経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
(1)経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、経済活動の段階的引き上げにより景気は持ち直しの動きをみせたものの、同時に原油をはじめとする資源価格は上昇し、加えて地政学的リスクからさらに資源価格が上昇するなど、依然として先行き不透明な状況が続きました。
こうした経済環境下におきまして、物流業界では、消費関連貨物および生産関連貨物を中心に国内・輸出入の荷動きは増加し、全般的に回復基調を維持しました。
このような事業環境のなか、当社グループにおきましては、「中期経営計画」で掲げた経営戦略に基づき、様々な施策を実施いたしました。具体的には、中核事業の伸張・拡充といたしまして、主力である化学品物流、自動車部品物流および消費財物流において戦略的な営業展開を図ることで取扱い拡大に取り組んでまいりました。特に自動車部品物流においては取引先との合弁会社の設立ならびに新たな物流拠点の整備など取扱い拡大に向けて取り組みました。また、消費財物流においては国内外の取扱いを拡大するため、グループ全体で横断的に営業を統括する組織として昨年6月に第三営業推進室を新設し、積極的な営業を展開してまいりました。営業基盤の強化・拡大といたしまして、コロナ禍の影響によりコンテナ不足および海外の港での船混みなどグローバル物流が混乱する中、海外における内陸輸送・越境輸送などの新たな輸送ルートを開拓することで得意先のグローバルサプライチェーンの維持・向上に努めました。また、グローバル事業拡大に向け、昨年6月に既存の組織を国際本部および国際事業統括室へと改編し、更なる機能強化を図ってまいりました。次世代につなげる価値の創出といたしまして、省人・省力化の取り組みの一環として、作業の現場における省人・省力化にかかる物流機器を導入するとともに、事務の現場においてもAI技術を活用した仕組みを導入・拡充することで、生産性および品質の向上を図ってまいりました。また、次世代の中核事業への挑戦として、特殊化学品の取扱い拡大に向け、施設の整備を実施するとともに積極的な営業展開を図ってまいりました。事業の基盤である“人財”の確保・育成といたしまして、社員一人ひとりがやりがいを持ち、能力を最大限に発揮できる環境を整えるため、人事評価制度などの人事制度の見直しを実施するとともに従業員満足度調査を実施しました。企業文化の確立・醸成といたしまして、事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献するため、昨年12月にサステナビリティ委員会およびサステナビリティ推進委員会、下部組織として環境分科会、社会分科会、ガバナンス分科会を発足するとともに、より実効性ある活動とするため、社員に対してサステナビリティ教育を実施しました。また、コミュニケーションの変革および働き方改革を推進するため、通信環境含め職場の環境改善に順次取り組んでまいりました。
当期の事業の概況は、総合物流業におきましては、倉庫業では、期中平均保管残高は減少したものの、貨物回転率は上昇し、入出庫にかかる取扱量は前年同期に比べ増加しました。港湾運送業では、四日市港における完成自動車の取扱量は、半導体および部品の供給不足などにより減少しました。一方、海上コンテナ、原料関係、石炭・オイルコークスの取扱量は前年同期に比べ増加しました。陸上運送業では、鉄道輸送の取扱量は減少したものの、主力のトラック輸送およびバルクコンテナ輸送の取扱量は、国内貨物の荷動きの回復により好調に推移し、前年同期に比べ増加しました。国際複合輸送業では、世界的経済活動の回復を背景に、海上輸送の取扱量は前年同期に比べ増加、航空輸送の取扱量は前年同期に比べ大幅に増加し、海外現地法人における取扱量も大幅に増加しました。このような状況により、総合物流事業全体の売上高は、前年同期比15.3%増の1,155億2千5百万円となりました。
その他の事業におきましては、前期に引き続き、依然として厳しい環境下ではありましたが、業務の効率化や収支改善に努めました。
以上の結果、当期の連結売上高は、倉庫業の取扱いが順調に推移したこと、港湾運送業および陸上運送業の取扱いが好調に推移したこと、そして国際複合輸送業の取扱いが極めて好調に推移したことなどから、前年同期比15.4%増の1,167億5千万円となりました。連結経常利益は、売上高を大幅に伸ばすなか、継続的な業務効率化や原価低減、持分法による投資利益ならびに為替差益の寄与もあり、前年同期比58.2%増の83億6千8百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、前年同期比20.7%増の55億9千7百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
① 総合物流事業
総合物流事業全般の外部顧客への売上高は、1,155億2千5百万円と前年同期に比べ153億4千5百万円(15.3%)の増収、セグメント利益(営業利益)は63億2千9百万円と前年同期に比べ、19億2千8百万円(43.8%)の増益となりました。
