課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1) 経営理念

動画配信サービス各社の急速な顧客獲得や静止衛星の技術革新、低軌道衛星による新たなビジネスの台頭など、当社グループを取り巻く競争環境が大きく変わりつつある中、この変化をチャンスととらえ、加速するデジタル社会の進展とあらゆる空間におけるビジネスフィールドの拡張を見据え、当社グループの果たすべき役割を定めたグループミッションを掲げています。

Space for your Smile
不安が「安心」にかわる社会へ
不便が「快適」にかわる生活へ
 好きが「大好き」にかわる人生へ

 

Space for your Smileには、私たちの目指す世界が描かれています。宇宙も、空も、海も、陸も、家族が集うリビングも、ひとりの自由な場所も、これらすべてのSpaceが笑顔で満たされるように。日常のちょっとした幸せから、まだ見ぬ未来の幸せまで、ひとりひとりの明日がよりよい日になっていく、そんな世界を創りつづけます。
  このグループミッションを、持続可能な社会に向けた活動を進めるための「サステナビリティ方針」としても掲げ、社会的課題を解決すると共に企業価値の向上に努めてまいります。

 

(2) 経営環境

メディア事業の分野では、既存の有料放送市場が成熟している一方で、定額制又は無料のインターネット動画配信サービス市場の拡大により、コンテンツ獲得及び顧客獲得の両面で国内外の事業者との激しい競争が続いております。

宇宙事業の分野では、国内衛星ビジネスにおいて携帯電話基地局向けバックホール回線の需要が拡大しております。グローバル・モバイルビジネスにおいては、新型コロナウイルス感染症の影響により減少した航空機向け衛星通信需要がコロナ禍前の水準まで回復してはいないものの、中期的には船舶・航空機向け移動体衛星通信の需要の拡大を見込んでおります。一方で、グローバルマーケットでは海外衛星オペレーターとの厳しい価格競争が続いております。また、世界レベルで新たな事業者が宇宙ビジネスに参入し、新規技術による安価で高性能なロケットの開発や大規模な低軌道衛星通信システムプロジェクトを推進するなど、ビジネス環境が大きく変化しております。

 

(3) 経営方針・経営戦略

経営環境の変化が激しい中において、当社グループは経営方針として「スカパーJSATグループプラン2020+」を掲げ、人・事業・企業ブランドの全方位で抜本的改革を推進してまいります。 

メディア事業では、既存事業の収支構造改革を継続します。また、衛星放送・動画配信ネットワークを持つプレイヤーとしての確固たるポジションを維持しながら、コネクテッドTV、動画配信技術、データマネジメント技術、コンテンツデータベース技術などの分野に経営資源を投下し、新たな価値創造を図ってまいります。

宇宙事業では、30年以上にわたり培ってきた宇宙・衛星サービス分野での経験を活かし、超スマート社会(Society5.0)の実現に貢献してまいります。衛星通信という既存のビジネスモデルを守りつつ、非地上系ネットワーク、光データ中継、ビジネスインテリジェンスなどの分野での事業拡大を目指します。

そして、サステナビリティ経営を推進し、企業ブランドの再創生を図ると共に、従業員エンゲージメントを高め、中長期的な企業価値の向上に努めてまいります。

 

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

2022年度の連結業績目標は以下のとおりです。
 営業収益             1,200億円
 営業利益               210億円
 経常利益              215億円
 親会社株主に帰属する当期純利益   150億円
 EBITDA                       444億円

(注)EBITDAは、親会社株主に帰属する当期純利益、法人税等合計、支払利息、減価償却費、のれん償却額の合計として算定しております。

 

(5) 対処すべき課題

メディア事業及び宇宙事業において、近年のデジタル技術の急激な進化に伴い事業環境が変化していく中で、既存サービスの顧客維持や成長市場の需要の取り込みのための各種施策のほか、M&Aや事業提携にも積極的に取り組み、収支構造の改善及び事業領域の拡大を図ってまいります。

 

<メディア事業>

 既存の有料放送市場が成熟し、資金力の豊富な国内外のインターネット動画配信サービスが次々と台頭し、コンテンツ獲得及び顧客獲得の両面で競争が激化している中、従来の延長線上にある各種施策だけでは加入者数の減少を免れない状況にあります。このような競争環境下において、以下の展開を着実に推進することにより、収益性の改善及び新たな収益の獲得を図ってまいります。

 

① 収益性の改善

 以下に示す各事業での取り組みを強化することで、加入基盤を維持・拡大し、収益性の改善を図ってまいります。

ⅰ)放送事業

 加入基盤の維持には、魅力的かつ差別化されたコンテンツが揃っていることに加え、様々なコンテンツジャンル毎にファンの嗜好に合わせた「ファン・マーケティング」を実践し、「スカパー」ならではの顧客体験を継続して提供することが重要となってまいります。コンテンツの大小にかかわらず、様々な企画を実施し、お客様にスカパーに触れていただく機会を増やし、長期契約につながるよう取り組んでまいります。

