当社は創業以来「これまでのやり方や常識に全くとらわれず」、「良いもの面白いもの望まれるものを徹底的に追求していく」というミッションの下、インターネット時代の新エンターテインメントを創造することを目的とし、インターネット上で話題となっている小説・漫画等のコンテンツを書籍化する事業を営んでおります。
また、当社が出版事業を通して蓄積した自社IP(小説、漫画、キャラクターなど)を活かして、当社の関連会社である株式会社アルファゲームスでは、オリジナルゲームの開発・運営事業を営んでおります。
1.ビジネスモデル
当社は、Webサイト及びアプリ上において当社が運営する小説・漫画等の投稿サイトに投稿されたコンテンツの内から、サイト内でのユーザー評価を参考に、書籍として出版すべきコンテンツを調達しております。調達後は、編集部において、コンテンツの品質・商品力を向上させた後、書籍として出版することで収益をあげております。そのビジネスモデルのイメージは次のとおりです。
当社のビジネスモデルは既存の出版社と、①書籍となるコンテンツの調達元、及び、②書籍化すべきコンテンツの選定方法が異なっていることが特徴です。
①書籍となるコンテンツの調達元
インターネット環境が整備されることで、個人が作成したコンテンツをインターネット上に公開することが容易となり、インターネット上には多くのコンテンツが現れてきております。当社は、そのインターネット上からコンテンツを調達することにより安定的に多点数の書籍化が可能となっております。
②書籍化すべきコンテンツの選定方法
当社はインターネット上での多数のユーザー評価を参考に、一定以上の読者ニーズを見極めた上で、当社編集部内で当社刊行書籍のジャンルとの親和性や書籍市場の動向等もあわせ総合的に判断し、書籍化すべきコンテンツの選定を行っております。そのため、書籍刊行に要した費用を回収するだけの売上高が確保できないリスクの低減が可能となっており、また、そのような不用意な書籍化を回避することにより、限りある経営資産の有効活用が図れております。
一方で、当社のビジネスモデルは、インターネット上にて良質なコンテンツが数多く収集でき、かつ、多くのユーザーにより多角的に評価されることで出版時の成功率が事前に高められることを前提に成り立っておりますので、継続的な新規コンテンツ及びユーザーの確保が必要不可欠となっております。
そのため、当社投稿サイトでは、作家及びユーザーの双方にとって魅力的なサービスである「Webコンテンツ大賞(毎月、最も読者に人気のあるコンテンツ及び当社編集部内で最も評価の高いコンテンツを選出し、賞金の贈呈に加えて受賞作として書籍化を検討。加えて、投票したユーザーに対しても抽選で賞金を贈呈。)」の実施や、書籍化を目指す作家の積極的なチャレンジを促す「出版申請制度(当社投稿サイト内で、一定以上の人気を博しているコンテンツの場合、その作家は当社に対して書籍化の検討を依頼することができる制度。)」及び「投稿インセンティブ(投稿作品の人気度に応じ、その作家に対して報酬(Amazon ギフト券など)をお支払いする制度。)」の実施等、作家にとって魅力的なサービスやイベントを開催することにより、コンテンツの拡充に努めております。
また、2017年2月からは、当社投稿サイト内において、これまで書籍化に伴い非公開処理又はダイジェスト化していたコンテンツを一定期間に限り閲覧することが出来る「レンタル」サービスを開始し、さらに2021年7月には海外向けの漫画アプリ「Alpha Manga」を配信してサービスのグローバル展開をしております。これらにより、当社投稿サイトは、コンテンツの調達機能だけでなく、販売サイトとしての機能が加わることで、調達から販売までの垂直の幹を太くすることも目指しております。
2.取扱書籍
当社が取り扱っている書籍は(1)ライトノベル(表紙や挿絵にアニメ調のイラストが用いられており、また一般の小説より軽妙な文体でストーリーが描かれている小説)、(2)漫画、(3)文庫、(4)その他、の4つのジャンルに分けられます。
(1) ライトノベル
ライトノベルは、売上高の約27%を占め、のちに漫画化される作品も数多く存在する重要なジャンルとなります。なお、当社ライトノベルは文庫本サイズではなく、単行本サイズ(文庫本より大きく、高価格)であることが特徴となっております。
当ジャンルに含まれる主力レーベル等は次のとおりです。
① 男性向けのライトノベル
10代向けの文庫ライトノベルを卒業したと言われる、20代後半から30代の男性をターゲットとした単行本書籍を刊行しております。代表作としては、シリーズ発行部数累計(注)630万部を超え、2015年7月にはTVアニメ化された『ゲート』や、同累計272万部を突破し、2021年7月にTVアニメ化された『月が導く異世界道中』が挙げられます。
② エタニティブックス
2009年9月に創刊したレーベルで、30代から40代の女性向け恋愛小説を刊行しております。代表作としては、シリーズ発行部数累計32万部の『152センチ62キロの恋人』、同累計27万部の『ナチュラルキス』、同累計27万部の『君が好きだから』が挙げられます。
③ レジーナブックス
2010年11月に創刊したレーベルで、20代から30代の女性向け新感覚ファンタジー小説を刊行しております。代表作としては、シリーズ発行部数累計170万部を突破した『異世界でカフェを開店しました。』、同累計140万部の『自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。』、同累計103万部の『詐騎士』が挙げられます。
④ ノーチェブックス
2014年2月に創刊したレーベルで、20代から30代の女性をターゲットとした煌びやかな世界で繰り広げられる甘く切ないラブロマンス小説を刊行しております。
⑤ アンダルシュノベルズ
2021年3月に創刊したレーベルで、ファンタジー世界を舞台としたボーイズラブ小説を刊行しております。
