経営成績等の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
(1)経営成績
当連結会計年度における世界経済は、一部の国や地域では回復の兆しが見られるものの、新型コロナウイルス感染症の長期化やウクライナ危機の影響等により、依然として厳しい状況が続いています。わが国経済においては、新型コロナウイルス感染症等による経済活動の停滞など、先行き不透明な状況にあります。
建設コンサルタント業界においては、新型コロナウイルス感染症の影響はあるものの、防災・減災、老朽化した社会インフラの維持・管理、国土強靭化への対応など、公共投資が堅調に推移しました。
このような状況の中、当社グループでは、「まちづくり業務」の豊富な経験と実績を活かし、「まちづくりのソリューション企業」として、国土強靭化や防災・減災など「安全と安心で持続可能なまちづくり」、都市再生・地方創生業務、公共施設マネジメント業務、まちづくり事業をパッケージで支援する事業推進サポート業務などを重点分野と位置づけ、積極的な営業活動を展開してまいりました。
東日本大震災の復興関連業務では、宮城県石巻地区の復興支援の完遂に努めるとともに、福島県の復興支援を行いました。
さらに、区画整理事業での当社のコンサルタントとしての経験・知見や保留地の処分能力を活かして、調査設計業務に加え業務代行者としての参画を企図し、デベロッパー業務や生産緑地対策など、「まちづくり業務」の収益性向上を図るとともに、土木管財業務、個人向け相続・不動産コンサル事業、PM(プロジェクトマネジメント)/CM(コンストラクションマネジメント)・PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)事業、システム開発など、「まちづくり業務」の高付加価値提案型サービスの展開により、事業領域を拡大してまいりました。
当連結会計年度の概況は以下のとおりであります。
東日本大震災の復興需要はピークアウトするとともに、民間では新型コロナウイルス感染症の影響はあったものの、官庁では防災・減災・国土強靭化に加えて、国土交通省、防衛省等の需要が伸び、さらに官庁・民間ともに大型の区画整理案件の継続受注や新規地区の立ち上げなどに注力した結果、受注高につきましては15,935百万円(前期は15,239百万円)となり、手持受注残高は8,401百万円(前期は9,518百万円)を確保することができました。
売上高につきましては、15,933百万円(前期は15,862百万円)となりました。
営業利益は1,582百万円(前期は1,334百万円)、経常利益は1,654百万円(前期は1,380百万円)となり、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、1,085百万円(前期は852百万円)となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用しております。詳細については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。
(2)財政状態
前中期経営計画において、技術力の向上や財務体質の強化等により経営基盤の強化に取り組んだ結果、資格保有者数の増大や無借金体質の確立、自己資本比率の向上等を実現することができました。
(資産の部)
資産合計は、現金及び預金が1,046百万円減少する一方、受取手形、売掛金及び契約資産の2,069百万円増加等により流動資産が729百万円増加した結果、前期末より752百万円増加し、14,426百万円となりました。
(負債の部)
負債合計は、前期末より177百万円減少し、4,197百万円となりました。借入金については、返済が進み、前期末より60百万円減少し、0となり、完全無借金となっています。
(純資産の部)
純資産合計は、利益剰余金が973百万円増加する一方、株主還元の一環として自己株式の消却をおこない、控除(マイナス)項目である自己株式が140百万円減少した結果、前期末より929百万円増加し、10,229百万円となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比較して1,046万円減少し、1,955百万円(前期は3,002百万円)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは345百万円の支出(前年同期は1,994百万円の収入)であり、主なものは、税金等調整前当期純利益1,594百万円、売上債権の増加に伴う支出937百万円、未払消費税等の減少による支出659百万円、法人税等の支払額709百万円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは178百万円の支出(前年同期は847百万円の支出)であり、有形固定資産の取得による支出129百万円、無形固定資産の取得による支出29百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは521百万円の支出(前年同期は481百万円の支出)であり、長期借入金の返済による支出60百万円、自己株式の取得による支出200百万円及び配当金の支払いによる支出260百万円等によるものであります。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、資産、負債、収益及び費用の金額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いることが必要となります。これらの見積りについては過去の実績等、連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断していますが、これらの見積り及び仮定に基づく金額は、実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う影響につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等注記事項(追加情報)」に記載しております。
