業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言・まん延防止等重点措置が2021年10月から12月を除くほぼすべての期間に発出・適用されたこともあり、引き続きサービス業を中心に厳しい状況で推移いたしました。

 旅行業界におきましては、期待されたGoToトラベルキャンペーンの再開が見送られたこともあり、旅行需要の大幅な消失状況から抜け出すことができませんでした。

 このような状況の下、当社グループは、オンラインツアーや近隣地域への旅行、感染症対策に徹底的に取り組んだ「クラブツーリズム ニュースタイル」等コロナ禍でも需要のある旅行販売に注力するとともに、県民割・隣県割等助成金を活用したツアーの催行に努めました。また、近畿日本ツーリスト株式会社では、旅行業におけるSDGsへの取組みが広がる中、10月に「KNT ハイクラスサイト Blue Planet」を開設し、サステナブルな旅を求めるお客さまニーズへの対応を強化したほか、11月からWeb上にアバターを使った新しいオンライン接客サービス「旅のアバターコンシェルジュ」を開設し、Web上でもヒューマンタッチな接客を行える態勢を整えました。このほか東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では、近畿日本ツーリスト株式会社が大会関係者バス輸送の主幹業務を、北京2022オリンピック・パラリンピック冬季競技大会では、株式会社近畿日本ツーリストコーポレートビジネスが日本代表選手団の派遣業務をそれぞれ受託し、無事完遂いたしました。しかしながら旅行事業収入は、新型コロナウイルスの感染拡大前の2018年度と比べ83.3%減の67,494百万円にとどまりました。

 このような状況に対処するため、当社グループは旅行業以外の収入確保に努め、近畿日本ツーリスト各社は、従来の観光施設の運営業務等に加え、新型コロナウイルスのPCR検査やワクチン接種の受付業務その他を全国各地の自治体から受注いたしました。さらに、クラブツーリズム株式会社では、事業ポートフォリオの再構築も視野に入れ、2021年10月からKDDI株式会社と業務提携を行い、様々な趣味をオンラインで深めることができるサブスクリプションサービス「クラブツーリズムパス」を開始いたしました。他のグループ各社においても、オンデマンド印刷のプリンティング事業、コンタクトセンター受託事業等の新規事業に着手いたしております。

 一方、費用面では、事業構造改革を推進し、近畿日本ツーリストの個人旅行店舗を40箇所、団体旅行支店を18箇所、クラブツーリズム株式会社の旅行センターを9箇所、また、当社を含め4社の本社事務所を閉鎖・縮小したほか、後方部門の集約化を図るため近畿日本ツーリストの地域会社等9社を統合するなど、人件費、事務所賃借料その他の費用削減に格段の努力を払いました。

 

 この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。

 

a.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、主に預け金および受取手形、営業未収金及び契約資産の増加により1,023億41百万円となり、前連結会計年度末に比較して395億23百万円(62.9%)の増加となりました。一方、負債合計は、主に未払金が減少したものの、営業未払金などの増加により780億25百万円となり、前連結会計年度末に比較して55億53百万円(7.7%)の増加となりました。

 当連結会計年度末の純資産は、親会社株主に帰属する当期純損失の計上により利益剰余金が減少したものの、第三者割当増資に伴う資本剰余金の増加により243億15百万円(前連結会計年度末 △96億54百万円)となりました。

 この結果、自己資本比率は23.7%(前連結会計年度末 △15.4%)、1株当たり純資産額は△595.61円(前連結会計年度末 △354.72円)となりました。

 

b.経営成績

 当連結会計年度においても新型コロナウイルス感染拡大の影響を強く受け、連結売上高は1,399億57百万円(前年同期比59.2%増)、連結営業損失は76億86百万円(前期 営業損失270億82百万円)、連結経常損失は38億86百万円(前期 経常損失167億27百万円)となり、店舗閉鎖等に伴う事業構造改革関連費用、ソフトウエア等の減損による特別損失の計上により、親会社株主に帰属する当期純損失は57億71百万円(前期 親会社株主に帰属する当期純損失284億56百万円)となりました。

なお、新型コロナウイルス感染症の今後の広がりや収束時期等を含む仮定について、2022年度には国内旅行の需要は概ね回復する一方、海外旅行および訪日旅行については緩やかに回復、また、旅行関連事業の収入が確保できるものとし、事業構造改革の実行によるコスト削減の効果等を仮定としております。

新型コロナウイルス感染症の収束時期は不確実であり、予測が困難ですが、このような仮定を踏まえ、連結財務諸表作成日現在において入手可能な情報に基づき、当連結会計年度における会計上の見積り(固定資産の減損および繰延税金資産の回収可能性等の検討)を実施しております。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期に比較して319億74百万円増加し557億80百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動による資金は82億44百万円の減少(前期は241億67百万円の減少)となりました。これは主に仕入債務の増加による影響で80億97百万円増加したものの、税金等調整前当期純損失の計上で49億81百万円、売上債権及び契約資産の増加による影響で96億54百万円、未払金の減少による影響で49億13百万円それぞれ減少したためであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動による資金は76百万円の増加(前期は3億1百万円の減少)となりました。これは主に固定資産の取得による支出で12億44百万円減少したものの、差入保証金の回収による収入で13億56百万円増加したためであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動による資金は398億61百万円の増加(前期は51百万円の減少)となりました。これは株式の発行による収入で398億60百万円増加したためであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

