの問題の解決を通じて、働く人々が健康問題で不幸に陥らない「心身の健康問題を考えることが身近になる世界」を実現したいと考えております。

当社グループでは、このビジョンのもと、企業にとって最適なメンタルヘルスケア体制をクラウドサービスを活用しながら構築運用し、多くの職場における従業員のメンタルヘルス問題に取り組み、解決の方策を探し続けていきたいと考えております。

 

(2)経営戦略及び市場戦略等

①メンタルヘルスソリューション事業の成長戦略

当社グループでは、中核事業であるメンタルヘルスソリューション事業の成長のため、以下の戦略をとっております。

ⅰ. 売上高に占めるエンタープライズの比率向上

当社グループでは、従業員1,000名以上かつ「産業医クラウド」の売上高月額20万円以上(見込を含む)の企業(グループ)を「エンタープライズ」と定義しております。エンタープライズは一件当たり売上金額が大きく、MRR(月次経常収益)の増加に大きく貢献するため、売上全体におけるエンタープライズの比率向上を目指しております。

2021年12月末現在で、1,000人以上の従業員の顧客企業数は当社の総契約件数中8.7%の96グループであります。

 

ⅱ. エンタープライズの一顧客グループ当たり単価の向上

エンタープライズは、従業員に比例して取引金額が大きいこと、ニーズが多種多様であること、グループ全体の労働安全衛生の対応等から、単価向上が見込みやすい顧客グループです。エンタープライズは、下記「(4)経営環境」で述べているように、産業医業務の「形式運用」から職場のメンタルヘルスケア対応にかかる「課題解決型運用」への道を模索している先が多く、当社スタッフによるカウンセリングを実施することで、ニーズに則した産業医による役務提供、企業の内実に合致した「ELPIS」サービスの追加が期待できるため、長期契約による売上単価の向上を見込んでおります。

実際に、毎年エンタープライズ一顧客グループ当たりの単価は向上しており、平均単価向上を加速させていくことが、当事業の継続的な成長に重要と考えております。

 

ⅲ.「ELPIS」導入促進による売上総利益率の改善

売上総利益率の改善のためには、従来は産業医が役務提供を行っていた業務の一部を保健師や「ELPIS」で代替することにより、クラウドサービス比率を向上させることが重要であると考えております。当該マーケットは、単純に産業医による役務を提供するだけであれば価格競争に陥ってしまいます。新規契約時には産業医の役務提供からスタートしつつも、メンタルヘルスケアや健康管理に関するサービスである「ELPIS」を顧客に採用・継続利用してもらうことによって、売上総利益率を改善することが可能と考えております。

 

ⅳ.「産業医クラウド」契約に関するチャーンレート(解約率)の改善

当社グループとしては、月次のチャーンレートに改善の余地があると考え、多種多様なサービスを顧客企業に提供すること、及びカスマターサクセス機能の強化を実施することが、当社の継続的な成長に重要と考えております。

 

②当社グループ内事業によるシナジー戦略

当社グループは、メンタルヘルスソリューション事業、メディカルキャリア支援事業、デジタルマーケティング事業の3つの事業を行っております。これら3つの事業は当社グループが提供するメンタルヘルス関連サービスにおいて密接に関連しております。

デジタルマーケティング事業において創業以来実施している医学会向けサービスによって蓄積された医師のデータベースとWebマーケティングのノウハウを活用することで、当社グループの中核事業であるメンタルヘルスソリューション事業、並びにメディカルキャリア支援事業における成約確率の高い見込み顧客の開拓に結びつけるための戦略をとっております。

また、メディカルキャリア支援事業においては、売上向上を目指して地方の医療機関と接触を深めておりますが、それによって地方における産業医候補の医師の情報を獲得し、地方の企業におけるメンタルヘルスソリューション事業の見込み顧客開拓につなげることを目指しております。

上記戦略を実行することにより、見込み顧客開拓をグループ全体で実施することで、シナジーを発揮し、マーケティングコストの低減を図っていきます。

 

(3)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、当社グループの中核事業であるメンタルヘルスソリューション事業に関し、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、月次経常収益(MRR)を重要な経営指標と位置付けております。また、MRRを構成する指標として、①エンタープライズ企業の契約社数及び全体の件数に占める比率、②企業規模別契約単価、③企業規模別売上総利益率、④「産業医クラウド」契約に関するチャーンレート(解約率)、⑤売上継続率(NRR)も、同様に重要な経営指標であると捉えております。

 

(4)経営環境

厚生労働省より2019年3月1日に公表された「患者調査の概況」によると、精神疾患により医療機関にかかっている患者数は、近年大幅に増加しており、2002年では258.4万人であったものが、2014年は392.4万人、2017年では419.3万人になっています。

内訳としては、多いものから、うつ病、統合失調症、不安障害、認知症となっており、近年においては、うつ病や認知症などの著しい増加がみられます。

こうした状況変化に伴い、2015年には労働安全衛生法が改正されストレスチェック制度が義務化、2019年には働き方改革関連法が施行され、有休休暇取得の義務化や大企業における時間外労働時間の罰則付き上限規制が法制化されました。また、5年間猶予されていた一部の事業や業務、医師、自動車運転業、建設事業については、2024年4月より時間外労働時間の上限規制の適用が予定されております。経済産業省が進めている健康経営優良法人の取得企業(注1)は毎年増加しており、企業による従業員への健康配慮の気運が高まっております。また、厚生労働省が2020年3月に改定した「テレワークガイドライン」でも、事業主・企業の労務担当者用の「テレワークを行う労働者の安全衛生を確保するためのチェックリスト」の中に、メンタルヘルス対策のチェック項目が入っております。

