課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループにおける経営方針、経営環境および対処すべき課題等は以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が抑制され、経済活動の本格的な再開が期待される一方、ロシア・ウクライナ情勢等の地政学的リスクの顕在化による原材料の価格高騰等の影響により、世界規模の経済への先行き不透明感が強まっております。

建設コンサルタント業界では自然災害リスクに備え、国土強靭化の推進や社会資本老朽化に対する適切な維持管理、長寿命化、更新への危急的な対応が求められております。また、情報通信技術(以下「ICT」という。)を活用したインフラサービスの高度化、急速に進む少子高齢化への備えや地域創生への対応、さらには、現在大きな変革期にある国内エネルギーの需要、供給政策への対応など、これまでにないスピードで発展する社会への貢献、コミットが求められております。これらは、いずれも我が国の発展に向けた根幹部分であり、その実現のために建設コンサルタントが果たすべき役割は、ますます大きくなっております。

このような状況の中、公共事業投資額については、近年約8~9兆円の水準で安定的に推移しているほか、2020年12月に15兆円程度の予算規模を目処とした「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」が閣議決定されております。今後のインフラ投資の落ち込みによる影響など不透明な材料はあるものの、現在のところ国内公共事業を取り巻く環境はおおむね堅調に推移しております。

 

(1) 経営の基本方針

当社グループでは、経営理念である「人が夢を持って暮らせる社会の創造に技術で貢献する。」を踏まえ、「人」「夢」「技術」をモットーに、国内外において人権を尊重し、関係法令、国際的ルールおよびその精神を遵守しつつ、持続可能な社会の創造に貢献することを目指しております。

 

(2) 経営戦略

 当社グループは、株式会社長大の長期経営計画である「長期経営ビジョン2030」(2019年10月~2031年9月)を踏襲しております。さらに、この「長期経営ビジョン2030」の実現に向けての第2フェーズとして、2022年11月に公表しました中期経営計画「持続成長プラン2025(2022年10月~2025年9月)」を策定し、当社グループのさらなる成長に向けた基盤づくりを行う重要なステージと位置づけ、より具体的な目標及び施策をとりまとめております。

 

「持続成長プラン2025」

 

 数値目標                                  

 

売上高(百万円)

営業利益(百万円)

従業員数(人)

連結

47,800

3,200

約2,400

 

 

目標達成に向けた施策

 「持続成長プラン2025」では、『国土基盤整備・保全分野のさらなる強化と環境・新エネルギー分野及び地域創生分野の新たな事業分野としての確立。事業を支える多様な人材が働きがいを持てる環境づくりを推進。』を基本方針としております。引き続き要請の多い国土強靭化やインフラ維持管理等のニーズに対応した基幹事業の強化・拡大を図るとともに、新領域における事業開発や海外事業の強化、人材の確保及び育成への投資を重点的に行ってまいります。計画期間中は以下の5つの施策と3つの横断的な取組みに基づき事業を推進してまいります。

 

(事業軸Ⅰ 国土基盤整備・保全分野)

主要施策 1.人・夢・技術グループの基幹を担う国土基盤整備・保全分野のさらなる強化

事業軸Ⅰ国土基盤整備・保全分野において、構造、道路・交通、地盤、保全などの基幹事業における受注の拡大に向けて、基幹事業におけるさらなる技術開発を推進するとともに、グループ会社間の連携により顧客ニーズに応じた技術サービスを提供する。また、近年事業を拡大している河川事業について、さらなる受注拡大を目指す。さらに、技術人材の確保と育成、IT化やDXの推進等による業務実施体制の強化を図る。

 

(事業軸Ⅱ 環境・新エネルギー分野)

主要施策 2.カーボンニュートラルに関するあらゆる側面からの事業参画

事業軸Ⅱ環境・新エネルギー分野において、カーボンニュートラルに関するあらゆる側面からの事業参画を図ることで、新たな事業分野としての確立を図る。これまで推進してきた洋上風力発電事業関連の地盤調査のさらなる受注拡大を図るとともに、バイオマス発電事業の事業拡大、自治体や民間へのコンサルティングサービスの拡大を図る。

 

(事業軸Ⅲ 地域創生分野)

主要施策 3.「人・夢・技術グループが目指す地域創生」の実現に向けた多様なまちづくりのサービスの提供

事業軸Ⅲ地域創生分野において、地域創生の基盤となる「人・夢・技術グループが目指す地域創生」の実現に向けて、まちづくりの多様なサービスを提供する。具体的には、PPP/PFIアドバイザリーや建築・健康・まちづくりのコンサルティングサービスのほか、サービス購入型や独立採算型の PPP/PFI事業の運営、オンデマンド交通のサービスの高度化等を推進する。また、「人・夢・技術グループが目指す地域創生」のモデルとして、株式会社長大が支援・共同展開する「北海道更別村SUPER VILLAGE構想」において、データ基盤連携に基づくシームレスな行政サービスの提供を実現する。