受注の実績
(1)受注高実績
当社グループは、単一セグメントであるため、業務の区分別の受注高を記載しております。
業務の区分等 |
受注高(千円) |
構成比(%) |
前年同期比(%) |
建設コンサルタント業務 地理空間情報業務 |
3,254,935 |
20.4 |
107.8 |
環境業務 |
809,147 |
5.1 |
154.2 |
まちづくり業務 |
5,397,042 |
33.9 |
78.1 |
設計業務 |
4,473,206 |
28.1 |
106.4 |
事業ソリューション業務 |
2,001,400 |
12.5 |
344.0 |
合計 |
15,935,730 |
100.0 |
104.6 |
(注)前期以前に受注した業務で、契約額の増減があるものについては、変更の行われた期の受注高にその増減額を含んでおります。
(2)手持受注高
当社グループは、単一セグメントであるため、業務の区分別の手持受注高を記載しております。
業務の区分等 |
手持受注高(千円) |
構成比(%) |
前年同期比(%) |
建設コンサルタント業務 地理空間情報業務 |
1,476,070 |
17.6 |
70.6 |
環境業務 |
479,914 |
5.7 |
123.3 |
まちづくり業務 |
3,069,554 |
36.5 |
71.8 |
設計業務 |
1,732,178 |
20.6 |
94.3 |
事業ソリューション業務 |
1,643,678 |
19.6 |
177.4 |
合計 |
8,401,394 |
100.0 |
88.3 |
経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度の経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、以下のとおりであります。
また、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、将来に関する事項には不確実性、あるいはリスクを含んでいるため、将来生じる実際の結果と大きく異なる可能性があります。
なお、当社グループは、まちづくりのソリューション企業として、地理空間情報業務、環境業務、まちづくり業務、設計業務及び事業ソリューション業務を総合的に営む単一の事業の企業集団であるため、セグメント情報は記載しておりません。
当社グループを取り巻く経営環境は、コロナウイルス感染症拡大による影響はあるものの、官庁需要においては、防災・減災、老朽化した社会インフラの維持・管理、国土強靭化への対応など公共投資が堅調に推移し、当連結会計年度の受注高は15,935百万円(前期は15,239百万円)となりました。
(1)経営成績
① 売上高
売上高は15,933百万円(前期は15,862百万円)となりました。前連結会計年度に比べ70百万円増加いたしました。
② 売上総利益
売上総利益は4,837百万円(前期は4,704百万円)となりました。売上高に対する売上総利益率は30.4%となり、前連結会計年度に比べ、それぞれ133百万円、0.7ポイント増加いたしました。
③ 販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は3,254百万円(前期は3,370百万円)となりました。売上高に対する販売費及び一般管理費率は20.4%となり、前連結会計年度に比べ、それぞれ115百万円、0.9ポイント減少いたしました。
④ 営業利益
営業利益は1,582百万円(前期は1,334百万円)を計上し、11期連続の増益となりました。売上高に対する営業利益率は9.9%となり、前連結会計年度に比べ、それぞれ248百万円、1.5ポイント増加いたしました。
⑤ 営業外損益
営業外損益は71百万円の利益(前期は45百万円の利益)となり、前連結会計年度に比べ25百万円増加いたしました。営業外収益は82百万円となり、その主な要因は受取配当金によるものであり、前連結会計年度に比べ8百万円減少いたしました。営業外費用は10百万円(前期は45百万円)となり、その主な要因は支払利息によるものであり、前連結会計年度に比べ34百万円減少いたしました。
⑥ 経常利益
経常利益は1,654百万円(前期は1,380百万円)となりました。売上高に対する経常利益率は10.4%となり、前連結会計年度に比べ、それぞれ274百万円、1.7ポイント増加いたしました。
⑦ 特別損益
特別損益は59百万円の損失(前期は18百万円の損失)となり、前連結会計年度に比べ40百万円減少いたしました。その主な要因は創業100周年記念関連費用によるものであります。
