業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績等の状況

<経営成績>

 当連結会計年度におけるわが国経済は、依然として新型コロナウイルス感染症の影響を受けてはいるものの、ワクチン接種の進行や医療提供体制が強化されたことから人流への抑制が減少、個人消費や企業収益は緩やかな回復傾向にあります。

 紙パルプ業界におきましては、情報伝達媒体のデジタルシフトによる印刷・情報用紙の需要減少傾向は継続しておりますが、社会経済活動の回復に伴い包装パッケージ向けを中心に需要は緩やかに回復、紙・板紙合計での国内出荷量は、コロナ禍以前の水準からは減少しているものの、前年実績を上回りました。

 このような中で当社グループは、コロナ禍における事業継続と商品の安定供給を主眼とし、テレワーク等の各種感染症対策を継続しながら、高効率を目指し事業を運営しております。ショップ・ギャラリー運営においては感染防止対策を行いながら企画展示会の開催を継続、SNS等を利用した情報発信をより強化するとともに、新たな顧客層の獲得や販促活動を進めました。また、需要伸長が見込める領域にフォーカスを当て、包装パッケージ用途、抗ウイルス紙等の技術紙領域における高付加価値特殊紙の開発と新規需要獲得に向けた営業活動の強化を図っています。それとともに脱炭素社会の実現やSDGs、脱プラスチック等の社会的ニーズに向けた開発提案活動を推進してまいりました。販売においては、コロナ禍における生活様式の定着により、人流と個人消費は緩やかに回復、それに伴い国内観光関連や各種包装パッケージ用途に需要回復の動きが出てきており、東アジア地区での販売も感染拡大で一部下押しされましたが、当地区からの欧米向け商品の輸出需要の回復に伴い復調傾向にあります。

 この結果として、当連結会計年度の業績は、売上高156億19百万円(前期比6.9%増)、経常利益1億33百万円(前期は経常損失19百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益87百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失34百万円)となりました。

 なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。また、当該会計基準等の適用については、「収益認識に関する会計基準」第84項に定める原則的な取扱いに従って、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用しているため、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。

 当連結会計年度におけるセグメントごとの経営成績は、次のとおりです。なお、以下の数値はセグメント間の取引消去後となっております。

[和洋紙卸売業]

 和洋紙卸売業は、新型コロナウイルス感染症の影響が続いているものの、経済活動の制限が緩和され国内需要や個人消費が回復するのに伴い、観光土産関連や化粧品・健康食品等のパッケージ用途、出版、紙製品用途が堅調に推移し、売上高は155億93百万円(前期比6.9%増)、営業利益は1億34百万円(前期は営業損失15百万円)となりました。

[不動産賃貸業]

 不動産の売買、賃貸借、管理及び仲介で構成される不動産賃貸業は、賃貸物件数の増加により不動産賃貸収入が増加し、売上高は26百万円(前期比1.4%増)、営業利益は28百万円(前期比26.9%増)となりました。

<財政状態>

[資産]

 資産合計は、157億66百万円(前期比1億52百万円減)となりました。

 流動資産の増加(前期比1億28百万円増)は、現金及び預金97百万円、電子記録債権3億64百万円が増加しましたが、受取手形及び売掛金の減少3億45百万円が主な要因となっております。

 固定資産の減少(前期比2億81百万円減)は、有形固定資産の減少68百万円、無形固定資産の減少18百万円、投資その他の資産の減少1億94百万円が主な要因となっております。

[負債]

 負債合計は、72億35百万円(前期比32百万円増)となりました。

 流動負債の増加(前期比1億円増)は、支払手形及び買掛金24百万円が減少しましたが、未払法人税等の増加71百万円、賞与引当金の増加54百万円が主な要因となっております。

 固定負債の減少(前期比67百万円減)は、繰延税金負債の減少58百万円が主な要因となっております。

[純資産]

