当連結会計年度における当社グループ(当社および連結子会社等)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて42,572百万円増加し、218,455百万円となりました。このうち流動資産につきましては、「受取手形、売掛金及び契約資産」や「現金及び預金」が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べて30,459百万円増加し、150,990百万円となりました。固定資産につきましては、12,112百万円増加し、67,465百万円となりました。主な要因として、保有上場株式の時価評価が増加し「投資有価証券」が増加したことや、持分法による投資利益が大幅に増加し「関係会社株式」が増加したことなどであります。
負債の部につきましては、「転換社債型新株予約権付社債」や「買掛金」が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べて14,208百万円増加し、97,575百万円となりました。
純資産の部につきましては、28,363百万円増加し、120,880百万円となり、自己資本比率は51.7%となりました。
(2) 経営成績の分析
「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用しております。この結果、前連結会計年度と収益の会計処理が異なることから、以下の経営成績に関する説明において増減額および前期比(%)を記載せずに説明しております。
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により依然として厳しい状況が続いておりましたが、ワクチン接種の進展や政府・自治体の諸施策の効果などにより新規感染者が徐々に減少し、緊急事態宣言解除後には段階的な経済活動の再開により一部で持ち直しの動きがみられました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の動向に加え、物価上昇圧力の高まり、ウクライナ情勢の緊迫化による影響など、依然として先行きは不透明な状況が続いております。
当社グループが展開するサービスを取り巻く環境は、引き続き、業務の効率化やコスト競争力の強化、売上拡大などに繋がるアウトソーシングサービスに対する底堅い需要に加え、コロナ禍において、DXの推進やECをはじめとする非接触販売チャネルの拡大、テレワーク・BCP対策などに対応するサービスへのニーズが高まっています。
このような状況の中、当社グループは、引き続き、デジタルトランスフォーメーションパートナーとして企業の経営、事業の変革を支援するDECサービス・BPOサービスの積極的な展開に加え、当社グループが持つ大規模な業務実行能力を活かし、社会インフラとして、コロナ禍で政府・自治体・民間企業が推進する諸政策に関連する業務支援を積極的に展開し、受注の増加に繋げました。海外市場においても、新たなサービスの展開やEC・フードデリバリーなどコロナ禍で拡大している産業を中心にサービスを積極的に展開しました。また、収益面においては、受注業務の採算性改善や高収益案件の獲得などにより収益性が改善しました。一方で、今後の事業成長に向けた取り組みとして、国内外におけるサービスの競争力強化や、加速する官民でのデジタルトランスフォーメーション(DX)需要に対応していくためのサービスの創出・展開、組織体制の強化などに取り組みました。
お客様企業と顧客の接点となる、マーケティング・販売・顧客コミュニケ-ションをワンストップでサポートするDECサービス事業領域では、官民のDX支援に向けたサービスの拡充や組織体制の強化を図りました。
DECサービスの拡充に向けた取り組みでは、LINE公式アカウント向け100%活用診断サービス、国内初となるLINE AiCallを標準装備したコンタクトセンターサービスなど、デジタルテクノロジーを活用したサービスの提供を開始しました。また、在宅コンタクトセンターサービスのさらなる普及を目指し、在宅CC(コンタクトセンター)サポートデスクを本格稼働しました。さらに、新型コロナワクチン接種証明書の交付申請書を事前にオンラインで作成できるチャットボットサービス「DEC Bot for Government」や、LINEを活用したDXツール「KANAMETO(カナメト)」の地方自治体への提供を推進するなど、公共向けサービスの展開にも注力しました。
組織体制の強化に向けた取り組みでは、デジタルマーケティング・EC・コンタクトセンター(DEC)サービスの連携をさらに強化し、複数チャネルの統合サービス提供を推進するための組織として、DEC統括配下にDX推進本部を新設しました。
お客様企業内の業務プロセスを、デジタル技術の活用により、シンプル・スピーディかつ正確に行い運用を最適化するBPOサービス事業領域では、コスト最適化に繋がるサービスの拡充、競争力強化に向けた品質強化を図りました。
