課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

より良い社会を創造していくには、その構成要素となる人と組織の生産性を高め、より良い組織を一つでも多く創っていくことが地道でありながら最も確実な方法であると考えます。そして、一人ひとりの多様な能力発揮を支援し、ビジネスと社会の持続的発展を可能にするために当社が考えるテーマは次の通りです。

 

それは、すべてのビジネスパーソンに「客観的な立場からコミュニケーションできる、経験豊富でスキルもあり信頼できる、あなたの能力発揮をお手伝いする」役割を持ったコーチを活用して頂くことです。

当社は、ビジネス経験・マネジメント経験の豊富な方をパートナーコーチとして迎えています。

当社はパートナーコーチと連携して、エグゼクティブや次世代のエグゼクティブのみならずビジネスの世界で活躍するすべての人の個人の成功、ひいては組織の成功をサポートしていきたいと考えております。

1対1型サービスでは、ハイレベルなエグゼクティブコーチング、ビジネスリーダーコーチング、ビジネスパーソンコーチング等、一人ひとりの課題と状況に対応した幅広いビジネスコーチングを提供するとともに、1対n型サービスでは、組織に対しては1on1の導入・定着・継続を支援するビジネスコーチングプログラムにより間接的にコーチングの素晴らしさを体感頂ける機会を、プロフェッショナルチームとテクノロジーの活用により皆様にご提供することで、コーチングの普及を実現したいと考えています。

 

  これらを実現する企業となるため、当社は次の通り、パーパス・ミッション・ビジョンを定めております。

 

<パーパス>

一人ひとりの多様な魅力、想い、能力の発揮を支援し、働く人が幸せを感じられる社会の持続的発展を可能にする。

<ビジョン> 

一人ひとりにビジネスコーチがついている社会を実現する。

<ミッション>

プロフェッショナルチームとテクノロジーの力で、一人ひとりに最適なビジネスコーチングを提供する。

 

  (2)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等

   当社は、ビジネスコーチングを1対1型と1対n型で提供しており、現在は1対n型が収益の過半を占めていますが、一人ひとりにビジネスコーチがついている社会を実現するためには、コーチングを受けているコーチング対象者(クライアント)数を増加させる必要があるため、1対1型サービスのクライアント数及び1対1型サービスの売上構成比を重視しております。また、経営の効率性を確保するため、売上高、売上総利益率、営業利益率並びに従業員一人当たり売上高を重要指標として活用することで、健全な収益力の向上と経営基盤の強化を進めて参ります。

 

(3)経営環境

当社は、「働き方改革関連法」による生産性向上・長時間労働是正・ワークライフバランス実現等を目的とした人材開発関連投資が拡大してきたと考えており、また、コロナ禍により始まったテレワークの実施により組織内コミュニケーションの課題が顕在化して、これを解決するためのコミュニケーションを改善するための人材開発投資も活発化していると考えております。

一方で、企業向け法人研修市場は約5,000億円(※1)で横ばいの状況であり、ビジネスコーチング市場は、その中の小さなカテゴリーで310億円程度(約6.4%)(※2)と考えられ、適切なマーケットデータは存在しません。

当社では、これらの状況から企業向け法人研修市場の中で支出カテゴリーの変化が起きているものと考えています。

   米国においては、法人研修市場のうち、ビジネスコーチングが占める割合は約36%(※3)と、日本の構成比の5倍以上です。この差は、米国のジョブ型雇用制度と能力給型報酬制度に対して、日本のメンバーシップ型雇用制度と年功序列型報酬制度の違いによりもたらされているものと考えております。

   国内においてもジョブ型雇用制度が話題になる等、米国型制度への転換が模索されており、これにより人材開発投資の内容が変化していると考えております。

   また、「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書 ~人材版伊藤レポート~」(経済産業省)にあるとおり、企業における人的資本への投資状況の開示が望まれる状況となっており、実効性のある人材開発投資が求められる状況になっています。

これらのニーズに対して、一人ひとりの能力を最大限に引き出すビジネスコーチングをという、単なる研修ではないサービスの有効性を訴求して、成果を測定できる形でサービス提供することが重要と考えています。

(※1)出典:矢野経済研究所「2021 企業向け研修サービス市場の実態と展望」

(※2)出典:矢野経済研究所「2021 企業向け研修サービス市場の実態と展望」から当社にてカテゴリー区分の上集計。

(※3)出典:IBISWorld刊「61143 Business Coaching in the US Industry Report」から当社にてカテゴリー区分の上集計。

 

(4)経営戦略等

当社は、現状は1対n型コーチングが収益の柱になっていますが、今後は、1対1型コーチングを伸長させてより多くの顧客の生産性向上に寄与したいと考えています。

人材開発投資の投資効果測定は非常に難しい課題です。1対n型で人材開発投資をしても、プログラム参加者の学習理解度、習得内容の利用機会の有無、習得内容を利用するための支援の有無等により、参加者の成果は一律ではなく、客観的な成果を把握するためには情報の収集と分析に多大な労力を必要とします。

一方で、1対1型コーチングでは、コーチがコーチング対象者(クライアント)に1対1で対応し、行動変容の定着化までフォローアップするので、成果につながりやすく、また成果の把握も容易になります。

米国型の雇用制度・報酬制度に向かって人材開発のニーズが全員一律のインプットから個人別成果実現の支援に向かって変化し、人的資本投資の開示が求められる時代においては、1対1型の人的資本投資がより重視されるようになると考えており、1対1型コーチングの伸長を想定した戦略を準備・実行することで顧客価値の最大化と収益の増加を実現することが可能になります。

 