 純資産合計は、85億30百万円(前期比1億85百万円減)となりました。

 為替換算調整勘定が48百万円増加しましたが、その他有価証券評価差額金の減少2億24百万円が主な要因となっております。

 

(参考)

当社単体の和洋紙卸売業の品目別の営業成績

品目別

前事業年度

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

当事業年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

増減率(%)

金額(百万円)

構成比

(%)

金額(百万円)

構成比

(%)

ファンシーペーパー

3,148

22.7

3,360

22.9

6.7

ファインボード

1,564

11.3

1,716

11.7

9.8

高級印刷紙

3,000

21.6

3,203

21.8

6.8

ベーシックペーパー

4,159

29.9

4,299

29.3

3.4

技術紙

1,850

13.3

1,912

13.0

3.4

その他

176

1.2

195

1.3

11.1

合計

13,898

100.0

14,688

100.0

5.7

 

[ファンシーペーパー]

 多様な色、表面性、風合いを持つ高付加価値特殊紙のファンシーペーパーは、コロナ禍における需要減少傾向は継続するも、近年の新商品上市やリモート・SNS等での販売促進活動の強化継続等により、出版、紙製品用途が堅調に推移しました。また、観光需要の緩やかな回復に伴い土産物、菓子等のパッケージ用途の販売が持ち直し、売上高は33億60百万円、前期比6.7%の増加となりました。

[ファインボード]

 ファンシーペーパーの厚物(板紙)であるファインボードは、インバウンド、イベント需要の減少による影響は継続していますが、緩やかな人流の回復に伴い化粧品・健康食品等の高級パッケージ向けや、土産物関連のパッケージ用途が底を打ち回復傾向にあります。東アジア向けの輸出も拡大しつつあり、売上高は17億16百万円、前期比9.8%の増加となりました。

[高級印刷紙]

 独自の風合いを持ち、通常の印刷用紙より高価格帯の高級印刷紙は、企業向けカレンダー、カタログ、パンフレット等の商業印刷物用途は微増、慶弔挨拶状等の紙製品や出版用途が回復基調にあり、売上高は32億3百万円、前期比6.8%の増加となりました。

[ベーシックペーパー]

 上質紙、塗工紙、色上質紙等の印刷用紙、包装用紙、各種板紙等で構成されるベーシックペーパーは、商業印刷物用途は減少しましたが、出版や各種パッケージ用途での動きが回復、東アジア向けの輸出も伸長し、売上高は42億99百万円、前期比3.4%の増加となりました。

[技術紙]

 通常の紙にはない特殊機能が付与されている技術紙は、偽造防止用途や各種工業品製造用工程用途の販売が前年より減少しましたが、脱プラスチック向けの耐水耐油性機能紙や医療用パッケージ用途が伸長、衆議院選挙向けポスター等の合成紙販売も上乗せとなり、売上高は19億12百万円、前期比3.4%の増加となりました。

[その他]

 家庭紙、紙加工品、製紙関連資材等で構成される当区分では、感染症対策需要でペーパータオルが堅調、各種家庭紙も観光需要の緩やかな回復に伴い伸長し、製紙関連資材、紙加工品も堅調に推移、売上高は1億95百万円、前期比11.1%の増加となりました。

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて97百万円増加し、33億17百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)
 営業活動の結果得られた資金は2億33百万円(前期比25.5%減)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益1億48百万円及び、減価償却費1億1百万円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
 投資活動の結果使用した資金は13百万円(前期は36百万円の獲得)となりました。これは主に、 投資有価証券の売却による収入1億19百万円及び、 投資有価証券の償還による収入50百万円がありましたが、 投資有価証券の取得による支出1億67百万円及び、有形固定資産の取得による支出5百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
 財務活動の結果使用した資金は1億23百万円(前期比43.7%増)となりました。これは主に、配当金の支払額96百万円及び、 ファイナンス・リース債務の返済による支出26百万円によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

