課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは創業時より「事業活動を通じての社会への貢献」と「全従業員の物心両面の幸福の追求」の2つを経営理念としております。また、経営理念に基づく当社グループの事業活動を示すミッションとして「多くの人に楽しく豊かな生活を提供する」を掲げております。

 このミッションに基づき、拡大するリユース市場の中で私たちの強さを活かし、「本を中核としたリユースのリーディングカンパニー」として、世の中の変化に対応して最も多くのお客様がご利用されるリユースチェーンとなることを目指します。

 そのために、グループの強みである人財育成やSDGsへの取り組みなどの普遍的な価値を土台とし、認知度が高い国内ブックオフ事業で安定した収益を獲得するとともに、成長期待事業であるプレミアムサービス事業、海外事業における収益を拡大させることで、企業価値ならびに株主価値を向上させてまいります。

 

(2)主要事業の基本方針

① 国内ブックオフ事業

 当社グループの中核事業であり、売上・利益の占有率が高く安定した収益獲得を続けることによって成長に向けた投資原資を生み出す役割を担います。

 そのための基本戦略として「個店を磨く」、「総力戦で取り組む」の2つを掲げております。

 

基本戦略Ⅰ:個店を磨く

 国内外にて展開する各事業の店舗において、地域及びターゲット客層に応じてそれぞれのリユースサービスを磨き上げることが、最も多くのお客様にご利用いただけるリユースのリーディングカンパニーとなるための出発点と考え、各店舗別パッケージ・サービスに応じた磨き込みを行います。

 主として売場面積の違いによる2つの店舗タイプ、そして「BOOKOFF Online」を中心としたネット販売店舗ならびにEC物流センターに分けて経営方針を定めています。

 

(a)ブックオフ単独店(主なパッケージ:BOOKOFF)

<現状>

 ブックオフチェーン店舗数の約8割を占めるパッケージであり、顧客接点として重要な役割を担っております。一方で、主力商材である本・ソフトの一次市場流通量減少により今後仕入・売上確保が厳しい状況となることも予想されているため、新たな商材の追加やネット販売の活用など世の中の変化に対応することも求められています。

 

<方針>

・お客様との重要な接点である本・ソフトについて、各店舗で生み出された販売方法のノウハウを集約・活用し、お客様満足度を向上させる

・追加商材メニューから各地域に応じた商材を選択・導入し、新たなお客様の獲得により収益を上乗せする

・商材の買取・販売のみならず、トレーディングカード・ホビーを中心に、お客様が滞在しながら楽しめるエンターテインメント型店舗へのリニューアル及び出店・リプレイスを推進する

・既存店舗のバックヤードスペースの一部を売場化することで売場面積を拡張し、拡張部分にはトレーディングカード売場とデュエルスペース(対戦用スペース)設置を推進する

・200~300坪規模へのリプレイスを毎期4~5店舗実施するとともに、重要な顧客接点・買取拠点として店舗網を維持する

 

 

(b)ブックオフ複合店(主なパッケージ:BOOKOFF SUPER BAZAAR、BOOKOFF PLUS)

<現状>

 近年の直営店出店のメインパッケージであり、当社収益の中核を担うパッケージです。様々な商材のリユースをお客様に体験していただく場として多くのお客様にご利用いただいており、今後の成長する柱と位置づけています。成長するリユース市場の中で競合他社の出店も進んでおり、店舗の立地や規模に応じた売場づくりと運営改善により売上・利益の成長を持続させることが課題となっております。

 

<方針>

・BOOKOFF SUPER BAZAARはあらゆる商材を取扱う総合性に加えて、スポーツ用品やハイブランドなど特に単価の高い商材について専門性を高めると同時に、エンターテインメント性を高めるなどの既存店リニューアルに注力する

・都市部に立地するBOOKOFF PLUSは、それぞれの商材の知識、接客レベル等の専門性を高める

・アパレルについては近年の販売動向を鑑み、売場面積の適正化による業務効率改善や他商材への転換、人員配置見直し等により収益力を高める

・成長商材であるトレーディングカード・ホビーを拡張して、トレーディングカード売場には、デュエルスペースの他、広い売場を活用し、家族連れのお客様が楽しめるスペースを多数設置する

・BOOKOFF SUPER BAZAARは地域の旗艦店として、毎期1~2店舗の出店を推進する

 

