当連結会計年度におけるわが国の経済は、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな回復傾向が見られたものの、米中貿易摩擦の影響等による海外情勢の不確実性に加え、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響を受け、景気は極めて厳しい状況となりました。
当社グループが属する建設コンサルタント業界では、激甚化する自然災害に対する「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」に基づく事業が集中的に実施されております。また、公共施設の維持管理・運営など、社会資本整備に対するニーズの多様化が進んできており、建設コンサルタントの果たすべき役割は益々大きくなっております。
このような状況の下で、当社グループは、2020年6月期を初年度とする第12次中期経営計画(2019年7月から2022年6月まで)をスタートさせ、重点課題として設定した「品質確保」「事業領域拡大」「人財育成」に対する諸施策を積極的に取り組み、経営基盤の強化に努めてまいりました。「品質確保」としては、品質理念と行動指針を構築し、高品質を実現する生産プロセスの強化を推進してまいりました。「事業領域拡大」としては、本社に「事業マネジメント推進部」を新設し、マネジメント分野の事業展開や受注拡大に向けた体制を整備してまいりました。「人財育成」としては、2018年6月期から2か年にわたり取り組んできた「働き方改革」を継続するとともに、専門教育研修などの機会を充実し、社員教育の強化を図ってまいりました。
これらの結果、当連結会計年度における当社グループ全体の業績は、受注高が190億6千9百万円(前連結会計年度比113.3%)となり、前期を大幅に上回り、過去最高の受注高となりました。受注残高についても148億8千7百万円(同120.8%)と高水準となりました。売上高については、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う影響により、一部の契約業務において一時中止や工期の延長が発生しましたが、165億3百万円(同104.9%)となり、過去最高の売上高となりました。利益面におきましても、業務の選択受注を徹底したことや働き方改革の推進により生産性が向上したことから、営業利益は16億2千4百万円(同131.5%)、経常利益は16億4千1百万円(同130.8%)となり、過去最高益となりました。最終の親会社株主に帰属する当期純利益は、当期は前期に比べ多額の特別損失が発生しなかったことから11億2千万円(同441.3%)となり、前連結会計年度に比べ増収増益となりました。
なお、当社グループは継続的に企業価値の向上を図るため、株主資本利益率(ROE)10.0%以上を安定的に達成できることを目標に掲げており、当連結会計年度におきましては、株主資本利益率(ROE)は18.6%となり、目標を達成することができました。
部門別の状況を示すと次のとおりであります。なお、当社グループは単一の報告セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。また、当連結会計年度より、前連結会計年度まで表記しておりました〔防災部門〕を〔国土保全部門〕へ名称を変更しております。
〔構造保全部門〕
当部門の受注高は96億8千9百万円(前連結会計年度比107.3%)、受注残高は77億7千3百万円(同121.1%)、売上高は83億3千6百万円(同104.1%)となりました。主な受注業務として、西日本高速道路(NEXCO西日本)岡山高速道路事務所管内における橋梁耐震補強設計業務、国土交通省関東地方整備局大宮国道事務所管内における新大宮上尾道路堤崎跨道橋外詳細設計業務があげられます。
〔社会創造部門〕
当部門の受注高は46億9千5百万円(前連結会計年度比122.9%)、受注残高は30億5千7百万円(同129.2%)、売上高は40億4百万円(同111.5%)となりました。主な受注業務として、北海道の水素利活用型ビジネス形成促進事業委託業務、富山県富山市の海洋プラスチックごみ等流出抑制対策調査検討業務があげられます。
〔国土保全部門〕
当部門の受注高は26億3千8百万円(前連結会計年度比105.6%)、受注残高は15億3千4百万円(同92.2%)、売上高は27億6千8百万円(同132.6%)となりました。主な受注業務として、国土交通省東北地方整備局三陸国道事務所管内における宮古南地区被災状況調査業務、熊本県の女岳出防災・安全交付金地すべり調査業務があげられます。
〔海外・施工管理部門〕
当部門の受注高は20億4千6百万円(前連結会計年度比137.5%)、受注残高は25億2千2百万円(同134.9%)、売上高は13億9千4百万円(同68.5%)となりました。主な受注業務として、インドネシア共和国におけるパティンバン港アクセス道路建設事業施工監理、滋賀県草津市の第二学校給食センター造成監理業務があげられます。
