課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、お客さまからの信頼を事業活動の原点に据え、お客さまに愛される会社であり続けることを目指して、他社グループにはない旅行事業のビジネスモデルを構築し、リスク管理を含めた内部統制の強化、CSR活動の充実を図ることにより、当社グループ全体の企業価値を高めてまいります。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループでは、2021年2月に公表いたしました中期経営計画のとおり、事業構造改革と再成長に向けた事業基盤固めに取り組んでおります。当社の経営指標として最も重要なものは営業利益と考えており、今般の事業構造改革と2021年度を初年度とする中期経営計画の各施策を確実に実行することにより、早期に収支の改善を行い、営業利益の最大化を図ります。また、資本の積み上げも重要課題であることから、親会社株主に帰属する当期純利益の最大化を2つ目の経営指標としています。

本中期経営計画では、2022年度を黒字化と位置付けており、2025年度では営業利益130億円以上、親会社株主に帰属する当期純利益110億円以上を指標としています。

 

(3)経営環境及び対処すべき課題

①新型コロナウイルスの感染拡大の影響について

当連結会計年度は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言・まん延防止等重点措置が2021年10月から12月を除くほぼすべての期間に発出・適用されたこと、旅行業界におきましては、期待されたGoToトラベルキャンペーンの再開が見送られたこともあり、旅行需要の大幅な消失状況から抜け出すことができませんでした。

このような状況の下、当社グループは、オンラインツアーや近隣地域への旅行、感染症対策に徹底的に取り組んだ「クラブツーリズム ニュースタイル」等コロナ禍でも需要のある旅行販売に注力するとともに、県民割・隣県割等助成金を活用したツアーの催行に努めました。また、近畿日本ツーリスト株式会社では、旅行業におけるSDGsへの取組みが広がる中、10月に「KNT ハイクラスサイト Blue Planet」を開設し、サステナブルな旅を求めるお客さまニーズへの対応を強化したほか、11月からWeb上にアバターを使った新しいオンライン接客サービス「旅のアバターコンシェルジュ」を開設し、Web上でもヒューマンタッチな接客を行える態勢を整えました。このほか東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では、近畿日本ツーリスト株式会社が大会関係者バス輸送の主幹業務を、北京2022オリンピック・パラリンピック冬季競技大会では、株式会社近畿日本ツーリストコーポレートビジネスが日本代表選手団の派遣業務をそれぞれ受託し、無事完遂いたしました。しかしながら旅行事業収入は、新型コロナウイルスの感染拡大前の2018年度と比べ83.3%減の67,494百万円にとどまりました。

このような状況に対処するため、当社グループは旅行業以外の収入確保に努め、近畿日本ツーリスト各社は、従来の観光施設の運営業務等に加え、新型コロナウイルスのPCR検査やワクチン接種の受付業務その他を全国各地の自治体から受注いたしました。さらに、クラブツーリズム株式会社では、事業ポートフォリオの再構築も視野に入れ、2021年10月からKDDI株式会社と業務提携を行い、様々な趣味をオンラインで深めることができるサブスクリプションサービス「クラブツーリズムパス」を開始いたしました。他のグループ各社においても、オンデマンド印刷のプリンティング事業、コンタクトセンター受託事業等の新規事業に着手いたしております。

一方、費用面では、事業構造改革を推進し、近畿日本ツーリストの個人旅行店舗を40箇所、団体旅行支店を18箇所、クラブツーリズム株式会社の旅行センターを9箇所、当社を含め4社の本社事務所を閉鎖・縮小したほか、後方部門の集約化を図るため近畿日本ツーリストの地域会社等9社を統合するなど、人件費、事務所賃借料その他の費用削減に格段の努力を払いました。

②その他の対処すべき課題

今後につきましては、新型コロナウイルスの感染拡大に加え、ロシアによるウクライナ侵攻の影響もあり、景気はなお先行き予断を許さない状況が続くものと予想されます。

このような状況の下、当社グループは、2021年2月に策定いたしました中期経営計画の目標達成に邁進してまいります。

(資本施策の実施の進捗状況)

当社は、2021年5月12日開催の取締役会において、第三者割当の方法により、当社の親会社である近鉄グループホールディングス株式会社、合同会社あかりおよび合同会社まつかぜを割当先とする、総額400億円のA種種類株式およびB種種類株式の発行を決議いたしました。その後、同年6月16日開催の当社定時株主総会において、本第三者割当についてご承認をいただき、同年6月30日付にて本第三者割当による種類株式の発行および払込の完了により、債務超過を解消いたしましたが、2022年3月期においても連結営業損失76億86百万円、連結経常損失38億86百万円、親会社株主に帰属する当期純損失57億71百万円を計上いたしましたため、なお継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせる事象等が存在しております。当社グループといたしましては、中期経営計画に基づく施策を着実に遂行することにより早期に業績を回復し、これを解消してまいります。

