課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき当社グループが判断したものであり、実際の結果と異なる可能性があります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、ジェネリック医薬品原薬輸入商社であるコーア商事株式会社を中心に、注射剤を主とする医療用医薬品の製造販売及び受託製造を行うコーアイセイ株式会社、医薬品包装業務受託を行うコーアバイオテックベイ株式会社、及びOTC(一般用)医薬品の製造販売を行うコーア製薬株式会社(注)の4社、並びにグループを統括する当社からなる企業グループとして、「ジェネリックのベストパートナー」を目指しております。

 その実現に向けて、原薬販売事業では、コーア商事株式会社にて安心・安全・安価なジェネリック医薬品向けの原薬の供給を継続し、医薬品製造販売事業では、これまでの注射剤製造に加え、コーアイセイ株式会社にて新設した蔵王工場を主軸に高薬理活性領域における注射製剤の提供に注力していく方針であります。

 また、グループ内に原薬商社と製剤メーカー、包装会社の双方を擁する強みを生かし、原材料仕入から製造、包装までをグループ内で一貫して行うことで、各事業部門で利益増や付加価値の創出、効率化を図る相乗効果を目指してまいります。

 当社グループは中長期的な企業価値向上を図るため、中期事業戦略を策定しております。原薬販売事業は、商社機能を核としながら、その付随業務やアフターサポート等広範囲で柔軟なサービスを提供すること、医薬品専門商社として、グループ間のシナジーの構築等を基本方針としております。一方、医薬品製造販売事業については、投資フェーズから回収フェーズへの転換、コストダウンと効率改善による安定的な生産体制を確立し、ジェネリック注射剤のトップメーカーとなることを基本方針として掲げております。当社グループの基幹事業の一つである医薬品原薬輸入は、原材料取引相場の変動や外国為替の変動により業績に影響を及ぼす可能性があり、特に利益面の振れ幅も一定程度見込まれることから、ステークホルダーに対し予断を与えかねないことを配慮し、数値目標は公表しておりませんが、引き続き当社グループは持続的な成長と中長期的な企業価値・株主価値の向上に努めてまいります。

(注)コーア製薬株式会社は、2022年7月1日付でコーアバイオテックベイ株式会社を存続会社、同社を消滅会社とする吸収合併により消滅しております。

 

(2)経営環境及び対処すべき課題

 当社グループの属するジェネリック医薬品業界におきましては、2025年には5人に1人が75歳以上になるという「2025年問題」を控えており、政府目標である「後発医薬品の数量ベースでの使用割合80%」の実現に向けた各種ジェネリック医薬品使用促進策が講じられ、目標の80%に迫っているものの、金額ベースでの使用割合とは乖離が大きく、ジェネリック医薬品の使用割合に関する新たな目標として「2023年度末までに後発医薬品の数量シェアを全ての都道府県で80%以上」とすることが示され、一層の使用促進策の検討が行われております。

 また、製造部門のアウトソーシングとして活用される傾向にあった医薬品の受託製造市場においては、長期収載品等先発医薬品企業からの受託製造の更なる拡大が予測されます。

 さらに、2023年3月期までに、大型新薬が特許切れを迎えることにより、国内のジェネリック医薬品市場はさらに拡大・成長する見込みがあります。

 しかしながら、政府により決定された薬価制度の抜本改革によって、最初のジェネリック医薬品収載から12年経過後のジェネリック医薬品の原則1価格帯化や、薬価改定が毎年実施されることとなり、ジェネリック医薬品業界においては一層の収益力強化が求められる状況となっております。

 また、一昨年より、健康被害や製品回収など品質問題が頻発し、ジェネリック医薬品業界全体において品質管理体制の見直しを含めた信頼回復に引き続き努めている状況であります。

 このような状況を踏まえ、当社グループでは国民の健康を守る医薬品業界の一翼を担っている立場の者として、今後も高品質な医薬品の安定供給に努めつつ継続的な成長の実現及び収益力強化のため、以下の課題に重点的に取り組んでまいります。

 

① 安心・安全・安価なジェネリック原薬を提供可能とする海外サプライヤーの拡充、連携強化

 当社グループでは、現在、世界10ヵ国以上において90社以上の海外サプライヤーとのネットワークを形成し、高品質かつコスト競争力の高い原薬を取り揃え安定供給を実現しております。現状、ドル・円相場は円安が続いておりますが、仕入価格への影響を抑えるべく為替予約を適宜行っております。引き続き新型コロナウイルスによる供給ルートへの影響を最小限に留めるよう、リモートによる監査にも積極的に取り組んでまいります。また、薬価改定の影響等を踏まえ、医薬品製造販売業者の多様なニーズに応えていくため、引き続き海外サプライヤーの新規開拓に加え、コーア商事SIセンターにて高品質な原薬が得られる新規精製法、低コストで合成できる製造法等の開発に注力し、それを海外サプライヤーに技術導出することで、より連携を深め、安心・安全・安価なジェネリック原薬の提供に努めてまいります。

