業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

 当連結会計年度における観光業界は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、断続的に発出される緊急事態宣言に伴い宿泊や飲食等の自粛が継続する厳しい事業環境が続きました。緊急事態宣言が解除された2021年10月以降は回復の兆しが見られたものの、同年12月に入ると新たな変異株の世界的な流行を受け、国内でも感染拡大が懸念されるなど再び先行きが不透明な状況となりました。
 このような環境の中、当社グループでは、独自に制定した「環境衛生方針」に沿ってお客様と従業員の安心・安全を最優先に営業を継続してまいりました。同時に、長期化するコロナ禍の影響により顕在化した課題に対処するため、以下の3点を主要戦略とした「事業計画」を策定し、取り組んでまいりました。
  Ⅰ.事業ポートフォリオの見直し
  Ⅱ.構造改革の推進
  Ⅲ.経営管理体制の強化
 特に「事業計画」の中核である構造改革の推進では、早期希望退職をはじめとする労務費対策のほか、外注業務の内製化や賃料減額交渉等により営業固定費の削減を進めました。

 

事業計画における主要戦略の進捗状況

Ⅰ.構造改革の推進

・役員報酬の減額、従業員賞与の不支給、従業員給与の減額(~2021年8月)、

 早期希望退職(2021年3月)、委託業務の内製化等による労務費対策を実施

・料飲店舗等の整理・集約により不採算事業を縮小

・賃料減額交渉等、費用削減による営業固定費の削減

Ⅱ.事業ポートフォリオの見直し

・WHGの事業運営体制の変更、契約体系の見直し、フランチャイズ展開の強化

・箱根小涌園再開発における「箱根ホテル小涌園」建設着工(2023年7月開業予定)

・2022年11月に開業70周年を迎える「ホテル椿山荘東京」において 、庭園の魅力を最大限に活かしたプロジェクトを実施

Ⅲ.経営管理体制の強化

・施策進捗の管理ツールと体制の再整備による管理強化

 

 

 また、喫緊の課題であった財務状況改善のために、太閤園の土地・建物を含む資産売却および政府系金融機関である株式会社日本政策投資銀行の出資により組成されたDBJ飲食・宿泊支援ファンド投資事業有限責任組合に対するA種優先株式発行によって資本・資金を調達すると同時に、成長投資や構造改革の原資を確保いたしました。 
 これらの結果、当社グループ全体の売上高は前期比1,785百万円増収の28,433百万円、営業損失は前期比4,789百万円改善の15,822百万円となり、6.7%の増収に対し、20%を超える営業赤字縮小となりました。また、実質の前期比(2020年は営業休止中の営業固定費を特別損失に振り替えているため、振替前の実績値との比較)では34%の営業赤字縮小となっております。経常損失は前期比4,388百万円改善の16,542百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、資産売却等による特別利益を計上した結果、前期比35,103百万円増益の12,675百万円となりました。

 

 

当連結会計年度の業績の概要およびセグメント別の営業概況は以下のとおりです。

 

 

当連結会計年度の業績の概要                          (単位:百万円)

 

当連結会計年度

前期比

増減率

売上高

28,433

1,785

6.7%

営業損失(△)

△15,822

4,789

経常損失(△)

△16,542

4,388

親会社株主に帰属する当期純利益

12,675

35,103

 

 

セグメント別売上高・営業利益                               (単位:百万円)

 

売上高

営業損失(△)

実績

前期比

実績

前期比

WHG事業

10,434

78

△12,095

1,574

ラグジュアリー&バンケット事業

12,441

2,544

△1,867

2,849

リゾート事業

3,749

△471

△1,126

△356

その他(調整額含む)

1,809

△366

△733

721

合計

28,433

1,785

△15,822

4,789

 

(注)調整額は、セグメント間取引消去および各セグメントに配分していない全社費用です。

 

(WHG事業)