 当社グループは、旅行業の単一セグメントであり受注生産形態をとらない商品が多いため生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 当社グループは旅行業の単一セグメントであるため、セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容についての記載を省略しております。

 

① 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、有価証券、減価償却資産、貸倒引当金、繰延税金資産、退職給付に係る資産、賞与引当金、旅行券等の計上について見積りを行っております。

 なお、見積りについては、過去の実績や現在の状況等に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

 

 主なものとしては次のとおりであります。

 

 固定資産の減損

 当社グループは、固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率等の前提条件に基づき算出しております。従って、当初見込んでいた将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、新たに減損損失が発生する可能性があります(「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」をご参照ください。)。

 

 繰延税金資産の回収可能性

 当社グループは、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断した上で繰延税金資産を計上しております。将来の課税所得は過去の業績等に基づいて見積っているため、税制改正や経営環境の変化等により課税所得の見積りが大きく変動した場合等には、繰延税金資産の計上額が変動する可能性があります(「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」をご参照ください。)。

 繰延税金資産の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (税効果会計関係)」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (税効果会計関係)」をご覧ください。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

1)経営成績

(売上高と営業損益)

 当連結会計年度においても新型コロナウイルスの感染拡大の影響を強く受け、旅行関連の売上が低迷した一方、PCR検査受付業務等の取扱いが想定以上に増加したことにより、前連結会計年度に比べ、売上高は59.2%増の1,399億57百万円となりました。販売費及び一般管理費においては人件費、事務所賃借料をはじめとする販管費全般の削減に努めましたが、営業損失は76億86百万円(前期 営業損失270億82百万円)となりました。

(経常損益)

 当連結会計年度の営業外収益および営業外費用の純額は37億99百万円の収益超過でありましたが、助成金収入と為替差益の減少により前連結会計年度に比べ65億55百万円の減益となりました結果、当連結会計年度の経常損失は、38億86百万円(前期 経常損失167億27百万円)となりました。

(親会社株主に帰属する当期純損益)

 当連結会計年度の特別利益および特別損失の純額は、特別損失として4億85百万円の事業構造改革関連費用や

7億11百万円の減損損失を計上したことにより10億95百万円の損失超過となりました。

 また、当連結会計年度の法人税、住民税及び事業税は7億9百万円、法人税等調整額は89百万円であり、非支配株主に帰属する当期純損失を差し引いた当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損益は、57億71百万円(前期 親会社株主に帰属する当期純損失284億56百万円)の損失となりました。

 

2)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

1)経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社グループをとりまく環境としましては、国内における人口減少や高齢化、アジア諸国の経済発展、国を越えた人の動きの活発化等内外の社会構造の変化が旅行業に影響を与えております。また、外資を含めたOTAの事業拡大、国内航空旅行を中心に柔軟に商品価格を変化させるテクノロジーを活用したプライシング機能等の新たなサービスの進化等により事業環境は著しく変化しております。

 また、旅行市場は、政府の「観光立国」に向けた政策はあるものの、新型コロナウイルスによる感染拡大に加え、ロシアによるウクライナ侵攻の影響、原油価格の高騰、円安基調など、旅行需要を激減させる事態が継続しており、今後も混乱が残るものと予想されます。

 当社グループは、個人、団体の国内旅行、海外旅行の企画・販売をはじめ、海外からの訪日旅行を取り扱うため、国内、海外の安全性が損なわれる事態(自然災害、国際テロ、紛争および新興感染症等)が生じた場合や、景況悪化による個人消費の落ち込み、天候や休日の日並びの良否等市場環境の変化などに起因し、経営成績に影響を受ける可能性があります。

 

2)今後の見通し

 「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

c.資本の財源及び資金の流動性

1)資金需要

 当社グループの資金需要は、営業活動については、旅行商品の企画販売にかかる宿泊機関・運輸機関・観光機関等からの仕入、および人件費ならびに販売諸経費等の営業費用が主な内容であります。投資活動については、システム投資をはじめとする設備投資が主な内容であります。

2)財務政策

 当社グループは現在、営業活動による資金需要、投資活動による資金需要いずれについても、内部資金により調達しており、借入や社債発行等による外部からの資金調達は行っておらず、有利子負債の金額は僅少であります。

 また、当社グループの各社の資金需要については当社が一元管理するとともに、グループ内における資金の効率的活用を図るため、キャッシュマネジメントシステムによる国内子会社の余剰資金の集中および配分を行っております。

 なお、当社グループ全体の余剰資金は、親会社である近鉄グループホールディングス株式会社のキャッシュマネジメントシステムに預入を行っております。

3)資金の状況

 第三者割当による資金調達については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (資本施策の実施の進捗状況)」に記載のとおりであります。

 

d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループが経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標(KPI)としては、営業利益および親会社株主に帰属する当期純利益を最も重要な指標と位置付けておりますが、新型コロナウイルスの感染が収束しないなか、2021年2月に公表した中期経営計画について、随時環境に応じた見直しを行い、推進中の事業構造改革に施策を加え、確実に実行することにより、早期の収支改善を図ってまいります。

 なお、2026年3月期には営業利益130億円以上、親会社株主に帰属する当期純利益110億円の目標値に変更はありません。

 

 

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