 

(海外連携展開領域)

主要施策 4.新たな海外事業展開のための海外拠点及び営業・技術部門の体制強化

海外連携展開において、シンガポール及び VIP(ベトナム、インドネシア、フィリピン)の海外拠点の体制強化、また、グループ会社間の海外営業・技術部門の連携を図ることで、東南アジアを中心とする海外業務の受注拡大を図る。

 

(国内事業推進)

主要施策 5. 新たな地域や顧客の開拓と災害時の対応強化

地域担当技術者の配置による地域ニーズの把握やグループ会社間の技術・営業情報の共有により、新たな顧客の開拓を推進する。また、地域ネットワークの形成やグループ会社間の連携により、災害発生時の調査や復興支援に迅速に対応できる体制を構築する。

 

(横断的な取組み)

横断的な取組み 1.多様な働き方の提示と採用・育成の強化

人・夢・技術グループの持続的な成長に向けて、多様な人材が”働きがい”を持てる環境をつくるため、長時間労働の改善や多様な働き方を可能にする環境整備を進める。また、グループ会社間の連携による採用の強化を図るとともに、研修プログラムやジョブローテーション制度など、人材育成のための制度を拡充する。

 

横断的な取組み 2.イノベーションによる新事業・新技術の創出とIT化・DX推進による圧倒的な生産性の向上

新たな事業領域の創出に向けて、スマートシティ、空飛ぶクルマ、量子コンピュータなどの技術開発と事業化を推進する。また、IT化やDXの推進により、業務遂行における圧倒的な生産性向上を図る。

 

横断的な取組み 3.グループのガバナンス強化とM&A・新事業投資の推進

プライム市場上場グループとして、グループ企業のガバナンスの強化を図るとともに、ステークホルダーへの適切な情報開示を行う。また、「長期経営ビジョン 2030」の実現に向けて、多様な機関との連携やM&Aによるグループ体制の強化を図る。さらに、新事業に対する積極的な投資を行うとともに、事業のモニタリングやリスク管理を徹底する。

 

  以上の方針に基づき事業を着実に推進することで、当社の持つ経営資源を有効に活用するとともに、様々なステークホルダーとの良好な関係を維持・発展させ、当社および当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益の向上に資することができると考えております。

 

(3) 当面の対処すべき課題の内容等

 建設コンサルタントを取巻く経営や事業の環境変化は大きく、早期の対応が課題となっております。大きな環境変化とは、①ICTの進展とインフラ技術への活用の推進、②頻発する大規模災害へのグループとしての対応、③再生可能エネルギー分野の拡大、④地域創生と増大する民間の役割、⑤多様化する海外事業とそのリスク管理、⑥より一層の働き方改革の推進、⑦持続可能なグローバル社会形成への貢献、⑧新型コロナウイルス感染症拡大に対する対応であります。今後、当社グループは、他社に先んじて上記環境変化に対処してまいります。

 

①ICTの進展とインフラ技術への活用の推進

 質の高いインフラの整備とサービスを実現するために最先端のICTの活用が課題となっております。当社グループも、建設コンサルタントとして様々な関連技術の開発・導入に注力しており、オンデマンド交通支援システムによる過疎地へのモビリティ支援事業(コンビニクルの全国自治体展開)や橋梁点検ロボットの開発、特許取得、導入等を実現してまいりました。今後は、i-Constructionの実現に向けた産官学連携、オンデマンド交通支援技術を応用した自動運転の実現に向けた各種実証実験、これらモビリティも含めた将来のまちづくり事業や市場展開などを積極的に進めてまいります。

 また、それらの実現に向けては、ICT技術の高度化やイノベーションの強力な推進などが求められますが、新事業開発、技術開発への投資強化、M&Aによる体制強化などの取組みをさらに強化してまいります。

 

 

②頻発する大規模災害へのグループとしての対応

 東日本大震災以降、地震や台風、豪雨等による自然災害が頻発しております。当社グループは、地域で発生する災害に対応するため、災害対応マニュアルを作成し、迅速な災害対応が可能な体制づくりに努めております。2020年の7月豪雨においても、現地の被害状況を迅速に調査・把握し、復旧支援活動を行ってきました。今後も自然災害発生に対して、当社グループ企業間の連携のもと、社会貢献の一環として対応を行い、行政支援や被災地支援を実施してまいります。