BPOサービスの拡充に向けた取り組みでは、単一の統合クラウドプラットフォーム上で、デジタルワークフローソリューションを提供するServiceNow, Inc.と、セールスおよびサービスパートナー契約を締結しました。当社が提供する幅広いBPOサービスの業務基盤にServiceNow, Inc.が提供するプラットフォームを活用することで、サービス戦略からオペレーションまでITに関わる業務をより最適化された形で提供し、ITに関するROI(投資利益率)の最大化を支援します。また、B2B専用AIチャットボット運用サービス「ビジネスサポートAIサービス」の提供を開始しました。リアルタイムチューニングを行う専任者をセットにし、問い合わせ対応の工数をチャットボットで削減することで、リモートワークにより増加した社内手続きや制度に関する問い合わせ対応を支援します。
品質強化に向けた取り組みでは、BSIグループジャパン(英国規格協会)からISO 19650-1およびISO 19650-2に基づく「意匠設計のためのBSI BIM Design & Construction Verification(検証)」 の認証を取得しました。BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)を含めたアウトソーシング業界においては日本で初の認証取得となります。ISO19650は、BIM(Building Information Modeling)を基盤とした設計から建設、保守、廃棄まで、建設資産のライフサイクル全体にわたる情報マネジメントを行うための業務プロセスを示した国際規格です。
引き続き当社グループは、DECサービスとBPOサービスをシームレスに繋ぎ、顧客中心のデジタル化を支援していく、お客様企業のよきデジタルトランスフォーメーションパートナーに向けた取り組みを強化していきます。
海外においては、アジアを中心とした各ローカル市場での提供サービスの拡充および体制の強化を図りました。まず韓国では、韓国企業の「楽天市場」出店や店舗運営を支援する「Global E-Commerce Service」を提供開始しました。また、新たに3つのオペレーション拠点を開設し、韓国独立系最大手のBPO企業として14拠点・約5,500席の規模でアウトソーシングサービスを展開できる体制に拡充しています。中国では、当社の100%子会社である上海特思尓大宇宙商務咨詢有限公司(トランスコスモスチャイナ)が中国版TikTok(抖音/Douyin)上でのEC店舗の開設・運営サポートと私域(プライベートドメイン)マーケティングサービスを提供開始しました。また、新たに中国西南地域初となるオペレーション拠点を開設しました。東南アジアでは、まずシンガポールに、ASEAN向けの営業体制と当社グループにおけるグローバルでの開発体制を強化しました。また、ベトナム、フィリピン、タイ、マレーシア、インドネシアにおいて、それぞれ新たなオペレーション拠点を開設しました。特に、タイ、マレーシアにおいては、複数言語に対応したサービスが提供できる体制を整備しています。その他、グローバルな越境ECプラットフォームを提供するイスラエルのGlobal-e(Nasdaq: GLBE)と提携し、越境ECの支援体制を強化しました。これにより、世界の200以上の国と地域で日本の小売業者やブランドの越境ECビジネスを支援していきます。
こうした取り組みにより、現在では、海外27の国と地域、102拠点(2022年3月末現在)でサービスを提供できる体制が確立されており、今後も現地企業のほか、現地に進出する多くのお客様企業の売上拡大・コスト最適化を支援するサービスを幅広く提供していきます。
以上の結果、当期の連結業績は、売上高354,085百万円(前期336,405百万円)となりました。利益につきましては、売上高の増加および収益性の改善などにより、営業利益は25,846百万円(前期17,752百万円)、経常利益は28,902百万円(前期18,012百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は21,488百万円(前期10,022百万円)となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
(単体サービス)
当社におけるアウトソーシングサービスの需要拡大などにより、売上高は238,812百万円(前期240,763百万円)となり、セグメント利益は、受注の増加に加えて案件の採算性改善などにより、17,839百万円(前期11,237百万円)となりました。
(国内関係会社)
国内関係会社につきましては、上場子会社やBPOサービス事業子会社などの受注が好調に推移したことなどにより、売上高は40,129百万円(前期39,483百万円)となり、セグメント利益は、一部の上場子会社やBPOサービス事業子会社の利益増加などにより3,687百万円(前期3,603百万円)となりました。
(海外関係会社)
海外関係会社につきましては、韓国・中国・東南アジア子会社における受注増加などにより、売上高は86,498百万円(前期69,105百万円)となり、セグメント利益は、韓国・東南アジア子会社における収益性改善などにより4,342百万円(前期2,914百万円)となりました。
なお、セグメント利益につきましては、連結損益計算書における営業利益をベースにしております。
