当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
なお、本文中の記載金額は、億円単位の表示は億円未満四捨五入とし、百万円単位の表示は百万円未満切捨てとし
ております。
当連結会計年度におけるわが国経済は、持ち直しの動きが続いているものの、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が残っています。
当社グループを取り巻く環境としては、メディア事業の分野では既存の有料放送市場が成熟している一方で、定額制又は無料のインターネット動画配信サービス市場は拡大を続けており、コンテンツ獲得及び顧客獲得の両面で国内外の事業者との激しい競争が続いております。宇宙事業の分野では船舶・航空機向けの移動体衛星通信や5Gを活用したサービスによる携帯電話基地局向けバックホール回線の需要が拡大する一方で、グローバルマーケットにおいて海外衛星オペレーターとの厳しい価格競争が続いております。また、ベンチャー投資の増加に伴い、世界レベルで新たな事業者が宇宙ビジネスに参入し、安価なロケットの開発や大規模な低軌道衛星通信システムプロジェクトを推進するなど、ビジネスの環境が大きく変化しております。
このような経済状況の下、当連結会計年度の当社グループの連結経営成績は次のとおりとなりました。
「収益認識に関する会計基準」(以下「収益認識会計基準」)等の適用の影響により、営業収益が210億円、営業費用が207億円減少しております。詳細につきましては、第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項 (会計方針の変更)をご参照ください。
なお、EBITDAは前期比11億円減少し、442億円となっております。
当社グループのセグメント区分は次のとおりであります。
当社グループのセグメント別の概況は次のとおりであります。(経営成績については、セグメント間の内部営業収益等を含めて記載しております。)
<メディア事業>
・既存事業の取り組み
スポーツジャンルにおいては、昨シーズンに引き続き2021年シーズンも「プロ野球セット」でセ・パ12球団の公式戦全試合を生放送・配信いたしました。2021/2022年シーズン海外サッカー「ドイツ ブンデスリーガ」では、全試合の放送・配信にとどまらず、サッカーファンに新たな視聴体験を提供すべく、映像とデータの統合“インタラクティブフィード”を世界で初めて実装した「ブンデスリーガLIVEアプリ」を10月にリリースいたしました。エンタメジャンルにおいては、2021年11月に「スカパー!なつエモ天国TV」として70年代から90年代の懐かしい歌番組・ドラマ・バラエティ・アニメ・ヒーロー等のコンテンツを一挙放送し、視聴料等2,000円割引キャンペーンの効果もあり、「スカパー!基本プラン」の契約件数増加に寄与いたしました。
光ファイバーによる地上デジタル・BSデジタル等の再送信サービスにおいては、着実に提供エリア拡大を進めております。広島県、愛媛県、富山県の一部エリアでサービス提供を開始するなど、2022年3月末時点で提供エリアは35都道府県にわたり、提供可能世帯数は約3,400万世帯、契約世帯数は254万世帯に達しております。
・新たな取り組み
動画配信サービス「スカパー ! オンデマンド」をリニューアルし、有料配信は「SPOOX」(スプークス)、放送契約者向けの無料配信は「スカパー ! 番組配信」として2021年10月にサービス開始いたしました。2022年2月には、映画、ドラマ、アニメなど約3万本が見放題となる新商品「バリュープランPowered by ひかりTV」を発売し、これに合わせて90日間無料キャンペーンを展開しております。
将来的なコネクテッドTV領域における協業を目指し、2021年9月には㈱フリークアウト・ホールディングスに出資しております。
また、2022年2月には、映像コンテンツ業界のDX推進に貢献すべく、作品名・出演者・サムネイル・説明文などの情報をデジタル化して体系的に整備した業界横断のコンテンツデータベース構築にも着手いたしました。
当連結会計年度における加入件数は次のとおりとなりました。
以上の結果、当連結会計年度のメディア事業の経営成績は次のとおりとなりました。
収益認識会計基準等の適用の影響により、営業収益が177億円、営業費用が174億円減少したほか、累計加入件数減少の影響等により営業収益が34億円減少いたしました
<宇宙事業>
・既存事業の強化
グローバル・モバイルビジネスの拡大及び競争力の強化のため打ち上げたHTSである通信衛星JCSAT-1Cは、インドネシアエリアにおけるデジタルデバイド地域の通信や、航空機内Wi-Fiに向けたサービスの提供を開始しており、同じくHTSであるHorizons 3eとともに順調に収益を拡大しております。また、2022年1月に提供を開始し、新規顧客を獲得している新海洋サービス「JSATMarine」においてもJCSAT-1Cの活用を予定しており、さらなるHTSユーザーの拡大を目指して引き続き活動を推進してまいります。
