文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「大衆に健全、かつ明朗な娯楽を提供する」ことを創業の理念とし、「Sound of Your Life ~あなたの人生に豊かな響きを~」を企業理念として掲げ、基幹事業である映像関連事業、飲食関連事業、不動産関連事業を通じて、社会に貢献していくことを経営の基本方針としております。
(2)経営戦略等
当社グループを取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染症の拡大や地政学的リスクの高まりによる原材料価格の高騰、供給面での制約が懸念されるなど、先行きは不透明な状況が続いております。こうした中、人々の生活スタイルや価値観の変化のスピードは以前に増して早くなっているといえます。
当社グループは、このような事業環境下で企業価値を向上させるために、これまでのような他社が開発した商品やサービス、あるいは過去に創造したものの販売や、店舗展開に依存した事業構造から、消費者ニーズに添った商品やサービスを自社で開発、創造する事業構造へと転換することが必要であると考えております。
そこで当社グループは、中期的な経営方針を「プロデュースカンパニーへの革新」と定め、経営に取組んでまいります。
また、プロデュースカンパニーへの革新のため、当社グループでは資産をそれほど所有せずに、人的資本の充実により売上及び収益の伸長を見込む「ヒューマンリソース型ビジネス」を中核事業とし、事業を支える社員の「人財化」に一層取組んでまいります。
当社グループの「人財化」方針
① 社員一人一人が「創造者」としての意識を高め、政策提案型の仕事スタイルに変革する。
② 既存顧客を満足させることに留まらず、インサイト(消費者が認識していないニーズ)を探求し、市場認知されるレベルの商品やサービスを創造するといった高い目標に挑戦し続ける。
③ トライ&エラーを高質な教育の機会と捉え、充実した社員教育を推進する。
(3)経営環境
当社グループを取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染拡大により、運営する映画館や飲食店では営業時間短縮や酒類販売の制限を余儀なくされるなど多大な影響を受けました。そのような中で、映像関連事業においては配信も視野に入れた映画制作及び字幕・吹替制作などの映像編集ビジネスの拡大や、飲食関連事業においては所有するセントラルキッチンを活かした中食・卸売ビジネスの拡大に努めてまいりました。今後はワクチン接種などの感染予防対策が進む中で景気の持ち直しが期待されますが、地政学的リスクの高まりによる原材料価格の高騰、供給面での制約、金融資本市場の変動等による下振れリスクが懸念されるなど先行きは不透明な状況となっております。
各セグメントの経営環境は以下のとおりです。
① 映像関連事業
国内の映画市場は2019年に過去最高の2,611億円の興行収入を記録し、緩やかながら堅調に推移しておりましたが、2020年に新型コロナウイルスが感染拡大して以降、映画館は休業や時短営業を余儀なくされてまいりました。その結果、2020年の興行収入が1,432億円、2021年の興行収入は1,618億円と、2021年は僅かながら回復を見せたものの2019年とは約1,000億円乖離しており、コロナ以前の水準には戻っておらず、映画の市場は未だ回復の途上にあります。一方、作品が相次いで公開中止もしくは延期されていた状況からは脱し始めており、順調な公開が見込まれております。作品の供給が滞りなく進むことを前提として、洋画のヒット本数やシニア層及びファミリー層の回復が今後期待されます。なお、この2年間で動画配信市場が大きく拡大し、今後も成長が見込まれております。映画館への客足への影響以外に、国内配給作品においても公開スタイルに変革を及ぼす可能性も考えられるため、動画配信プラットフォーム各社の動向は注視していく必要があります。
国内の広告市場は、総広告費6兆7千億円で2020年比110.4%となり、大きく回復いたしました。回復傾向にあるマスコミ4媒体の広告費に加え、引き続きインターネット広告が好調で、インターネット広告費がマスコミ4媒体の広告費を初めて上回ったことが市場を大きく牽引しました。更に、東京2020オリンピック・パラリンピックが広告需要を後押ししました。プロモーションメディア広告費は前年比97.9%に留まりましたが、巣ごもり・在宅需要を取り込んだ折り込みやDMの分野では増加、屋外広告ではインパクトのあるデジタルサイネージの活用が進みました。2022年の広告市場は、インターネット広告が更に伸長することが見込まれており、個人消費の揺り戻しも期待されているため、プラス成長となる見通しです。
当社グループの映画館は首都圏及び関西の大都市圏に位置しており、独立系映画館ではトップのシェアとなります。グループの映画館所有を背景に、映画制作配給事業は、アニメシリーズを数本ストックし全国の映画館に販売網を広げております。ソリューション事業は、映画館CMを足掛かりとした屋外広告以外に、デジタル広告も手掛け売上獲得に努めております。
② 飲食関連事業
国内の外食市場は、2020年比98.6%、2019年比83.2%と市場規模が縮小しました。2021年は時短営業の要請等が10月まで続き、特に規制に酒類提供の制限や禁止が加わったことで、「パブレストラン/居酒屋」業態の市場は、2020年比57.8%、2019年比で27.2%と縮小がより強まった年となりました。規制解除後も夜の売上が戻らず、厳しい状況が継続しました。一方、引き続きテイクアウト・デリバリー需要に支えられた「ファーストフード」業態は、2020年比104.8%と好調を維持しました。2022年は連続して前年同月を上回っているものの、夜の需要の回復スピードは鈍く、「パブレストラン/居酒屋」業態の回復には時間を要するものと考えられます。