(c)ネット販売店舗ならびにEC物流センター(主なECサイト:BOOKOFF Online)

<現状>

 2007年よりECサービスを展開し国内最大級の中古書籍在庫量を誇る「BOOKOFF Online」を運営しております。「BOOKOFF Online」は本・ソフトを中心に売上を継続的に伸ばしてきましたが、配送単価や人件費単価の上昇の影響により収益性の維持に課題があります。また宅配買取によって集められたEC物流センターの商品在庫を適切な回転率で販売につなげるために、自社サイト「BOOKOFF Online」に加えてヤフオク、楽天等、他のECモールサイトに同時出品をすることによって売上を安定して増加させていくことが課題となります。

 

<方針>

・本・ソフトは、各ジャンルのカテゴリーキラーとしてオンリーワンのECサービスを目指す

・自社サイト「BOOKOFF Online」に加えて他のECモールサイトへの同時出品による販売効率向上を図る

・継続的な業務改善ならびに業務システムの刷新による生産性の向上、首都圏を中心とした配送効率改善によりコスト低減を進める

・店舗受取サービス等、店舗・EC間の連携を強化する

・EC販売サイトのリニューアルを継続して実施し、マルチデバイスで探しやすい、買いやすいサイトを構築する

 

 

 

基本戦略Ⅱ:総力戦で取り組む

 これまでの国内ブックオフ事業は店舗と店舗以外がそれぞれ個別にサービスを提供しておりました。お客様の消費行動もデジタルシフトする中で、私たちの強みを組み合わせて継続的な成長を続けていくことが必要です。その中でも特に注力して取り組むのが「ひとつのBOOKOFF」構想であり、その構想における方針は下記のとおりです。

 

「ひとつのBOOKOFF構想」

 会員制度や販売・買取のプラットフォーム、それらを支えるシステム等を統合し共通化し、各サービスで蓄積された会員・商品情報、運営ノウハウ等の資産を全てのサービスで活用することによってチェーン全体での取扱高の増加と各店舗における収益改善の両方を実現します。

 この構想の中心となるのが、2018年6月にリリースした公式スマホアプリを活用した取り組み及びマーケティング戦略です。

 

<現状>

 国内ブックオフ事業の収益安定化を目的とした会員アプリ戦略について、公式スマホアプリ会員が、2022年5月に500万人を突破しました。ポイント付与・使用のみのカード会員に比べ、様々な販促施策が可能なアプリ会員は購入頻度が高く、結果として年間購入金額に顕著な差が生じています。積極的な会員獲得施策により、販売客数に占めるアプリ会員の割合は、アプリリリースから4年弱でカード会員を逆転し、31%がアプリ会員となっております。

 マーケティング戦略について、充実した本の品揃えや商材の多様性等、ブックオフの価値・サービスをお客様に再認識していただくためのプロモーション「あるじゃん!」を2021年5月より開始しました。従来のセール型・ダイレクト広告から、定常的な集客を目的とした価値訴求型・ブランド広告へ転換して、TVCMのみではなく、WEB、SNS、PR、店頭など、お客様の行動として訴求するアプローチでBOOKOFFから足が遠のいている休眠顧客層の来店行動を喚起しております。

 

<方針>

・公式スマホアプリ会員の獲得を引き続き推進し、アプリを通した直接的コミュニケーションが可能なお客様から得られる、安定した売上基盤を構築する

・価格データベースの拡充、取扱いアイテムの拡大など買取・販売双方でのサービスを充実する

・グループ内の在庫情報を共通化し、買取・販売双方のプラットフォームを構築する。「全国のBOOKOFFの商品がいつでもどこでも買える」、「不要になったものの売り方が分かる・選べる」を実現する

・WEB、SNS、PR、店頭など、お客様の行動として訴求するアプローチを継続して、休眠顧客層の来店行動を喚起する

 

② プレミアムサービス事業(富裕層向け事業より名称変更)

