(1) 経営の基本方針
当社グループの経営理念は「ロジスティクスを通して新たな価値と最良の環境を創造し、お客様・株主・従業員と共にグローバル社会の発展に貢献する」ことであります。当社グループは、グローバルネットワークを駆使してお客様にさまざまな価値提供を行うことにより、輸送業者としてのみならず、欠かすことの出来ないビジネスパートナーとして認知していただけるよう、お客様と Win-Win の関係を構築することが当社グループの目指す真の“グローバル・ロジスティクス・パートナー”であると考えます。
その実現に向け、当社グループは、今後も世界中のお客様へ信頼と満足を提供し、持続可能な豊かな未来の実現を目指す企業グループであり続けたいと考えています。
(2) 長期ビジョン
2019年5月、当社グループは、将来のありたい姿を示す「長期ビジョン」を策定しました。
当社グループは、変化の激しい国際物流市場の中で持続的に成長するため、主力事業である航空・海上フォワーディング事業(注1)を基軸とする事業規模の拡大を基本方針とし、ロジスティクス事業(注2)についてもライトアセットモデルを基本に幅広い顧客ニーズに対応します。サプライチェーン・ソリューションをコアビジネスとするAPLLと未来に向けたベクトルを合わせ、広範囲に多彩な物流サービスを提供し続けることにより、グローバル市場での事業拡大と企業価値の向上を図り「“Global Top 10 Solution Partner”~日本発祥のグローバルブランドへ~」と進化を遂げてまいります。
(注1)「フォワーディング事業」とは、貨物利用運送事業と呼ばれ、複数の荷主企業から貨物を取りまとめ当社が運送人となり、実運送事業者(航空会社、船会社、鉄道会社等)に運送を委託し輸送を行う事業です。これに加え、輸出入時の通関手続、配送等の付加価値の高い一貫サービスを提供します。
(注2)「ロジスティクス事業」とは、顧客のあらゆる物流需要に対して、顧客の業種、業態、商品特性を踏まえた物流ソリューション(保管・荷役・流通加工・輸配送・物流情報管理)を一貫して請け負う事業です。
「 長期ビジョン 」
“Global Top 10 Solution Partner”~日本発祥のグローバルブランドへ~
・総力を結集し、品質・競争力・課題解決力をさらに高め、KWEグループとしてのブランドを確立する。
・お客様から選ばれる企業となり、欧米競合他社が席巻する市場で確固たる地位を築く。
・従業員が誇りを持てる企業になる。
(3) 中期経営計画(2019年度~2021年度)
2019年5月、当社グループは「長期ビジョン」のもと、「コアビジネスへの集中による事業規模の拡大」を目指し、2019年度からの3年間の中期経営計画を策定しました。
当中期経営計画においては、貴重な経営資源である人財の育成を図るとともに、その多様性を尊重し、高い自主性と創意性、機動力を発揮できる経営基盤の整備・強化に努めます。また、グローバル企業としてスピーディかつダイナミックな事業展開を加速させるために、各地域本部への権限移譲により自己完結型の機能の強化を図り、「ミドル・ガバナンス」を確立することで事業活動の遠心力を高めると同時に、遠心力を支える軸として、当社グループを組織横断的に統括するコーポレート部門を設置し、チェック・アンド・バランス機能を保持する体制の強化を図ります。
業績目標については、いかなる時も「利益に執着する姿勢」は当社グループに脈々と流れるDNAであり、持続的な利益成長を使命とする一方、近視眼的かつ一過性の利益の最大化に固執せず、中長期を見据えた健全な事業運営により企業価値の向上を図ることを目指すものとしております。
当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標(KPI)は、「コアビジネスへの集中による事業規模の拡大」のもと、以下のとおり、「営業収入」「航空貨物物量」「海上貨物物量」を、また収益性を維持・向上させるため、「営業総利益率」を設定しております。なお、当初目標より、新型コロナウイルス感染拡大の状況、米中対立を始めとする世界情勢の不安定化、世界的な半導体不足による生産活動の停滞等による事業環境の不透明さより、2021年5月12日に開示しておりますとおり、最終年度業績目標を修正しております。
<中期経営計画(2019年度~2021年度)の評価>
