研究開発活動

5【研究開発活動】

 当社グループにおける研究開発活動は、ケミカル事業においては、連結子会社の株式会社イチネンケミカルズの研究開発センターが主体となって、新商品開発を行っております。2022年3月末時点で研究開発センターは49名、新規事業開発部開発チームは3名、総勢52名のスタッフで構成されております。開発部門については、工業用薬品(燃料添加剤関連研究開発)部門、生産工場用ケミカル関連開発部門、一般消費者向け商品開発部門、表面処理関連開発部門、新規開発ケミカル製品関連部門、分析・試験関連部門の6部門でケミカル品の開発、改良、分析に注力しております。また、前連結会計年度は、製品開発のスピードアップを目指して、顧客、開発チーム、社内の他部門とのスムーズな連携体制の強化に取り組み定着させましたが、当連結会計年度は各部門を跨いだ若手を中心とするプロジェクトを立ち上げ、更なる製品開発のスピードアップ、他部門との連携体制の強化に注力いたしました。

 機械工具販売事業においては、連結子会社の株式会社イチネンTASCOの企画開発室技術課が主体となって、新製品開発を行っております。2022年3月末時点で企画開発室技術課は3名のスタッフで構成されております。また、新製品開発に当たり、必要に応じてグループ内外を問わず協力会社を活用しております。

 合成樹脂事業においては、連結子会社の株式会社イチネンジコーの第三事業部が主体となって、ガス検知器・セラミックヒーターの新製品開発を行っております。2022年3月末時点で第三事業部は5名のスタッフで構成されております。

 当社グループを取り巻く諸情勢は年々変化が激しく、社会情勢の変化に対応できる組織が求められている状況です。顧客ニーズに沿った短中期的開発テーマに重点を置きながら、将来を見据えた技術開発が急務と判断しており、中長期的視野での技術開発も検討すべきと考えております。将来の方向性を示すことが研究開発部門の課題であり、時代の要望に沿った研究開発活動を目指しております。

 当連結会計年度における研究開発費の総額は369百万円で、各セグメント別の研究開発活動の状況及び研究開発費は次のとおりであります。

 

(1)ケミカル事業

①工業用薬品(燃料添加剤関連研究開発)部門

<燃料添加剤>

 バイオマス火力に注力し複数の新規ケミカル製品にて成果を収めております。顧客のトラブル状況に合わせた薬品の提案により実績を上げながら、添加剤による効果をより詳細に解析し、さらに効果的な添加剤の開発に注力しております。当連結会計年度は前連結会計年度に市場投入いたしました従来型とは異なる使用方法による新燃料添加剤が売上に貢献いたしました。また、当連結会計年度はバイオマス火力向けの新燃料添加剤の開発に着手しており、翌連結会計年度には新燃料添加剤の市場投入を期待しております。

 

②生産工場用ケミカル関連開発部門

<メンテナンス用ケミカル品>

 当連結会計年度は前連結会計年度に市場投入いたしました不燃性のパーツクリーナーの売上が堅調に推移いたしました。また、植物由来原料を配合したパーツクリーナーの製品開発に着手し、翌連結会計年度には市場投入を予定しており、売上拡大を期待しております。脱炭素社会に向けて、環境配慮型の製品開発に力を入れており売上への貢献を目指してまいります。

<溶接ケミカル製品>

 当連結会計年度は新型電解研磨機(600W、1,000Wタイプ)向け高性能ケミカル製品のユーザー評価が良好で翌連結会計年度は売上拡大を期待しております。また、当連結会計年度には更に性能を向上させた大型電解研磨機(1,500Wタイプ)も市場投入し、高性能ケミカル製品との相乗効果により、更なる売上拡大を期待しております。また、当連結会計年度は半導体製造装置メーカーへの売上が拡大しており、昨今の半導体業界の状況から、今市場での更なる売上拡大を期待しております。

<自動車修理工場関係>

 修理工場向けの塩害ガードシリーズは当連結会計年度も順調に売上を伸ばしており、更なる拡充を行うべく、施工が簡易なオイルタイプ、ワックスタイプの開発に着手いたしました。翌連結会計年度には市場投入を予定しており、更なるブランド力の向上及び売上拡大を期待しております。また、前連結会計年度に市場投入いたしましたカーエアコン用エバポレーター専用の洗浄剤(泡タイプ)は当連結会計年度も売上が堅調に推移いたしました。当連結会計年度は新たに抗菌性を付与した霧タイプ、カーエアコンクリーナーの開発に成功しており、翌連結会計年度の売上への貢献を期待しております。

③一般消費者向け商品開発部門

<コンシューマー向け自動車用ケミカル>

 前連結会計年度に続き、営業部門と新商品開発に関するプロジェクトを継続し、市場調査を行いながら商品開発を行いました。顧客ニーズにマッチした製品開発を継続し、より顧客満足を図り、売上に貢献してまいります。当連結会計年度は前連結会計年度に市場投入いたしましたガラスコート剤製品群(リニューアル)が売上に貢献しており、更なる売上拡大を目指してガラスコートの企画限定品を市場投入いたしました。また、環境配慮型の製品(パウチタイプ)を製品化しており、翌連結会計年度以降に市場投入し、売上拡大を期待しております。植物由来原料の採用によるプラスチック使用量の削減への取り組みも開始しております。

 

④表面処理関連開発部門

<ケミカル関係>

 当連結会計年度は前連結会計年度にリニューアルした生産設備(品質安定化)を用いて生産を開始いたしました。品質の安定化が進み、安定供給が可能になり売上に貢献しております。

