(1)経営方針
当社グループは、「基幹業務の高度な自動化を実現するソフトウェアを開発・販売することで社会に貢献する」社是のもと、「長期的かつ安定的な事業の継続・発展を目指した事業基盤の確立と企業体質の変革」を経営の基本方針としております。
新型コロナウイルス感染症の影響により、営業活動等へ制約を受ける可能性はありますが、現在テレワーク環境が整備され、在宅勤務やリモート環境により業務対応を行っており、開発活動等は通常通り対応可能となっております。したがって、基本的な経営方針・経営戦略等に関しては継続していくこととしております。
(2)中長期的な会社の経営戦略
会社の健全で持続的な成長を実現するため、次の重点施策に注力します。
① 主力事業の収益基盤の確立
1.クラウドビジネスの更なる広がり
PCAクラウド/on AWS を中心に、新しい働き方に呼応したテレワーク需要等の取り込みを、既存顧客はもとより潜在顧客にも広くリーチ・対応し、全面入替だけでなく部分導入・部分入替にも柔軟に対応します。
2.ストック型ビジネスモデルへの転換促進
PCAサブスクを中心に、オンプレ製品の買取販売(パッケージ型)から継続利用型サービスへの切り替えを促進し、オンプレユーザーにも最新製品(機能)・サービスを簡単、便利に継続利用できる環境を提供します。
3.デジタル・カスタマーサクセスの強化
デジタルチャネルを中心に、デジタルツールやデジタルコンテンツを活用し、増大するダイレクトニーズへの効果的な対応とカスタマーサクセス強化による導入契約率と利用継続率の向上を図ります。
② 新たなビジネスチャンスの創造
1.AIなどの要素技術の応用研究
基幹業務とその周辺業務の連携や入力作業の自動化の実現を目標に、AI、ブロックチェーンなど新たな要素技術の応用・活用を研究します。
2.新事業領域の発掘
応用研究活動から生まれたアイデア・シーズや、顧客接点強化から得られたニーズをもとに、顧客を起点とした新たなビジネス領域の発掘に取り組みます。
3.PCA Hubサービスの始動
改正電子帳簿保存法の対応など、帳票等のデジタル化を推進する周辺業務と基幹業務をサービス連携し、業務効率の向上を訴求するとともに、自社と他社との連携を強化し、新たな収益の柱に育成します。
③ 安全・安心でニーズを先取りしたモノづくりの強化
1.Digital
改正電子帳簿保存法や2023年10月施行のインボイス制度に的確に対応し、お客様環境の電子化・デジタル化による業務のDXを支援します。
2.Service
製品開発の企画設計・開発・検査を一貫した体制で実施し、開発工程の効率向上と、ユーザー起点の迅速なサービス開発と提供を実現します。(アジャイル・ UX、シフトレフト、フロントローディング)
3.Modern
開発体制を増強し、PCA Hubシリーズの拡充と基幹業務システム領域のモダン化を並行して実施します。
④ 高収益で持続可能な経営管理基盤の構築
1.DX推進基盤の構築・活用
新たに導入・構築した顧客管理基盤のCRM・SFAを活用し、顧客ニーズへの適時な対応や、事業活動の見える化により経営資源(リソース)配分を最適化し、高収益で効率的な事業活動を実現すべく社内DXを推進します。
2.ITガバナンス・セキュリティ対策の強化
当社サービスを継続的に安全に提供するため、ITガバナンス体制の強化とともに、情報漏洩等のセキュリティ事故を抑制するシステム導入や社員のセキュリティリテラシーの一層の向上策を実施します。
3.多様な人材が活躍可能な体制整備
年齢・学歴・性別等に関係なく、社業の発展や業務運営に貢献する人材を適正に評価し活躍できる環境・体制を整備することで、健全で持続可能な会社の成長を支えます。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための指標
当社グループが目標とする経営指標は、売上高、営業利益、売上高営業利益率を重要な指標として位置づけ、収益性を向上させるとともに、より高い成長性を確保することを目指します。また株主還元の指標として株主資本当期純利益率(ROE)、純資産配当率(DOE)の向上も目標としております。
10年以上の運用実績がある「PCAクラウド」は、19,000法人を達成するまでに成長いたしました。更に成長を加速させ、複数ユーザーの同時利用だけでなく、主に一人で利用する法人にも導入を広げることで、80,000法人の達成を目指します。
2022年度の達成目標は売上高129億円、営業利益11億円、売上高営業利益率8.5%、ROE3.8%、DOE1.5%としております。今後、ROEは安定的に10%以上、DOEは2.5%以上を目標としております。
(4)当社グループを取り巻く経営環境
<企業構造>
