文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善などを背景に、緩やかな回復基調で推移いたしましたが、台風などの自然災害の影響、米中貿易摩擦の激化や中国経済の減速に加え、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により先行きは極めて不透明な状況にあります。当社グループの教育事業は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い政府・自治体からの自粛要請により休止、規模の縮小、時間変更を余儀なくされるなど厳しい状態となりましたが、基幹事業(医療関連、介護、保育等)のサービスは、公共性の高いサービスであることから、行政機関と連携の上、サービスの提供の維持に努めてまいりました。
このような事業環境のもと、当社グループでは、中期経営計画「VISION2025」の実現に向けて、社会における課題やニーズの多様化に対応・貢献し、長期的かつ安定的な成長につながる事業基盤を築くべく、医療関連事業・介護事業・保育事業を主軸とした収益基盤の強化、教育事業・グローバル(中国)事業の構造改革、将来を見据えた成長投資を進めております。
当連結会計年度においては、現場主体の事業改革や、エリアマネジメントの強化により、基幹事業である医療関連事業・介護事業・保育事業のトップラインが堅調に推移したことにより、12期連続過去最高売上高の更新を果たしました。また、選択と集中による教育事業・グローバル(中国)事業の構造改革により、固定費の削減が進み、グループ全体の利益水準が改善いたしました。
併せて、訪問介護拠点の再整備等の事業基盤の強化や、処遇改善の継続実施、外国人スタッフの受け入れに係る人材投資等サービス供給力の源泉となる人材の確保・定着を目的とした成長投資も進めてまいりました。
この結果、当連結会計年度の売上高は 297,965百万円 (前年同期比 3.5%増 )、営業利益は 12,162百万円 (前年同期比 21.2%増 )、経常利益は 7,483百万円 (前年同期比 31.2%増 )、親会社株主に帰属する当期純利益は 4,058百万円 (前年同期比 33.6%減 )となりました。
セグメント別の経営成績は以下のとおりです。
<医療関連部門>
売上高 114,325百万円 (前年同期 107,768百万円 ) 営業利益9,730百万円 (前年同期9,246百万円)
病院部門においては、既受託医療機関での業務効率の改善や労働時間の適正化を図るとともに、医療機関への交渉による契約適正化に注力してまいりました。医事教育部門においては、積極的な販促活動により受講生数が堅調に推移し、人材供給力の強化に繋がりました。
また、当連結会計年度において、大阪府八尾市立病院に係るPFI事業を担う特定目的会社である「八尾医療PFI株式会社」を新規連結化いたしました。
この結果、売上高は、受託業務の拡大や八尾医療PFI株式会社の新規連結化等により、増収となりました。営業利益は、契約適正化による収益改善や業務効率化による生産性の向上により、増益となりました。
<介護部門>
売上高 153,788百万円 (前年同期 151,426百万円 ) 営業利益15,857百万円 (前年同期16,383百万円)
在宅系介護部門では、介護人材の確保・定着及び中重度対応の強化に加え、地域包括ケアシステムの構築に資する成長戦略として、訪問介護拠点の分割新設によるサービス供給体制の再整備を進めてまいりました。2020年3月末時点で402拠点の分割・新設を完了、訪問介護1,405拠点体制とし、運営体制の整備、管理体制の強化についても取り組んでまいりました。
居住系介護部門では、当連結会計年度において有料老人ホームを1拠点、グループホームを1拠点開設するとともに、利用者退去後の空き期間の短縮化を図り、稼働率向上に努めてまいりました。
この結果、売上高は、居住系介護施設の利用者増・稼働率向上により増収となりました。営業利益は、訪問介護拠点の再編に伴う先行投資により減益となりました。
<保育部門>
売上高 15,220百万円 (前年同期 12,559百万円 ) 営業利益373百万円 (前年同期206百万円)
当連結会計年度においては、保育関連施設を52ヵ所新設し、全国303ヵ所での展開となりました。認可保育園においては自治体へのアプローチや、ホームページを活用した積極的な情報発信を図り、企業主導型保育園についても法人営業の強化、地域利用枠の拡大によって、新規・既存園の稼働向上に取り組み、待機児童問題の解消、女性活躍推進の貢献に努めてまいりました。
この結果、売上高は、営業強化及び拠点拡大による園児数増加や、既存園の稼働向上により、増収・増益となりました。
<ヘルスケア部門>
売上高 1,704百万円 (前年同期 1,632百万円 ) 営業損失2,144百万円 (前年同期は営業 損失 1,148百万円)
家事代行・自費介護等のサービスを提供する「ニチイライフ」、及び国家戦略特区における家事代行サービス「サニーメイドサービス」を展開しております。季節需要を捉えた販促による新規利用者獲得や、サービスの質向上、定期プラン移行に繋げる営業力強化に努めてまいりました。サニーメイドサービスにおいては、2019年9月より新たに愛知県でのサービスを開始しました。また、家事代行市場の拡大や介護事業とのシナジー効果を見据え、外国人スタッフ受け入れに係る人材投資を進めてまいりました。
この結果、売上高は、販促強化・エリア拡大や顧客満足度の向上により利用者数が増加し、増収となりました。営業利益は、人材投資費用の増加により、営業損失拡大となりました。
<教育部門>
売上高 10,359百万円 (前年同期 11,937百万円 ) 営業損失1,330百万円 (前年同期は営業 損失 4,110百万円)
当連結会計年度において、COCO塾事業からの撤退を完了し、COCO塾ジュニアのフランチャイズ教室、及びニューヨーク大学プロフェッショナル教育東京についても、2020年3月をもって閉鎖いたしました。
子会社である株式会社GABA(以下、GABA)においては、Gabaマンツーマン英会話の受講生数拡大に向け、レッスンクオリティの向上や受講生サポート体制の強化、テレビCМや電車広告を活用したプロモーション等に取り組んでまいりました。