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末と比べて10億円増加(前連結会計年度は10億5千1百万円増加)し、135億1千6百万円(前連結会計年度は125億1千6百万円)となりました。主な変動は、現金及び預金の減少13億2千万円、完成業務未収入金の増加7億5千2百万円、たな卸資産の増加7億7百万円、有形固定資産の増加1億6千1百万円、退職給付に係る資産の増加8億9千6百万円であります。
負債合計は、前連結会計年度末と比べて1億2千5百万円増加(前連結会計年度は8億7千4百万円増加)し、70億2千7百万円(前連結会計年度は69億2百万円)となりました。主な変動は、業務未払金の減少9千5百万円、未払法人税等の減少3千8百万円、未成業務受入金の増加4億2千6百万円、退職給付に係る負債の減少1千万円であります。
純資産合計は、前連結会計年度末と比べて8億7千5百万円増加(前連結会計年度は1億7千7百万円増加)し、64億8千8百万円(前連結会計年度は56億1千3百万円)となりました。主な変動は、剰余金の配当1億2千9百万円、親会社株主に帰属する当期純利益11億2千万円によるものであります。
これらの結果、当社グループの自己資本比率は47.9%(前連結会計年度は44.7%)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べて13億2千万円減少し、52億1千7百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金純額は、7億3千6百万円(前連結会計年度は、獲得した資金15億2千1百万円)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益16億3千1百万円に、減価償却費2億6百万円及び減損損失5百万円の非資金費用のほか、売上債権の増加額7億5千2百万円、たな卸資産の増加額7億7百万円、仕入債務の減少額9千5百万円、未成業務受入金の増加額4億2千6百万円、退職給付にかかる負債の減少額1千万円、退職給付にかかる資産の増加額8億9千6百万円、法人税等の支払額2億1千2百万円によるものであります。なお、退職給付にかかる資産の増加額については、主にリスク対応掛金10億8千5百万円を拠出したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金純額は、4億5千6百万円(前連結会計年度は獲得した資金10億6千6百万円)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出2億9千4百万円、無形固定資産の取得による支出1億2千7百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金純額は、1億2千9百万円(前連結会計年度は使用した資金1億8百万円)となりました。これは主に、配当金の支払額1億2千8百万円によるものであります。
当社グループの運転資金、設備資金及び財務資金につきましては、内部資金により賄っております。
当社グループは、単一の報告セグメントであるため、生産、受注及び販売の状況につきましては、事業の部門別に記載しております。
当社グループは、主として官公庁より調査・計画・設計に係る業務を受託して行っており、生産実績を定義することが困難であるため、生産の状況の記載はしておりません。
当連結会計年度の受注状況を事業の部門別に示すと、次のとおりであります。
(注) 1.数量につきましては、業種の特殊性から把握が困難なため記載を省略しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当連結会計年度の販売実績を事業の部門別に示すと、次のとおりであります。
(注) 1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、決算日における財政状態及び経営成績に影響を与えるような経営者の見積り及び予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、見積り及び予測を行っております。
当社グループは、成長投資に必要な資金は、事業で生み出す営業キャッシュ・フロー及び手元流動性資金で賄うことを基本とし、それを超える投資規模の場合には、金融市場または資本市場から調達することも選択肢の一つとし、成長への機会損失とならないよう堅実かつ柔軟な資金調達を行う方針であります。
また、業務の特性上、業務代金の回収時期が3月から5月に集中する傾向があるため、資金需要に応じて運転資金の一部を金融機関からの短期借入金で賄っております。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
お知らせ