収益認識会計基準等を当連結会計年度の期首から適用したため、主な影響として、代理人として行われる取引について従来売上高と売上原価を総額で表示していたものを、純額表示に変更しております。下記ご参考として、前期の売上高について、代理人として行われる取引を総額表示から純額表示に組み替えた数値で記載しております。
(単位:百万円)
(重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定)
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成にあたっては、期末日における資産・負債の金額および報告期間における収益・費用の金額に影響する見積り、判断および仮定を使用する必要があります。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(今後の見通し)
2023年3月期については、引き続き、お客様企業の売上拡大・コスト最適化といった底堅いニーズに加えて、コロナ禍で変化したお客様企業の課題を的確に捉え、より適合したサービスの創出に注力していきます。さらにアジア市場を中心とした海外での事業展開を加速させ、お客様企業の経営、事業の変革を支援するDECサービス・BPOサービスのグローバル展開を推進し、当期実績を上回る業績を確保することを目指します。
なお、当社グループの事業は、あらゆる業種・業界のお客様との取引で成り立っており、変化の激しい経済環境の中、短期的な視点で企業活動の動向を見極めることは大変困難であります。よって、当社グループの2023年3月期連結業績予想については、合理的な算定ができないため記載しておりません。
また、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が長期化することで、当社グループのオペレーションセンターの閉鎖・縮小、さらなる企業活動の自粛・制限に伴うサービスの需給バランスの崩れなどによって、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(生産、受注及び販売の状況)
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は外部顧客に対する生産に基づくものであります。
2 金額は販売価格で表示しております。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は外部顧客に対する受注に基づくものであります。
2 金額は販売価格で表示しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は外部顧客に対する売上高に基づくものであります。
2 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。)等を当連結会計年度の期首から適用しているため、前連結会計年度と収益の会計処理が異なることから、前年同期比(%)を「―」としております。
(3) キャッシュ・フローの状況の分析
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ55百万円収入が増加し、15,770百万円の収入となりました。これは、増加要因として「税金等調整前当期純利益」が大幅に増加したこと、減少要因として、売上債権が増加していることや法人税等の支払額が増加していることであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ2,178百万円支出が減少し、6,223百万円の支出となりました。この主な要因は、「投資有価証券の売却による収入」が増加したことや「有形固定資産の取得による支出」が減少したことによるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、当連結会計年度において2,516百万円収入が減少し、4,218百万円の収入となりました。増加要因としては、「転換社債型新株予約権付社債の発行による収入」が増加したこと、「転換社債型新株予約権付社債の償還による支出」が減少したことであります。減少要因としては、「長期借入れによる収入」や「子会社の自己株式の処分による収入」が減少したことや「配当金の支払額」が増加したことによるものであります。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べて14,784百万円増加し、63,858百万円となりました。
資本の財源および資金の流動性については、下記のとおりとしております。
① 資金需要
当社グループの資金需要の主なものは、運転資金需要やセンター拡張等の設備投資のほか、業務または資本提携等、事業推進上の要請に基づく株式投資等であります。
② 財務政策
当社グループは、営業活動により得られる資金を、運転資金や設備投資資金、事業開発投資資金に充当していくことを基本としておりますが、状況に応じて、銀行借入や社債、株式発行など、その時点で最適と思われる手法で資金調達を行っていく考えであります。
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