 WHG事業では、長期滞在やテレワーク、入国・帰国時の一時宿泊利用(レジデンストラック)等の新しいニーズの獲得に取り組んでまいりましたが、インバウンド需要消失の影響をカバーするには至りませんでした。一方で、販売・予約業務の集約による効率化およびコスト削減を実施した結果、実質の前期比(2020年は営業休止中の営業固定費を特別損失に振り替えているため、振替前の実績値との比較)では営業赤字を約19%(28億円)縮小したほか、7月および8月には東京2020オリンピック・パラリンピック関連利用を取り込み、東京都内事業所の客室稼働率が向上いたしました。加えて、国や自治体の要請を受け、「横浜伊勢佐木町ワシントンホテル」「東京ベイ有明ワシントンホテル」「ホテルグレイスリー新宿」の3ホテルを宿泊療養施設として提供し、地域医療の負担軽減に協力してまいりました。7月30日には「ホテルタビノス京都」、9月14日には「ホテルグレイスリー台北」を新規開業し、また、フランチャイズホテルとして12月に「関西エアポートワシントンホテル」の営業を開始し、同じエリアに「関空泉大津ワシントンホテル」が新たに加わりました。
 これらの結果、当セグメントの売上高は前期比で78百万円増収の10,434百万円、営業損失は1,574百万円改善の12,095百万円となりました。

 

(ラグジュアリー&バンケット事業)

 ラグジュアリー&バンケット事業では、2022年11月に開業70周年を迎える「ホテル椿山荘東京」において庭園の魅力を最大限に活かしたプロジェクトを実施し、「東京雲海」や「森のオーロラ」等一年を通して様々な景色を楽しむことができる演出により付加価値向上に努めました。これらの商品展開により、客室単価が向上したことに加え、婚礼実施件数も前期比で増加いたしました。また、ゴルフ部門も回復基調となり、当セグメントの売上高は前期比で2,544百万円増収の12,441百万円、営業損失は2,849百万円改善の1,867百万円となりました。

 

 

(リゾート事業)

 リゾート事業では、「箱根小涌園 天悠」において、全客室に温泉露天風呂を備えている強みを活かし部屋食付きおこもりプラン等コロナ禍における需要の取り込みを図りましたが、稼働率はGo Toトラベルキャンペーンが実施されていた前期との比較ではマイナスとなりました。一方、高単価食事メニューや渓谷庭園を利用したビアガーデン等の高付加価値商品を販売し、1人当たりの消費単価は前期並みの水準を確保いたしました。また、3密を回避できるプライベート感を有するグランピング施設「藤乃煌 富士御殿場」はアウトドア需要の高まりを受け、好調に推移いたしました。レジャー施設の「箱根小涌園ユネッサン」では、混雑緩和を目的に繁忙日の事前予約制および自動精算機を導入し、お客様と従業員の安心・安全の確保に努めてまいりました。
 また、成長戦略の一環として箱根小涌園再開発を進めており、2023年7月の開業に向け「箱根ホテル小涌園」の建替え工事に着手しております。
 これらの結果、当セグメントの売上高は471百万円減収の3,749百万円、営業損失は356百万円悪化の1,126百万円となりました。

 

 ②財政状態の状況

 当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末と比較して16,166百万円増加の112,762百万円となりました。流動資産は優先株式発行や資産売却に伴い現金及び預金が増加したことにより34,126百万円増加、固定資産は主に資産の売却により17,959百万円減少いたしました。
 負債は借入金返済等により、前連結会計年度末と比較して11,319百万円減少の83,929百万円となりました。なお、当連結会計年度末の借入金残高は58,234百万円となりました。
 純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益12,675百万円の計上や優先株式の発行15,000百万円等により、前連結会計年度末と比較して27,486百万円増加の28,833百万円となりました。これらに伴い、自己資本比率は25.4%となりました。