(中期経営計画の目標達成に向けた事業構造改革の推進)

クラブツーリズム株式会社では、コロナ禍収束後に拡大する旅行需要を的確に捉えるため、テーマ旅行をはじめとする旅行商品の強化に取り組むとともに、KDDI株式会社との共同キャンペーンや無料コンテンツの充実、旅行特典の拡充等の対策を講じて「クラブツーリズムパス」の会員増加を図ってまいります。また、政府の地方創生政策に呼応し、近畿日本ツーリスト株式会社とともに、地域の観光資源を深掘りする「地域の魅力発信事業」等に取り組んでまいります。

近畿日本ツーリスト株式会社の個人旅行事業につきましては、中期経営計画に基づきWeb販売の強化、特にダイナミックパッケージの販売拡大を進めてまいります。このため、2022年1月に国内ダイナミックパッケージで取り扱う宿泊施設を大幅に拡大いたしましたが、本年5月にはさらに海外ダイナミックパッケージの販売を開始し、コロナ禍収束後の海外旅行需要に応えてまいります。同社では、国内外のダイナミックパッケージ商品により、多種多様な旅行需要に応える一方、「KNT ハイクラスサイト Blue Planet」等を通じて、こだわりの旅行商品の販売に取り組んでまいります。

近畿日本ツーリスト株式会社の団体旅行事業につきましては、学校教育において、SDGsの重要性が高まっている状況を捉え、生徒の皆さんに、カーボン・オフセットの仕組みを利用して旅行で排出するCO2量に見合う寄付を行っていただく「ゼロ・カーボンツアー」を販売するなど、当社グループのSDGsへの取組みを活かした営業活動を進めてまいります。また、株式会社近畿日本ツーリストコーポレートビジネスでは、その高い専門性とホスピタリティを活かし、引き続きお客さまのニーズを先取りした提案型営業に取り組んでまいります。

このほか、当社グループは、コロナ禍の教訓を糧に旅行業以外の収入比率の向上を目標としており、2022年度においても新規事業の強化と開拓に取り組んでまいります。

当社グループは、以上の方針に基づき事業の強化を進めるとともに、コンプライアンスの徹底、情報セキュリティを始めとするリスク管理の強化、SDGs等の社会課題への貢献を推進し、企業価値向上に努めてまいります。

これらとともに、次のコスト構造の見直しにより、2018年度比で、2022年度には約200億円の経費削減効果を図り、2025年度には営業利益ベースで100億円以上の改善を見込みます。

(a)組織の再編

2021年10月1日付で、株式会社近畿日本ツーリスト首都圏を存続会社、株式会社近畿日本ツーリスト北海道、株式会社近畿日本ツーリスト東北、株式会社近畿日本ツーリスト関東、株式会社近畿日本ツーリスト中部、株式会社近畿日本ツーリスト関西、株式会社近畿日本ツーリスト中国四国、株式会社近畿日本ツーリスト九州、株式会社KNT-CTウエブトラベルを消滅会社とする吸収合併を行い、合併を機に、株式会社近畿日本ツーリスト首都圏の商号を近畿日本ツーリスト株式会社に変更し、本社部門等の後方部門の統合を行ったことをはじめ、組織体制の見直しにより、消滅会社各社に設置されていた営業本部などの間接部門を存続会社に集約するスリム化を進めるとともに、同時にKNT-CTホールディングス株式会社から合併後の近畿日本ツーリスト株式会社に事業推進部門を移管し、当社はグループ全体の経営戦略および経営管理部門に特化する体制としました。

営業拠点数は、団体旅行販売店舗は事業構造改革前には99あった店舗数を当連結会計年度末時点で77店舗に、個人旅行販売店舗は事業構造改革前には138あった店舗数を29にまで縮減するなど、支店、店舗の統廃合を計画どおり完了いたしました。

(b)人員調整

新規採用の抑制、定年退職等による自然減、グループ外への出向を実施し、2024年度末までに2020年3月末時点6,968名の在籍人員を約3分の2に縮小する予定であり、現段階では概ね計画どおりに進捗しております。あわせて、旅行業務が減少する中、ワクチン接種関連事業等の受託業務や、オンデマンド印刷事業など旅行近接サービス領域への人材投入等、再成長に向けた人員の適切な再配分に取り組んでいます。

(c)その他のコスト削減

旧来のシステムに関わるITコストを削減するほか、組織の見直し、テレワークやフリーアドレス化など働き方改革の推進等により、短期的には当社本社オフィスをはじめ各グループ会社の事務所スペースの縮小や営業拠点の閉鎖など、引き続き事務所経費をはじめ諸経費のさらなる圧縮を進めております。

 

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