⑴ 経営環境、経営方針及び対処すべき課題
当社グループでは、「北陸電力グループ2030長期ビジョン」を策定のうえ、2019年度から2022年度を第一次中期経営計画期間として設定し、「安定供給の確保」、「総合エネルギー事業の競争力強化」、「グループ総力による事業領域拡大」及び「企業文化の深化」の4つの柱からなる「第一次中期経営方針<2019~2022年度>」のもとで事業活動を行っている。
こうした中、2050年のカーボンニュートラル宣言や2030年のCO2削減目標が示されるなど、ますます脱炭素社会の実現が大きな社会的課題となっている。また、脱炭素の潮流を背景とした資源の需給のアンバランスに加え、ロシアによるウクライナ侵攻に伴い燃料価格が高騰しており、更に事態の深刻化・長期化が懸念されている。2022年度は、電力の安定供給と燃料高騰など足元の喫緊課題に機動的に対処しつつ、一方でカーボンニュートラルへの挑戦など中長期的視野に立った対応を両睨みで、課題に取り組んでいく必要がある。
このため、2022年3月に「2022緊急経営対策本部」を設置した。社長を本部長とし、強いリーダーシップのもと、足元の収支・キャッシュフロー改善と将来に向けた課題解決の実現の両立の面から、迅速な施策の見直しを実施していく。
①北陸電力グループ第一次中期経営計画<2019~2022年度>[2022年度版]
2022年度においては、足元の燃料価格高騰等に対する緊急的かつ機動的な対応を図るための「2022緊急経営対策本部」の取組みに加え、将来の当社グループの成長に向けた「脱炭素化の推進」、「事業領域の拡大」及び「抜本的な収支改善・財務体質強化」の3つのチャレンジを織り込んだ。
<2022年度の重点施策>
a.安定供給の確保
志賀原子力発電所の新規制基準への適合性確認審査における敷地内断層及び敷地近傍断層等の活動性評価に適切に対応するとともに、安全強化に徹底して取り組み、早期再稼働を目指していく。
また、主要石炭火力発電所について、タービン更新やAI・IoTの活用等によりトラブルの未然防止対策を強化するとともに、更なる発電効率の向上を図る。
流通設備についても、高経年設備の計画的な更新等により、安定供給を確保するとともに、再生可能エネルギー大量導入や電気自動車・蓄電池の普及拡大を踏まえた配電高度化等への対応及びレジリエンス(強靭性・回復力)強化に向けた設備対策及び関係機関との連携に取り組んでいく。
b.総合エネルギー事業の競争力強化
信頼され選択される責任あるエネルギー事業者として、社会的な課題である脱炭素社会の実現に取り組んでいく。電源側では再生可能エネルギー開発を加速するとともに、アンモニア・水素等の脱炭素技術の活用に向けた検討を実施する。
需要側では、RE100対応等の再エネ電気料金メニューの拡充や太陽光発電設備の第3者所有モデルの提供等、脱炭素化に向けた新たな価値サービスを展開するとともに、エネルギーの地産地消や地域活性化に向けて地域のエネルギー事業に主体的に参画していく。
さらに、電力需給、電力取引及び燃料調達を一元的に管理・運用できる体制を整備し、エネルギー価格高騰への機動的かつ柔軟な対応を図る。
c.グループ総力による事業領域拡大
グループの持続的な成長に向け、既存事業領域の拡大及び新たな事業領域の創出に取り組むとともに、新規事業を軌道に乗せ、事業の利益確保を図っていく。バイオマス燃料(ブラックペレット)の製造・販売企業への出資等、カーボンニュートラルビジネスにおける事業領域拡大に加え、昨年度に連結子会社化した江守情報グループを活用したデジタル・トランスフォーメーション(DX)分野への事業展開等、グループ全体での収益性向上を図っていく。
d.企業文化の深化
地域の持続的な発展に向け、地域ICTプラットフォームの普及拡大や自治体との連携を通じ、地域が抱える様々な課題の解決に資する取組みを行うとともに、DXの推進等によるお客さまサービス・業務品質の向上を図っていく。
また、健康経営の推進や新型コロナウイルス感染症対策の強化を図るとともに、より一層のコンプライアンスの徹底に向けた不断の取組みや労働災害防止に向けた安全文化の更なる深化により、地域社会から信頼され選択される企業を目指していく。
②北陸電力グループ2030長期ビジョン
2030年度までの期間をターゲットとして、当社グループの将来のありたい姿を掲げるとともに、「北陸を基盤とした『総合エネルギー事業』の拡大」、「新たな成長事業の開拓」の2つを基本戦略として取り組み、持続的な成長を果たすことで財務目標の達成を図っていく。
<将来のありたい姿>
「北陸と共に発展し、新たな価値を全国・海外へ」
<基本戦略>
a.北陸を基盤とした「総合エネルギー事業」の拡大
発電部門:設備の安全・安定稼働や低コストと低炭素化の両立
販売部門:総合エネルギーサービスや付加価値サービスの積極拡大
送配電部門:電力・サービス品質や低廉な託送料金の維持
b.新たな成長事業の開拓
集中的に取り組む分野(地域の課題解決、保有資源と新技術を融合した新たなサービス、海外電力事業)
③2050年の将来像及び2050年カーボンニュートラル達成に向けたロードマップ
脱炭素社会の実現に向けた社会の動きの加速などを踏まえ、2050年に向けて当社グループが既存の電気事業の枠を超えて事業を展開していく将来像及び2050年カーボンニュートラル達成に向けたロードマップを策定し、地域の課題及び2050年カーボンニュートラルの実現に取り組んでいく。
<2050年に向けた当社グループの将来像>
既存の電気事業の枠を超えて事業を展開し、地球温暖化問題への対応及び地域の持続可能な発展とスマート社会の実現という社会課題の解決に貢献していく。
<2050年カーボンニュートラル達成に向けたロードマップ>
地球温暖化対策としての脱炭素社会の実現は大きな社会的課題であり、当社グループは、信頼され選択される責任あるエネルギー事業者として、「電源の脱炭素化」、「送配電網の高度化」及び「お客さまや地域のゼロエミッション支援」を通じ、2050年カーボンニュートラルに挑戦する。
2022年4月に、カーボンニュートラルへの対応の更なる加速化に向け、以下の指標を新規設定・上方修正した。
a.新規設定
2030年度時点でのCO2排出量を△50%以上(2013年度対比、小売販売電力量ベース)
b.上方修正
2030年代早期に再エネ開発量を+100万kW以上[+30億kWh/年](2018年度対比)
⑵ 目標とする経営指標等
2019年4月に「北陸電力グループ2030長期ビジョン」において、当社グループの将来のありたい姿を踏まえ、以下の財務目標を設定・公表した。
■連結自己資本比率 2030年度までに30%以上
■連結経常利益 期間平均(2019~2030)350億円以上
■事業ポートフォリオ 2030年度頃までに連結経常利益ベースで
電気事業:電気事業以外=2:1
<投資及び株主還元の基本的な考え方>
志賀原子力発電所の再稼働や電源の安定稼働、総合エネルギー事業の拡大、成長事業の創出により、キャッシュの創出に努めていくとともに、安定配当を継続するという配当方針のもと、安定的な事業運営や持続的な成長を遂げるために必要な投資、財務基盤の強化、株主還元にバランスよく配分していく。
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