<倉庫業>
当部門におきましては、期中平均保管残高は前年同期比2.7%減の51万9千トンとなりました。期中貨物入出庫トン数につきましては、前年同期比1.5%増の875万9千トンとなり、保管貨物回転率は69.4%(前年同期67.5%)となりました。
以上の結果、当部門の売上高は、前年同期比5百万円減の422億2千8百万円の計上となりました。
<港湾運送業>
当部門におきましては、四日市港において、完成自動車の取扱量は、輸出は増加したものの国内は減少し、全体としては減少しました。バイオマス燃料の取扱量は減少したものの当初の計画通り堅調に推移しました。また、海上コンテナの取扱量は、前年同期比2.1%増の20万3千本(20フィート換算)となり、石炭の取扱量も増加しました。
以上の結果、当部門の売上高は、前年同期比7.3%増の227億9千3百万円の計上となりました。
<陸上運送業>
当部門におきましては、主力のトラック輸送の取扱量は、前年同期比1.9%増の682万5千トン、鉄道輸送の取扱量は前年同期比3.1%減の15万5千トン、バルクコンテナ輸送の取扱量は前年同期比1.6%増の22万1千トンとなりました。
以上の結果、当部門の売上高は、前年同期比4.4%増の189億6千2百万円の計上となりました。
<国際複合輸送業他>
当部門におきましては、海上輸送における輸出入の取扱量は前年同期比3.8%増の176万1千トンとなり、航空輸送における輸出入の取扱量は前年同期比82.2%増の3,538トンとなりました。
以上の結果、当部門の売上高は、前年同期比70.1%増の315億4千万円の計上となりました。
② その他
その他の事業では、自動車整備業における車検取扱台数は前年同期比2.1%の減少、ゴルフ場の入場者数は前年同期比37.0%の増加、不動産事業の完成工事件数は前年同期比0.3%の減少となりました。
以上の結果、当部門の外部顧客への売上高は、12億2千5百万円と、前年同期に比べ2億3千万円(23.2%)の増収、セグメント利益(営業利益)は3億6千6百万円と前年同期に比べ、3億2千9百万円(901.7%)の増益となりました。
(2)財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ43億5千9百万円増加し、1,298億8千6百万円となりました。流動資産は、売上債権の増加24億5百万円を主な要因として48億5千7百万円増加し、固定資産は、有形固定資産の減価償却による減少を主な要因として4億9千7百万円減少しました。
負債は、固定負債の長期借入金の減少等により14億3千7百万円減少し、571億7百万円となりました。
また、純資産は前連結会計年度末に比べ57億9千6百万円増加し、727億7千8百万円となりました。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の51.5%から54.1%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、長期借入金の返済による支出33億7千2百万円などがあったものの、税金等調整前当期純利益80億7千2百万円、減価償却費45億1千6百万円の資金留保等による増加により、前連結会計年度末に比べ14億2千3百万円増加し、当連結会計年度末には137億3千7百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、営業活動の結果増加した資金は、72億6千1百万円(前年同期比13億6千2百万円の収入減)となりました。これは主に、売上債権の増加額21億6千6百万円による減少、法人税等の支払額16億6千9百万円などがあったものの、税金等調整前当期純利益80億7千2百万円、減価償却費45億1千6百万円の資金留保等による増加の結果であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、投資活動の結果減少した資金は、25億1千8百万円(前年同期比9億5千9百万円の支出減)となりました。これは主に、有形及び無形固定資産の取得による支出25億8千5百万円等による減少の結果であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、財務活動の結果減少した資金は、35億9千3百万円(前年同期比1億8千1百万円の支出増)となりました。これは主に、配当金の支払額6億4千2百万円、長期借入金の返済による支出33億7千2百万円等による支出増加と長期借入れによる収入9億円による収入増加の結果であります。
(4)生産、受注および販売の実績
セグメント別営業概況
① 総合物流事業
最近における倉庫保管貨物入出庫高ならびに期末保管残高を示せば次のとおりであります。
期間 |
入庫高 |
出庫高 |
期末保管残高 |
|||
屯数(屯) |
金額 (百万円) |
屯数(屯) |
金額 (百万円) |
屯数(屯) |