① 高品質なコーチの確保・育成・維持

第一は、高品質のコーチを確保し、育成し、維持することが重要です。コーチの品質は「コーチ個人の実践知」×「コーチングスキルの習熟度」で決定すると考えています。コーチングスキルが有ってもコーチ個人の実践知が低いと、クライアントに対して適切な「気づき」をもたらすことが出来ません。コーチが実践知を持っていてもコーチングスキルが無いとティーチングとなってしまい、クライアントはコーチから指示された行動変容を行うことになって継続は難しくなります。これらを解決するための仕組みや環境を整えて高品質のコーチを確保することで、1対1型の成長を目指します。

 

②フォローアップの特化したサービスの開発と提供

1対n型コーチングにおいても、フォローアップを出来るだけ容易にするサービスを開発して提供することで、安定的な成長を目指します。

 

③コーチングのAI分析

コーチングや1on1ミーティングは1対1で実施されるために当事者以外にはブラックボックスとなっています。そのため、最適なコーチングになっているかどうかが感覚的にしか判断できないため、動画AI分析や会話音声AI解析により、効果的なコーチングとなるように支援するサービスも開発・販売を開始しており、これらの有効性を高めて成果につながるコーチングや1on1ミーティングの実現を目指していきます。

 

 

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

   当社の優先的に対処すべき事業上の課題は以下の通りであります。なお、優先的に対処すべき財務上の課題につきましては、長期借入金及び社債の約定返済・償還も順調に進み、営業キャッシュ・フローにより実質無借金状態となっていますので、現時点ではございません。

 

 人材を管理の対象とみなす「人的資源」ではなく、適切な「環境」を整備・提供すると価値の創造・増殖が起きる「人的資本」と捉えることが日本企業において強く求められつつあると考えております。

 2021年6月に行われたコーポレートガバナンス・コード改訂のポイントは「人的資本に対する投資の開示」でありますが、その本質は、「開示すること」それ自体にあるのではなく、個の自律・活性化に対して企業が本気で投資していくことで、個々人の総和である企業価値を大きく高めることにあると認識しております。

無形資産の中核をなす人的資本の価値を高めるためには、従来型の「十把一絡げ」の一律教育では限界をきたしており、社員のエンゲージメント向上や一人ひとりの魅力・想いを引き出したうえでの能力発揮が不可欠となっていると考えております。

そのためのもっとも効果的なアプローチがビジネスコーチングであり、個々の自発性を高め、生産性向上を加速させることで、大企業を中心とした顧客企業の企業価値向上に貢献してまいります。

 

a.   ビジネスコーチングのフェーズ1・2・3による営業展開の強化

ビジネスコーチングのサービスを3つのフェーズに区分した体系に基づくサービス提供により、より顧客が成果を得るためのステップが明確になり、長期的ご支援が可能な顧客が増加してまいりましたが、顧客と当社の十分な相互理解と信頼関係の確立が不可欠であるため、営業担当者の人員増強が必要であります。

当事業年度においては採用による社員数増加が計画未達となり、十分な営業活動量を確保することができませんでした。

そのため、採用方法や採用募集チャネル等の見直しを行い、計画通りの採用を実現することで人的資本を確保し、営業展開を強化してまいります。同時に、社内教育による営業担当者の専門知識レベルの向上、パートナーコーチとの連携の緊密化、サービス提供を支えるオペレーション担当者の効率化等を図り、より多くの顧客にライフタイムバリュー(顧客生涯価値)を最大化する体系的サービス提供を実現してまいります。

 

b.   ビジネスリーダーコーチング、ビジネスパーソンコーチングのサービス普及推進

当事業年度では、ビジネスリーダー・ビジネスパーソンコーチングを含む1対1型サービスのクライアント(コーチング対象者)数が前年同期比47%増の1,100名となりました。

当社では、個人の課題に合わせた人材育成手段としてのビジネスリーダー・ビジネスパーソンコーチングが、エンゲージメント向上に有効であることが認識され始めた結果であると考えており、今後もその普及に尽力してまいります。

 

c.   サービス提供力の増強と生産管理の強化

 コーチ等の増員によるサービス提供力の増強は、質と量の両面において当社の課題であります。当事業年度においてもサービス提供力の増強を実施し132名のパートナーコーチと契約をしております。今後もコンスタントにパートナーコーチを増員してサービス提供力を量と質の両面から増強を図ってまいります。

 

d.   ガバナンス体制の強化推進

当社は2022年10月に東京証券取引所グロース市場に上場し、コーポレートガバナンス報告書を提出しております。現状ではコーポレートガバナンス・コードの5つの基本原則にコンプライしている状況ですが、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けて、全原則への対応を推進してまいります。


 e.クラウドコーチングシステムの追加開発

 当社は、クラウドコーチングシステムを利用して、クライアントの行動目標設定、行動結果記録、振り返り記録、コーチの対話記録を管理していますが、この他にマイクロラーニングのために動画配信プラットフォームを、コーチングセッション予約のために予約管理システムを別々のシステムで運用しているためクライアントにとっては利便性が悪く、当社においては運用・管理コストが発生し、またこれらのデータを統合的に活用するためには3つのシステムのデータを統合する作業が必要となっています。

これらを統合的に管理するため、まずはクラウドコーチングシステムのフロント・エンドとしてポータル化した仕組みを持ち、クライアントの利便性向上と管理コストの削減を実現してまいります。

 

f.コーチングベース機能を持った本社設備

 当社は、2022年8月に虎ノ門のオフィスビルの賃貸契約を締結し、コーチングベースを持つ新本社としてのオフィス設計を行っております。2023年5月より新本社で執務を開始し、当社とパートナーコーチの相互理解を深め、コーチングサービスの品質向上を実現する運用をしてまいります。

 

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