当社グループは、当社が会計、給与計算、販売管理、仕入管理などの基幹業務系のアプリケーションの開発・販売及び保守サポート業務を実施しております。子会社である株式会社ケーイーシーは製品等の導入指導やデータの移管・入力代行などのユースウェア業務を実施しております。また、子会社であるクロノス株式会社は当社製品等と連動する勤怠管理ソフトを開発・販売しております。当社グループでは、当社の給与計算ソフトとあわせてクロノス株式会社の勤怠管理ソフトを導入することで給与計算と勤怠管理を一元化し、顧客業務の効率化を図ってまいりました。そして2020年10月に子会社化した株式会社ドリームホップが提供するメンタルヘルスサービスを当社販売網でも拡販することで、クロノス株式会社と合わせてHR事業をさらに強化してまいります。
<市場環境、顧客基盤>
従来型アプリケーションの「オンプレミス」と、クラウド上でサービス提供する「PCAクラウド」の業務アプリケーションの市場のなかで、当社は従業員規模が20人から300人の中小・中堅企業を中心に事業展開しております。
業務アプリケーション市場の全体は、製品の普及と中小・中堅企業数の減少により、新規需要は減少し既存ユーザーの買替需要が中心となっております。したがって、製品の機能改善の提供のみではなく新たな観点での製品・サービスを他社に先駆けて提供することが重要となります。
1)従業員20人から50人以下の市場
当社顧客の多数がこの市場にあり、主に1台で動作するスタンドアロン型製品が導入されています。業務自体を会計事務所などに外部委託するケースや、IT投資自体を抑制する企業が増加傾向にあります。
一方では当該市場にはFinTech(フィンテック)対応を特徴とした低価格によるクラウドサービスを提供する事業者や、基幹業務の周辺サービスを提供する事業者が基幹業務のサービスも新たに提供する事業活動も増加してきております。
当社は価格競争ではなく、製品等の価格を維持する一方で、機能やサポートサービス、基幹業務周辺の業務を簡略化または自動化するサービスを充実させ長期利用の顧客を維持することにより安定的な収益維持を図っていく方針であります。また、当社の基幹業務製品の機能は充実しており、機能を限定したクラウドサービスの提供事業者とは、差別化が図れていると考えられます。
しかし、AIなどの新たなテクノロジーを活用し、入力業務を中心に簡略化または自動化が大幅に改善されて基幹業務サービスの市場環境が大きく変わるリスクもありますので、他の事業者の動向は注視しております。
2)従業員51人から300人の市場
上記1)以外の当社顧客はこの市場にあり、スタンドアロン型に加え複数台で動作するネットワーク型製品が多く導入されています。ハードウェアの管理を含めたシステム全体の低価格化へのニーズが高まる一方で、人材難や働き方改革が影響してシステムによる省力化や、業績向上につながるIT投資は増加傾向にあります。よって当該市場は変化しながら成長しております。
他社に先駆けてオンプレミス製品をクラウド上で展開するPCAクラウドを2008年5月から開始しており、この市場の顧客を中心に導入が進みました。
買取販売型のオンプレミス製品と比較して、PCAクラウドは顧客数が少ないながら、売上高では連結売上高の3割を超えて種類別では最大になるまで成長しました。そしてPCAクラウド on AWSのサービスを2021年4月に開始しました。一方、オンプレミス製品においては継続利用型のサブスクリプションサービスを2020年3月に開始しておりましたが、さらに基幹業務の周辺サービスであるPCA Hubシリーズ(クラウド型サービス)の第一弾としてPCA Hub eDOCの提供を2022年3月に開始しております。今後もストックビジネスの柱となるPCAクラウド、オンプレミス版のサブスクリプションサービス及びPCA Hubシリーズを総合的に展開しさらなる成長を目指します。
<競争優位性>
オンプレミスの製品はまさに成熟期にあります。機能差による差別化が困難な状態で、後継製品や新製品を投入しても移行が進まないのが各社の現状であります。当社では、APIにより他システムとの連携が安価・短期間で構築できること、PCA製品の前後の工程を補完する他社ソリューションと連携すること、子会社勤怠製品と一体提案すること、及び顧客の相談への丁寧な対応やサポート情報の発信など、製品周辺のサービスを強化することで競争優位性を確保しております。
一方、オンプレミス製品と同等の機能を搭載したPCAクラウドは、他社に先駆けて2008年5月から提供しています。10年以上の運用実績によるノウハウの蓄積、オンプレミスと同数のサービスラインアップの整備、財務報告にかかる適切性・有効性の保証報告書など各種認証の取得や、他の業務システムと連携するPCAクラウドWeb-APIの整備及びPCAクラウド on AWSのサービス開始(2021年4月)などで競争優位性を確保しております。
競合他社から同様のクラウドサービスの提供や、周辺サービス事業者による基幹業務サービスの提供が開始されました。脅威ではあるものの、顧客視点では選択肢が増えることとなり、クラウド市場の拡大と活性化が期待できます。しかし他社の追随が想定されますので、応答速度や機能の改善と、安全性、可用性などの強化を図り、競争優位性の維持、向上を今後も努めてまいります。