当中期経営計画期間においては、新型コロナウイルス感染症により世界経済、国際物流市場は大きな影響を受けました。大きな事業環境の変化の中でも、お客様のサプライチェーン維持を通じ、事業規模の拡大のための基本戦略・施策として、グループガバナンスの強化、次世代ITの企画・導入、グローバル人材の育成強化及び財務健全性の向上による「経営基盤の強化」、フォワーディング事業においては、顧客基盤の拡充、品目別営業戦略の推進、ならびにアジア域内及びアジア発着物量の拡大による「営業戦略」、スケールメリットを活かした原価削減及びオペレーション効率の向上による「オペレーション戦略」、ロジスティクス事業においては、APLLグループ(APL Logistics Ltd及びそのグループ会社)における「顧客産業別ビジネスの拡大」を推進してまいりました。
本中期経営計画における業績目標と、各戦略とその施策ごとの分析と評価は以下のとおりです。
①業績目標の分析と評価
2021年度の業績については、「3 [経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析]」
に記載しております。
②各戦略とその施策の分析と評価
[経営基盤の強化]
・グループガバナンスの強化
各地域本部への権限移譲による「ミドル・ガバナンス」体制の強化とともに、グループ全体の「経営戦略の推進」、「営業活動の推進」、「事業活動の管理」を担う組織横断的なコーポレート部門(プランニング&アドミニストレーション/ファイナンス&アカウンティング/IT/HR/セールス&マーケティング)を設置し、グループガバナンス強化のための体制を構築しました。また、国際的な事業活動におけるグループ法務・リスク管理強化のため、「ジェネラル・カウンセル」職を設置しました。これらにより、グループ経営の基盤整備を一層進めました。
・グローバル人材の育成強化
グローバル人事制度の構築にあたり後継者育成計画を導入し、重要ポジションの後継者候補の育成に着手しました。この一環で、当社グループのリーダーに必要とされる要素を整理した「KWEリーダーシップコンピテンシー」を策定し、人材開発のためのツールとして活用を始めました。また、「KWEグローバル人事ガイドライン」を策定し、グループの人材マネジメントについての方向性を示しました。
・次世代ITの企画/導入
業務の効率化のため、グローバル基幹業務システム“UFS+”の開発と新機能の導入をさらに進めました。IT資産についてはクラウド化を進め、ライトアセット化を推進しました。またIT基盤の整備、ITセキュリティの強化、次世代に向けたITサービスの向上を図っていくための指針「KWE Group IT Security Policy」を策定のうえ、グローバルでのシステム一元管理のためのIT基盤整理、ITセキュリティ強化のための諸施策を実施しました。
・財務健全性の向上
想定を上回る業績推移の中、フリーキャッシュフローの増加と有利子負債の削減に努めた結果、借入金と社債の総額より現金及び預金を控除した純有利子負債は、2018年度末の806億円から528億円減少し、2021年度末には277億円となりました。また、自己資本比率は2018年度末の31.3%から5.6ポイント改善し、36.9%となりました。
[営業戦略]
・顧客基盤の拡充
欧米大手顧客を中心としたコーポレート・アカウント(CA)を含む顧客基盤の維持及び拡充を目指して、日本を含む各地域本部にRegional Sales & Marketing(RSM)部を設置し、コーポレート部門であるCorporate Sales, Marketing & Operation(CSMO)部との協働による販売体制の強化に取り組みました。
・品目別営業戦略の推進
当社の輸送品目において、「コアインダストリー」と位置付けるエレクトロニクス関連品、自動車関連品、ヘルスケア関連品の品目では、それぞれIT技術革新(IoT、AI、5G、EV等)の進展、自動車生産の回復、コロナ禍における緊急医療物資、医療機器、ワクチン輸送などの輸送需要の高まりの中、当社グループのグローバルネットワーク、提案力を生かした取扱物量の拡大を図りました。また、「サブインダストリー」と位置付けるインダストリー(機械等その他産業品目)関連品、エネルギー関連品では、プロジェクトカーゴ(大型貨物)の取扱拡大のための専門拠点をルーマニアに開設しました。また、「新品目への挑戦」としたリテール関連品、生鮮品の開拓においては、リテール関連品ではAPLLグループとの協働による米系大手リテール顧客の開拓が進捗し、生鮮品ではカナダにおいて生鮮貨物専門物流業者の買収による取扱拡大を図りました。
・アジア域内及びアジア発着物量の拡大