 

② 医薬分析センターの充実

 当社グループでは、輸入医薬品原料専用の試験に特化した医薬分析センターを所有し、先端分析機器や異物混入防止のための専用サンプリング室も完備しており、抗がん剤等の高活性物質をはじめ各種品質試験、原薬の試験法及び規格の設定、検証(分析バリデーション)を行い、医薬品製造販売業者の新たな医薬品の製造販売承認取得に向けて幅広い支援を行うことで、商社機能以上の付加価値を提供しております。しかしながら、競合他社も当社グループと同等の設備投資、専門人材を配置する動きもあり、当社グループの競争力が一時的に低下する可能性があります。これに対処すべく、引き続き当社グループ内のリソースを重点的に投下し、医薬分析機能の高度化、新規設備の導入等を継続し、原薬輸入商社ビジネスの競争力維持に努めてまいります。

 

③ 高薬理活性注射剤の受託製造

 当社グループでは、注射剤製造において3種類の剤形(バイアル、アンプル、シリンジ)に対応し、高い技術を要する凍結乾燥製剤の取扱いも行っております。また、高薬理活性注射剤の少量多品種製造が可能な蔵王工場を保有しております。2017年12月よりシリンジラインにて「維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症」を効能・効果とする「マキサカルシトール静注透析用シリンジ」の受託製造を開始しております。

 本注射剤は感染予防と医療従事者の安全性及び作業効率向上の観点から有用であるため、関連医療機関から安定供給と増産について要請されており、2022年4月の薬価改定において、その医療ニーズが認められ安定供給のために不採算の緩和が認められました。また、2021年6月期より稼働を開始したバイアルラインでは、2022年2月に抗がん剤「ベンダムスチン塩酸塩」の承認を取得しております。関連医療機関の要請に応えるため、シリンジラインで「マキサカルシトール静注透析用シリンジ」の増産体制を構築し、安定供給を進めてまいります。また、バイアルラインでは「ベンダムスチン塩酸塩」の製造、販売を進めるとともに、新たなバイアル製剤の受託獲得を推進し、多種多様かつ広範な受託製造の需要に応え、安定供給を果たしていくとともに、安定的な受託獲得に努めてまいります。

 

④ 人材の採用及び育成

 当社グループは、原薬販売事業及び医薬品製造販売事業を展開しておりますが、医薬品の分析、研究開発、製造等の各方面において優秀かつ専門的な人材が必要不可欠と考えております。当社グループにおける従業員の採用におきましては、従来より性別を意識することなく採用を行ってきました。そのため、2022年6月末日時点、女性社員比率47.5%、女性役職者比率11.3%となっております。

 仕事と育児等の両立支援については、時間有給休暇等の制度を設けるなど、働きやすい職場環境の整備に積極的に取り組んでおります。また、育児休業後のほぼ全ての社員が職場復帰し、時短勤務制度も利用しております。

 2020年8月に活動を開始した働き方改革プロジェクトにおきましては、社員からの提案が制度化されるなど着実な成果を積み上げております。

 これらのことにより、ワークライフバランスを高めつつ、従業員の成長を促すことでイノベーションの創出に繋げ、持続可能な社会の実現と当社グループの企業価値向上の実現を進めてまいります。

 

⑤ コンプライアンス体制の更なる強化

 当社子会社であるコーアイセイ株式会社は、2019年1月に独占禁止法に基づく公正取引委員会の立ち入り検査を受け、同年6月4日同委員会から独占禁止法に基づく排除措置命令及び課徴金納付命令を受けました。

 当社といたしましては、両命令を厳粛かつ真摯に受け止め、当該子会社であるコーアイセイ株式会社だけではなく、グループ全体において「コーア商事ホールディングスグループ行動憲章」、「会合における適正な競争に関するガイドライン」並びに内部通報窓口への連絡先等を記載したコンプライアンスカードの配布、全役職員対象のコンプライアンス研修の毎月の実施等により、再発防止及びコンプライアンス遵守の徹底に取り組んでおります。

 また、再発防止のために必要な組織体制や仕組みの構築と諸施策の実施並びに啓発活動の推進が経営上の最重要課題であると認識し、「内部統制委員会」を設置しており、グループ全体にわたる内部統制体制を敷いております。

 

⑥新型コロナウイルス感染症への対応

 当社グループは新型コロナウイルス感染症について継続して対応を行っております。

 事業活動における対応としましては、情報収集をはじめ、物流での遅延、納期未確定を予想した対応、行政からの要請を受けた労務対応及び衛生管理を実施しており、グループの事業活動における影響は軽微なものとなっております。

 社内及び関係者間での感染予防や拡大防止に努めるとともに、各拠点ごとにリモートワーク等を実施し、感染リスクの低減を図っております。

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得