<販売網>
当社は代理店販売を中心に事業を展開してまいりました。
現在、当社が営む業務アプリケーションの市場(特にクラウドサービス)においてはネット販売が顕著に拡大しております。したがって、当社もネット販売を新たな販売網と位置づけ、当社ウェブサイトへの誘導、魅力あるコンテンツの提供、閲覧者の行動分析と提案などを強化し、案件獲得を強化してまいります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
1)オンプレミス市場の停滞
当社製品等の業務アプリケーションは、前述のとおり買替需要が中心で、新製品投入の効果も希薄化しております。
「長期的かつ安定的な事業の継続・発展を目指した事業基盤の確立」のため、保守サービスの充実に努め、高い更新率を実現し安定した収入を確保しております。この保守サービスにバージョンアップ(後継製品への有料交換)を一体化し、月額利用料の支払いでアプリケーションが利用できる「サブスクリプション」モデルとして新たにサービス提供を開始しました。製品ライセンス料が導入時に不要で、安価で毎月一定額の支払いだけで最新のアプリケーションが利用可能となります。特に高額製品のライセンス料が不要となることで、従業員50人以下の市場でも導入が可能となり、オンプレミス市場の停滞の改善につなげていきます。
2)従業員301名以上の市場における顧客獲得
当市場は各社から有力製品が提供されていて、厳しい競争となっておりますが、その中での事業拡大が高収益の「企業体質への変革」となりますので、顧客獲得とその維持が重要な課題となります。
PCAクラウドは、対象企業の一部門、事業拠点やグループ企業への導入が進んでいます。また対象企業をターゲットにした「hyper」シリーズを投入し、顧客の獲得を図るように事業展開しております。一方、子会社の提供する勤怠管理系のソリューションは当市場での導入が続いており、勤怠管理-給与計算-人事管理が一体導入となるように進め、また2020年10月に子会社化した株式会社ドリームホップが提供するメンタルヘルスサービスを当社販売網でも拡販し、HR事業としてグループ連携による顧客獲得も進めております。このように製品の機能改善の提供のみではなく新たな観点での製品・サービスを他社に先駆けて提供することで、顧客顧客の維持に努めてまいります。
3)低価格サービスを展開する事業者への対応
近年クラウド上で機能全体は絞り込み、低価格にてサービスを提供する事業者が業績を伸ばしつつあります。
現状では機能差、価格帯と、顧客との関係性強化で棲み分けができていて、影響は限定的であります。また、プログラムの構造上の制限により、当社と同等の機能を搭載すると十分な処理速度が確保されないことや、販売・仕入系の複雑な内部処理が必要なサービスは提供困難とされています(PCAクラウドはこれを回避するため特殊な技法を採用しています)。
しかし、業務アプリケーションに対する顧客ニーズが、「基本機能さえあれば十分」と大きく変遷した場合、低価格サービスへの移行が加速し当社顧客の喪失となるリスクが将来的に存在します。
当社としては、サービス単体での価格差競争には応じず、サービス群、基幹業務サービスの前後のソリューション、他システムとの連携や親切丁寧な顧客サポートなどサービス全体での費用対効果を向上し、差別化を実施します。これらにより顧客数の維持、拡大を図り、長期的に安定した事業基盤を築きます。
4)新技術への対応
当社はクラウドサービスにいち早く対応し、事業化に成功しました。これと同様にAI、ビッグデータ、RPA、FinTech、電子マネーやブロックチェーンなど、新技術を活用した新たなサービスを提供することが、対処すべき課題と認識しております。PCAクラウドに続く新サービスの成功で、将来の発展を目指した事業基盤の確立につなげます。
当社は経費精算、勤怠管理、ワークフローや電子明細書の配信などの周辺業務に関して、当社製品と連携する他社ソフト(ソリューション製品)の販売を行っています。
ソリューション製品の需要は拡大しており、当社の製品ラインナップにない機能については、当社製品とソリューション製品との連携を強化し新技術への対応を図っていきます。そして、データ入力の自動化や、業績、損失などの予測、各種照合による真偽の判定などを可能とし、高度な自動化の実現を目指します。
5)既存顧客への対応の強化
前述の通り基幹業務系のアプリケーションの市場は飽和状態であり、新規顧客の獲得は難しく、PCの入れ替えや基幹業務システムのリース契約期間の満了を契機に他社システムへの移行を検討する事案が増えております。当社では当社製品のより効果的な活用方法や未導入製品との連携による自動化の実現など、顧客のビジネスがより円滑になり成果が上がることを目的に、2021年4月にカスタマーサクセス部を設置しました。顧客の成功体験により当社製品の継続利用の促進や他社製品への移行の抑制を図ってまいります。
お知らせ