中食市場は、前年比103%で10兆1千億円となり、2年ぶりにプラス成長を記録しました。また、総合スーパーや百貨店等、全業態で前年を上回りました。人流の回復に合わせた販売施策の他、新型コロナウイルス収束後を見据えた店舗数の維持や別業態にするなど様々な取組みが奏功したものと考えられます。
新型コロナウイルス感染拡大を巡る各種要請が解除されたことは外食市場にとっては追い風ですが、原材料費が高騰しているため企業には厳しい状況が継続すると見込まれます。
当社グループの和・洋のバル業態の店舗は、立地毎にオフィスワーカーの需要、テイクアウト・デリバリーの需要等を見極め、商品やサービスを柔軟に変更しながら市場の変化に対応しております。札幌地区を中心に展開する串焼き業態は、店内飲食売上の回復を優先課題としながら、テイクアウト商品の拡充や新たな業態及び販売手法の開拓、地方での店舗開発への協力、卸売事業の発展に努めております。
③ 不動産関連事業
当社グループが主に不動産賃貸事業を展開している都内では、新型コロナウイルス感染拡大後、オフィスビルの空室率が上昇し横這いの状態が続いているため、募集賃料は下落、募集面積も横這いの状況です。国内の経済活動は回復傾向にありますが、2023年にかけてオフィスビルの大量供給が予定されております。在宅・テレワークが浸透してきた現状においては、オフィスを縮小する企業もあることから、供給が過剰となる可能性が指摘されております。
当社グループは、主に首都圏で中古マンションの再生販売事業を行っております。首都圏の中古マンション市場は活況を呈しており、成約件数は2年振りに前年を上回り6年連続で37,000件を維持しました。このように需要は高いものの在庫となる新規登録物件数は漸減しているため、1㎡当たりの成約単価が9年連続で上昇しており、同様に成約物件価格も9年連測で上昇しております。その一方で、成約物件の面積は縮小、築年数は年々上がっており築古物件が増加の傾向にあります。高まる需要に備え、よりよい新規登録物件を確保することが中古マンションにおいては重要な課題となっております。また、世界的に影響を及ぼしているウッドショックや半導体不足による住宅設備機器の供給遅延など、工期に大きな影響を及ぼす問題もあり、物件の仕入・販路だけではなく安定的納品に至るコスト及びスケジュール管理が肝要な状況となっております。
当社グループの所有する不動産物件におきましては、働き方の変化に伴い、より快適なオフィス空間や質の高いサービスが求められるものと認識し、施設の保全に努めてまいります。中古マンション再生販売事業においては、厳選した仕入を継続しながら住居やワークスペースをより快適な空間にしたいという要望を的確に捉えリフォームに反映してまいります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社の従来型ビジネスであります映画興行事業、飲食事業における店舗経営といった「固定資産所有型ビジネス」においては業績回復に努めてまいります。一方で、資産を所有せず、人的資本をより充実させることで売上及び収益の伸長が見込まれる「ヒューマンリソース型ビジネス」につきましては、以下の政策に優先して取組んでまいります。
① 映画を中心とした「コンテンツ」への積極投資による映画制作配給事業の収益拡大
・映画制作配給事業においては、手掛ける作品の興行規模の拡大を図り、年間興行収入30億円を安定的に達成することを目指します。
・映画館を所有していることを背景に、映画だけでなく様々なジャンルへの「コンテンツ」投資を行い、配信などの二次利用収入拡大のライツビジネスを強化してまいります。
・映画の出資や配給に付随して、シネアド・デジタルサイネージといった屋外広告等の周辺ビジネスを強化してまいります。
② 中古マンション再生販売事業におけるエリア拡大
・中古マンション再生販売事業においては、従来の仲介会社を通じた仕入に加えて、Webや自社の映画館や飲食店等を活用した個人からの直接仕入れに取組み、仕入件数の増加につなげています。このノウハウを更に強固なものにしながら、仕入販売エリアを拡大し競争力を強化してまいります。
・個人向けのワンストップサービス「リノまま」ブランドによる品質に拘った商品づくりを一層高めてまいります。
③ 飲食事業における中食や卸売りビジネスの強化
・飲食事業においては、所有するセントラルキッチンを活かした、中食、卸売ビジネスの強化を図り、既存資源の有効活用による収益拡大を推進してまいります。
④ ヒューマンリソース型ビジネス拡大のスピードアップ
・それぞれの事業拡大をより迅速かつ着実なものにすることを目的として、他社とのアライアンスやM&A、資本提携などを積極的に進めてまいります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは特定の指標を中期的な経営目標としておりません。主要事業であります映画興行事業と映画制作配給事業は特に予想と実績の差が大きいことから、年度ごとの経営政策の進捗度を踏まえて設定する単年度目標を着実に達成していくことが第一と認識しております。
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