該当事項はありません。

b.受注実績

該当事項はありません。

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2021年4月1日

至  2022年3月31日)

前期比(%)

和洋紙卸売業(千円)

15,593,188

106.9

不動産賃貸業(千円)

26,211

101.4

合計(千円)

15,619,399

106.9

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が10%以上の相手先がないため、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

<当連結会計年度の財政状態及び経営成績に関する認識及び分析・検討内容>

 「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績等の状況」に記載のとおりであります。

<経営成績に重要な影響を与える要因>

 当社グループは「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、経営環境、事業の内容、事業体制等、様々なリスク要因が経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社は常に市場動向及び業界動向を注視しつつ、優秀な人材の確保及び適切な教育を実施するとともに、事業体制及び内部管理体制を強化し、社会のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因に対し適切な対応を行ってまいります。

<セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容>

 「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績等の状況」に記載のとおりであります。

<経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等>

 当社グループは、安定的な収益基盤を構築するため、売上高、営業利益及び収益性を判断する観点から売上高営業利益率を重視しております。また、株主資本利益率(ROE)を重要な指標として位置づけ、総資産利益率(ROA)も意識しております。

 当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症拡大による影響で先行きが不透明な中、当初2021年5月13日の時点で、売上高が2021年3月期比12.9%増の165億円、営業利益が同975.1%増の94百万円と予想し、その達成に努めてまいりました。しかしながら、社会経済活動は緩やかに正常化に向かい需要は回復傾向にあったものの、当初の需要予測までは至らず、売上高は156億19百万円と、計画比8億80百万円減(5.3%減)となりました。なお当初予想に考慮されていなかった雇用調整助成金の特例措置期間の延長を受け、交代出勤による休業を実施したため販管費が大幅に減少し、営業利益については1億61百万円と、計画比67百万円増(72.0%増)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

<キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容>

 「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

<資本の財源及び資金の流動性>

(a)資本の財源

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。当社グループの運転資金需要のうち主なものは商品の仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。設備投資を目的とした資金需要は、主に倉庫等における機械装置等の固定資産購入によるものであります。運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入金を基本としており、設備資金の調達につきましては、自己資金を基本としております。

 なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は21億54百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は33億17百万円となっております。

 

(b)資本政策

 当社グループが創出したフリー・キャッシュ・フローについては、有事の際に機動的な対応がとれるよう備えつつも、平時においては手元資金の適正な範囲内で、成長投資と株主還元とをバランスよく保ちながら、分配することとしております。

 株主還元につきましては安定的な配当として中間配当と期末配当の年2回を基本方針としております。原則として、連結による損益を基礎とし、特別な損益の状態である場合を除き、1株当たり10円(中間配当5円、期末配当5円)の年間配当金を目処に、安定的・継続的な利益還元に努めていくこととしております。なお、2022年3月期においては、中間配当について前年同期の無配から復配し、中間配当、期末配当ともに1株当たり5円(年間配当10円)とさせていただきました。今後の市場の回復傾向や、それに伴う業績の見通しが好転した際には、増配の可能性についても積極的に検討してまいります。

 成長投資については、経営状況を判断しながら、さまざまな施策の優先順位を検討してまいります。また、名古屋に続き、大阪に保有している事務所用の土地についても有効活用を検討すると同時に、保有ビルの老朽化対応も兼ねながら収益物件として投資をすることも検討していきます。また、特殊紙を中心とする紙の販売・流通を軸としたオーガニックな成長に加え、M&A等による成長機会に関しては、常時、情報を収集し、案件次第で検討してまいります。その際には、当社の事業領域との親和性に加え、事業成長性を重視した上で、成長投資としてキャッシュを一定量振り向ける準備もしてまいります。当社グループにおいては、引き続き利益成長を図りながらキャッシュの創出力を高め、資本コストと財務の柔軟性のバランスを考慮した適切な資本構成を維持していく考えです。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

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