この結果、売上高は、旧COCO塾教室の閉鎖に伴う受講生数減や、GABAにおける新型コロナウイルス感染拡大防止措置(臨時休校)に伴う営業日数の減少により、減収となりました。営業利益は、固定費の削減により、営業損失縮小となりました。
<セラピー部門>
売上高 594百万円 (前年同期 412百万円 ) 営業損失192百万円 (前年同期は営業 損失 383百万円)
ドッグサロン&ホテル「A-LOVE(エーラブ)」を全国24店舗展開しております。ホームページやSNSを通じた積極的な販促活動や、お客様一人ひとりに合わせたサービス提案力の強化により、顧客満足度の向上に繋げてまいりました。
この結果、新規顧客・リピート顧客の増加や顧客単価の上昇により、増収・営業損失縮小となりました。
<グローバル部門>
売上高 1,646百万円 (前年同期 1,851百万円 ) 営業損失504百万円 (前年同期は営業 損失 1,246百万円)
選択と集中による中国事業現地体制の再編、中国における介護ビジネスの需要開拓に注力してまいりました。当連結会計年度においては、華北エリアでの認知症対応型介護施設の運営受託や、外販研修事業、介護施設立ち上げに係るコンサルティング事業の契約獲得に向けた販促活動を進めてまいりました。
この結果、売上高は、組織再編による展開エリアの集約に伴い減収となりました。営業利益は、経営資源の集中により運営効率が改善し、営業損失縮小となりました。
なお、中国現地子会社については決算期が12月決算となっており、当連結会計年度における新型コロナウイルスの影響はございません。
<その他>
売上高 326百万円 (前年同期 294百万円 ) 営業利益216百万円 (前年同期 228百万円 )
ニチイグループの物品管理や付帯サービス等の提供によりシナジーを発揮し、グループ企業の活動を支えてまいりました。
この結果、増収・減益となりました。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ836百万円減少し、192,804百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ3,784百万円減少し、148,778百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ2,947百万円増加し、44,025百万円となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、18,386百万円となり、前年同期と比べ311百万円増加いたしました。各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動の結果、10,439百万円増加(前連結会計年度は13,401百万円増加)いたしました。
これは主に、減価償却費6,428百万円の計上や支払利息5,043百万円の計上などによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動の結果、1,907百万円減少(前連結会計年度は2,928百万円減少)いたしました。
これは主に、新規保育園の開設等に伴う有形固定資産の取得による支出2,758百万円、無形固定資産の取得による支出1,284百万円、差入保証金の回収による収入1,466百万円などによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動の結果、8,163百万円減少(前連結会計年度は10,562百万円減少)いたしました。
これは主に、長期借入金の返済による支出7,483百万円や親会社による配当金の支払による支出2,575百万円などによるものであります。
④ 販売の実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) |
前年同期比(%) |
医療関連部門(千円) |
114,325,906 |
106.1 |
介護部門(千円) |
153,788,068 |
101.6 |
保育部門(千円) |
15,220,110 |
121.2 |
ヘルスケア部門(千円) |
1,704,735 |
104.4 |
教育部門(千円) |
10,359,533 |
86.8 |
セラピー部門(千円) |
594,665 |
144.0 |
グローバル部門(千円) |
1,646,703 |
88.9 |
報告セグメント計(千円) |
297,639,723 |
103.5 |
その他(千円) |
326,119 |
110.7 |
合計(千円) |
297,965,843 |
103.5 |
(注)1.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
2.セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.当連結会計年度の経営成績等の分析
1)財政状態
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は、 67,749百万円 (前連結会計年度末残高は 65,684百万円 )となり、 2,064百万円 (前連結会計年度比 3.1%増 )増加いたしました。これは主に、医療事業、保育事業、連結子会社ニチイケアパレスにおける売上の増加、八尾医療PFIを新規連結したことによる増加 に伴い、 受取手形及び売掛金が増加したことによります。
増加の主な要因は、受取手形及び売掛金が 2,122百万円 (前連結会計年度比 6.3%増 )増加したことなどによるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は、 125,054百万円 (前連結会計年度末残高は 127,955百万円 )となり、 2,901百万円 (前連結会計年度比 2.3%減 )減少いたしました。これは主に、当期における取得及び減損はなく定期償却 に伴い、の れんが減少したことによります。
増加の主な要因は、有形リース資産が 1,222百万円 (前連結会計年度比 2.4%増 )増加したことなどによるものであります。
減少の主な要因は、建物及び構築物が 912百万円 (前連結会計年度比 4.2%減 )、のれんが 1,697百万円 (前連結会計年度比 18.6%減 )、投資有価証券が 785百万円 (前連結会計年度比 74.3%減 )減少したことなどによるものであります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は、 61,515百万円 (前連結会計年度末残高は 60,664百万円 )となり、 850百万円 (前連結会計年度比 1.4%増 )増加いたしました。これは主に、運転資金として必要な短期借入金が増加したことによります。