⑧ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は1,085百万円(前期は852百万円)となり、前連結会計年度に比べ233百万円増加いたしました。
(2)財政状態
① 資産、負債及び純資産
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末から752百万円増加して14,426百万円となりました。流動資産は現金及び預金と未成業務支出金の減少、受取手形、売掛金及び契約資産の増加を主な要因として729百万円増加し、固定資産は退職給付に係る資産の増加を主な要因として22百万円増加いたしました。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末から177百万円減少して4,197百万円となりました。流動負債は買掛金の増加、1年内返済予定の長期借入金と未払法人税等の減少を主な要因として182百万円減少し、固定負債は繰延税金負債の増加を主な要因として5百万円増加いたしました。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末から929百万円増加して10,229百万円となりました。利益剰余金は親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加と剰余金の配当による減少により973百万円増加し、自己株式は消却等により140百万円減少いたしました。
② キャッシュ・フロー
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 経営成績等の概要 (3)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
③ 資金需要
当社グループは、地理空間情報業務、環境業務、まちづくり業務、設計業務及び事業ソリューション業務を総合的に営む単一事業(建設コンサルタント業)の企業集団であり、当社グループの運転資金需要の主なものは、建設コンサルタント業務の受注業務遂行のための人件費、業務委託費、材料費等その他経費のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。営業費用の主なものは給与手当、福利厚生費などの人件費、営業活動に伴う交通費等であります。当社グループの研究開発費用は様々な営業費用として計上されておりますが、研究開発に携わる従業員の人件費が研究費用の主要な部分を占めております。
④ 契約債務
該当事項はありません。
⑤ 財政政策
当社グループは、運転資金及び設備投資資金につきましては、内部資金又は借入により資金調達することとしております。資金調達の方針につきましては、運転資金は返済期限が1年以内の短期借入金で調達し、設備投資資金及び事業規模が1年を超える不動産開発業務資金につきましては、原則として固定金利の長期借入金及び社債で調達しております。
2022年5月31日現在、短期借入金の残高はありません。また、1年内返済予定の長期借入金を含む長期借入金の残高もありません。
(3)中期経営計画の進捗状況
中期経営計画(2020年5月期~2023年5月期)の進捗状況は以下のとおりです。
本計画の3年度にあたる2022年5月期(実績)は、増収増益となり、売上高15,933百万円、営業利益1,582百万円となりました。
指標 |
2020年度5月期 (実績) |
2021年度5月期 (実績) |
2022年度5月期 (実績) |
2023年度5月期 (計画) |
売上高 |
15,202百万円 |
15,862百万円 |
15,933百万円 |
17,500百万円 |
営業利益 |
1,144百万円 |
1,334百万円 |
1,582百万円 |
1,400百万円 |
(4)これまでの10年の振り返りと今後の展望
当社のこれまでの10年を振り返ってみますと、業績は堅調に推移してきており、受注高は10年前の11,561百万円から15,935百万円まで伸長しました。また、営業利益は1,582百万円を計上し、11期連続増益を更新するとともに、中期経営計画最終年度の営業利益(計画)1,400百万円を1年前倒しで達成しました。
安定した業績を背景に、借入金の返済を進めてきた結果、有利子負債は10年前の4,333百万円から0(ゼロ)となりました。
長期借入金は、期末残高0で、完済しました。
短期借入金は、期末残高0で、期中のつなぎ運転資金のみであり、ここ数期、期末残高は0で推移しています。
以上のとおり、有利子負債はなくなり、自己資本比率も向上していることから、財務基盤は着実に強化されています。
業績面においては、震災復興関連業務がピークアウトした後も、国土強靭化や無電柱化等を背景とした官公庁業務や、当社の強みである民間業務の伸長により、堅調に推移しており、当面は、このトレンドを維持していくことができるものと、現状、判断しております。
この先、新型コロナウイルス感染症の長期化や、不動産市場の動向如何によっては不安材料もありますが、現在の受注レベルを維持し、経営基盤の更なる強化を図っていく計画です。
こうした取り組みが、当社の持続的成長と企業価値向上を実現していく最善の方法であると考えております。
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