課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2022年2月28日)現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

 当社グループは、国や地域を超えた世界中の人々のために企業活動を行い、すべては人々のために『For the People』を経営理念としています。理念を具現化するための事業活動指針である6つの価値観「うまい、やすい、はやい」「客数増加」「オリジナリティ」「健全性」「人材重視」「挑戦と革新」を共有・実践していくことで、株主、お客様及び従業員などステークホルダーの満足度向上や信頼構築に努めることを基軸として経営展開を図っています。

 

(2) 長期ビジョンを実現するための取り組みについて

① 今までにない「新しいビジネスモデル」創り

当社グループは、長期ビジョン「NEW BEGINNINGS 2025」の実現に向けて、現在のビジネスモデルに代えて長期的に運用できる「新しいビジネスモデル」の構築を課題としています。既存の外食産業の範疇を超えるような市場創造・価値提供を行うモデル創りは、すでに素材開発や商品の提供方法の改善など、従来とは一線を画した踏み込みを開始しています。今後はその踏み込みを一層強めていくと同時に、さらに突出した「革新」による飛躍を図っていきます。

 

② 「飲食業の再定義」を実現するための組織づくりと取組みについて

 「飲食業の再定義」を実現していくため、よりスピーディーな意思決定が可能となるグループ経営体制への見直しを行っていきます。全てのグループ本部の機能発揮を最大化し経営効率を高めて、海外を含めたグループ全事業への能動的な貢献・関与・統制を強化していきます。グループ間での人事交流の活発化およびグループ商品本部による仕入れの共通化も引き続き行っています。海外各地域においては、現地経営体制の確立および現地での意思決定を可能にするエリアと部分的に日本で意思決定するエリアを明確にすることで、今後のグローバル展開を一層加速していきます。

 また、「飲食業の再定義」の実現のため、ダイバーシティ(人材構成の多様化)の推進も引き続き行っていきます。

 

③ 「ひと・健康・テクノロジー」の実践へ

当社グループでは、2025年を最終年度とする長期ビジョン「NEW BEGINNINGS 2025」の実現に向け「ひと・健康・テクノロジー」をキーワードとし、これまでの飲食業になかった新しい価値創造にチャレンジしています。

「ひと」に関わる取組みでは、「ひと」を活かすことで生まれる価値を追求し、その価値をお客様に提供していきます。グループ管理本部ではテレワークや出張に代わるWEB会議の促進といった新しい生活様式への対応を含めた本社機能の業務改革に取組み、同時に従業員の働き方改革も進めていきます。「健康」に関しては、従業員の心と体の健康を経営の柱とする「ウェルネス経営」の一環として、従業員の健康リテラシーの向上と浸透を図っていきます。また、今後のメニュー開発は、「健康的」から「健康」そのものの追求へ取組みを深化させていきます。

最後に「テクノロジー」に関わる取組みでは、複雑な店舗オペレーションを簡便化・効率化する設備や機器を導入し、職場環境の改善を図ることで、労働力の確保と生産性の向上に繋げていきます。

 

(3) 経営環境

 前期から続く感染症の再拡大に伴う各国政府や自治体の要請に対し、度重なる店舗の営業時間の短縮や休業を実施したことにより大きな影響を受けました。国内においては、7月・8月に開催された東京五輪期間の巣ごもり需要に対するテイクアウト、デリバリーの売上獲得や緊急事態宣言が解除された10月以降に店内飲食の回復の兆しが一時的に見られました。しかし、2021年1月から9月末まで断続的に発令された緊急事態宣言に加え、2022年1月のまん延防止等重点措置の適用により、通期の売上高は大きな影響を受けました。また当期のみならず2023年2月期(翌期)の第1四半期においても営業時間の短縮等の影響を受けています。

 海外においては、エリアにより感染症の影響状況が異なっています。経済活動の再開が進むアメリカでは、テイクアウト、デリバリーの販売数が好調に推移した結果、既存店売上高は前年同期を大きく上回って推移しています。中国は前期の大規模な休業の反動によるプラス影響はありましたが、7月以降の感染症再拡大への厳格な対策による休業影響を受けて、依然として厳しい状況が続いています。アセアンは感染症拡大の影響により厳しい状況が続いていましたが、9月以降の緩やかな収束に伴い、店内飲食が段階的に解除されるなど回復基調となっています。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

2023年2月期(翌期)においては、国内は3月迄まん延防止等重点措置の影響を受けていますが、解除後には人流の戻りと共に店内飲食が順次回復する前提の下、売上高が2022年2月期(当期)を上回り、新型コロナウイルス感染症拡大前の2020年2月期(前々期)の水準まで回復すると見込んでいます。国内吉野家は前期に引き続き堅調に推移する売上計画に加え、大きな影響を受けてきた商業施設・都市部に出店しているはなまるやラーメン業態は、人流の戻りと共に大幅な回復を見込んでいます。海外は各々感染症の拡大状況が異なっていますが、アメリカは引き続き順調に推移し、アセアンの売上高は回復する一方で、感染症再拡大への厳格な対策を継続している中国は厳しい状況が続くと見込んでいます。

引き続き感染症対策を行いながら、各セグメントにおいて、店内飲食を獲得するための目的来店を促す商品導入や各種キャンペーンを積極的に展開し、今後も高止まりするテイクアウト、デリバリーの需要を更に獲得するため、商品開発に加えデジタルツールの機能強化、積極的な販促を展開し客数回復に努めます。加えて、中食・内食市場に切り込むため、国内外で冷凍牛丼販売の拡大に向けた生産体制の強化、中国工場への設備投資を行い、更なる需要獲得に取り組んでいきます。

これらの予見の下、2023年2月期(翌期)の売上高は感染症拡大前の2020年2月期(前々期)に対し、通期100%に回復すると仮定をおいて算出しました。(※)

損益面については、2020年2月期(前々期)の売上高に対し90%の水準で利益を創出できる構造づくりを掲げ活動した結果、2022年2月期(当期)は通期で営業黒字化を達成しました。2023年2月期(翌期)は、売上高の回復による増益効果はあるものの、未曾有の原材料価格の高騰やエネルギーコストの上昇影響により営業利益は34億円と2020年2月期(前々期)の水準を下回ると見込んでいます。

出店につきましては、依然として感染症の影響が継続している中、立地の見極めには一定の時間を要すると考えていますが、国内では吉野家のスクラップ&ビルドや経済活動再開が進むアセアンおよび中国の一部エリアを中心に出店を再開しています。また、国内吉野家の新しいモデル「クッキング&コンフォート」への改装も再開し、大幅に改装店舗を増やしていきます。

なお、感染症拡大による大規模な行動制限や再度の緊急事態宣言の発令などによる大幅なダウンサイドリスクは織り込んでいません。

 (※):株式譲渡を実施したアークミール社、京樽社の影響を除いて試算しています。

 

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