(2) 漫画
2012年から本格的に取り扱いを開始しているジャンルとなります。
漫画ジャンルでは、当社のライトノベルで人気を博した作品(『ゲート』、『月が導く異世界道中』、『THE NEW GATE』、等)の漫画化(二次出版)を行っております。二次出版に至るまでには、原作であるライトノベルの人気を確認するだけではなく、漫画化された作品を当社Webサイト上で公開し、一定以上の人気があることを確認するプロセスを踏んでおりますので、出版時の成功率が事前に高められていることが特長といえます。また、漫画として二次出版することにより、原作であるライトノベルの売上高の増加が期待できることも特長といえます。
その一方で、漫画を更に成長させるためには「オリジナル漫画」の育成が必要であるとの考えから、当社ビジネスモデルを漫画にも適用することで、Web発となる次世代作家の発掘・育成にも積極的に取り組んでおります。
また、当ジャンルは電子書籍との親和性が非常に高く、加えて戦略的に電子書籍販売の体制強化を図っていることから、当事業年度においては、当社売上高の約70%を占めるジャンルに成長しております。
(3) 文庫
当ジャンルでは、市場において単行本ではなく文庫本での販売が主流となる「キャラ文芸」や「時代小説」等のジャンルに属する作品を文庫本として刊行しております。当社では更なる業績拡大及びポートフォリオ最適化の観点から、特定ジャンルに依存しないよう取扱いジャンルの拡大に注力しており、文庫において幅広いジャンルの書籍刊行を推進することで、新規ジャンルの開拓、強化に取り組んでおります。
さらに当ジャンルでは、ライトノベルやその他のジャンルから刊行された単行本の廉価版として、文庫本化を行っております。文庫本化することで、単行本の価格帯では躊躇していた読者層に対しても販売機会を逃さず、収益の最大化に努めております。
(4) その他
その他には、ライトノベルに属さない一般文芸書、ビジネス書、絵本等が含まれます。
一般文芸書の代表作としては、2014年5月に刊行した『居酒屋ぼったくり』(2018年4月にTVドラマ化。シリーズ発行部数累計130万部。)、絵本の代表作としては、「絵本・児童書大賞」に応募された文字のみのストーリーであったものに、人気イラストレーターの絵を付けることで誕生した『わたしのげぼく』(同6万部)が挙げられます。
(注)シリーズ発行部数累計:同作品の続編に加え同作品の漫画及び文庫を含み、部数は電子書籍販売数を含む。
3.他メディア展開作品
当社の作品のうち、他のメディアに展開した作品は以下のとおりです。なお、当社は作品の二次的利用に関する権利を有しており、他メディア展開の際にはそのメディア媒体と交渉する窓口となっております。
作品名 |
作家 |
ジャンル |
実績 |
Separation |
市川拓司 |
一般文芸書 |
日本テレビ系列にて連続テレビドラマ化(2003年7月) 発行部数累計16万部 世界7カ国で翻訳出版 |
レイン |
吉野 匠 |
男性向けライト ノベル |
株式会社マッグガーデンより漫画化 シリーズ発行部数累計131万部 |
虹色ほたる |
川口雅幸 |
一般文芸書 ・漫画(児童書) |
東映アニメーションにより映画化(2012年5月) シリーズ発行部数累計40万部 |
THE QUIZ |
椙本孝思 |
男性向けライト ノベル・漫画 |
日本テレビにてドラマ化(2012年9月) シリーズ発行部数累計7万部 |
ゲート |
柳内たくみ |
男性向けライト ノベル・漫画 |
TVアニメ化(2015年7月) シリーズ発行部数累計630万部 |
Re:Monster |
金斬児狐 |
男性向けライト ノベル・漫画 |
スマホゲーム化(2016年2月) シリーズ発行部数累計123万部 |
とある おっさんの VRMMO活動記 |
椎名 ほわほわ |
男性向けライト ノベル・漫画 |
PCブラウザゲーム化(2016年4月) スマホゲーム化(2019年9月) シリーズ発行部数累計140万部 |
THE NEW GATE |
風波しのぎ |
男性向けライト ノベル・漫画 |
スマホゲーム化(2016年10月) シリーズ発行部数累計193万部 |
異世界で カフェを開店しました。 |
甘沢林檎 |
レジーナブックス ・漫画 |
スマホゲーム化(2017年4月) シリーズ発行部数累計170万部 |
月が導く 異世界道中 |
あずみ圭 |
男性向けライト ノベル・漫画 |
PCブラウザゲーム化(2017年4月) TVアニメ化(2021年7月) シリーズ発行部数累計272万部 |
居酒屋 ぼったくり |
秋川滝美 |
一般文芸書 ・漫画 |
BS12にてドラマ化(2018年4月) シリーズ発行部数累計130万部 |
4.当社投稿サイトの総コンテンツ数
当社ビジネスモデルの基幹となる当社投稿サイトの総コンテンツ数は、タグ機能の追加や、新たなジャンル「ライト文芸」等の追加に代表される様々な施策を展開することで順調に推移しております。
当事業年度末時点において、当社Webサイト内のコンテンツ数累計は166,198点となっております。
5.紙書籍の販売物流業務
当社は、将来的にはコンテンツを活かした多角展開を見据えておりますので、限られた経営資源は編集等に注力すべきだとの考えから、紙書籍に関する書店と出版社をつなぐ流通業者(以下、「取次」という。)との取引業務は、仲介業者(以下、「中取次」という。)を介して行っております。
なお、各書店への販促活動、市場動向の調査を主な目的とした書店営業は、基本的には当社で実施しております。(首都圏以外の地方営業は効率性の観点から外部業者に委託しております。)
[事業系統図]
以上述べた事項を事業系統図によって示すと次のとおりです。
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