2022年1月には、アジア地域の需要の確実な取り込みや、情報収集・発信及び新規商材の販売戦略立案等を目的とし、アジア事業部及びシンガポール支店を新たに設置いたしました。
・新たな技術の活用や事業領域拡大への取り組み
災害時の状況把握や平時の継続的な国土・インフラ監視などに有用な衛星データ解析情報サービスの事業化を進めるため、三菱電機㈱、㈱パスコ、アジア航測㈱、日本工営㈱、及び(一財)リモート・センシング技術センターと衛星データサービス企画㈱を設立いたしました。2023年度からの本格サービス提供開始に向け事業検討を進めてまいります。
2021年12月には、㈱QPS研究所のシリーズBラウンドにおいてリード投資家として資本参加するとともに、低軌道の小型SAR(Synthetic Aperture Radar:合成開口レーダー)衛星コンステレーションから得られるデータを活用した新たなサービスを創出することを目指し、同社と業務提携契約を締結いたしました。サービス基盤やノウハウの連携を強化し、小型SAR衛星コンステレーションを活用した衛星データ事業の発展を目指します。
また、持続可能な社会の実現に向けた新たな宇宙事業創出を目指し、日本電信電話㈱とビジネス協業を目的とした業務提携契約を締結いたしました。宇宙空間をICTインフラ基盤として効果的に最大限活用することを目指し、2022年度から順次技術実証などの取り組みを進めてまいります。
2022年1月には、日本電信電話㈱、Airbus Defence and Space Limited、㈱NTTドコモとの間でHAPS(高高度プラットフォーム)の実用化に向けた研究開発推進に関する覚書を締結いたしました。従来の静止衛星以外のインフラを活用した通信サービスの実現に向け、パートナー企業とともに検討を進めております。
政府系プロジェクトへの取り組みに関しては、総務省公募案件「令和3年度 情報通信技術の研究開発に係る提案」における研究課題「グローバル量子暗号通信網構築のための衛星量子暗号技術の研究開発」に応募し、受託先として選定されました。衛星通信を利用した量子暗号通信網の実現に向けた研究開発に取り組み、事業領域の拡大に努めてまいります。
以上の結果、当連結会計年度の宇宙事業の経営成績は次のとおりとなりました。
Horizons 3e及び国内衛星ビジネス等の収益の増加や、減価償却費の減少、連結子会社の清算に伴う税金費用の減少等により、営業利益及びセグメント利益は増加いたしました。
なお、収益認識会計基準等の適用の影響により営業収益が33億円減少いたしましたが、営業利益及びセグメント利益に与える影響は軽微であります。
生産、受注及び販売の実績は次のとおりであります。
当社及び連結子会社は、サービスの提供にあたり、製品の生産を行っていないため、生産実績について記載すべき事項はありません。
当社及び連結子会社は、受注生産を行っておりませんので記載すべき事項はありません。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注1) セグメント間取引については相殺消去しております。
(注2) 主な相手先別の販売実績については、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため記載を省略しております。
(注3) 収益認識会計基準等の適用の影響により、販売実績が210億円(メディア事業177億円、宇宙事業33億円)減少しております。
当連結会計年度末における資産合計は 3,782億円 となり、 前連結会計年度末比(以下「前期比」)74億円減少いたしました 。
流動資産は、Xバンド事業に関する債権回収等により売掛金が43億円減少いたしましたが、現金及び現金同等物の増加127億円等により前期比67億円増加いたしました。
有形固定資産及び無形固定資産は、設備投資により75億円増加いたしましたが、減価償却費222億円、のれん償却額9億円等により前期比158億円減少いたしました。
投資その他の資産は、投資有価証券の増加27億円等により、前期比17億円増加いたしました。
当連結会計年度末における負債合計は1,351億円となり、前期比152億円減少いたしました。
主な要因はXバンド事業及びHorizons 3e事業に関する借入金の返済等による有利子負債の減少56億円、未払法人税等の減少31億円、前受収益の減少15億円であります。
当連結会計年度末における非支配株主持分を含めた純資産は2,431億円となり、前期比78億円増加いたしました。
主な要因は親会社株主に帰属する当期純利益の計上等による利益剰余金の増加92億円であり、主な減少は自己株式の取得30億円であります。また、自己資本比率は64.0%となり、前期比3.2ポイント増加いたしました。