 テレビ1台分の料金で3台まで追加料金なしで50チャンネルが見放題となる「スカパー基本プラン」の契約件数は順調に増加し、2022年3月末時点で70万件に達しました。家庭内の複数の部屋で視聴人数・視聴時間が増加することで、解約率の抑制や他商品の追加契約の促進につながっております。「ファン・マーケティング」によって興味を持たれたお客様にも「スカパー基本プラン」をお勧めしてスカパーライフを長く楽しんでいただけるよう各種施策を検討・実行してまいります。

 プロ野球においては、2022年シーズンも全12球団公式戦を中継します。「プロ野球セットアプリ」の機能を充実させ、スマートフォンでもより快適にお楽しみいただけるように努めてまいります。その他のスポーツジャンルにおいても、引き続きファンの皆様の期待に応えられるよう、サービスの拡充に取り組んでまいります。

 また、採算性や将来性の観点からこれまで実施していた施策を見直していくことで、コスト削減及び生産性の向上を図ってまいります。

ⅱ)FTTH事業

 ご家庭内のインターネットブロードバンドサービスの中心となっている光回線において提供している地上波デジタル・BSデジタル等の再送信サービスは、様々なケーブルテレビ事業者との協業も含め、引き続き提供エリアを拡大しながら拡販を図ってまいります

 

② 新たな収益の獲得

 新たな収益源の確立のため、2021年10月にスタートした有料配信サービス「SPOOX」(スプークス)、放送契約者向けの無料配信サービス「スカパー番組配信」を安定したサービスとして確立し、中長期的に放送・配信を複合したプラットフォーム事業展開を推進してまいります。更に、将来的なコネクテッドTV領域での事業参入に向けた準備も進めてまいります。

 また、メディアソリューション事業での収益拡大に向け、国内外の配信サービスを展開する事業者を支援する「メディアHUBクラウド」の受注拡大に取り組んでおります。加えて、映像コンテンツ業界のDX推進に貢献すべく、2022年度にコンテンツデータベースの総合ソリューションサービスの提供開始に向けて準備を進めております。これらにより、BtoC・BtoBの両面において相互に連携した事業の確立を目指してまいります

 

<宇宙事業>

 持続的な成長のためには、既存顧客への安定したサービス提供の継続とともに、従来の衛星通信事業に限らない宇宙事業の開拓が必要不可欠と考えております。以下に示す各分野での取り組みを強化することで、事業の拡大を図ってまいります。

 

③ 既存事業の拡大

ⅰ)国内衛星ビジネス

 既存顧客に対する通信回線サービスの長期契約更新の提案に加え、衛星機器や当社グループの地上局設備を活用したサービスなどを合わせて提供していくことで、国内衛星通信市場の基盤を強化してまいります。後継衛星についても、ビームや帯域に可変性を持たせたデジタルペイロードを採用するなど、新しい技術を積極的に活用し、お客様の多様なニーズに柔軟に対応できるサービスの提供に努めてまいります。

 また、内閣府により策定された「宇宙基本計画工程表」などに基づく宇宙利用サービス事業への参入や、防衛分野を含む政府主導のプロジェクトへの参画などにより、ビジネスの拡大を目指してまいります。既存の衛星通信分野に限らず、政府系衛星の運用、観測・監視サービスや、当社グループが所有する衛星管制拠点の活用など、これまでの宇宙事業で培ってきたノウハウを活かした新たなサービスの提供を検討することで、積極的に活動領域を拡げてまいります。

ⅱ)グローバル・モバイルビジネス 

 2022年1月に新設したシンガポール支店を拠点に、アジア・オセアニア地域での営業展開を強化してまいります。

 また、2020年度に投入した当社グループ2機目のハイスループット衛星(従来よりも伝送容量を大幅に拡張した衛星。以下「HTS」という。)であるJCSAT-1Cに関しては、新型コロナウイルス感染症による一時的な需要の減少や導入の遅延などの影響を受けたものの、2021年度の下期より本格的に顧客の利用が開始しております。更なる収益の拡大を実現すべく、同じくHTSであるHorizons 3eとともに、船舶・航空機でのインターネット利用や携帯バックホールなどの成長市場における提供拡大を目指して活動を推進してまいります。

 更に、衛星カバレッジの拡大や、通信容量の増強に向けた海外事業者との連携やM&Aについても検討し、ビジネスの拡大を目指してまいります

 

④ 新たな技術の活用や事業領域拡大への取り組み

 2020年度に提供を開始した「Spatio-i」などを中心に、ビジネスインテリジェンス分野におけるサービスの開発や販売活動を強化してまいります。衛星から得られる画像や位置情報などの様々なデータは、安全保障のほか、金融、保険、農林水産、物流など、多岐にわたる分野での活用が期待されており、2021年12月に業務提携を行った㈱QPS研究所をはじめとするパートナー企業とも連携しながら新たな市場の開拓に取り組んでまいります。

 事業領域の拡大に向けては、光中継衛星や低軌道衛星、HAPS(High Altitude Platform Station:高高度プラットフォーム)など既存の静止衛星以外の通信インフラの活用検討や、衛星量子鍵配送、スペースデブリ対策など新たな技術を用いたサービスの事業化検討を進めてまいります。中でも、業務提携契約を締結した日本電信電話㈱とは、宇宙空間をICTインフラ基盤として効果的に最大限活用することを目指し、順次技術実証などの実施に向けた取り組みを進めてまいります

 

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