金額 (百万円) |
|
2021年4月1日から 2022年3月31日まで |
4,405,631 |
1,087,342 |
4,353,577 |
1,070,291 |
540,027 |
155,768 |
前年同期比増減(%) |
2.5 |
7.1 |
0.4 |
4.5 |
10.7 |
12.3 |
保管貨物残高を品目別に示せば次のとおりであります。
品目 |
2022年3月31日現在 |
|||
屯数(屯) |
前年同期比増減 (%) |
金額(百万円) |
前年同期比増減 (%) |
|
農水産品 |
43,122 |
36.0 |
8,725 |
34.6 |
金属 |
7,209 |
52.9 |
2,757 |
158.1 |
金属製品・機械 |
85,654 |
27.4 |
25,427 |
10.1 |
窯業品 |
166 |
△14.0 |
11 |
△78.4 |
化学工業品 |
218,309 |
13.5 |
78,840 |
14.5 |
紙・パルプ |
11,874 |
18.9 |
5,563 |
24.8 |
繊維工業品 |
5,737 |
39.8 |
445 |
△26.9 |
食料工業品 |
28,214 |
△12.6 |
8,459 |
△4.8 |
雑工業品 |
74,447 |
6.9 |
17,751 |
3.9 |
雑品 |
65,295 |
△13.7 |
7,784 |
△4.1 |
合計 |
540,027 |
10.7 |
155,768 |
12.3 |
港湾運送業の最近の貨物取扱高を示せば次のとおりであります。
期間 |
船内荷役(屯) |
前年同期比増減 (%) |
沿岸荷役 (内 輸出貨物) (屯) |
前年同期比増減 (%) |
2021年4月1日から 2022年3月31日まで |
12,629,123 |
3.2 |
4,594,648 (1,156,277) |
8.2 (3.7) |
貨物自動車運送業および鉄道利用運送業の最近の貨物取扱高を示せば次のとおりであります。
期間 |
貨物自動車運送業 (屯) |
前年同期比増減 (%) |
鉄道利用運送業 (屯) |
前年同期比増減 (%) |
2021年4月1日から 2022年3月31日まで |
6,825,821 |
1.9 |
155,758 |
△3.1 |
② その他
保険代理店の契約実績を示せば次のとおりであります。
期間 |
契約件数(件) |
前年同期比増減 (%) |
契約保険金額 (千円) |
前年同期比増減 (%) |
2021年4月1日から 2022年3月31日まで |
3,360 |
△1.8 |
435,217 |
2.8 |
ゴルフ場の入場者数を示せば次のとおりであります。
期間 |
メンバー(人) |
前年同期比増減 (%) |
ビジター(人) |
前年同期比増減 (%) |
2021年4月1日から 2022年3月31日まで |
7,593 |
△2.9 |
26,801 |
55.0 |
自動車整備台数を示せば次のとおりであります。
期間 |
車検台数(件) |
前年同期比増減 (%) |
2021年4月1日から 2022年3月31日まで |
1,309 |
△2.1 |
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示せば次のとおりであります。
セグメントの名称 |
売上高(百万円) |
前年同期比増減(%) |
|
総合物流事業 |
倉庫業 |
42,228 |
△0.0 |
港湾運送業 |
22,793 |
7.3 |
|
陸上運送業 |
18,962 |
4.4 |
|
国際複合輸送業他 |
31,540 |
70.1 |
|
その他 |
1,225 |
23.2 |
|
合計 |
116,750 |
15.4 |
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)今期の経営成績の分析
(営業収益)
当期の事業全体およびセグメント別の分析につきましては、「経営成績等の状況の概要(1)経営成績の状況」に記載の通りです。
(売上原価)
取扱量の増加に伴い、港湾運送業、陸上運送業および国際複合輸送業における作業諸費が増加したことなどから、1,037億7千5百万円(前年同期比14.4%増)となりました。
(販売費及び一般管理費)
WEB会議に代表されるIT技術の利用促進など、継続的な業務改善に取り組んだ結果、一般管理費の増加抑制に寄与したことなどから、63億5百万円(前年同期比4.2%増)となりました。
(営業利益)
営業収益が大幅に増加した一方で、売上原価や一般管理費の増加率を抑制したことから、66億6千9百万円(前年同期比50.2%増)となりました。
(経常利益)
持分法による投資利益ならびに為替差益の寄与もあり、営業外収益は増加しました。また、支払利息等が減少したことにより営業外費用は減少しました。結果としましては、営業利益が大幅に増加したこともあり、83億6千8百万円(前年同期比58.2%増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当期は前期に発生した子会社の組織再編に伴う税金費用の減少がなく、営業利益が大幅に増加したことなどにより、税金費用が増加したため、55億9千7百万円(前年同期比20.7%増)となりました。