 ③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金および現金同等物(以下「資金」という)は38,619百万円となり、前連結会計年度末から34,921百万円増加いたしました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)
 営業活動により支出した資金は、16,302百万円(前年同期は17,069百万円の支出)となりました。営業損失の計上に加え、早期希望退職を実施したことにより、同引当金が1,802百万円、退職給付に係る負債が3,013百万円減少したことが主な要因です。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)
 投資活動により得られた資金は、42,890百万円(前年同期は2,412百万円の支出)となりました。これは主に固定資産の売却による収入39,732百万円によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)
 財務活動により得られた資金は、8,319百万円(前年同期は19,831百万円の収入)となりました。優先株式発行による収入15,000百万円、長期借入金の返済による支出8,467百万円が主な要因です。

 

 

 ④生産、受注及び販売実績

(ア)  生産実績

該当事項はありません。

 

(イ)  受注状況

該当事項はありません。

 

(ウ)  販売実績

当社グループは、WHG事業、ラグジュアリー&バンケット事業およびリゾート事業の各事業を主な内容とし、更に各事業に関連するサービス等の事業活動を展開しています。

セグメントごとの販売実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

WHG事業

10,434

0.8

ラグジュアリー&バンケット事業

12,441

25.7

リゾート事業

3,749

△11.2

その他(調整額含む)

1,809

△16.8

合計

28,433

6.7

 

(注)  1. 調整額は、セグメント間取引消去および各セグメントに配分していない全社費用であります。

2. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
  

 ①重要な会計方針及び見積り
 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的であると考えられる様々な要因に基づき、見積りおよび判断を行っておりますが、この見積りは不確実性が伴うため実際の結果と異なる場合があり、結果として連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。

 当社グループの連結財務諸表において採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況」に記載しております。また、新型コロナウイルス感染症拡大による会計上の見積りへの影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
 
 ②経営成績の分析
 (売上高)
 当連結会計年度の売上高は28,433百万円(前連結会計年度26,648百万円)となり、1,785百万円(6.7%)の増収となりました。婚礼実施件数の増加や、緊急事態宣言が解除された2021年10月以降に回復基調となった宿泊・飲食需要を取り込んだことが主な要因です。
 
 (売上原価および売上総損失)
 当連結会計年度の売上原価は41,631百万円(前連結会計年度44,091百万円)となり、2,460百万円(5.6%)の減少となりました。早期希望退職の実施やコスト削減により人件費および変動費が減少した結果、当連結会計年度の売上総損失は13,197百万円(前連結会計年度17,443百万円)となり、4,245百万円の改善となりました。
 
 

 

 

 (販売費及び一般管理費ならびに営業損失)
  当連結会計年度の販売費及び一般管理費は2,625百万円(前連結会計年度3,168百万円)となり、543百万円(17.2%)の減少となりました。当連結会計年度の営業損失は15,822百万円(前連結会計年度20,611百万円)と前期比4,789百万円の改善となりました。
 
 (営業外損益および経常損失)
 当連結会計年度の営業外損益は719百万円の損失(前連結会計年度318百万円)となりました。この結果、当連結会計年度の経常損失は16,542百万円(前連結会計年度20,930百万円)と、4,388百万円の改善となりました。
 
 (特別損益)
 当連結会計年度の特別利益は固定資産売却益等の計上により37,088百万円(前連結会計年度3,824百万円)となり、33,263百万円増加しました。
  また、特別損失は減損損失等の計上により3,388百万円(前連結会計年度6,067百万円)となり、2,679百万円減少しました

 
 (法人税等、非支配株主に帰属する当期純利益および親会社株主に帰属する当期純利益)

 当連結会計年度の法人税等は4,469百万円(前連結会計年度△740百万円)となりました。これに非支配株主に帰属する当期純利益12百万円を減じた結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は12,675百万円(前連結会計年度は22,427百万円の損失)となり、35,103百万円の増益となりました。

 

