文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針・経営戦略等
当社グループは、「平和を愛し、環境を重んじ、文字文化を通じ、豊かな未来創りに役立つ企業を目指す」ことを社是として掲げ、「仕入先・得意先と共存共栄を旨とし、誠意をもって接する」「常に創意工夫をおこたらず、開拓・開発に進取と挑戦の精神で行動する」を企業理念としています。
当社グループは経営ビジョンに、「お客様に信頼され、社員の働きがいがあり、世界を舞台にして安定的に収益を伸ばせる魅力的な企業を目指す」ことを掲げております。当社グループにおいては、このビジョンの達成に向けて、社員一人当たりの生産性・効率化を高めることで、収益性の向上と強固な経営基盤の確立を図っております。同時に、当社グループを取り巻くすべての利害関係者の信頼とご期待にお応えすることを経営の基本方針としております。
また、地球規模で気候変動対応が求められる中、特殊紙を中心とする紙の流通・販売を営む当社グループにおいても、環境に配慮した紙『エコロジーペーパー』の開発・販売促進並びに啓発活動に注力することで、地球環境の保全と循環型社会への寄与を図っております。2020年1月には、国連の採択した「持続可能な開発目標(SDGs)」への当社の対応をまとめ、森林の活性化等をはじめとする環境課題はもちろんのこと、ジェンダーの平等、社員の働きがいといった社会的課題の解決を図りながら、事業を通じて、紙の文化向上と社会貢献ができるよう、企業活動を展開しております。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、本業の紙の販売に関する収益性を判断する観点から、売上高営業利益率を重視しております。加えて、企業価値の観点から株主資本利益率(ROE)、さらに長期的な持続可能性を示す指標として総資産利益率(ROA)を、経営の重要指標として位置づけ、収益力の強化を推進し、バランスの取れた財務体質の強化を目指しております。なお、社内の販売管理においては売上総利益に注視することで、より付加価値の高い商品の販売比率の向上へとつなげています。
また、企業運営においては、フリー・キャッシュ・フローの観点から現預金等の手元資金の水準を常に把握し、適正な範囲内での増減に収まるよう、管理しております。ROAに関しては2022年度以降、2022年4月に当社が等価交換方式で譲渡した土地の含み益がバランスシート上に計上されるため、見かけ上の数値は影響を受けるものの、社内の管理上は当該影響を除いたROAに注視していきます。
なお、過去5年間における上記指標の推移は下記の通りです。
|
2018年3月期 |
2019年3月期 |
2020年3月期 |
2021年3月期 |
2022年3月期 |
売上高営業利益率(%) |
1.1 |
1.3 |
1.0 |
0.1 |
1.0 |
ROE(%) |
3.4 |
2.6 |
1.8 |
△0.4 |
1.0 |
ROA(%) |
1.6 |
1.3 |
0.9 |
△0.2 |
0.6 |
(注)「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、前連結会計年度に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を遡って適用した後の指標等となっております。
(3)経営環境及び対処すべき課題
2022年の紙・板紙の国内需要については、従来からの少子高齢化といった構造的な問題に加え、世界的な新型コロナウイルス感染拡大を受けたデジタル化の加速で、印刷・情報用紙の落ち込みが続き、巣ごもり消費の追い風を受ける段ボール原紙や衛生用紙の需要増でも補えず、市場全体の需要は引き続き低調に推移することが見込まれております。
そのような中、脱プラスチックの流れによる代替素材として、パッケージ用途を中心に紙の持つ役割が再認識されており、当社の強みを発揮できる高級パッケージや特殊機能が付与されている技術紙を中心に、従来の手法に加えコロナ禍で強化されたデジタル技術を活用した販売推進活動も活用しながら、売上の拡大を図ります。また、お客様、お取引先様の諸問題を解決するソリューションビジネスの提供を通じて付加価値を高め、収益性の向上へとつなげることで、外部環境の変化に影響されにくい経営基盤の確立を図っていきます。また、より働きやすい職場環境の構築に向けて、コロナ禍で始めた時差出勤やテレワークの併用も継続しながら、事業の効率化推進に向けたIT環境の整備にも投資を進めていきます。そして引き続き、本業である和洋紙卸売業のさらなる強化を推し進めると同時に、新規取り組みへの挑戦、並びにESG経営の強化を課題として取り組んでまいります。
①既存事業の強化