<現状>

 所得水準が高く、従来ブックオフに馴染みが薄いお客様層をメインターゲットに百貨店内買取窓口を展開する「hugall」ならびに百貨店やショッピングセンター等商業施設内にてジュエリーのリペア・リメイクサービスを提供する「aidect」は、BOOKOFF店舗ではリーチできないお客様層との重要な接点です。「hugall」は買取から販売における業務効率が改善され百貨店内買取窓口を中心に良質な買取を用いて収益を生み出す体質となっており、今後の利益成長においては百貨店を中心に拠点の拡大ならびに利用客数の継続的な拡大が課題となっております。「hugall」は国内ブックオフ事業に比べ、百貨店など繁華街での出店が中心であるためコロナ影響を受けやすく苦戦を強いられてきたものの、入居する百貨店や商業施設への入店客数の回復や貴金属相場上昇も相まって、足元の買取動向はコロナ前の水準を大きく上回って推移しております。「aidect」は職人の手仕事によるジュエリーオーダー&リフォーム スペシャリティストアであり、リペア・リメイクを通じた新たなサービスを提案しております。ターゲット顧客層との接点拡大のため、グループ内店舗との連携など、収益化に向けテコ入れを実施しております。

 従来、ブックオフがリーチしきれていない顧客層の居住地やサービスを求める場への出店を加速する一方で、ブランド品、貴金属等の買取市場は競合他社の出店も多く、今後、差別化が必要となります。

 

<方針>

・競合との差別化を促進するため、「aidect」を運営する子会社㈱ジュエリーアセット・マネジャーズを子会社ブックオフコーポレーション㈱へ吸収合併し、「富裕層向け事業」から「プレミアムサービス事業」へと名称を改め、機能連携によるサービス拡充を図る

・全国主要百貨店や東京都心部などに拠点網を拡大して、所得の高いお客様層へ買取サービスだけでなく、店頭でのジュエリーリペアなど、サービス提供機会を増やして収益増加を図る

 

 

③ 海外事業

<現状>

 アメリカ合衆国及びフランス共和国において、BOOKOFFを展開するほか、2016年からは日本国内で販売に至らなかった商品の出口戦略として、マレーシア国において「Jalan Jalan Japan」を展開しております。

 アメリカ合衆国では2021年3月以降、業績は好調に推移し、インフレの追い風もありコロナ以前の水準を大きく上回る収益を獲得しております。現地での本・ソフトメディアの買取・販売が好調であり、かつ日本アニメのフィギュアやグッズ、Mangaなどが人気で、エンターテインメント性の高い店舗としての地位を確立しつつあります。またSNSやイベントの活用により、顧客とのコミュニケーションや認知を向上して、買取向上につなげております。

 マレーシア国では、2021年6月から8月にロックダウンのため全店が休業となりましたが、ロックダウン解除後の2021年9月から客足は順調に回復しており、足元の売上高はコロナ以前の水準を上回り、好調に推移しております。

 海外事業における各業態は、取扱商材の独自性やインフレ等現地の経済動向により収益性が高いことに加えて店舗拡大により売上規模が増加していることで、グループへの利益貢献度も近年上昇傾向となっております。

 

<方針>

・各国において今後出店を継続的に実施するために現地採用社員の増強、育成を進める

・「BOOKOFF」はアメリカ合衆国において、日本国内のアニメグッズの高付加価値化を推進するとともに新規出店を再開し、継続的な出店による事業拡大を推進する

・「Jalan Jalan Japan」は、マレーシア国内において直営店の毎期2店舗程度の新規出店を推進する一方、他社とのパートナーシップなどを活用し、マレーシア国以外においても「Jalan Jalan Japan」の展開を進め事業拡大を図り、合計で20店舗体制を目指す

 

(3)経営環境

 近年、リユース市場は拡大を続けており、競合他社が相次いで事業を立ち上げております。

 店舗型BtoCサービスにおいては各社の積極出店を続けるのと合わせて新しい店舗パッケージやサービスの開発を進める一方、フリマアプリに代表されるCtoCサービスやネット型BtoCサービスの拡大が急速に進んでおり、市場における競争環境は激しさを増しています。今後、継続してグループの事業展開のためには人財の確保と育成が重要となります。また人財の育成においては、企業倫理の徹底と社会との信頼関係構築を重視しております。

 新型コロナウイルス感染症の拡大は、現在も社会や経済全体、個人の生活や消費に影響を与え、世界各国において先行きが不透明な状況が継続すると予測されます。当社グループにおいては、感染症対策を実施してお客様・従業員の安全確保に取り組み、ほぼ通常営業に移行しておりますが、地域の感染状況によっては営業時間短縮要請や休業要請が発令される可能性もあります。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループの対処すべき課題は以下のとおりと考えております。