増加の主な要因は、支払手形及び買掛金が 1,200百万円 (前連結会計年度比 160.6%増 )、短期借入金が 3,145百万円 (前連結会計年度比 125.2%増 )増加したことなどによるものであります。
減少の主な要因は、未払法人税等が 1,186百万円 (前連結会計年度比 40.4%減 )、未払費用が 983百万円 (前連結会計年度比 5.5%減 )、構造改革引当金が 486百万円 (前連結会計年度比 100.0%減 )減少したことなどによるものであります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は、 87,263百万円 (前連結会計年度末残高は 91,898百万円 )となり、 4,634百万円 (前連結会計年度比 5.0%減 )減少いたしました。これは主に、運転資金の返済及び長期運転資金の調達を行ったことにより長期借入金が減少したことによります。
増加の主な要因は、リース債務が 2,047百万円 (前連結会計年度比 3.6%増 )増加したことなどによるものであります。
減少の主な要因は、長期借入金が 7,035百万円 (前連結会計年度比 44.0%減 )減少したことなどによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、 44,025百万円 (前連結会計年度末の純資産は 41,077百万円 )となり、 2,947百万円 (前連結会計年度比 7.2%増 )増加いたしました。
増加の主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより利益剰余金が 1,298百万円 (前連結会計年度比 5.7%増 )増加、自己株式の処分により自己株式が 1,443百万円 (前連結会計年度比 12.9% 減)減少したことなどによるものであります。
2)経営成績
「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。
b.経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載しております。
c.キャッシュ・フローの状況及び資本の財源及び資金の流動性
1)キャッシュ・フローの状況
「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。
2)資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資金需要は主に大きく分けて事業活動に必要な運転資金需要と事業伸長・生産性向上及び新規事業立上げを目的とした設備資金需要の二つがあります。今後、成長分野に対しては必要な資本的支出を継続していく予定であります。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は82,428百万円となっております。また、当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は18,386百万円となっております。
d.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、長期利益の安定成長を果たす「ニチイビジョン」の実現のロードマップとして、中期経営計画「VISION 2025」(2019年3月期から2025年3月期まで)を策定しております。
中期経営計画の最終期である2025年3月期の業績目標は、連結売上高5,000億円以上、連結営業利益率10%以上の達成、ROE8%以上且つ15%以上の水準の維持を目指しております。
当連結会計年度における連結売上高は297,965百万円、連結営業利益率4.1%、ROE9.8%でした。引き続き、目標達成に向けて邁進していく所存でございます。
(単位:百万円)
|
2019年3月期 |
2020年3月期 |
2025年3月期 (目標) |
売上高 |
287,882 |
297,965 |
500,000 |
営業利益 |
10,032 |
12,162 |
|
営業利益率 |
3.5% |
4.1% |
10%以上 |
② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
ニチイグループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
なお、 新型コロナウィルス感染症の影響等不確実性が大きく将来事業計画等の見込数値に反映させることが難しい要素もありますが、期末時点で入手可能な情報を基に検証等を行っております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。
a.固定資産の減損
当社グループは、保有する固定資産において、営業活動から生ずる損益が継続してマイナスである資産グループについては、回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。回収可能価額の算定にあたっては、外部の情報源に基づく情報等を含む、決算時点で入手可能な情報や資料に基づき合理的に判断しておりますが、新型コロナウイルスの影響など将来の不確実な経済条件の変動等により、利益計画の見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において追加の減損損失が発生する可能性があります。
b.繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、将来の課税所得および慎重かつ実現性の高い継続的なタックス・プランニンングの検討に基づき繰延税金資産を計上しており、その実現可能性について毎期検討し、内容の見直しを行っておりますが、将来の課税所得の見込みの変化やその他の要因に基づき繰延税金資産の実現可能性の評価が変更された場合、認識される費用および計上される資産に重要な影響を及ぼす可能性があります。
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