昨今、デジタル化・IT化が加速する中で、「Writing(書く)」「Wrapping(包む)」「Wiping(拭く)」という紙の3機能の中でも、情報を伝達する「Writing」機能としての紙の需要は縮小傾向が続いております。当社グループは紙の中でも、高付加価値の特殊紙を主力としておりますが、書籍の装丁や商品パッケージ等の「Wrapping」用途、さらには偽造防止技術等の高機能な技術紙については、比較的安定した需要が見込まれており、ニッチな市場でのトップ企業群の一社として、既存事業の強化を推し進めております。2023年3月期は引き続き、高級パッケージや機能紙等、今後も堅調な需要が見込める、あるいは需要増の期待できる領域へ向けた商品シフトを加速していきます。販売促進活動においても、従来どおりお客様との直接のコミュニケーションを大切にしながら、紙についての決定権を持つデザイン・クリエイティブ部門や企画部門等との関係をさらに強化していきます。また、コロナ禍で強化してきたSNS等のデジタル領域を活用した情報発信も効果的に進めていきます。
環境意識の高まりから脱プラスチックの流れが加速する中で、これまでのプラスチック樹脂やスチール缶等の金属素材を使ったパッケージを、高級感のある紙素材に転換する需要が増してきています。また、需要増が期待できる技術紙を中心とした商品群に経営資源を積極投入し、着実にそうした需要に応えてまいります。
付加価値のある紙については、直接お客様に触れていただくことでその価値を訴求できるという点があり、東京・大阪・名古屋のギャラリーでのイベント開催を通じて、需要の喚起につなげてまいります。
②新規取り組みへの挑戦
コロナ禍もあり当社を取り巻く事業環境と顧客側の需要が大きく変化を続ける中で、これまでの延長線上で物事を考え行動するのではなく、新しい切り口で事業環境を見直し、新しいやり方や新しい仕事に着手してまいりました。当社内で新しい取り組みを進めると同時に、M&Aによる成長機会についても引き続き検討をしてまいります。具体的には、紙販売に近い領域になりますが、手元資金の水準を見ながら、当社の持続的成長に資する案件が出てきた際には、積極的に検討しながら、事業基盤を拡充してまいります。
2021年3月期より新たにセグメント化した不動産賃貸業においては、2022年4月に名古屋の遊休不動産の収益化に向けて、当社が保有する土地を等価交換方式で譲渡しました。当該土地については、譲渡先がその隣接地も含めて今後建物を新築し、当社が当該建物の一部をオフィス及び賃貸用住宅として取得するスキームとなっています。不動産賃貸業においては、引き続き大阪の遊休不動産の収益化や、好立地に位置する物流拠点・倉庫の有効活用を図ってまいります。
③ESG経営の強化
当社では、紙の流通を担う企業の使命として、「環境と共生できる紙」を『エコロジーペーパー』と位置づけ、再生紙や非木材紙、森林認証紙や間伐材紙、グリーン電力用紙等、さまざまな環境対応紙の開発並びに普及・販売に努めております。また、当社の環境対応紙の主力は森林認証紙であり、今後開発する新商品のほとんどを環境対応紙とすることで、環境対応紙比率をさらに高めるべく取り組んでおります。
2020年1月には、国連の採択した「持続可能な開発目標(SDGs)」に対する当社の8つの取り組みを公表しました。環境配慮型の紙の開発並びに普及・販売や、森林の活性化を通じて「陸の豊かさを守る」ことはもちろん、脱プラスチックの流れの中で、紙製品で代替できる分野を訴求することによって「海の豊かさを守る」ことも含めております。
社会的な側面としては従業員に対して、ジェンダーの平等や社員の働きやすい環境整備を引き続き進めていくと同時に、今後は、処遇の改善や育成・教育も含めた人的資本への投資を強化していきます。当社における中核人材は、東京、大阪、名古屋、福岡、仙台、香港といった各拠点の経営を担い得る人材と捉えており、販売能力に加え、経営管理能力を携えた人材の育成強化が重要だと考えます。人材の確保については、新卒一括採用を基本としながら、経験豊富な人材の中途採用も活用し、ジョブローテーションや各種研修・教育等による自社での育成を通して、一人ひとりのスキルや資質が最大限発揮できる適所への配置を行います。その中で、中核人材候補に対しては、本支店経営のみならず本社での全社的な統括業務等の経験を積み重ねることで、育成していきます。
また、一企業市民として、各種コンプライアンスの徹底やコーポレート・ガバナンスの構築・強化にも努めております。特にコーポレート・ガバナンスに関しては、形式的な部分ではまだ完全にはコーポレートガバナンス・コードの要求を満たしきれてはいないものの、その求めるところの本質的な考え方に沿って、当社の企業規模に合った形で有効となりうる企業運営を追求してまいります。さらなる経営の透明性向上と実効性の強化に向けて、執行役員制度も含めた最適な機関設計、ガバナンス体制のあり方について、引き続き検討を続けてまいります。
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