生産拠点としての発展が著しい東南アジアにおいては、重点地域としたインドネシア、ベトナムにおいて販売、オペレーション体制を強化した結果、インドネシアでは自動車関連品の取扱いが拡大し、ベトナムでは自動車関連品、エレクトロニクス関連品、リテール関連品等の取扱いが大幅に増加しました。また、同地域でのネットワークの拡充として、スリランカ、バングラデシュに現地法人を設立しました。これらの施策及び航空・海上貨物輸送スペース不足による需給逼迫の中でも、顧客のニーズを迅速かつ的確に取り込んだ結果、2021年度におけるアジア域内及びアジア発の欧米向け物量(APLLグループを除く)は、2018年度比で航空貨物輸送ではそれぞれ25.3%増、24.3%増となり、海上貨物輸送では同7.5%増、24.7%増となりました。
[オペレーション戦略]
・スケールメリットを活かした原価削減
航空貨物輸送では、旅客便の大幅な減便による輸送スペース不足が続く中、輸送需要の高いアジア・北米間を中心にチャーター便をコーポレート契約、地域本部契約等により機動的に調達し、海上貨物輸送でも、コンテナ不足、港湾混雑等による海上コンテナ物流の混乱による輸送スペース不足の中、香港に所在するGroup Procurement Center(GPC)による集中購買、世界の主要船会社とのパートナーシップを強化することにより輸送スペースを確保し、航空貨物・海上貨物輸送ともに輸送スペース確保と運賃原価の抑制に努めました。
[APLLグループ・顧客産業別ビジネス拡大の推進]
ロジスティクス事業を主とするAPLLグループにおきましては、顧客産業別ビジネス拡大を推進し、Automotive(自動車産業)では、インドでの鉄道による自動車輸送サービスの拡充のため、鉄道車両編成を強化しました。Retail(リテール)では、顧客からの需要の多いサプライチェーンマネジメントのVisibility機能の開発、導入を行い、また、Consumer & Industrial(消費財、その他産業品目)では、海上輸送におけるプライオリティ・サービスの販売を強化しました。
(4) 当社グループのサステナビリティ活動
当社グループは、サステナビリティ活動に取り組むにあたり、2020年11月に社長を委員長とするKWEグループサステナビリティ推進委員会を設置するとともに、「KWEグループサステナビリティ基本方針」を制定しました。また、ステークホルダーエンゲージメントや社内での議論を重ね、2021年5月にはマテリアリティ(重要課題)を以下のように決定しました。
1. Anti-Corruption(腐敗防止の徹底)
2. Data Security(データセキュリティの強化)
3. Diversity and Equal Opportunity(ダイバーシティと機会均等の推進)
4. Emissions(気候変動対応としてのCO2排出削減)
5. Energy(クリーンエネルギーの利用促進)
6. Social Impacts in the Supply Chain(責任ある調達の推進)
これらのマテリアリティに対し、グループ統一のコンプライアンス・リスク教育の実施、航空輸送におけるCO2排出量削減への取組みとしてSustainable Aviation Fuel(SAF、持続可能な航空燃料)の利用促進のため、航空会社との協業を開始する等の具体的施策を進めております。また、2021年12月には金融安定理事会(FSB)が設立した気候変動の影響を考慮した経営・財務情報計画を検討する「気候関連財務情報開示タスクフォース」(TCFD)の提言に賛同を表明しました。当社グループでは現在、CO2排出量の削減目標・削減案の策定に向けてグループ全社を対象とした基礎データの収集を進めており、今後はTCFDの提言に基づき、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4項目の開示に向けた取組みを推進してまいります。
(5) 目標とする経営指標
当社は、グループ全体の業績を示す指標として、「長期ビジョン」に掲げておりますとおり、以下の指標を重視しております。
・営業収入
・営業利益
・航空貨物物量
・海上貨物物量
・財務健全性
なお、2022年度からの次期経営計画については、新型コロナウイルス変異株の感染の状況をはじめ、製造業における供給制約によるサプライチェーンの混乱に加え、ロシア・ウクライナ情勢、資源価格の上昇、世界的なインフレーション進行による経済成長の失速懸念等、今後も先行き不透明な状況が続くことが想定されるため、2022年度(2023年3月期)の通期業績予想のみの開示としております。