<表面処理関連部門>

 当連結会計年度は医療などの分野へ難密着素材のゴム、エラストマー用の機能性コーティングを施したサンプルの市場投入数を拡大し、社内及び顧客での性能評価を継続実施しております。翌連結会計年度は新たに定量処理システムを構築し、量産化に向けた体制構築を進めてまいります。

<抗菌関係>

 当連結会計年度も前連結会計年度同様に顧客で採用となった開発製品の抗菌剤を使った商品が売上に大きく貢献いたしました。関連する消臭・防臭剤製品に抗ウイルスや抗アレルギー性を付与した製品や抗ウイルス型の眼鏡曇り止め「クリンビューシリーズ」の製品化を終え、翌連結会計年度には市場投入を予定しており、売上に貢献することを期待しております。

 

⑤新規開発ケミカル関連部門

<新規ケミカル開発部>

 粘土膜を使った無機耐熱コーティングの開発については、当連結会計年度は電子材料分野での実用化への検討を継続し、翌連結会計年度は製品化を目指し検討を継続いたします。また、腐食対策としての保護コーティングに関しましては、一部実証実験を行っており良好な結果が得られております。翌連結会計年度は更なる用途開発を進めてまいります。プラスチック材料への環境型添加剤に関しましては、当連結会計年度に市場投入し売上に貢献しており、翌連結会計年度は更なる売上拡大を期待しております。また、当連結会計年度は再生プラスチックへの応用に着手しており、翌連結会計年度以降、今技術の展開を期待しております。

 なお、当連結会計年度に支出したケミカル事業に係る研究開発費は312百万円であります。

 

(2)機械工具販売事業

 空調・冷凍機器に関するサービスメンテナンス

 「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」が改正され、2020年4月1日から施行されたことにより、業務用エアコン・冷凍冷蔵機器を廃棄する際の規制の強化がされ、フロン類の大気中への排出は厳しく管理されております。

 フロン類が大気へ排出される要因の一つに、空調、冷蔵冷凍機器の設置時の施工不良による冷媒漏れがあります。施工不良にも様々な要因がありますが、空調機の室内機と室外機を銅管で接続する際のフレア加工不良もその一つです。フレア加工とは、銅管の管端をラッパ形状にする加工です。当連結会計年度に発売した新型電動フレアツールは、経験や知識に頼らず「誰もが簡単に、正確に、素早く、きれいなフレアを作ることができる」工具です。ルームエアコンであれば、1台設置するために4か所のフレア加工が必要です。従来からある手動式フレアツールでは、ねじを回す作業が作業者の手首の負担になり力もいるため、特に女性には大変な作業でした。また、従来の電動フレアツールにおいても、モーターやバッテリーの重さが作業者の負担となり、手動式、電動式に関わらず、フレア加工の仕上がりサイズは、一部作業者の経験値によって大きく左右され、場合によっては冷媒漏れの原因となっておりました。そこで、当連結会計年度に開発した新型電動フレアツールは、銅管セットの作業の手間を減らし、小型バッテリーでも十分な使用可能回数を確保して軽量化を図り、電子制御機能によって安定したフレア加工を可能にいたしました。銅管セットは、挟み込みクランプ方式を採用し、本体に挿入、レバーを握るだけの簡単3ステップとし、従来のねじを締め込む作業から、ばねの力で挟み込む作業に変えたことで、手間を減らし、レバーを握るだけで確実にロックできる構造も加え、銅管セットの時間を大幅に短縮できております。さらに、連結子会社の株式会社イチネンTASCOの従来品の電動フレアツールは、操作スイッチを押す時間により、コーンの前進する時間が左右され、クラッチが効くことによりある程度の寸法精度は確保されておりましたが、それでも加工した銅管の仕上がりにばらつきが発生する場合がありました。そこで新型電動フレアツールにおいては、ボタンをワンプッシュするだけでコーンが前進し、自動で加工を終了し、コーンの後退まで行う制御機能により、誰が作業しても簡単に綺麗で正確なフレア加工を可能いたしました。これにより、配管接続部の施工が原因による漏れの可能性を減らし、施工のやり直しの工数削減や、冷媒漏れによる地球温暖化を防ぐことに寄与いたします。手元を照らせるLEDライトや、20分で充電でき100回以上も加工可能なリチウムイオン電池などの付帯機能も追加し、2021年6月から販売いたしました。その販売実績は、当初予想を大幅に超え、一時生産が追いつかない程の好評をいただき、売上拡大に大きく貢献しております。その他にも、狭い場所でも取り回しのしやすいショートサイズアセチレンバーナーや、一般家庭のエアコンにも使用でき風向きを調整できるウィンドアジャスターなどの製品を市場投入し、翌連結会計年度も、小型冷媒回収装置や炭化水素用冷媒回収袋、消耗部材等にも力を入れ、多くの新製品の市場投入を計画しております。

 

 なお、当連結会計年度に支出した機械工具販売事業に係る研究開発費は0百万円であります。

 

(3)合成樹脂事業

 ガス検知器・セラミックヒーター

 ガス検知部では、顧客に安全・安心をご提供するガス検知器として、汎用製品をはじめ特定顧客向けのカスタム対応製品まで、多種多様なタイプの製品開発を行っております。当連結会計年度より顧客のご要望に応えるべく、IoTの活用や次世代の通信網を利用した「システム系ガス検知器」の開発を中長期的な視点で進めております。

 セラミックヒーターにおいても、半導体等の製造に使用される工業用ヒーターとして標準品及び顧客のご要望に応えたカスタム製品の開発を行っております。このように、臨機応変なカスタム対応可能な点が他メーカーにはない特色となっております。

 なお、当連結会計年度に支出した合成樹脂事業に係る研究開発費は55百万円であります。

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得