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益、減価償却費、のれん償却額の合計433億円に加え、売上債権の減少44億円がありましたが、法人税等の支払額84億円等により、365億円の収入(前期は579億円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形固定資産の取得による支出84億円、投資有価証券の取得による支出31億円、Horizons 3e事業に関する貸付金の回収による収入22億円、関係会社株式の売却による収入12億円等により、77億円の支出(前期は114億円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出78億円、自己株式の取得による支出30億円、配当金支払による支出53億円等により、164億円の支出(前年同四半期は169億円の支出)となりました。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前期比127億円増加し、859億円となりました。
(財務戦略の基本的な考え方)
当社グループは、グループミッション「Space for your Smile」を、持続可能な社会に向けた活動を進めるための「サステナビリティ方針」としても掲げ、社会的課題を解決すると共に、企業価値を向上させることを目指しております。このミッションの実現のため、健全な財務体質と資本効率の向上を両立させながら、基礎収益力の向上に向けた成長分野への投資を推進することを財務戦略の基本方針としています。
(資金需要の主な内容及び資金調達)
当社グループにおける主な資金需要は、事業活動上の必要な運転資金、放送設備や通信衛星設備の調達等の設備投資資金、戦略的なM&A資金等です。これらの資金需要は、主に営業キャッシュ・フローにより賄っておりますが、必要に応じて社債発行や借入による資金調達を行っております。また、機動的な資金調達を可能とすべく400億円の社債発行登録枠を確保しております。
なお当社グループでは、一定の手元流動性を維持する資金計画を作成・実行するとともに、取引金融機関とコミットメントライン契約及び当座貸越契約(合計132億円)を締結して資金の流動性リスクに備えております。また、キャッシュ・マネジメント・システムによるグループ内資金の活用により、資金効率の向上に努めております。
(借入金の状況と返済方針)
当連結会計年度末における借入金残高は704億円となっておりますが、このうちXバンド事業に関する金融機関からの借入金470億円については当該事業に係る防衛省に対する債権の回収により、Horizons 3e事業に関する金融機関からの借入金219億円については当該事業に係る営業キャッシュ・フローにより返済する予定としております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって当社グループが用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
① 貸倒引当金
売上債権や貸付金等の貸倒損失に備えるため、過去の債権回収実績や債務者の財政状態より算出した回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。このため、将来債務者の財政状態悪化により支払能力が低下した場合、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があります。
② 固定資産の減損
管理会計上の区分に基づいた各事業用資産グループの営業活動から生じる損益が継続してマイナス又はマイナスの見込みの場合、当該資産グループの回収可能価額を見積り、回収可能価額が帳簿価額を下回った場合、その差額を減損損失として計上しております。このため、将来事業用資産グループの収益性の低下等により投資額の回収が見込めなくなる場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
③ 投資の減損
所有する有価証券、投資有価証券及び出資金の投資価値が著しく下落した場合、回復する見込があると認められる場合を除き、減損処理を行っております。このため、将来の市況悪化や投資先の業績悪化により、現在の投資簿価に反映されていない損失が発生した場合や投資簿価の回収が困難となった場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。
④ 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、将来回収が見込まれる一時差異等に係る税金の額を計上しておりますが、その回収可能性は将来の合理的な課税所得の見積りにより判断しております。このため、業績悪化による課税所得の見積りの変更等により回収可能性の見直しが必要となる場合、繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。
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