当社グループの2022年度の連結業績予想は、営業収入944,500百万円(前期比3.7%減)、営業利益は50,500百万円(同19.2%減)、経常利益は49,000百万円(同24.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は32,000百万円(同26.3%減)であります。また、取扱物量につきましては、航空貨物物量780千トン、海上貨物物量778千TEUを目標としております。
(6) 経営環境及び対処すべき課題
当社グループを取り巻く事業環境は、引き続き、世界経済の回復に伴う高水準な輸送需要が期待される一方、新型コロナウイルス変異株の感染の状況、製造業における供給制約によるサプライチェーンの混乱に加え、米中の対立、ロシア・ウクライナ情勢など地政学的なリスクの顕在化、資源価格の上昇、世界的なインフレーション進行による経済成長の失速懸念等、今後も先行き不透明な状況が続くことが想定されます。このような環境の中、当社グループは、長期ビジョン「“Global Top 10 Solution Partner”~日本発祥のグローバルブランドへ~」の実現に向けて、以下の課題に取り組んでまいります。
① 経営基盤の強化
当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を目的とした経営基盤強化の一環として、引き続きグローバルでのグループガバナンスの強化、人事戦略、IT戦略、財務経理戦略を進め、さらに、持続可能な社会の実現に資する事業活動を推進していくために、当社グループとして取り組むべき各重要課題(マテリアリティ)に対し、目標設定とアクションプランに基づくサステナビリティ活動を推進してまいります。
② 営業ならびにオペレーション戦略
航空・海上輸送事業におきましては、グローバル物量の拡大を基本方針とし、コーポレート部門と各地域本部の連携の強化によるアジア・欧米間物量の拡大を営業戦略の重点施策とし、コーポレート・アカウントの維持・拡大、取扱品目の拡大に向けた販売活動を推進してまいります。また、オペレーション戦略としては、グローバル購買の更なる強化を図り、お客様のサプライチェーンの維持のため、機動的かつ戦略的に航空チャーター便の活用を進めるなど、安定的な輸送スペースの確保と供給に努めてまいります。ロジスティクス事業を中心とするAPLLグループにおきましては、プレミアム・オーダーマネジメント・プロバイダーとして、米系大手お客様のパートナーとしての地位を確固とするための各種施策に取り組んでまいります。
また、これらの課題に加え、引き続き経済活動の根幹である物流を通じて、サプライチェーンを支えることで当社グループの社会的使命を果たすとともに、持続可能な社会の実現に貢献し、永続的な成長と企業価値向上のため、将来を見据えた成長戦略を実現する取組みを進めてまいります。
当社は、2022年5月13日開催の取締役会において、当社の大株主である近鉄グループホールディングス株式会社による当社の普通株式に対する公開買付け(以下、「本公開買付け」という。)に賛同する旨の意見を表明するとともに、当社の株主の皆様に対し、本公開買付けへの応募を推奨することを決議いたしました。
なお、上記取締役会決議は、近鉄グループホールディングス株式会社が本公開買付け及びその後の一連の手続を経て当社を完全子会社化することを企図していること及び当社株式が上場廃止となる予定であることを前提として行われたものです。これは、当社を取り巻く今後の事業環境は、欧米競合他社を筆頭に、近年業界再編の動きが顕著になっていることに加え、荷主と輸送会社をオンラインプラットフォームで結ぶデジタルフォワーダーの台頭、大手船会社と物流会社の垂直統合による顧客囲い込み等、新たな潮流も見られるため、今後大きな業界変動が想定される中で、当社が持続的に成長を図るためには、M&Aや他社との資本業務提携等による新領域での物量拡大及び購買力の強化による価格競争力の向上が必要であり、当社と近鉄グループホールディングス株式会社の連携を緊密にし、同社のM&A等に関する知見・ノウハウ・人材・与信等の有形・無形の経営資源の当社への共有を加速・活用することが必要になると考えたことによるものです。
今後は、近鉄グループホールディングス株式会社との連携により、事業環境の変化や多様化する国際物流ニーズに対応した戦略と施策をスピーディかつ着実に実行することで、引き続き物流を通じて、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
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