 

③再生可能エネルギー分野の拡大

 地球規模での再生可能エネルギーの導入が求められる中、国内では第6次エネルギー基本計画案が策定され、2050年「カーボンニュートラル」に向けた対応が明言されております。当社グループは、これまで以上に国内外における再生可能エネルギー事業に積極的に参画し、再生可能エネルギー政策の実現に貢献してまいります。既に、海外では、フィリピン国ミンダナオ島における小水力発電事業の供用開始、国内では山梨県南部町におけるバイオマス発電事業、青森県における風力発電事業、地熱エネルギー開発事業、また洋上風力発電における地質調査に積極的に取組んでおります。今後は、より一層再生可能エネルギー事業の取組みを拡大してまいります。

 

④地域創生と増大する民間の役割

 インフラの整備・維持管理・運営に民間が大きく関与するPPP/PFI事業は、我が国のインフラ整備・運営手法として期待されており、新たなインフラビジネスとして成長を続けております。その中で、当社グループは、各種公共施設等におけるPFI手法のアドバイザリー業務並びに運営業務について業界でもトップクラスの経験と実績を有しています。さらに、前述の再生可能エネルギー事業との複合展開や、地域創生に向けたPPP/PFI事業(グランピング事業等)への取組みを推進しております。

 

⑤多様化する海外事業とそのリスク管理

 現在、アジア地域を主な市場とする海外事業は、これまでの橋梁設計、監理事業に鉄道関連事業を加えた二本を基幹事業とし、港湾などの埋立て、地盤改良事業、また小水力発電事業や関連する地域開発事業など、多様な展開を進めております。その一方で、今回の新型コロナウイルス感染症の拡大はもちろん、ロシア・ウクライナ情勢等の地政学的リスクなどにもさらされております。これに対し当社グループにおきましては、安全管理面として、関連情報を迅速に入手し共有するなどグループ子会社等に対する安全対策の強化を図っております。また、事業執行面では、情報の共有や人材の有効活用など、組織を超えてとるべきアクションを迅速に実践する仕組みを構築し、今後の更なるグループガバナンスの強化を図り、着実な海外展開を進めてまいります。

 

⑥より一層の働き方改革の推進

 近年、我が国の産業界全体において、長時間労働の解消やダイバーシティへの対応が課題となっております。当社グループにおきましても、妊娠や子育てに直面している社員、要介護家族を抱える社員、外国人社員、障がいを抱える社員等、多様な社員が働いております。当社グループは、ワークライフバランスの実現とダイバーシティの受入れが企業の成長要件と考えており、福利厚生の充実とともに多様な働き方を選択できる制度を整えてまいりました。

 具体的な施策として、テレワーク、時差出勤やサテライトオフィスの活用などの推進を行っております。また、シニア技術者がそれまでに培った経験と技術を長く活かせる仕組みをつくり、実践しております。さらには、子育てをしながら働く社員に対する支援や待機児童の解消に向けた取組みとして、株式会社長大が代表となり三社共同運営の「かけはし保育園」を設立し運営しております。このように当社グループは、働き方改革を通じ、当社グループの課題解決だけではなく、社会全体への貢献を目指してまいります。

 

⑦持続可能なグローバル社会形成への貢献

 昨今、SDGsに代表される持続可能な社会形成の重要性が増しており、企業にも貢献が求められております。当社グループは、国内事業はもとより海外事業においても、より社会性の高い事業、例えば前述のフィリピン国ミンダナオ島における地域経済開発プロジェクトの経験と実績を活かしながら、多様なフィールドで展開してまいります。

 これらを通じ、SDGsの先駆者として、国内外の自然環境と調和した社会基盤整備のための様々なサービス、当社グループ内におけるダイバーシティや脱炭素型経営の推進など、インフラサービスと企業活動の両面で、持続可能なグローバル社会形成への取組みに貢献してまいります。

 

⑧新型コロナウイルス感染症拡大に対する対応

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大が徐々に抑制され、経済活動の本格的な再開が期待されております。当社グループでは、テレワーク、時差出勤やサテライトオフィスを活用した働き方への転換を図るとともに、感染拡大時には、機能移転などを図ることで事業活動の継続を図ることのできる体制を構築しています。

 新型コロナウイルス感染症拡大による現段階の業績への影響は軽微であります。新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等は不確実性が高い事象でありますが、感染の最新の状況を踏まえ、取締役会、グループ連携推進会議等における意思決定、業績予想等の策定を行っております。

 引き続き、上記の取組みを継続・推進することで、事業活動や収益性の維持を図ってまいります。

 

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