当社は、企業が従業員のメンタルヘルスケアを実現していくためには、高い専門性を持つ産業医、そして、厚生労働省が推奨する通称「4つのケア(セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケア)」による体制整備を実現し、各種ハラスメント対策を含め、適正な運用を実現し続けることが重要と考えています。しかしながら、これらの体制整備が実現できている企業は多くありません。背景には、多くの企業における従業員の健康管理、メンタルヘルスケアの実態として、産業医業務が形式的なものにとどまっていたことがあるのではないかと考えております。

したがって、多くの企業で選任している産業医では、最新の動向を踏まえたメンタルヘルスケアや新型コロナウイルスによる環境変化に伴うメンタルヘルスケアへの対応ができていない可能性があり、企業から当社への問い合わせの多くは、既存産業医の交代、メンタルヘルス対応、健康管理室(注2)の立ち上げ等となっております。企業は法令上の必要性から産業医を選任するといった「形式運用」から職場のメンタルヘルスケア対応にかかる「課題解決型運用」に移行している最中であり、従業員のメンタルヘルスケア対応を強化し、健康問題を解決していこうという流れが起き始めています。

産業医については、労働安全衛生法により、企業規模に応じた産業医の選任義務と選任人数等が定められております。総務省統計局の「平成24年経済センサス-活動調査」と「令和元年経済センサス-活動調査」によれば、産業医選任義務の対象となる従業員50人以上の企業数は、日本国内に約8.8万社、約16.2万事業場とありますが、上記の「形式運用」から「課題解決型運用」への変化により、メンタルヘルスソリューション事業の事業拡大の余地は大きいものと考えております。

(注1)健康経営は、日本再興戦略、未来投資戦略に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つ。経済産業省では、健康経営に係る各種顕彰制度として、2014年度から「健康経営銘柄」の選定を行っており、2016年度には「健康経営優良法人認定制度」を創設している。

(注2)健康管理室: 社員の健康管理業務全般を担う機能

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループでは、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題として、下記の4点があると考えております。

 

① 収益基盤の強化

当社グループは、これまでも各事業において、収益基盤を構築してまいりましたが、今後の中長期的な成長を実現するために、さらなる収益基盤の強化が重要な課題であると認識しております。

今後、この課題に対応するためには、メンタルヘルスソリューション事業については、多くの職場でのメンタルヘルスケア、健康経営に貢献できるようなサービスコンテンツの開発や、産業医の登録数の増加と産業医業務の質的向上、カスタマーサクセスチームによるカスタマーサポート体制の一層の強化が必要であると考えております。また、メディカルキャリア支援事業においては、求職医師の登録数の増加、求人医療機関数の増加等を実現するための方策の検討、ネットワークの構築などを進めてまいります。さらに、デジタルマーケティング事業に関しては、Webマーケティング支援サービス売上増加のための専門性向上、人員増強が重要であると考えております。

 

② サービスの健全性の維持及び向上

当社グループの事業において、インターネットを通じたビジネスとなっているものに関しては、システムを安定的に稼働させることが重要な課題であると認識しております。今後においても、セキュリティの向上等に適時に対応し、技術革新等の事業環境の変化にも柔軟に対応できるシステム開発体制を構築することで、システムの安定稼動や高度なセキュリティが担保されたサービス運営に努めてまいります。

 

③ 組織力、内部管理体制の強化

ⅰ.優秀な人材の確保及び育成

当社グループでは、産業保健、メンタルヘルス、医療関連の専門的知識を有した優秀な人材の確保及び育成が重要な課題であると認識しております。事業規模に応じた効率的な運営を意識し、高度な知識・経験のある人材の確保に積極的に取り組んでまいります。また、人材育成のために各種研修等の教育・研修制度も充実させてまいります。

 

ⅱ.内部管理体制の強化

当社グループが継続的に成長し続けるためには、内部管理体制の強化が必要不可欠な課題であると認識しております。今後においても、内部統制システムの運用を徹底し、事業運営上のリスクの把握と管理を適切に行える体制構築に努めてまいります。

 

ⅲ.情報管理体制の強化

当社グループでは、個人情報等の機密情報につきまして、ネットワークの管理、「個人情報保護規程」の制定及び遵守、全従業員を対象とした社内研修の徹底、内部監査によるチェック等により、情報管理体制を構築しております。今後においても、コンプライアンスを重視し、情報管理体制の強化に努めてまいります。

 

④ 財務上の課題

当社グループの中核事業であるメンタルヘルスソリューション事業においては、現状、未だ投資フェーズと捉えており、サービス開発や広告宣伝等に投資していることから、2019年12月期に続き、2020年12月期においても営業損益以下の各段階損益において赤字となっており、営業キャッシュ・フローもマイナスとなっております。したがって、収益力向上による早期黒字化と財務体質の改善が課題と考えております。

なお、当連結会計年度においては、契約企業数増加や医師の求人求職増加によるメンタルヘルスソリューション事業及びメディカルキャリア支援事業の収益向上により損益分岐点を超え始めており、営業利益138,281千円を計上し、各段階利益において黒字化しております。今後も継続的な利益計上に努め、財務体質を改善してまいります。

 

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