 

① 事業ミッション「多くの人に楽しく豊かな生活を提供する」の実現

 当社グループは「多くの人に楽しく豊かな生活を提供する」を事業ミッションとして掲げ、リユースのリーディングカンパニーとして顧客層を拡大し、最も多くの人が利用するリユースチェーンを目指してまいります。

 そのために、大型複合店舗の出店や、個別の既存店舗においては地域のお客様に楽しんでいただけるような売場作りやサービス水準の確立、各種マニュアルの徹底や実践的な研修を通じたオペレーション水準の向上及び事業ミッションをイメージしたブランディング戦略に基づく活動に取り組んでまいります。

 

② 事業方針に基づく事業成長に向けた取組みの実現

 当社グループが事業方針として掲げる「個店を磨く」と「チェーン総力戦」の2つのテーマを着実に実行に結びつけ、チェーンが保有する顧客基盤や情報・システムを共通化・オープン化し活用する「ひとつのBOOKOFF」構想の実現により、継続的な事業成長を実現してまいります。

 

 

③ グループの事業展開の中核となる人財の確保・育成

 当社グループが将来にわたり継続して企業価値を拡大していくため、未来の経営を支える人財の確保・育成が急務であります。

 わが国の小売業界において人手不足並びに人件費の上昇など厳しい雇用環境が続くなかで、各種業務プロセスの省力化による業務効率化や待遇の改善、多様性に富んだ人財受け入れを可能とする人事制度の構築などにより、積極的な採用を進める動きとともに、長く安心して働き続けられる環境を整備し、人財確保並びに人財育成に取り組んでまいります。

 

④ 企業倫理の徹底・浸透

 当社グループは、コンプライアンスの徹底を企業の社会的責任の根本と位置づけ、各種ステークホルダーとの信頼関係を構築するために当社グループの役員及び従業員が遵守すべき指針として、「コンプライアンス・ガイドライン」を制定しております。当ガイドラインの理念浸透と徹底に向けて、全グループの役員及び従業員に対し、各種研修や会議、社内報やイントラネットの活用等を通じて啓蒙活動を行ってまいります。

 また、アカウンタビリティー(説明責任)を確保するために、内部統制の整備と運用による責任分担の透明化を推し進めるとともに、経営の適時適切な情報開示や決算情報の早期開示の実現をはかってまいります。

 

⑤ リユースを通じたSDGs(持続可能な開発目標)への取り組み

 当社グループは、お客様に楽しく豊かな生活を提供しながら、循環型社会の形成を加速させていくことが、我々の役割だと考えており、一丸となってSDGsに取り組んでいます。BOOKOFFでモノを売ったり、買ったりする行動そのものがモノの寿命を延ばし、捨てるモノを減らすという社会貢献につながっています。これはSDGs 12の目標「つくる責任 つかう責任」を達成させることにおいて、非常に重要な役割となります。我々の中心事業であるリユース業を軸に様々な活動を通してSDGs達成に貢献してまいります。

 

⑥ 新型コロナウイルス感染症拡大への対応

 新型コロナウイルス感染症の拡大は、現在も社会や経済全体、個人の生活や消費に影響を与え、世界各国において先行きが不透明な状況が継続すると予測されます。

 当社グループにおいては今後も、お客様・従業員の安全を第一に店舗における感染拡大防止に取り組むとともに、「BOOKOFF Online」などのECチャネルも活用しお客様の需要にお応えしながら、中期経営方針で掲げる「個店を磨く」・「総力戦で取り組む」の方針に従い、既存店舗の磨き込み、EC・店舗間の連携促進、アプリ会員基盤の拡大、業務の更なる効率化、海外や新たな事業領域への挑戦などを推進してまいります。

 

⑦ プライム市場上場の維持

 当社グループにおいては、プライム市場への上場を維持するために、今後も継続的に企業価値を向上させるとともに、株式市場で適正な評価を得ることが課題と捉えております。

 

⑧ 気候変動への取組みとTCFDへの対応

 当社グループにおいては、気候変動への対応を重大な経営課題の一つとして認識しており、ガバナンスの強化と気候変動による移行リスク、物理的リスク及び機会について、事業への影響を把握し、戦略の策定に取り組んでまいります。またTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に沿って当社グループホームページ等での開示について、質と量の向上を推進してまいります。

 

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