上記のとおり、当期の当社グループの経営成績につきましては、営業収益は増収、営業利益は2期連続の増益、経常利益および親会社帰属当期純利益は4期連続の増益となり、収益・利益ともに過去最高となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容ならびに資本の財源および資金の流動性に係る情報
当社グループの資金調達は、安定的な資金調達と調達コストの抑制を両立させ、自己資本比率や資産構成ならびに営業キャッシュ・フローの各種指標に配慮して、財務リスクを最小化することを基本方針としております。この基本方針に則り、資金調達の手段はその時々の市場環境を考慮したうえで、当社グループにとって最善の手段を選択しております。この結果、当連結会計年度においては、間接金融により9億円を調達し、主に事業用資産の維持更新に充当いたしました。
当社は長年にわたり、主要な取引先金融機関と良好な関係を維持しており、経常的な資金調達の他、当座貸越契約により、緊急時の流動性を確保しております。また、多様な調達手段を確保するため、直接金融による資金調達も見据え、格付投資情報センターの格付けを取得、維持しており、現時点において、Aマイナス(安定的)となっております。
この他、流動性マネジメントの一環として、キャッシュ・マネジメント・システムを国内で導入し、グループ内の企業相互間の余剰資金を当社が集中管理することで資金の効率化を推進しております。一方、海外拠点における資金需要に対応するため、当社を起点にしたグループ内金融により必要な資金を機動的に供給する体制を構築しております。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
|
2018年 3月期 |
2019年 3月期 |
2020年 3月期 |
2021年 3月期 |
2022年 3月期 |
|
自己資本比率 |
(%) |
46.8 |
47.3 |
48.5 |
51.5 |
54.1 |
時価ベースの自己資本比率 |
(%) |
24.9 |
23.4 |
24.7 |
28.7 |
30.0 |
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 |
(年) |
12.7 |
4.3 |
5.0 |
3.8 |
4.2 |
インタレスト・カバレッジ・レシオ |
(倍) |
17.6 |
47.2 |
44.0 |
60.8 |
62.2 |
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注)1 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
2 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
3 キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
4 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている借入金等を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
当連結会計年度末の有利子負債残高は303億2千2百万円となりました。借入金の計画返済が進んだ結果、前連結会計年度末に比べて借入金が24億7千2百万円減少したこと等により、有利子負債残高は25億5千6百万円の減少となっております。
(3)重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社においては、従業員の退職給付に備えるため、確定給付型の退職給付制度を設けておりますが、将来の退職給付見込額は、割引率や予想される昇給及び従業員の退職率、死亡率など、さまざまな変動要因を加味して見積られております。これらのうち、昇給及び退職率や死亡率は経済情勢による大きな変動は予想されませんが、割引率については、退職給付の支払見込期間を反映した国債の利回りに基づき決定しておりますので、外部の経済環境により大きく変動する要素だと考えております。
割引率の変動による感応度は次のとおりです。
|
当連結会計年度末における退職給付債務への影響額 |
割引率が0.1%上昇した場合 |
85百万円の減少 |
割引率が0.1%下降した場合 |
87百万円の増加 |
なお、当連結会計年度末前後の経営状況等も勘案して会計上の見積りを行っておりますが、新型コロナウイルス感染症に関する影響は、当社グループの見積もりの要素を大きく変更する状況ではないと考えております。
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