 ③財政状態の分析

 (流動資産)
 当連結会計年度末における流動資産の残高は44,276百万円(前連結会計年度末10,149百万円)となり、34,126百万円(336.2%)増加しました。主に優先株式の発行や資産売却に伴い、現金及び預金が増加したことによるものです。
 
 (固定資産)
 当連結会計年度末における固定資産の残高は68,486百万円(前連結会計年度末86,446百万円)となり、17,959百万円(20.8%)減少しました。資産の売却が主な要因です。
 
 (流動負債)
 当連結会計年度末における流動負債の残高は23,935百万円(前連結会計年度末25,197百万円)となり、1,261百万円(5.0%)減少しました。早期退職引当金の取り崩しが主な要因です。
 
 (固定負債)
 当連結会計年度末における固定負債の残高は59,993百万円(前連結会計年度末70,051百万円)となり、10,057百万円(14.4%)減少しました。長期借入金が返済により8,079百万円減少したことが主な要因です。
 
 (純資産)
 当連結会計年度末における純資産の残高は28,833百万円(前連結会計年度末1,347百万円)となり、27,486百万円(2,040.5%)増加しました。親会社株主に帰属する当期純利益12,675百万円の計上や、優先株式の発行15,000百万円が主な要因です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ④資本の財源及び資金の流動性についての分析

 (ア)キャッシュ・フローの分析
 キャッシュ・フローの分析につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

 (イ)資金調達と流動性
 当社グループは、事業活動のための資金確保、流動性の維持ならびに健全な財政状態を常に目指し、安定的な営業キャッシュ・フローの確保に努めております。その施策の一つとして、キャッシュマネジメントシステムの導入によるグループ各社の余剰資金の一元管理を行い、資金効率の向上を図っております。また、複数の金融機関と総額で209億円の当座貸越契約およびコミットメントライン契約を締結することにより、資金調達リスクに対する補完措置がなされております。
 また安定的な資金調達の一環として長期借入金の比率を高めており、当連結会計年度末の借入金残高は58,234百万円、その内訳として、短期借入金の残高は10,700百万円、長期借入金(一年以内に返済期限の到来する長期借入金を含む)の残高は47,533百万円となっております。

 

 ⑤戦略的現状と見通し

  当社グループを取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化しており、先行きは不透明な状況と認識しております。 当社グループでは、引き続き最重要課題である事業計画を推進するとともに、まん延防止等重点措置解除後の需要回復に備えた施策を実施してまいります。事業計画の詳細につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」をご参照ください。

  2022 年通期の業績予想は売上高は前期比11,366百万円増収の39,800百万円、営業損失は前期比9,822百万円改善の6,000百万円、経常損失は10,342百万円改善の6,200百万円となる見込みです。親会社株主に帰属する当期純損失は5,900百万円を見込んでおります。

 なお、第1四半期中は国内におけるオミクロン株感染拡大に伴うまん延防止等重点措置等の影響が続くものと想定しておりますが、現時点で入手可能な情報に基づき判断したものであり、実際の業績等は様々な要因により当該予想数値と異なる場合があります。

 

連結およびセグメント別の業績予想は下表のとおりです。

 

2022年12月期の連結業績予想(2022年1月1日~2022年12月31日)               (単位:百万円)

 

第2四半期(累計)

通期

売上高

営業損失(△)

経常損失(△)

親会社株主に帰属する当期純損失(△)

売上高

営業損失(△)

経常損失(△)

親会社株主に帰属する当期純損失(△)

連結合計

16,600

△4,600

△4,600

△4,600

39,800

△6,000

△6,200

△5,900

 

WHG事業

6,900

△2,900

18,000

△4,100

ラグジュアリー&バンケット事業

5,600

△800

13,000

△600

リゾート事業

2,100

△400

4,800

△700

その他

(調整額含む)

2,000

△500

4,000

△600

 

(注)調整額は、セグメント間取引消去および各セグメントに配分していない全社費用です。

 

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